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021.フィルとテートの誕生日

フィルの誕生日が翌日となった日。

町には貴族の馬車がいっぱい入ってきて町中にはその人達を護衛して来た人達か見覚えの無い冒険者が多く居た。

更に誕生日の翌日には馬車が出て行ったり入って来たりと出入りが多い。

どうやらフィルの誕生日に参加した後帰る人とテートの誕生日の為に来た人達が入れ替わる様に出入りして居るようだ。


テートの誕生日から二日後。

今日は訓練の日となっている。

領主邸に行くとテートが落ち込んでいて、フィルとイヴェールが心配そうにテートの事を見ていた。


「何かあったのか?」

「実は…」


イヴェールが事情を説明してくれる。

テートの誕生日パーティーの時に二人は同年代の子達から親が降格された事を馬鹿にされたのだそうだ。

それだけではなくテートの事を器用貧乏の魔法剣士と馬鹿にしてきたらしい。

特に元々親が同格だった伯爵や今回の事で同格となった子爵の子供達がそう言う傾向にあったらしく、折角の誕生日だったのにと落ち込んでいるようだ…。

当然全ての子供がそうだった訳じゃないし、特に仲の良かったこの中にはそんな事関係無いと味方になってくれた子も居たようだけど、仲が良いと思っていた子の中にも馬鹿にしてきたのがいたらしい…。

そう言う奴等は前にハリエル達と話をした家の階級の高さで人を馬鹿にしたり好き勝手する奴等なんだろうな…。

内心溜め息を吐く。


訓練を始めるけどやっぱり身が入っていなくて訓練を始めてから仲良くなったリスティ達も心配そうだ。


休憩中にテートが俺の方に近づいてきた。


「あの…リックさん」

「どうした?」

「リックさんも魔法剣士なんですよね?」

「ああ」

「魔法剣士は冒険者や騎士として役立たずだと言うのは本当ですか?」


何でもテートは家を次ぐのはイヴェールになるんだし冒険者か騎士になって困っている人の役に立ちたいと思っているらしい。

それなのにそれを知っている仲良くしていた筈の子に役立たずだと言われてその想いを馬鹿にされたのだそうだ。


「そういう事を言う奴がいるのもステータスの都合上剣士としても魔法使いとしても中途半端になりやすいのは確かだ。だけど役立たずなんて事は無いと俺は思うぞ」

「そうなんですか?」

「ああ、騎士はよく分からないけど冒険者はパーティー人数が六人までって知ってるか?」

「はい、知ってます」

「六人だとやっぱりやれる事が狭くなる部分もあるんだよ。

そうだな、例えば六人だとどうしてもパーティー内に魔法使いと僧侶は一人もしくは片方が二人と言う形になりやすいんだが、魔法使いが一人の時は物理防御の高い魔物への攻撃が魔法使い一人に任せるしかなくなるし、僧侶が一人の時はその僧侶が何かで魔法を使えなくなると回復手段がポーション等のアイテムを使うしかなくなってしまう。

その為に魔法使い二人僧侶二人に前衛二人とすると、今度はサポートに回れる人がいなくなり、後衛を守るのが難しくなるよな?」

「えっと…確かにそうですね」

「だけど魔法剣士はそれぞれの専門職に及ばなくてもどの役割もする事が出来る。つまり対応力と言う意味では他の職より優れているんだ」

「それは…確かに…」

「こういうのは結局使い方次第なんだと思うぞ、剣士として一流になりたいとかでも無い限り魔法剣士は冒険者として十分優秀だと俺は思っている。残念な事に器用貧乏と馬鹿にする奴も結構居るのが現状だけどな」


前のパーティーの人達にも認めてもらえなかったし、魔法剣士は器用貧乏で役立たずなんて言う人は確かに結構いるけど、そう言う人は魔法剣士の有用性にちゃんと考えていないだけだと思う。


「実際リックがいるだけで相手に合わせて前衛・中衛・後衛のどの役割もやってくれるから助かるのよね」

「そうですね。数が多いなら私達を守ってくれますし、数が少ないと前に出て戦ってくれますしね」

「魔法が必要な時も手分けして撃てるから変に焦る必要も少ないですし、MPがきつくなってる時にはポーションを飲んでいる間の回復をしてもらえますしね」


アルティナ・スピカ・ティニーが俺の言葉に賛同してくれる。


「そう言えば、私達の前のパーティーってどうしてるかしらね」

「あー…正直に言うとやばいかもな…」


デルシスは『自分は攻撃役だから』と言って回避も防御も全然しない奴で、俺もアルティナも何回も注意していたのだが、デルシスはまったく受け入れなかった。

だからアルティナはデルシスの守りを優先していたし、俺も後衛三人を気にしながら状況に合わせてデルシスの防御に回っていた。

アルティナは元々タンク職では無いとは言っても聖騎士で人を守りながらの防御能力はかなり高い。

そのアルティナが一人では守りきれ無いから俺もデルシスの防御も気にしていたのだ。

正直デルシスのやり方では優秀なタンクが入らないとすぐに辛くなるだろう。

更に後衛三人の中で比較的近接戦闘も出来るステータスをしているレリィーも近接能力を鍛えていないから三人を守れる人間も必要だろう。

そう考えるとパーティーに居れられる人は相当しぼられる。

同レベルの人なんて簡単に見つからないだろうし、よほど運が良くないとすぐに活躍するのは難しいのではないだろうか。


「まあもう俺達は追い出されたんだし、こっちで皆とパーティーを組んでるんだし気にする必要は無いだろ」

「そうよね」


しかしやっぱり結構魔法剣士を馬鹿にする人って言うのは多いんだな…。

実際にパーティーを組んでいた四人にも駄目だしされたし分かり辛いのか俺が自分がそうだから良い様に捉えすぎなのか…。


翌日。

俺達はソードキャンサーを大量に倒して持ち帰って領主邸で蟹パーティーを開いてもらった。

パーティーに参加したリーファンは自分の所為で降格して子供達が馬鹿にされた事に落ち込んでいた。

その分も償うためにハリエルの元で仕事をしいつか見返してやると頑張ると意気込んでいる。

蟹をテートは喜んでくれて少しは元気を出してくれたと思う。

それと余ったソードキャンサーを冒険者ギルドで買い取ってもらいに行ったところランクアップする事が出来てCランクになった。

前と同じランクまで後一つだ。





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