017.訓練
リスティとリースにも冒険者として色々と教える事になった次の日。
多少でも剣術が出来るフィル達と比べて二人は基礎が何も無いので教える日まで少しだけでも教えておく事にした。
リスティは盗賊が使う武器として一般的な短剣を使うつもりの様だ。
リスティには短剣をリースには使うか分からないけどメイスを練習で使える様にとプレゼントした。
盗賊は近接戦闘能力が高いとは言えないので、出来れば投げナイフの様な中遠距離攻撃の出来る様な武器もその内教えた方がいいかもしれないが今はいいだろう。
短剣はあまり使った事が無いので細かい技術を教えるのは難しいが、基本的な立ち回り等は教える事が出来る。
リスティに教えているとスピカも真剣に聞いていた。
スピカも近づかれた時の対策として短剣を使うので興味があるようだ。
「どうだリスティ武器を持って動き回った感想は」
「最初はちょっと怖かったかな…、それと思ったより疲れるんだね」
「そうだな。だけど長期戦になる事も当然あるし、体力はつけておかないとな」
「うん」
「それとそれは人を殺める事が出来る。扱いには注意する様にな」
「はい」
リスティの休憩の間リースの様子を見に行ってみる。
リースは僧侶なので威力は無いが回復魔法自体は使えている。
それなのでティニーが教会で教えてもらった事を教えている状態だ。
見た感じリースは真剣に聞いているようだ。
リスティの方は次はアルティナが見る事になっているので俺は空く事になる。
そう言えば前にスピカにも剣を教える約束もしていたな。
「スピカ。前にダンジョンで約束したが剣の練習してみるか?」
「はい。よろしくお願いします」
最初はスピカに攻撃されてそれを俺が防御していって、途中から少しづつ俺の方からも攻撃をし始める。
攻撃速度は最初は遅く少しづつ速くして行った。
ステータスもあるしバングスワロー相手に剣を振ったりもしていたからか、剣の技術自体は初心者ではあるのに思っているよりも付いてくる事ができている。
このまま技術を覚えて行けば近接戦闘でも中衛なら出来るかもしれない。
しばらく続けていたらスピカが疲れたようなので休憩する事にした。
休憩しているとアルティナが近づいてきた。
「見てたけどスピカは後衛じゃなくて中衛でいけそうね」
「ああ、魔法も使えるし弓矢でも弱点をしっかりと狙える技術を付けたらかなり優秀な弓術師になりそうだな」
「リックと違うタイプの万能型になりそうよね」
「そうだな。そういえばリスティは…完全に倒れてるな」
「リックとスピカを見て『私も』って張り切りすぎたのよ」
「なるほどな…」
それから二日後。
フィル達に教える日となった。
場所は領主邸の庭となっている。
今日はリスティ達にその事を伝えて一緒に領主邸にやって来た。
ちなみにアリッサとノエルは簡単な依頼を受けるらしいので注意する様に伝えて途中で別れた。
「あ、あ、あの…。本当に私達が領主様のお屋敷に行っても大丈夫なのでしょうか?」
「も、もし何かしてしまったら…孤児院にも迷惑が…」
「んー、少し話しただけだがその辺りは大丈夫だと思うぞ」
門番に声をかけると庭に案内され、他の門番の人がフィル達を呼びに行ってくれる。
少ししてフィル達とハリエル伯爵がやってきた。
「その二人が一緒に教えると言う子達だね」
「そうです」
「確かリスティ嬢とリース嬢だったかな?息子達をよろしく頼むよ」
「は、はい。こ、こちらこそよ、よ、よろしく…お願いしましゅ」
「み、皆さんの邪魔にならない様にが、頑張りまひゅ」
「…なあリック。俺怖がられていないか?」
「ハリエル伯爵がと言うより、相手が貴族…しかも領主だからだと思いますよ。自分達が何か失礼な事をしたら孤児院に迷惑をかけるんじゃないかって考えもあるのでしょう」
「そう言う物か…。私としては貴族だとか領主だとかはそういった堅苦しいところでなければ気にしないでいてくれた方が嬉しいのだがな…」
「まあ貴族だからとやりたい放題している人達もいますからね…」
俺とアルティナは住んでいた村や拠点にしていた王都の周辺しかほとんど知らないが、それでもやはり偉そうにしている貴族と言うのを見た事は結構ある。
それにやっぱり貴族に失礼な事をしてはいけないと言うのは庶民には常識としてあるので、二人の反応もよく分かる。
「…二人とも。俺は二人が悪さしない限り息子達と喧嘩しようが、訓練の上で息子達を怪我をさせようが罰したり等しないから普段と同じ様に過ごしてくれ」
「「は、はい…」」
そしてハリエル伯爵は屋敷の方へと帰って行った。
その背中は少し悲しそうに見える。
フィル達とリスティ達にそれぞれ自己紹介をしてもらってから訓練を開始する。
まずは四人の剣の練習とリースのメイスの練習をする事になった。
リースは買ってくれたのだからしっかりと使いたいと言う考えのようだ。
まずは素振りから始めてもらったが、リースは元々余り力が無いらしくてメイスを何回か振っているとすぐにバテ始めてヨロヨロと体勢を崩し始めた。
「無理をしすぎない様にな。体を壊したら元も子もないからな」
「はい…」
メイスは鈍器だけあって重いしな…。
完全に疲れて肩で息をしているリースを休ませて他の四人を見る。
しばらくして次に疲れてきているのはリスティの様で、フィル達三人は元々ある程度の訓練をしていたのもあってまだ余裕そうだ。
その後はテートも疲れてきて、フィルとイヴェールも少ししてから動きが悪くなってきた。
この辺りで全員休憩にしたほうがいいかな。
「はいそれじゃあ休憩な。しっかり休もうな」
『はい…』
フィル達三人は冒険者だとEランク寄りのFランクと言ったところだろうか。
今は色々やる前に一つづつ確実にやった方がいいだろう。
そうアルティナと相談して今日は剣の振り方を教えていく事にした。
5人を相手に俺とアルティナは一人づつ教えながら指導していく。
剣の振り方や間合いの取り方なんかもあるが、やっぱり一番重要なのは実戦経験な気もする。
この5人だと剣士が二人に魔法剣士、盗賊に僧侶か…。バランスとしては決して悪く無いと思う。
本人達と親の許可さえ出れば冒険者登録をして、俺達が護衛としてついて簡単な討伐依頼を受けてもらうのもいいかもしれない。