最愛〜夢望〜
あれから数時間が経ち、俺は目を覚ました。
ほんっとに、メルにはろくでもないところしか見せてねぇな……。
不甲斐ない気持ちと、恥ずかしい気持ちが、今になってこみ上げてきた。
「あぁーもう本当に嫌になるなぁ!」
今のはずかしさを全力で台詞にし、大声をあげる。
「だぁーいぶ、元気になったみたいだね」
「あぁ、おかげさまでな」
俺が大声を上げた瞬間、俺のいる月波の研究所の中にある張りぼて壁の休憩室の扉で、月波がどこか安心した表情で声を掛けてきた。
「あ、そうだ月波、ひとつメルのことで聞きたいことがある」
「なにかな?」
「このDead月波シリーズのとかなんとかいうドールたちは、夢を見るか?」
俺がしたこの質問には、二つほど意味がある。
一つは、人間と同じように生きているのか?という意味。
そして二つ目は、欲があるのか?という意味。
この質問をしようと考えたとき、俺は何故か月波ならば俺のした質問の意味をちゃんと受け取ってもらえるのではないかと思った。
「うん、みるよ。家の子たちはね」
「――そうか」
月波からその回答を聞いて、俺は自分自身の中に嬉しいような、何かよく解らないような不思議な感情があった。
それは、自分が嫌っていた自分自身の矛盾とは何かが違っていて、それがさらに不思議だった。
「……なあメル、俺はおまえの所有者としてずっと居ていいのかな?……おまえは嫌じゃないか?……俺はさぁ、おまえが好きだ。好きだからこそ、おまえが望むようにしてやりたい。おまえは知らないと思うが、おまえは俺を救ってくれてるんだぞ?……だから、おまえが苦しむことがあれば、俺が必ずおまえを救ってやる。なあメル、そのときにおまえは、救われてくれるかな?」
白いシーツのベッドに寝ている俺の腹を枕にして眠るメルの頭を撫でながら、俺はメルへと問いかける。
当然のことながら、小声だったということもあり、メルはむにゃむにゃと寝息をたてるだけ。
そんなメルが、俺にとってはなによりも愛おしい。