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012.呪詛返し

そろそろ宿に帰ろうとしたところで数人の男達が孤児院に乗り込んできた。


「院長はどこだ!」


その声を聞いて念の為に俺とアルティナとティニーが院長と一緒に出て行く。

スピカとアリッサには何かあった時の為に隠れて居てもらう。


「なんですか?」

「いたな。あんたの呪いを解いた奴を出しやがれ!」

「…なんで貴方達が私が呪いに掛かった事と解いた事を知っているのですか?」

「そんな事はどうでもいいんだよ。早くだせや!」


ティニーが前に出ようとするのをアルティナが止めた。

何が目的かは分からないけどティニーは既に俺達の仲間だ。可能な限り助ける。

しばらく言い合いが続いた後外から別の声が聞こえる。


「お前達は孤児院で何をしている!」


声のした方を見ると貴族と思われる男と街の警備隊の服を来た男が数人居た。


「な、何故領主様が…」


どうやら貴族の様な男はここの領主らしい。


「もう一度聞く。お前達は孤児院で何をしている。いやここでは迷惑だな。この者達を捕縛しろ!」

『はっ!』


領主の言葉に警備隊だと思われる人達が男達を捕まえていく。


「まっ、待ってくれ!呪いを解いた奴を連れていかないとリーファン様の命が危ないんだ!」

「リーファン?リーファン・マウコール伯爵の事か?」

「そうだ!」

「どういう事か説明してもらおうか」


男の説明によると、そのリーファン伯爵と言う貴族が院長に呪いを掛けた本人らしい。

なぜ呪いを掛けたのかは分からないが、解呪された事で呪詛返しが発動してしまい、急いで呪いを解呪した者を連れていって解呪してもらわないと命が危険だと言われたのだそうだ。


呪詛返し…トラップや魔物やアイテムによる呪いは解呪すればその場で呪いが消えるか呪いの効果から解放される。

     解放されると言うのは強力な呪いのアイテムの場合解放はされても呪い自体は消えずに誰かが持つとまた呪いを発動する様になる事もある。

     完全に呪いを消すにはそれだけ強力な解呪が必要になると言われている。

     そして人為的な呪いの場合だが、これを解呪すると呪いを掛けた本人に呪いが返り術者に呪いがかかる事を呪詛返しと言う。

     呪詛返しされた呪いは元の呪いよりも強力で、更に解呪する為には元の呪いを解呪したのと同等以上の解呪魔法を使わなくてはいけない。


「はぁ…何故呪いなんか掛けたのか尋問する必要があるな…。院長、もしよければその解呪したという方を紹介してくれないか?」


領主がそう言うと院長の視線がティニーへと向いた。

俺とアルティナは頷き合ってティニーに任せる事にする。

するとティニーは一歩前に出る。


「私が解呪いたしました」

「ほう君がかね。院長、間違いないかな?」

「それが、私は苦しさで意識を向ける余裕がなかったので誰が解呪してくれたかは直接は見ていないのです。

ただ皆から聞いた話ですと彼女で間違い無いはずです」

「なるほど、では君は一緒に来てもらって良いかな?君の身の安全は私が保証する」


領主が歩きだそうとしたので声を掛ける事にする。


「待っていただけますか?彼女は俺達の仲間です。俺達二人も同行させていただけませんか?」

「ふむ…、仲間の身を案じるのは当然だな。よし許可する」

「ありがとうございます。院長、中の二人には事情を説明して先に宿に帰ってくれる様に伝えてくれますか?」

「分かりました」


そして俺達は領主様の案内でマウコール邸にやってきた。

領主様の存在に気付いた門番が屋敷に入ると少しして執事が出てくる。

それから領主様が執事と少し話すと執事に案内されて屋敷へと入っていく。

そしてある部屋に通されると貴族だと思われる男が院長と同じ様に血の付いたベッドで苦しんでいて、その男を回復魔法で治療している僧侶らしき男と、貴族の家族だろうか?奥さんらしき人と男の子と女の子が心配そうにしている。


「さて、リーファン伯爵には訊かないといけない事があるがまずは解呪してからだな…。すまないが頼めるか?」


領主がティニーの顔を見てそう言うと、


「はい。それでは失礼します」


とティニーは返して伯爵の側に言って解呪魔法を発動する。

するとしばらくして伯爵の体に新しい傷が出来る事もなくなった。

それによって伯爵の顔色も良くなり伯爵の家族も喜んだ。

伯爵はすぐに目を覚まして起き上がった。


「助かった…のか」

「大丈夫そうだな。それなら話を聞かせてもらおうか?」

「ハリエル伯爵…」


それから観念したのかリーファン伯爵は経緯を話始めた。

院長を呪ったのはあの孤児院は領主であるハリエル伯爵が支援しているが、孤児の中には訳有りで家を追い出された子達もいて、それをよく思っていない人も多くは無いがいるらしく、そこで呪いが発生し広がって行けばハリエル伯爵を領主から引き摺り下ろして自分が領主になれると思っての事だったらしい。

院長が呪いで亡くなった後はその訳有りの孤児に呪いを掛けて行き、何人かが亡くなった後に糾弾するつもりだったのだとか…。

前々から同じ伯爵でありながら領主であるハリエル伯爵に嫉妬していて、自分が領主になる機会を窺っていたのだそうだ。

そんな時に旅の魔法使いを名乗る物がこの案を提案して呪いの掛け方を教えたらしい。

その魔法使いは『この教会の司祭を見たが、あの司祭ではこの呪いは解けないから安全だ』と言われていたらしい。

そして呪いを掛ける事を見届けると魔法使いは町を出て行ったそうだ。


話を聞き終わるとハリエル伯爵がリーファン伯爵を捕まえて国王に指示を仰ぐから返事あるまでと牢に入れる事になった。

リーファン伯爵の奥さんと子供達はこの事にまったく関わっていなかったらしくてショックを受けていた。

奥さんと子供達はとりあえずハリエル伯爵の監視下に置かれる事になるらしいが、不自由の無い様に配慮するそうだ。

後日俺達や院長にはその後の事を報告するからと泊まっている宿を訊かれて解放される事となった。


ちなみにハリエル伯爵があの場にいた理由は、護衛を付けて町を見回っていたら必死の形相で全力で走る男達を見かけて何かあったのかもしれないと追ってきたのだそうだ。




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