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002.奴隷とシークレットスキル

王都を出て西に向かうがどの街に行くかまでは決めていない。

とりあえずデシウス達に絡まれない様にと早く街を出る事を考えていて行き先はのんびりと決めようと言う事になり、この先にあるウェステリアと言う街までは歩きで移動している。


「どうしようか…」

「うーん。どうせだから海まで行っちゃう?」

「海か~、それも良いかな」


そんな事を話しながら王都とウェステリアの中間程まで来た所で進行方向から、


「うわああああぁぁぁぁぁぁ!!」


と言う悲鳴が聞こえてきた。

アルティナと顔を合わせ頷き合い悲鳴の聞こえた方向へと走る。

少し行ったところで人影の様な物が見えた。

更に近づいていくとどうも魔物と人が戦闘しているようで、近くには馬車も横転していた。

悲鳴からして人の方が不利の可能性があるので急ぐと、馬車の辺りから僕達とは反対側に人影が走って行く姿と、馬車の近くで尻餅を突いている女の子がいるのが分かる。

戦闘している魔物はオークの様だが10匹近くいるだろうか…。


オーク…力と耐久力の高い魔物で結構強い。

更に集団で行動する事が多い魔物でもあるので注意が必要。

特に上位種が混じると統率も取れるし、上位種は当然更に強いので注意。


固まっているので数はハッキリとは分からない。

もう少しと言うところで戦闘していた人間がやられてしまったらしく倒れるのが見えた。

せめてあの女の子だけでもと思い。


「君!こっちに走って!」


俺がそう言うとこちらに気付いたようだが上手く走れないようで這う様にしてこちらに向かってくる。

その時になって初めて女の子に手枷と足枷が付けられている事に気づいた。

そしてオークが女の子の方へ向かっていく。

棍棒を振り上げるのが見えたので走りながらそのオークにウインドカッターを放つ。

棍棒を持つ手に当たりオークの腕を切り落した。

そんなオークを無視して他のオークが女の子へと棍棒を振りおろそうとするが、ここで俺達が間に合いオークの攻撃は俺が剣で受け止め、アルティナに攻撃を任せて俺は女の子を守る事を優先する。

結果的にアルティナが八匹、俺が三匹のオークを倒す事で魔物を全滅させる事が出来た。


「ふう…、えっと大丈夫かな?」


女の子に声をかける。


「は、はい。ありがとうございました」


助けるのに夢中でちゃんと見てなかったけど綺麗な金髪と薄緑色の目をし、美しい顔立ちのかなりの美少女だった。

そして何よりも特徴的なのが耳が長い…。


「もしかしてエルフ?」


俺の言葉に女の子はビクッとして振るえる。


「もしかしたらその子奴隷として売られたんじゃない?」

「そうなの?」


アルティナの言葉に確認の為に話しかけると女の子はコクンと首を縦に振った。


「ねえ貴女。ご主人様は?」

「まだいません…。今から王都へと運ばれてそこで奴隷として売られるところだったので…」

「それじゃあ貴女の現所持者は?」

「私を囮にして逃げ出しました」


と女の子が指差す方向は先ほど人影が走って行った方向だった。


「うーん…どうしようか」

「解放してあげたいけど、一応奴隷として所持者がいるんじゃ勝手に解放するのも不味いわよね…」


すると女の子の指差した方向からまたも悲鳴が聞こえた。

とりあえず女の子はアルティナに任せて悲鳴が聞こえた方向へと走る。

するとそこにはウルフが人を食べているところだった…。


ウルフ…多くの場所で見られる魔物で、すばやい動きで噛み付きと引っ搔きで攻撃してくる。

初心者冒険者でも三人ほどのパーティーであれば二、三匹なら無傷で倒せる事も多い。

ゴブリンに並んで初心者が受ける討伐相手である。


ウルフはこちらに気付いたらしく飛び掛ってきたので軽く横に体を動かし切り倒す。

ハッキリと確認した訳では無いけど、おそらくウルフに食べられていた人はさっき女の子を置いて逃げた人だ…。

女の子に確認してもらうために遺体を担ぎ上げてアルティナ達の所へ戻る。


「ウルフにやられてたよ。この人が君の所持者でいいのかな?」


そう言って女の子に確認してもらう。


「はい…間違いないです」


一応女の子に何故奴隷になったのか話を聞く事にした。


「実は私達は結界の中から出ては行けないと言われていたのですが、私はどうしても結界の外や森の外を見てみたくて…。森の中から外を少しだけ見てみようと軽い気持ちで結界を出てしまったところを捕まってしまったんです…」

「それじゃあ君が犯罪を犯して奴隷にさせられたとかでは無いんだね?」

「はい」


彼女は一瞬も目を離さないし嘘を言っている様には見えなかった。

所持者である奴隷商人も亡くなったので解放してあげようと荷物を漁らせてもらうと、彼女を購入した契約書と足枷等の鍵を見つける事が出来たので彼女を解放してあげる事にした。


「それで君はどうする?もし森に帰りたいと言うのであれば送って行くけど」

「…いえ、実は森の中での様子は長老様には分かる様になっていて、人間に捕まり森の外に連れ出されたエルフは穢れ持ちとして扱われてしまい結界に入る事を禁じられてしまうんです…」

「そうなんだ…」

「はい…それでなんですけど、助けていただいて何ですがお願いしたい事がありまして…」

「なにかな?力になれそうな事なら出来る限りの事はするよ」

「私を貴方の奴隷にしていただけ無いでしょうか」

「「はぁ!?」」


俺に向かってそんな事を言う彼女の言葉に俺もアルティナも驚いてしまう。


「理由を聞いて良いかな?」

「はい。森に帰る事が出来ない以上人間の街で暮らす必要があるんですけど、私は狩りをした事はありますけど正直戦闘能力には自信がありません。それなのでまた売ろうと狙われる可能性が高いと思うんですよ」

「それは確かにありえそうよね」

「ですけど、流石に既に奴隷の身であるのなら他の人も手を出せないのではないかと思いまして」

「なるほど…、でも何で俺なんだ?同性であるアルティナの方が良くないか?」

「それは…その…、お二人とも信用できそうだとは思うんですけど、先ほど助けていただいた時に貴方の事をカッコ良いと思いまして、それでどちらかの奴隷になるなら貴方の方がいいかな…と」


どうしようか悩んでいると、


「いいんじゃない?」


なんてアルティナが軽く言ってきた。


「それでこの子を助ける事が出来るなら良いじゃ無い。リックならこの子に変な命令もしないでしょ?」

「そりゃ奴隷を持ったからって変な命令なんてするつもりは無いけど…」

「お願いします!」

「はぁ…分かった。そういえば自己紹介もしていなかったな。俺はリック、冒険者だ」

「私はリックの幼馴染で一緒にパーティーを組んでいるアルティナよ」

「スピカです」

「それじゃあ始めようか…」


アルティナが少し離れて俺とスピカが向かいあう。


「≪我が名においてこの者を我が奴隷とする事を望む≫」


すると俺とスピカを囲む様に魔法陣が展開される。


「≪私の名においてこの方の奴隷になる事を望みます≫」


スピカがそう言うと魔方陣から光の球が現れてスピカの首へと向かった。

するとスピカの首に白い首輪が現れる。


この世界には二つの奴隷契約がある。

今回の様にお互い…特に奴隷になる人がが心から望み契約の言葉を紡ぐ事で奴隷になる方法。

この場合は白い首輪が奴隷に付けられる。

もう一つは国から奴隷商へと発行された契約書を通して行なわれる一般的な奴隷契約で、こちらの場合は黒い首輪が奴隷に付けられる。

二つの違いはまずは周りからの見られ方で、白首輪の方は忠誠を誓う主に自ら望んで奴隷になるので周りからは悪く思われない。

逆に黒首輪の方は、スピカの様に攫われた人もいるみたいだけど、多くは犯罪等を犯して奴隷落ちした者達なので周りからは白い目で見られる事が多い。

更に白首輪の方は奴隷がその相手の奴隷でいる事を心のそこから嫌がった場合にも解除される様になっているので、白首輪が無くなる事は事情にもよるがそれだけ信用を失う事をしたと言う証明になり、むしろ主の方が白い目で見られる事もある。


『シークレットスキル【ご主人様】の条件を満たしました。スキルが解放されます』


スピカとの奴隷契約が終わると頭の中にいきなりそんな言葉が聞こえた。


シークレットスキル。極稀にどんなスキルか分からないスキルを持つ人が居る。

ステータスを開くとスキル(???)と表示されるのだが、このスキルは条件を満たさないと解放されないのだ。

解放条件が簡単な物もあれば難しい物もあり、そのほとんどが聞いた事自体殆ど無いスキルなのだ。

俺はステータスを開いて自分のスキル欄を確認すると(???)が無くなり【ご主人様】と言うスキルが現れていた。

スキルについて確認してみる。

『奴隷自身の能力に応じてスキル所持者の能力が増加し、スキル所持者のスキルでの増加後の能力に応じて奴隷の能力が増加する。

この効果は同じ奴隷からは重複して受け無い』

となっていた。

ステータスを確認すると、これまでと表記が変わっていた。

なにやら元のステータスの隣に()で囲われた数値が表示されているのだ。


「どうしたの?」


俺がステータスと睨めっこしていたからかアルティナが覗きこんできていた。

二人にシークレットスキルが発動した事とその効果を伝える。


「へぇ~、スピカの能力はどうなってるの?」

「えっと…ステータスオープン…。ご主人様みたいに元のステータスだけじゃなくて()内に数字が出てますね」


俺とスピカのステータスを見せあって計算してみる。


「どうやらスピカの元の能力の五分の一が俺の()内の数値で、俺の元の能力にその数値を足した物を三分の一にしたのがスピカの()内の数値の様だな」

「能力の説明を信じるのならこの()内の数値分ステータスが伸びているって事ですよね?」

「そうね…ねえリック」

「ん?」

「私もリックの奴隷にしてくれない?」


なんてアルティナが言い出した。


「本当に良いのか?」

「うん。リックなら信じられるし、これで強くなれるなら冒険者としてはありでしょ」

「…分かった」


そしてアルティナ相手にも奴隷契約を結び、アルティナの首に白い首輪が付けられた。

ステータスを確認する。


「今度はスピカとアルティナそれぞれの元の能力の五分の一の合計が俺の()内の数値で」

「リックの元の能力と()内の数値を合計して三分の一したのが私達の()内の数値ね」

「と言う事はご主人様は奴隷を持てば持つほど強くなるって事ですね」

「そうね。更にその奴隷もね」


この恩恵はかなり大きく、すでにスピカでさえ冒険者で言えばEランクでやっていけるぐらいのステータスになっていた。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「ですけど、流石に既に奴隷の身であるのなら他の人も手を出せないのではないかと思いまして」 人攫いにさらわれただけで、奴隷と確定してしまうの? よく分からない設定ですね。
[一言] 進んで幼なじみが奴隷は強くなれるからといってもないかな
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