011.呪い
アリッサがパーティに加わった後、今日もダンジョン十回層まで攻略して戻ってくる。
アリッサの魔法のお陰で範囲攻撃等遠距離攻撃の幅も増えたので殲滅力が上がった。
しかもアリッサの魔法の威力はかなり高いのもあって、もう数押しだけの雑魚は楽に攻略する事ができそうだ。
「もう十回層までは楽にいけるし二人も大分立ち回れる様になったからそろそろ次のボス部屋を目指して見るか?」
「そうね。もしくは他に二人パーティーメンバーを捜すかかしら」
「確かに新メンバーを加えたらまた十階層までの確認をするかもしれませんし、今の内にメンバーを揃えてもいいかもしれませんね」
「私は魔法を使えれば良いです」
アリッサの意見は放置するとして、確かに今の内に残りのパーティーメンバーを探すのはありだろう。
しかし…、
「そうは言っても当てのある奴いるか?」
そう、俺とアルティナとスピカはこの街に来たばかりだし、アリッサはパーティーを組んでもらえなかったぐらいだ。
あまり職種に拘るつもりは無いけどそれでも当てが無い。
それに出来るだけ俺の能力の事を考えると口が堅い人が理想的だろう。
バレたら駄目と言うわけでは無いと思うが、今の所は必要以上に広めるつもりも無い。
「確かに当ては無いのよね…」
「私もアリッサさんも特殊な状況でしたしね」
「まあしばらくはダンジョン外の依頼でも受けてお金を貯めながら新しい仲間を捜すか」
「そうね」
食事も終えて宿に戻ろうとギルドを出ると、何かが横から飛び出してきたと思ったら俺の脚にぶつかって来た。
見てみると今にも泣き出しそうな男の子がいた。
「大丈夫か?走って飛び出すと危ないぞ」
「あ、あの…。院長をたす…助けてください」
男の子は俺の脚に掴まってそう必死に訴えかけてきた。
その様子にまずは話を聞いて見る事にすると、どうやらこの子は孤児院の子らしいけどその院長が勝手に傷が出来るよく分からない病気にかかってしまって、今僧侶のお姉さんが回復魔法で治療してるけど治してもまたすぐに傷が出来てしまうのだそうだ。
するとアリッサが、
「それって病気じゃなくて呪いかもしれない」
と何か心当たりがあるようなのでとりあえず孤児院に行ってみる事にした。
男の子の案内で孤児院にある一室に入ると血のついた布団で苦しそうに横になっているおばあさんと、そのおばあさんに回復魔法をかけ続けている短い金髪の女性がいた。
アルティナが女性に声を掛けて回復魔法を掛けるのを変わり、俺達は女性に話を聞く事にした。
念の為に孤児院の子供達には隣の部屋で待っていてもらう。
「みなさんすいません。私は近くの教会で僧侶の修行をしていますティニーといいます。私のMPはかなり減っていたので助かります」
「とりあえず話を聞かせてくれないか?このアリッサが言うには病気じゃなくて呪いかもしれないって事なんだが」
「はい。これは間違いなく呪いです。それは私にも分かったので解呪魔法を試みたのですが…」
「もしかして呪いが予想以上に強力で解呪出来なかった?」
「はい…」
ティニーはアリッサの言葉に俯いて返事をする。
ちなみに俺もアルティナも解呪魔法は使え無い。
解呪魔法は光属性の魔法ではあるのだが、ちゃんとした訓練で習得しなくては覚える事が出来ないのだ。
「強力な呪いを解呪するにはどうしたらいい?」
とアリッサに聞く。
「単純にINTが必要だね。だから高レベルの僧侶じゃないと解呪出来ない呪いがあるんだよね」
なるほど…それなら一応解決出来る可能性はある…が、心から奴隷になる事を望まないと白首輪は付けられない…。
一応ティニーに俺のスキルについて説明する。
すると、
「それで院長を助ける事が出来る可能性があるのでしたら是非お願いします!」
と頭を下げてきたので駄目元で試して見る事にした。
言葉を紡ぐとティニーの首に白首輪が現れた。
ティニーはステータスを確認するとすぐに院長の元に駆け寄って解呪魔法を使い始めた。
院長の顔色が良くなっていき落ち着くと、アルティナが回復魔法を掛けるのを止めたが新しい傷ができる事は無かった。
「ありがとうございます!みなさんのお陰で院長を助ける事が出来ました!」
その後院長先生から話を聞くためにティニーと話をしながら院長が目を覚ますのを待つ事になった。
ドアを開けて外に居た子供達にティニーが「もう大丈夫だからね」と言うと泣いて喜ぶ子も多くいた。
どうやらこの孤児院の院長は子供達に凄く慕われているようだ。
「実は私もこの孤児院の出身で院長先生は私にとって母親も同然の人なんです。
それで私には僧侶の職が与えられたので教会で働きながら訓練してこの孤児院に何かあった時に力になりたいと思っていました。
それなのにいざ院長が呪いにかかると何も出来なくて…、それが悔しくて…院長先生が亡くなってしまうのが怖くて…。
だから私が白首輪奴隷になる事で院長を救えるなら!って思ったんです。
流石に黒首輪奴隷になれと言われたら躊躇してしまったかもしれませんけど…」
だから白首輪を付ける事が出来たのか。
でももう目的も果たしたんだし必要ないよな。
「なるほどな、そう言う事ならもう白首輪は必要ないよな。
それなら奴隷契約解除をしようか」
「あの…その事で相談があるのですが」
「ん?どうした?」
「みなさんは冒険者ですよね?」
「そうだな」
「パーティーメンバーはここにいるみなさんで全員ですか?」
「ああ、残り二人はいま捜しているところだな」
「もしよろしければ私をパーティーに入れていただけませんか?」
「え?そりゃ俺達は僧侶が居れば回復や支援魔法、それにティニーなら解呪も出来るから助かるけど…いいのか?」
「はい。実は冒険者になろうかどうか悩んでいたんです。これもきっと運命だと思いますから」
「…俺は構わないけど皆はどうだ?」
「良いんじゃないかしら?」
「私も構いませんよ」
「私も大丈夫だよ」
「と言う事らしいからよろしく頼む」
「はい、こちらこそこれからよろしくお願いします」
「それでその首輪もそのままで良いのか?」
「ええ、これを付けて居れば皆さんのステータスを上昇させる役にも立てますし、自分の身を守る事にもなります。それに何より今後同じ様な事があった時に少しでも人を助けられる可能性が高くなりますから」
こうしてティニーが俺達のパーティーに加わった。
それから少しの間話をしていると院長先生が目を覚ます。
院長から呪いがかかった理由や誰かに恨まれている覚えが無いか聞くが心当たりは無いらしい。
ちなみに院長の名前はフォンと言うらしい。
とりあえず俺達の泊まっている宿を院長とティニーに伝えて何かあったらいつでも声を掛けてくれる様に言っておく。