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第7話 二人目の嫁

 なんだかんだと一年が過ぎて二年生。


 ニーナが身籠り実家に戻って女の子を出産した。

 俺とニーナの初めての子供だ。

 狂喜乱舞して祝いに祝った。

 俺は学校があるのでニーナと娘のナージュを両親に預けて授業が終わればさっさと転移で帰って子育てに加わる。



「最近さ、すぐ帰っちゃうけど何してるの?」

「ん? 子育てだけど?」

「え、っと、弟かな妹かな?」

「いや、俺の実の娘だけど?」


「……本当?」


「本当だよ?」


 アマテの顔がみるみるうちに青ざめて行く。


「あ、相手は誰かな?」

「ニーナ、俺の姉だけど……?」

「お、お姉さんと結婚してたんだ……へぇー……」

「アマテ大丈夫か? なんか苦しそうだけど?」


 肩に触れようした手を思いっきり叩かれてしまった。


「ご、ごめん! 大丈夫! 大丈夫だから!」


 どう見ても大丈夫じゃないので自分で禁術指定にした読心魔法を使う。


(こんなのって無いよ! ずるい! ずるいっ! ずるいよっ! まだ告白もしてないのにっ! まだ手も繋いだ事も無いのにっ! 子供が居るなんておかしいよ! お姉さんと結婚してるなんて卑怯だよっ! ずるい! ずるい! ずるい! いやだ、いやだ、イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ)


「ごめんちょっと来て」


「え?」


 アマテの手を取り、転移で実家へと戻る。


「あら、こんな時間にどうしたの? その子は?」

「姉さん、アマテと結婚させてください!」

「え、えええええええ!? ジュース君!? 何を言って!?」

「そう、アマテちゃんって言ったっけ? 顔をよく見せて?」

「え、あ、はい」


 ニーナがアマテの顔に両手を添えて何かを確認する様にまじまじと見つめる。


「良い子だね。ジュースには勿体ないかもだけど、よろしくお願いしますね?」

「は、はい! よろしくお願いされました!」


 ふぅ……良かった。ニーナが許してくれなかったら無限土下座するところだったぜ。


「ジュース、ちょっとこっちに来な」

「ひゃい!?」


 ドスを効かせた声色の姉に呼び出されて、顔面にグーパンチひねり込みを貰い、ぶっ飛ばされました。

 それからうちの両親と娘のナージュにアマテを紹介して、俺はボコボコの血祭りにあげられましたとさ。

 いくら回復出来るからってやり過ぎです。死んでしまいます。

 自分がクズなのは十分承知しております。


「それで、そちらの両親はなんと?」

「まだなにも……というか私も今聞かされたばかりで……」


 家族総出で白い目で見られてる。

 俺は視線を逸らす。


「いや、アマテに俺が結婚していて子供も居ることを話したら青ざめたり苦しみだしたからおかしいなぁと思って読心術使ったら俺の事が好きだったみたいで、自殺とかしそうな勢いで狂い出したから急いでこっちに連れ出して来た感じです。はい」


「ジュース君、私の心覗いたの……?」

「ごめん、様子がおかしかったからつい……」

「どこまで見たのかな?」

「ずるいずるいとかイヤダイヤダとか?」

「は、恥ずかしいいいいい! もう見ないでね!」


 顔を両手で覆って耳まで真っ赤になって恥ずかしがるアマテはすごく可愛い。


「それで、ジュースはこの子の事どう思ってるの?」

「心のオアシスかな」


 ドヤ顔で言ってやったぜ!


「バカな息子に育ててしまって本当に申し訳ない」

「いえいえ、その、すごく嬉しいです!」

「二人の気持ちは分かったが、アマテさんの両親には何て言えばいいかねぇ……?」

「あ、大丈夫です。私が言えば全部許してくれるので」


 貴族ってもっとお堅いイメージなのに娘を甘やかし過ぎてる感じが今の一言だけで窺い知れる。


「と、とりあえず挨拶だけでもさせてもらえるかな?」

「えっと、はい、じゃあ今からで良いですか?」

「い、今かい? それは別に構わないけど」

「じゃあ、ジュース君、私の家に転移してもらえる?」

「りょ、了解です!」


 という事でアマテの家へ一家揃って移動した。


「爺や! パパとママ呼んできて!」

「畏まりました。お嬢様」


 シュババっと俺でなきゃ見逃しちゃう速さで爺やと呼ばれた執事さんがどこかへと消えて行った。

 魔力は感じられなかったので身体能力だけであの領域に達せられるのか……。すげぇ。


 メイドさんに応接室へ通され数分後。


「お待たせしました。いや~アマテが友達を連れて来るなんて、こんなに嬉しい日はアマテが生まれた日振りかな? ハッハッハッ」

「アマテの母です。アマテがいつもお世話になってます〜」


「パパ、ママ、私、ここに居るジュース君と結婚します!」


 ピシッとこの場の空気が凍った音が聞こえた気がした。


「あ、あれ、急に難聴が、アー、アー!」

「ウフフ、小鳥さんは今日もお庭で日向ぼっこしているのかしら?」


 パパさんは耳に指を突っ込んで奇声を上げ、ママさんは現実逃避しだした。


「ジュース君と結婚するから! 結婚式の準備して!」


 アマテのご両親、ダラダラと冷や汗を頭から垂れ流して、まるで滝修行しているみたいだ。


「……すぞ」

「ええ、そうね、すぐにでも……しましょう」


 何か物騒な言葉が聞こえた気がしたが気のせいかな? 怖いな。


「パパ、ママ、私、本気だから」


 アマテのこんな真剣な表情、初めて見たかも。


「アマテちゃん……」

「アマテ……」


 うちのパパとママと姉兼妻はアマテが貴族の娘だとは思っていなかったのかフリーズし続け、娘のナージュはすやすやと幸せそうに眠り続けている。


「はぁ……分かったよ。ジュース君と言ったかな? 娘を頼むよ。本当に頼むよ!? 不幸にしたらぶっ殺すぞ!?」

「ワガママな娘ですがよろしくお願いしますね! 本当によろしくお願いしますね!? よろしく出来なかったらぶっ殺すわよ!?」


「はい! 全身全霊をもってアマテさんを必ず幸せにすると誓います!」


 物騒なご両親だが娘の事を心の底から愛している事が伝わって来てなんか嬉しい。


「それでその、そちらの方々はジュース君のご家族かな?」


「ひゃい! ジュースの母でございまする!」

「ち、ちちちちち父でござる!」

「ジュースの姉兼妻のニーナです! こっちは娘のナージュです! よろしくお願いします!」


 ガッチガチやないかーい!

 言葉もおかしくなってるしリラックス魔法掛けとくか?


「ハッハッハッ、ご家族総出でご挨拶とは……とは? えっと最後の方、お姉さんの話がちょっとよく分からなかったんですが?」


「ジュースの姉でジュースの妻でもあります! ナージュは先月産まれたばかりのジュースと私の実の娘です! よろしくお願いします!」


 うわっ!? アマテのご両親、目がぐるんと回転して白目になっちゃった!

 そのまま背もたれに寄りかかって気絶したのか?

 回復魔法を使うべきかどうか……いや、使おう。ついでにリラックスも。


「「ハッ!?」」

「パパ、ママ、現実を受け入れて」

「あ、あぁ、分かった。分かったからしばらく待ってくれ。頭がどうにかなりそうだ」

「ママは、ママは、どうすれば良いか分からないわ……」


「いいから結婚式の準備をして!」


「「は、はい!」」


 押しに弱いご両親でした。

 ちなみにパパさんの名前はグレイスでママさんの名前がヘルマという。

 たぶん今後本名で呼ぶ事は無いと思う。

 お義父さん、お義母さん呼びになる。



 貴族の結婚式はそれはそれは大変豪華な仕上がりで常に胃が痛くなる思いでした。王族も来ていたのでアマテの家って結構ヤバイ。貴族の知識なんてこれっぽっちも無いのでとりあえずヤバイ!うちの家系がいつの間にか男爵家になっててヤバイ!ジュース・デミ・アイシルとかいう名前が増えててヤバイ!とにかくヤバイ!


 初夜。

 と言っても学生の身分なので一緒のベッドで寝るだけである。子供が出来ると色々マズイ。


「キスしよ?」

「チュッ」


「もっとくっ付いて?」

「ギュー」


「セック「おやすみスリープ」zzZ」


 翌日両手でほっぺをつねられました。

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