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022.実践経験

フィル達の誕生日から五回目の訓練の日。

五人の剣の腕なんかも大分形になってきた。

五人はそれぞれ騎士や冒険者になるつもりだし、フィル達はもう少しで学園が始まってしまうのでそろそろ実戦経験を積ませたい。


「と言う事で五人でパーティーを組んで冒険者に登録して、簡単な討伐依頼を受けてもらおうかと考えているがどうだ?」


五人にそう質問をしてみた。

それに対して五人は顔を見合わせて首を縦に振る。

そして代表してフィルが話しだす。


「分かりました。僕達も自分の実力を知りたいですし冒険者登録させていただきます」

「四人もそれでいいんだな?」

『はい』

「それじゃあそれぞれ親や院長に許可を貰う事、話し合う必要もあるかもしれないから二日後にここに集合と言う事にしよう」


そして二日後。

リスティ達と俺達のパーティー全員で領主邸に向かう。


領主邸に着くと装備を着た三人とハリエルが待っていた。


「その様子だと三人も許可を貰えたんだな」

「はい」

「リック。子供達を頼むぞ。怪我をするのは仕方無いが、再起不能や亡くなるなんて事が無い様にしてくれよ」

「そのつもりですし、無理はさせるつもりはないですよ」

「うむ、それでは気をつけてな」


ハリエルと別れて五人を連れて冒険者ギルドにやって来た。

まずは五人の登録を行なう。

本当なら魔法使い辺りもいればいいんだけど、このパーティーも二人が学園に行くまでの物だし下手に人を入れるのもどうかと思うしな。

無事五人の登録を終えた後は依頼掲示板を見て良さそうな依頼を探す。

常駐依頼であるウルフ討伐依頼を受ける事にした。


それから町を出る前にリスティとリースの装備を整えて、道具屋でポーションやマジックバッグを購入する。

今回の装備や道具は冒険者登録の記念としてプレゼントする事にした。


町を出るとそこからは五人に任せて俺達は後ろを付いて行く形をとる。

ここからは警戒や索敵も自分達でやってもらう。

俺達が手を出すのは五人だと危険だと判断した時だ。


町から少し南東に行ったところにある森に入って行き注意しながら先に進む。

しばらく行った所で左方にゴブリンを二匹発見した。

五人は見つからない様に屈んで小声で話をしている。

その後フィルとリスティ、イヴェールとテートに別れて一匹づつに突っ込んで行く。

リースは見える位置で離れすぎない様に少しだけ前に出て止まった。

どうやら二対一で相手にしてリースが援護をするようだ。


悪く無い対応だろう。

後はリースが後方や横から襲われた時どう対処するかが課題になるが、俺達が見ている感じ周りに他の魔物もいないし今回は問題なさそうだ。

さてゴブリンの方は…フィルとイヴェールがメインで戦いリスティとテートが隙を見て攻撃をしている。

うん役割もしっかりしてるし連携も問題なさそうだな。

程なくしてゴブリンの討伐が終わった。


初戦闘だったからだろう。

緊張からか大して動いてはいなかったがかなり疲れているようだ。


「大丈夫か?」

「は、はい。緊張しただけです」

「大丈夫そうならゴブリンの剥ぎ取りを済ませようか」

「はい…」


リスティとテートがゴブリンの耳を切り落としていく。

切り落とした後は燃やすか埋めるかするのだが、それは今回は俺達でやる事にした。

念の為にテートにはMPを温存してもらう。


少し休憩してから更に先に進むとウルフの群れがいた。

数は四匹…いや五匹か、少し離れた岩の上にレッドウルフがいた。

数もそうだがレッドウルフがいるといない時に比べて統率の取れた動きをしてくる。五人には少しきついか?


手を出せる様に準備をしておく。

するとまずはテートがウインドカッターを放ってウルフの一匹を狙った。

ウルフは回避しようと飛ぶが足に当たり後ろ足を切り落とした。

すぐには死なないだろうがこれでほぼ戦闘不能だな。


レッドウルフが遠吠えを上げると残りのウルフ三匹が勢い良く駆け出した。

五人が対処しようと構えるとウルフはそれぞれフィル・イヴェール・リスティに襲いかかる。

が一撃いれると少し離れて隙を窺う様に動いている。

するとレッドウルフがそっと動き出した。

五人は気付いているだろうか?


五人を見てみると視線は完全にウルフの方を向いている。

これは気付いていないな…。

テートが距離を取っているウルフに対してまたウインドカッターを放とうと手を前に出す…が。


「テート右側からレッドウルフ!防御!」

「え?きゃあ!」


レッドウルフがテートを狙って奇襲をしようとしていたので声を出して注意を促した。

ウルフ種の奇襲は首を狙うからな。

まともに受けるとかなり危険だ。

どうにか首を守る事には成功したテートだが左腕を噛まれてしまう。

手甲を付けていたので噛み千切られたりはしないが結構な血が飛び散った。

それに対して四人が慌てだしてテートに意識を向けてしまう。

するとその隙を見てウルフ達はフィル達に襲いかかった。

三人とも何とか防御するがリスティは肩辺りを爪で切られた。

大して深い傷では無いので大丈夫だろう。


テートの方は剣を使ってどうにかレッドウルフから距離を取れたようだ。

左手で剣を持ち変えて傷口を右手で抑える様にし、警戒しながら回復魔法を使い始めた。

慌てて回復に集中したり背中を見せて逃げようとしないのは偉い。

あれならレッドウルフが攻撃してきても防御出来るだろう。

テートよりも他の四人の方が混乱しているようで問題かもしれない。

その後何とか立ち直ってそれぞれウルフとレッドウルフを倒す事に成功した。


今はテートは自分の怪我を、リースはリスティの怪我を治療しているので今回は剥ぎ取りをフィルとイヴェールにやらせている。

ウルフの剥ぎ取りは毛皮と肉の解体で結構大変だ。

俺達のパーティーでも俺とアルティナとスピカしか出来なくて、タイミングを見て教えるつもりだったので今回二人へ教えながら三人にも教えている。今度実践させてみよう。


剥ぎ取りも終わったので今回はこれで帰る事にした。

冒険者ギルドで報告をして報酬を受け取り、広いテーブルを借りて反省会をする。


「さて今回の反省点だが分かるか?」

「レッドウルフを注意していなかった事です。あの時にリックさんが声を掛けてくれていなかったら危なかったかもしれません…」

「そうだな。他には?」

「テートが襲われて慌ててしまった…でしょうか?」

「ああ、それとその後の対処もだな。テートが襲われて心配なのは分かるが意識をそっちに向けすぎてウルフへの対処ができていなくて、更にその後も慌ててしまって三人の実力なら普通に倒せてたはずのウルフに梃子摺ってしまったな」

『はい…』

「ああ落ち込まなくていいぞ、今度から気をつける方が大切だ。その辺りは失敗しながら実戦経験を積んで改善する事が大切だから、ただその失敗も取り返しの付かない失敗だって当然ある。そうなら無い様に色々な状況を考えその時の対処法等は考えておいた方が良い。それとテート」

「はい」

「レッドウルフに噛まれた後、ちゃんと警戒しながら回復出来てたのは偉かったぞ。あそこで慌てて回復に集中したり逃げたり、剣を適当に振り回したりなんて事をしてたら余計に危険だったからな。その場合俺達がレッドウルフを倒すために手を出していた」

「はい!ありがとうございます!」


テートは嬉しそうな顔をして頭を下げる。

その後食事をして解散する。

後日聞いた話では五人は訓練の無い日に集まって話し合ったりもする様になったらしい。

前よりも仲良くなっていた。




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