018.水彩のダンジョン
今日はサイタールの南の岩礁にあるもう一つのダンジョン。水彩のダンジョンと呼ばれる場所に来ている。
このダンジョンの特徴は海岸やある程度海の浅瀬にいる魔物が出てくるらしい。
ダンジョン一階層目。
広めの通路の様な作りで地面のほとんどが砂で両端の方に川の様に水が流れている。どうやらこの水は海水のようだ。
少し進むと砂の中から蟹の魔物が出てきた。
ヘッドシザークラブ…頭の先が鋏になっている掌サイズの蟹の魔物で、横走りから頭から体当たりする様に鋏から突撃してくる。
鋏の先は丸くなっているのと速度自体は速くは無いのでぶつかられただけなら決して怖くは無い。
しかしその鋏部分に指なんかを挟まれてしまうとあっさりと切り落とされる事もあるぐらい鋭いので注意が必要である。
確かに挟まれると厄介だが、集団行動をする魔物では無いので油断しなければ大丈夫だ。
向かってくるベッドシザークラブを迎撃する様に真っ二つに切り裂く。
ヘッドシザークラブは身が無く出汁にもならないとして食用にもならない蟹なのでその場で放置して先に進む。
ダンジョン二階層目。
ここも一階層目と見た目はまったく同じになっている。
少し進んだところで両端の海水から透明色の触手が伸びてくる。
触手が伸びてくるところを見ると透明色の茸の傘から触手がいっぱい生えたような魔物が浮いている。
スタブジェリーフィッシュ…浅瀬の海に住む透明色の魔物。
針の付いた触手で攻撃をしてくる。
決して攻撃力は高く無いが急所を刺されない様に注意。
アルティナと俺で両サイドから来る触手を切り落としながら進んだ。
ダンジョン三階層目。
このダンジョンではここで最初のボス戦となる。
丁度人が居ないようなのですぐにボス部屋へと入っていく。
中は砂浜になっていて大きな二枚貝の魔物がいた。
バブルバイバルブ…水管から泡を飛ばしてくる巨大な二枚貝の魔物。
泡の一発一発は威力は高く無いが衝撃は結構大きい。
更にそれにより倒れた獲物に飛びかかり貝の中に取り込んで捕食しようとしてくる。
まともに戦うとかなり面倒な魔物だ。
皆に離れてもらって最初の泡攻撃をワザと受けてワザと倒れる。
すると俺を捕食しようと貝の中に挟みこんできた。
貝の中だけあって真っ暗なのでライトの魔法で中を明るくし、ゆっくり迫ってくる本体に掴まる前に貝柱を切り裂く。
この魔物は貝柱が弱点で、大して硬く無い貝柱を切り裂いてしまえばそれだけで倒す事が出来る。
それなので冷静に対処出来る灯りと斬撃を使える者であれば簡単に倒す事が出来る。
ボスを倒した事で宝箱が人数分現れた。
宝箱の中身を回収してまだ先に行くつもりなので部屋を出る。
宝箱の中身は貝殻のブレスレットだった。
付けても特に効果の無い物だがサイタールのお土産としてそこそこ人気があるので売るか誰かにプレゼントするかだろう。
少し休憩してから先に進んだ。
ダンジョン四階層目。
この階層も一・二回層目と同じ作りになっている。
進んでいくと海水から星型の物が飛び出して回転しながらこっちに向かってくる。
フライングスターフィッシュ…空を飛び回転しながら体当たりをしてくる星型の魔物。
攻撃力は高くは無いが斬撃に対する生命力が高く、切り裂くとその分増えて再生する。
しかも増えた分全てを倒さなくては討伐したとは認められない。
弱点は火で簡単に火が付き、一度燃えると水の中に入らないと鎮火しない。
俺とアリッサで初級の火魔法を使って向かってくる敵だけを倒しながら先に進む。
ダンジョン五階層目。
この階層は地面全てが足首程の高さまで海水で埋まっていた。
すると海水の中に紫色の細長い物が数多くいる。
ポイズンキューカンバー…なまこ型の魔物。
自分からは襲いかかっては来ないが踏んでしまうと毒の粘液を出し踏んだ者に毒を与える。
強力な毒なので注意。解毒の用意が無い時は近づかない様にしよう。
ほとんど動くわけでも無いので踏まない様に注意しながら先に進む。
ダンジョン六階層目。
この階層は広いフロアの様な造りになっていて、中央に池の様に海水があり周りに砂浜が広がっていて、砂浜のいたるところに大きな岩がある。
少し進むと岩陰から高さ一メートルくらいあり鋏の部分が片刃の剣の様になっている蟹が出てきた。
ソードキャンサー…鋏の部分が片刃の剣の様になっている蟹型の魔物。
物理防御力は高いが火の魔法には弱い。
攻撃方法は正面に立つものに対して両方の刃で挟む様にして切り裂いてくる。
その攻撃力は高く鉄の鎧も切り裂く。
ただしその性質上正面の射程範囲に入らなければ問題は無く、横歩きしか出来ずに体の向きを変える速度も遅いので上手く立ち回ろう。
まずは一匹だけだったのでアルティナと反対方向に回りこむ様に動くと、アルティナの方を向いたので後ろから剣で切りかかるが流石に結構硬い。
何回か切り付けてやっと倒す事が出来た。
この魔物は食用として味が良く人気もある。
特に生のソードキャンサーは甘みが強く人気があり高値で売れるのでマジックバッグに入れて持ち帰る事にする。
ここで物音を立てたからか、ソードキャンサーがたくさん出てきた。
アリッサと俺で範囲火魔法を使って焼き蟹にしていく。
いい匂いがしてきた…。
倒したソードキャンサーをマジックバッグに入れて、少しの間出来るだけ剣やノエルの攻撃で倒す様にしながらソードキャンサーを回収してから先に進んだ。
ハリエルから貰ったマジックバッグのお陰でかなりの量を持ち帰る事が出来る。
前までのマジックバッグでは二匹入るかどうかだったからな。
ダンジョン七階層目。
ここはこのダンジョン二回目のボス戦となっている。
中には俺と同じくらいの大きさで二足歩行する蝦蛄の魔物が立っていた。
フリックスクイラァ…二足歩行する蝦蛄の魔物。
腕をブラブラと振りながら両腕を鞭の様にしならせたパンチを放ってくる。
一発一発の威力も決して低くは無く、手数も多いのでかなり厄介。
遠距離攻撃での撃破がお勧め。
アルティナとノエルに足止めしてもらい、二人の回復をティニーに頼んで残りの三人で遠距離攻撃を仕掛ける。
アルティナは盾もあるし戦闘経験も高いからかしっかりと防いでいるが、ノエルにはきつそうだ。
「ティニーはノエルの回復を、ノエルは無理しない様にダメージを受けたら余裕を持って後退を」
「「はい」」
それから数分後。
フリックスクイラァは前に崩れる様に倒れた。
フリックスクイラァは光となって消えると宝箱が人数分現れたので宝を回収し、今回はこれで帰るのでそのまま中に残る。
ダンジョン前に飛ばされてそれから町に帰り、まずは孤児院にやってきた。
ここで先ほど倒したソードキャンサーを使って孤児院の皆と蟹パーティーを開催する。
甲羅を剥がして身の無い剣の部分を切り落とし、甲羅にある蟹味噌を剥がす。
甲羅と剣の部分は素材として結構良い値で売れるので回収しておいた。
俺も始めて食べたが味が濃くて身もプリプリで本当に美味しかった。
この時にネージュさんに聞いたのだが、マウコール家やサイタージュン家でも生のソードキャンサーは中々手に入らないらしい。
お腹いっぱい食べ終わった後は冒険者ギルドで食べなかったソードキャンサーを買い取ってもらう。
ソードキャンサーの身は取っておきたいとも思ったが、翌日には味もかなり落ちてしまうそうなので仕方が無い。
食べたくなったらまた取りに行けばいいだろう。
その後は鍛冶屋に行って甲羅と剣の部分を買い取ってもらった。
ソードキャンサーは火魔法で簡単に倒せるが、素材も中の身も焼けてしまうのが欠点らしく、魔法を使わないで倒した分は結構良い値で買い取ってくれた。
ソードキャンサーは攻撃の危険度もあってほとんどが火魔法で倒される為に火魔法を使って無いのがあまり出回らないそうだ。
その次の五人の訓練の日。
休憩中にリスティ達がソードキャンサーが美味しかった事を嬉しそうに話すと、フィル達も羨ましがっていた。
ネージュさんも言っていた通りフィル達でも焼かれていないソードキャンサーは簡単には手に入らないらしく、特にソードキャンサーが好物の一つであるらしいテートは本気で羨ましそうだった。
その次の日に水彩のダンジョンに向かった俺達はまたソードキャンサーを大量に持ち帰って、孤児院だけじゃなく領主邸にも持って行った。
領主邸で焼かれていないソードキャンサーも何匹か渡すととても喜ばれた。
お金をだすとも言われたけど、前回持ってこなかった事なんかも考えて今回は遠慮させて貰った。
それでも素材だけでも十分のお金になるのでまったく問題ない。
ちなみにこの二回のダンジョンで手に入ったボス報酬は、貝殻のブレスレット×12、魔力回復ポーション×7、星の砂×4、クッショングローブ×1だった。
星の砂…小ビンに入っている砂。
暗い場所で光る性質を持っている
クッショングローブ…赤い色の綿がいっぱい入った柔らかく膨らんだグローブ。