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メカニズムドールの一分間  作者: ありづき
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真相判明の端緒


「メル、無茶はするな。お前が壊れたら、この旅の意味がなくなる」

「はい」

「まあ、最良は勝つことだ。お前がやると言った以上、俺には応援することしかできん。頑張れ」

「はい。激励のお言葉感謝します」


 私の相手は、ガタイのいい男性型ドールで名をグラディアスと言うらしい。武器は、ミニガン。

 それに対して私の武器は、剣。

 端から見れば私が不利に見えるだろう。

 でも、今私には不思議にも確信できるほどの勝機がある。


 私は負けない。螺旋巻(ねじまき)様のため、負けられない。

 いいえ、私の大好きな螺旋巻様の笑顔が見たいから、頭をポンとしてほめて欲しいから。

 私は勝ちたい。

 

「“始め!”」

  

 男の声のアナウンスが、戦闘の開始を告げる。

 その瞬間、グラディアスのミニガンが火を噴いた。

 その激しい銃撃を私は、円形の闘技場を左に渦巻き状に走り、回避しながら少しずつグラディアスとの間を詰めていく。

 

「逃げるだけじゃぁいずれ負けるぜぇ?お嬢ちゃぁあん!」


 体を反らせ私の動きを追いながらミニガンを振り回し、私へ挑発をする。

 私のことをどう言おうと私はどうでもいい。

 ですが、


「ペットは飼い主に似るって言うが、それって本当なのかねぇ!」


 螺旋巻様の罵倒だけは、許さない。

 私は、剣を振るうにはまだ遠い位置から一気に間合いを詰め、右斜め下グラディアスの右の腰から左肩に向けて剣を振り上げようとした。

 その瞬間。


 ドゴォォォオオオオォンン!


 と、轟音が闘技場に響き渡り、私の背後スレスレを何かがもの凄いスピードで通り過ぎ戦闘許諾エリアを囲む高い壁に大きなクレーターを作った。

 その場にいるすべての人が唖然とした数秒の間に、うっすらと砂煙が晴れ、私の背後スレスレを通ったものの正体が明らかになる。

 それは、ドール。

 私たちがこの闘技場に入ったときに勝者となっていた男性型のドール、フレグスであった。


「キャハハハハハハ。ひっさしぶりぃ〜一号機(いちごうき)ちゃ〜ん!」


 フレグスが飛んできた先の方から、女の子の甲高く楽しげな笑い声が聞こえた。

 その言葉は、まるで私に話しかけているようで。そんなことよりも、私が驚いたのはその声の主の容姿だ。

 150cm後半ほどの身体にショートカットのふわっとした髪型。

 容姿は妥当なのだが、彼女の背から生えた刺の付いた大きな鎚。これが私を驚嘆させた。

 さらに私は、彼女に見覚えがある気がした。

 嘗て仲間だったような。でも私に嘗てと言えるほどの機動歴はない。

 彼女は、私に「ひっさしぶりぃ〜一号機ちゃ〜ん!」とやはりいつかに会っているような発言をしている。


 私には、覚えていないことばかりだ。

 螺旋巻様の言った「お前は、俺と一緒にいた昨日を忘れたのか?」という言葉。

 彼女の言った「ひっさしぶりぃ〜一号機ちゃ〜ん!」という言葉。

 私には私の知らない私の記憶がある。

 それが何なのか……。


 私は、それらが知りたい。


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