終わりから見るものは
...やがて3日後が経ち、受験という戦争を終えた少年少女達は次の進路を考える。高校でどんなことをしたいか、どの私立高校に行けばいいか、これから何をすれば良いのか。そんなことが少年少女の脳裏を駆け回る。とてつもない雨のように打ちひしがれ、滝の流れのようにしゃあしゃあと。
月...が見えた。窓越しに映る四分の三に分けた月がそこにはある。それだけでは黄色くまばゆい。私がいなければどんなに輝いていただろうに。一瞬顔を背け違うことを考えようとした。今しなくてはいけないことをするのには今考える必要がある。だが、したくでも行動にはどうしても移せないのだ。恐らく...焦った状態というのはこういうことを指すのだろう。内なる脳に1ビット程度の圧縮が私の筋肉を硬直させる。神経が楽になりたいと伝えているのだ。でも無理なんだよ、と心の声を出したところで物質の乖離が明確にあるので伝わらない。伝わるはずがない。当たり前だ。
家、およそ十畳にあたる居間で一人、熊の皮の硬さのソファーをいっぱいに使いながら横たわり、思いに耽けていた。頭の後ろに腕を組み、左右ご本の指を交差させて頭を支えている。彼の表情は光の裏に纏っている星のない星空のようだった。星空を邪魔するのは雲ではなく、私達が作る光源が見えなくしている通りに人間が彼の道を邪魔している。人は形而上的なものだと感じている。だが、これは本質的なものではない。一体何が、彼に。
「...どっちの私立行けばいいんだろ。」彼はそっと置くようにつぶやく。公立に落ちた彼は残り2つ選択があった。Aの高校かBの高校か。高校に行く行かないという選択ではなかったらしい。彼が思うに、どちらも魅力があるわけでもないわけでもない、ということに頭を抱えていたようだ。走るわけでもなく、歩いているわけでもない彼の人生はまさに転機とも言えよう。書き手は、彼は魅力を探し求めているから迷っているんだ。と解釈している。
「明日にしよう。」眠れないくらいの疲労が僕には溜まっていたんだと思う。すーっとした、夢を見たんだ。視界の外縁がやけに白光に似ていたし、半分自覚していたと思ってた。自分、僕の知らない場所にいて、けど危険な場所ではなかった。教室に近いものにいて、椅子と机が僕が思うより多くあって、その場所の外を見るために窓の近くに行くと外にいて、気づいたら空を見ていたんだ。他の建物を見たかった感情はどっかに行って、雲がおおくあるのが見えたけどその間に見える青空と重なり合って、もうとてもきれいだった。その瞬間に僕がいるんだってのもわかってさ。あれ、僕は何に悩んでいたんだろうなって気持ちになったんだ。こんな感じでもう悩みが消えちゃうのって感じでしょ。ここに文字、言葉?で表すよりもすごいことが読み取れたんだと思う。
彼が目を覚めた時には別人だった。口角の位置が2.3ミリ上がっていて、目の白い割合がすこし増えている気がしたと彼の母親は言っていたそうだ。どこで理由を決めたのかもわからないが、彼はいきなり「A高校にいく!」と言ったそうだ。やけに子供らしい声で、朝の小鳥の鳴き声とさほど変わっていなかった。人は何かに縛られて生きているようだが、どうやらその何かを解く手段は私達で持っているらしい。そして、気づいても、気づかなくとも前に進んでいるのが人間だと皆、認識をしている。川の流れは穏やかで、水らはそれそれと小石たちを飛び越える。小石も負けずとからんからんと。