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メカニズムドールの一分間  作者: ありづき
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真意発言〜夕方〜


 気が付くと、俺はドールの顔を真正面に見つめながらこの状況を把握しようとしていた。

「何この状況」

「大人気なく、お前が泣き疲れて眠りこけたんでそのドールに子守を任せただけだ」

「私は、まだ主人を確定できておりません」

 ドールは、俺の頭を撫でて胸を優しく叩きながら、淡々と言う。

「はぁ、俺だ。螺旋巻(ねじまき)絡繰(からくり)

 二度目だけど、

「よろしくな」

 俺が、ドールに自己紹介をすると、

「はい、よろしくお願いいたします」

 俺の頬に左手を添えて、俺の目を見つめながらドールが、どこか柔らかな口調でそう言った。


 それから20分ほどが経った、夕方5時10分頃。

 俺は、起きてから鉄心の奥さんが軽食作ってくれたので、それを食ってから鉄心と今後このドールについてのことを話し合うことにした。

「で、お前はどうしたいんだ。そのドールのこと」

「俺は、こいつにとって一番いい方法を見つけたい」

「それは、逃げだぜ。坊主」

「解っている。だが、それが一番の解決策ってこともあるだろ?」

「ああ。逃げろ」

「は?おい、それは矛盾にもほどがあるだろ」

「まあ聞け。今ここには、回収命令の出されているドールを探してるっていう輩がいる」

 その輩は、俺が眠っている八時間くらいの間に来て、鉄心が「知らん」と答えるや否や鍛冶屋中を捜索させろと言ってきたのだという。

 そうは言うが、どう逃げろって言うのか。


「屋上まで行って、屋根伝いに走れ」


 鉄心の言うままに、俺はドールの手を引いて走った。屋上に出る前に俺は、一応ドールの発条をまた1440回巻いた。その際、俺は疎か、鉄心までもが知らなかったのだが、起動させたドールの発条を追加で回すとき、そのドールは喘ぐ。苦しいという感覚なのか、性的な気持ちよさに苛まれている感覚なのかは本人に聞かなければ解らないが、そのとき俺と鉄心は酷く動転した。


「はぁはぁ……。ああ?どっちだ」

「居た!」

「こっちです」

 国のドールのことを追っている輩の一人であろう男が、こちらを指指し叫ぶと同時に、ドールが俺の手を強く握り走る。

「ちょっ!なんだ!」

「あのまま考えていては、螺旋巻様の成したいことが出来ません」

 ドールにも考えるよりも先に行動すると言うことがあるんだな……。

 そう思ったとき俺は、ドールに強く引かれ乱れていた足取りを整える。そして、二人三脚の様に呼吸までも合わせる。

「待て!そこの男女ぉおおおおおおおおおおおおおお!」

 おい、つっこみ方がいまいちわからんぞ。

 てか、男女?

「んなもん、どこにでも行んだろうが!この時間ッ!」

「そして、待てと言われて待つ逃亡者は愚かです」

 そう言う、ユーモア的なことはプログラミングされとんのかい!

「チッ!意外と敵の足速ぇえな」

 撃つしかないか。

 と言うのも、金叩鍛冶屋から逃げる際に、鉄心から鉄心の造ったオリジナルの武器を、何個か貸してもらっていた。正確には、三個だけど……。

「これ使うか」

 と言いながら俺は、装備している鉄心の造った自動装填式の銃を取り出し、ロードして走りながら狙いを定めてファイア。

 ズ。いや、バキュゥゥゥンと弾丸が撃ち出されたと同時に、その銃についている歯車たちが連動して弾が充填される。

 いつから俺は、バトルものの主人公になったんだろう?

「ヌッ!」

 そう言って追っ手が、俺が放った弾丸が当たった左腕部を肩ごと落とし、左腕部を投げ捨てる。投げられた手からは、小さな歯車のような部品が舞う。

 いやいや、まだ賑わってる街に、自分の腕を投げ捨てるなよ……。と言うか、ヌッて!何?ヌッて。

「おい、あいつドールだったのかよ」

「敵は、ドールなのですか?」

「うん。みたいだな」

「そうですか……」

「あぁ?」

 何かを考えるようにドールが言う。

「螺旋巻様、武器はまだ持っていますか?」

「ああ。腰にもう一個銃と、背中に剣みたいなやつがある」

「では、剣の方を貸していただけますか」

「ああ。取ってくれ」

 その掛け合いの後、ドールは俺が背負っている剣を取り、走ってきた方向にに走り出す。


「っ!」


 ドールが、一番近くにいる左腕を捨てた男のすぐ近くに着く。するとドールは、歯車の仕掛けのついた剣を仕掛けを動かして男性形のドールの腰の右側から左肩にかけて斬り上げる。仕掛けられた歯車は、物凄い勢いで回り、男性形のドールの身体を巻き込む。

 よく引っかからないものだ。

「ぐぅうぁああああああああああああああああああああああ……」

 斬られてバラバラになった男性形のドールが、三角屋根のために滑り落ちていく。

「本当に、夕方の街中にバラバラのドールが落ちるって中々なもんだな」

「後一人です」

「あいつもドールなのか?」

「解りません」

 俺たちは、後一人も打ち負かせばいいと判断した。

 そのため、俺たちは向かってくる相手を睨みながら身構える。

「そのドールは、我々が作った失敗作だ。即刻、返していただく」

 追っ手の男が、俺たちが睨みつけているのを確認すると、段々とスピードダウンさせて言う。

 だが俺は、俺の返さないための言い分は、お前たちのことなど一発で論破できるわ!


「ああ?このドールは、お前らが作った失敗作だ?ふざけんな。こいつは、俺の所有物だ!お前らにとっては回収すべき失敗作だろうとなぁ、俺にとっては、唯一無二の最ッ高の掘り出し物なんだよ!!」


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― 新着の感想 ―
[一言] 大変興味深く拝読させていただきました。 テンションが高く、楽しんで書かれているのが伝わってくるため、当方も楽しく読ませていただきました。登場人物も皆どこか可愛らしくて、とても良いですね。 …
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