変われること
アルセウヌ鍛冶屋から出た俺たちは、その後商店街でメルの服を見にブティックや小腹が空いたから露店に寄って買い食いしたり、ここヘンメリッツの観光スポット時計台の鐘を改めて見に行ったりと首都ヘンメリッツ観光を満喫した。
現在夕方五時前。
観光も終え、取っておいた宿に戻った。
「ぁあぁああ〜こんなに歩いたのはいつぞやの迷子になった猫5匹全部探し出すという依頼が来たとき以来だな。ちょうど鷺士が風邪引いて鉄心とこに厄介になってたときだったから5匹を一人で全員ってのは、大変だった……」
うん、本当に愛想が悪い……。
きれいな景色を見ても思い出話をしても少し笑みを浮かべているように見えるだけで。
でも、これが心地よかったりもする。
メルの欠点の数を自分の欠点の数と比較して、自信にしている。
そんな自分を俺は否定している。嫌悪している。そうすることで、俺は自身の麻酔にしている。
解っているんだ。自分で自分が逃げていることを解ってる。理解して理解して、それでも逃げてしまうんだ。
変われるのだろうか。俺は……。
「……大丈夫です。螺旋巻様は、大丈夫です」
「は?」
「私は、螺旋巻様の元に来て何もできていません。それは、螺旋巻様が自身のことをできているからと認識しています。なので、螺旋巻様がそんな顔をする必要は皆無だと思います」
「……何を、何をそんな知った口を……お前に何が解る!俺が俺のことをできている?ふざけるな。せいぜい数日のつき合いで、俺のことを語るな!」
混乱していた。急なメルの発言に、驚き、喜び、謎の怒りが沸き立ってきた。
くだらない。
自分勝手なことで悩んで、間違った認識のされ方をされたからって怒って……。
頼らなかったんだ、そんな認識をされるのは当たり前だ。
「……すまない。ちょっと疲れてるみたいだ。少し寝るわ」
「はい。……おやすみなさいませ」