014.元パーティー視点 (SIDE デルシス)
パーティーに二人を入れる事になって二人のパーティー登録をして依頼を受けに行く事にした。
受ける依頼はリーダーである俺に一任してもらった。
俺達のパーティーはBランクだし新人の事も考えて一つ下のランクであるCランク依頼にしておこう。
そう考えて適当なCランクでも簡単と言われるブラックベアー三匹の討伐依頼の依頼書を持って受付に行く。
「これを受けたい。それとこの二人が新しくパーティーに加入する」
「はい、確認しますね…すいませんが少しギルドマスターに確認する事がありますのでお待ちください」
そう言うと受付は奥に入っていった。
しばらくしてギルドマスターとであるテンゲンと一緒に戻ってくる。
「あの大変申し上げにくいのですが、新規加入のお二人のレベルを考えますとリックさんとアルティナさんの代わりをするのは無理ですね。
ギルドマスターに相談したのですが、パーティーのランクをDランクとさせていただきます」
「なっ!」
Bランクの実力を持つ俺達がDランクだと?
「待ってくれ確かにアルティナが抜けたのは大きいのは認める。だがリックなんて役に立たない中途半端野郎は居ても居なくても変わらないんだからせめてCランクだろ」
俺がそう抗議するとギルドマスターが前に出てきた。
「お前は…いやお前達は魔法剣士を馬鹿にするタイプの人間だったんだな。
魔法剣士は確かに一つ一つは専門職に劣るがあの器用さは上手く使えば中衛としてはかなり上位だと俺は思っているがな」
は?あの中途半端な魔法剣士が中衛として上位?
こいつはギルドマスターなんてやっておきながら前線にいないから何も分かってねえのかよ。
「あんたは一緒に戦って無いからそんな事が言えるんだよ。
リックの奴は剣士としては俺やアルティナに劣るし、魔法もミレイやアイーダに劣るんだぞ」
「お前の言っているのは前衛と後衛としてだろ?俺が言ってるのは中衛としてだ」
「はっ、何一つ優秀な物が無いあいつが優秀なわけないだろ」
「何を言っても無駄か…、まあどっちにしてもお前達のランクはDランクこれは決定事項だ。それと一応Dランクだからそれは受けられるが、新人を入れたばかりなんだしまずはもっと下のランクの依頼で様子を見る事を進めるぞ」
「はっ、ブラックベアーなんてもう何回も倒していて楽勝なんだよ。見てろよすぐにCランクに上がってやるから」
こうして俺達のパーティーはDランクになってしまった。
とりあえず今回の依頼ともう何回かCランクの依頼を成功させてさっさとCランクに上がってしまおう。
そう考えてブラックベアーを狩りにいく。
山の中を捜すと丁度良く一匹のブラックベアーがいた。
向こうは俺達に気付いていない。
「うし、あいつを倒すぞ。まずはアイーダは支援魔法を、その後ミレイとレリィーとジュネで遠距離攻撃。
それから俺とミラとジュネで倒すぞ」
おそらく最初の奇襲遠距離攻撃では倒しきれ無いだろうからな。
そして支援魔法を掛けてもらってミレイの風魔法・レリィーの弓矢・ジュネの投げナイフがブラックベアーに当たるのを確認して飛びだす。
ブラックベアーはタフなだけあって怯みこそしたもののまだまだ元気なようだ。
だが怯んだ隙があれば十分だ。
俺がまずはスキルパワースラッシュで切り込む。
パワースラッシュは剣のスキルで大振りになるものの威力は中々高い斬り下ろしだ。
頭を狙ったパワースラッシュだったが避けられて左肩に当てってしまった。
剣が埋まるぐらいまで斬る事が出来たがそこで止まってしまった。
やっぱり硬い…。
ブラックベアーが右腕を振り上げてきた。
剣が食い込んでて避けられない。
だがそこにミラが横に来て大きな盾で受け止めた。
よしナイスだ。そう思ったのだがミラはそのまま俺を巻き込んで吹き飛ばされた。
「ぐはっ、ちゃんと受け止めろよ」
「無茶を言わないでくれ、私の実力ではまともに受け止めるなんて不可能だ。むしろ一撃でもこうして身を守れただけでも褒めて欲しいぐらいだ」
「お前は重戦士のタンクだろ、前に居た仲間は剣で普通に受け止めてたぞ」
「それはその人の技術もステータスも高いから出来るんだ」
確かにアルティナはステータスも高ければ技術も高かったな…。
しかしまさか専門職が受け止める事が出来ない攻撃を普通に受け止めていたとは…。
俺が思っていたよりもアルティナの技術は凄かったのだろう。
…いや待て、リックの野郎も受け止めてたぞ?
まさかあいつまで技術が高いなんて言わないよな?
「二人とも無事なら早く戻ってくれない?いつまでも回避は無理なんだけど…」
声のするほうを見るとジュネが必死な様子でブラックベアーの攻撃を避けていた。
…試してみるか。
ミラの盾を見ると破壊されていてもう役立ちそうも無かった…。
「ミラはそれじゃあもう戦え無いだろ、下がってくれ」
そう言ってブラックベアーの方に走って首を狙って切りつける。
首には当たったがブラックベアーが体を後ろに反らす様にした為に浅くなってしまう。
そしてブラックベアーは反撃だと言わんばかりにまた腕を振り下ろしてきた。
俺はそれを剣で受け止めるが、剣は折れて俺も吹き飛ばされてしまう。
「グハッ。ま…まさかこんな…」
今思えば俺はいつも攻撃を受け止めるなんて事をしていなかった。
いつもアルティナが俺の背中を守って居てくれたから攻撃だけに集中していたんだ。
しかしだとしたらリックはなんなんだ?
近接系ステータスは俺の方が上の筈だ。
それなのに俺は剣を折られて吹き飛ばされて、あいつは受け止めていた…。
まさか防御面では俺よりも技術が優れていたとでも言うのか?
近接戦闘の事でリックに負けているかもしれないと言うのにイラつく。
しかし今は戦闘中だ戻らなくては…、ブラックベアーを見ると合間合間に魔法や矢を当てているからだろう。
かなりボロボロになっていた。
もう少しで倒せるはずだ…。
俺は予備の剣をマジックバッグから取り出して再度ブラックベアーにパワースラッシュで止めを刺そうと走りだす。
スキルを出す瞬間にレリィーの矢がブラックベアーの右目に当たって大きく怯んでいた。
良し!とばかりにもう一度パワースラッシュで頭を狙う。
今度はしっかりと頭に当たりブラックベアーの頭に剣がめり込んだ。
そのままブラックベアーは倒れて絶命する。
「何とか倒せたわね」
近くに居たジュネが話し掛けてきた。
「でもこのまま次に行くのは無理じゃない?」
「…分かってる」
アイーダに回復魔法を掛けてもらった俺達はそのまま町へ帰る事にする。
一匹を倒すのにこれだけギリギリなんだ。
もし他の魔物が戦闘中に入ってきたりしたら…おそらく生き残れたとしても無事ではすまなかっただろう。
俺達は今回の依頼を失敗として終わらせる事にして、ギルドマスターの言っていた通りもっとランクの低い依頼から受ける事にした。
他の皆も無理をして命を失うよりはその方が良いと賛成してくれる。
くそっ!アルティナさえ居てくれたら!
やっぱり俺にはアルティナが必要なんだ…。
リックの奴を追い出すんじゃなくて暗殺しておけば良かった。
そうすればアルティナが出て行く理由にはならなかっただろうし、悲しむアルティナに寄り添ってより関係を進められた筈だ。
そもそもリックの野郎が初めから居なければ…。