表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こじらせ主人公の異世界生活  作者: あいうえお
8/10

進む

「は?」


「だから私と付き合いなさいと言っているの。」


それは分かったけどいくら何でも唐突すぎないか。


「だから・・・何で急に?」


「私じゃ嫌なの?」


そういってセリアは上目遣いで胸を強調する。


「嫌っていうよりかは唐突すぎない?」


あれか。

噂の一目惚れってやつか。


「なるほどね。ならこれでどう?」


そう言ってセリアは金貨をぶちまける。


「これはどういう意味かな?」


僕はさっき胸を強調してきたときよりも金貨に釘付けになる。


「そのままの意味よ。私と付き合ってくれたらそれをあげる。」


「なるほどね。」


「交渉成立ね。」


せっせと金貨を拾っている僕を見てセリアが満足する。


「でも何で僕なの?セリアならいくらでも寄ってくるでしょ。」


「そうね。虫が寄ってくるね。」


「なるほど。僕はその虫よけって訳ね。」


「ええ。話が早くて助かるわ。虫よけさん。」


一枚一枚丁寧に金貨を拾っている僕をクレアは嘲笑う。


「使用人から習ったわ。男にはまずは色仕掛け。それが聞かなければ財だと。」


「なるほどね。素晴らしい使用人がいるようで。」


「えぇ。羨ましいでしょう。」


「そうだね。」


結構あるな。

二桁はいきそうだ。


「じゃ、明日の朝からはよろしくね。」


そう言ってセリアは去っていった。


「あ!ここにもあった。」


僕はそんなことは知らずに金貨探しに夢中になっていた。


「遅かったわね。」


あの後ずっと探し続けてもうなさそうだから帰ってきた。


「心配した?」


「全然。」


「左様で。」


「晩御飯は出来てるから。」


「ありがとう。」


僕はアイシャが作ってくれた料理を食べる。


そのまま彼女との会話はそれっきり。


とりあえずやることがないので僕は寝た。




――――――――――――――――――――――




朝になった。

アイシャが適当に起きろと言い、朝食を取って寮を出る。

昨日と全く同じ光景。


でも今日は隣にセリアが付いてきた。

しかも腕を組んできて。


「ねぇ。流石に行動が早すぎない?」


確かに付き合えと言われたが教室だけだと思っていた。


「虫は登校中にも寄ってくるのよ。むしろ登校中が多いわね。」


なるほどね。

さっきからセリアの周囲に隠れている男どもの視線が痛い。

多分夜道に1人で歩いたら殺されるんだろうなぁ。


まあ彼女にとってそれはどうでもいいんだろうけどさ。


「お金貰っておいてこんなこと言うのは何だけどさ。僕じゃなくていいよね。」


「何言ってるの。馬鹿なの?平民のあなたを置くことで気づく人は演技と気づいてくれるから気持ちが楽だし。」


「楽だし?」


「何より恋愛に興味ないでしょ。私に邪な感情沸かないでしょ。」


確かに。

それはごもっともですね。


「あ!おはようテリー!」


そう言って固まるクレア。


「おはよう。クレア。どうしたの?」


するとクレアがこっちにちょこちょこと歩いてきて袖をクイッと引っ張ってきた。


「ねぇ。その方は誰ですか。」


いつもとは違う声色に僕は驚く。

その声は身の毛がよだつほどに冷えていた。

急に頭の回転が止まり何も考えられなくなるほどに。


「これはこれは。おはようございますクレア様。」


さっきのクレアの声のせいで固まっていた思考は、セリアの声のおかげで動き始める。


「えぇ。おはようございます。セリア王女。」


「あら私の名前をご存じで。」


「それはもちろん。私の友人が教えてくれたので。」


いいなぁ。

クレア友達出来たんだ。


僕はこの2人の会話をぽけーっと見ていた。


「それはそれは。良い友人を得ましたね。」


「本当に。それでテリーとはどういう関係なの?」


答えの返答次第でセリアに攻撃しそうな雰囲気だ。


これは危ないな。

危険があれば動かないと。


「彼は私の恋人ですの。」


その言葉を聞いたクレアは僕が護身用にあげた小刀を抜こうとする。


「落ち着いてクレア。」


その抜こうとしたヒジを押さえる。

それだけで彼女の動きは止まる。


「・・・そろそろ授業が始まりますわ。クレア様も遅れぬように。」


そうセリアが僕の腕を掴んだまますたすた歩いていく。


クレアのほうを見るとその場に動かず佇んでいた。



――――――――――――――――――――――




その日も昨日と一緒で座学をやり、午後は剣術。


クレアは一応授業に参加していたが気力がなさそうに思えた。

心配で声をかけたかったが、それをセリアが阻止するように僕に話題を振る。


そのまま今日一日が終わり、セリアと一緒に帰っていく。


「ねぇ。虫よけさん。」


「何ですかお嬢様。」


人までは甘ったるい声を出して人通りが少なくなったらこれだ。


「朝あのエルフの剣から私を助けてくれたでしょう。」


「そうだね。」


「私あの動きに反応できなかったわ。あのままじゃ間違いなく切られていたわね。」


ちなみにセリアはこの学園でもトップの剣技を持つ。


「それは大袈裟なんじゃない?」


そんな彼女があれくらいの動きを見切れないはずがない。


「大袈裟なんかじゃないわ。」


その声は僕を見下げている声じゃなかった。

何か、不思議なものを見つけたような声。


「あなた達っていったい何者なの。」


彼女は足を止めこちらを真剣に見つめてくる。


「え~と。数日前に王都に来たばっかの旅人。」


ジャラッ…


「もう一度問うわ。あなた達って何者なの。」


そう言って彼女は昨日みたいに金貨をぶちまける。


普通に渡すって選択肢はないのかな。


「さっきと同じ答えだよ。旅人。それ以上は出てこないよ。」


金貨を拾いながら質問に答える。


「—―そ。ならいいわ。帰るわね。お疲れ様。」


「うん。お疲れ様。」


僕は下を向いて金貨を拾いながら答える。


「助けてくれてありがとね。」


ありがとうと彼女の口から出たことにびっくりして前を見る。

しかしその姿はなかった。


「ただいま。」


「あらおかえりなさい。」


僕は寝室に直行してもらった金貨を財布に入れに行く。


「そういえば王女様とお付き合いされたんですってね。」


そう言っていつものように雑誌を読みながらアイシャが口を開く。


「何で知っているの?」


アイシャに一言も伝えた覚えはない。


「そりゃこんな大事件。耳に挟むわよ。」


アイシャの馬鹿にしたような目に慣れている自分がいる。


「大事件?」


「そう。大事件。」


「これってそんなに重大なの?」


「この重大さを理解していないって言うの?」


このアイシャの冷たい目にも慣れている。

むしろ落ち着くのは僕が病気なのか。


「この国の王女が、どこの出かも知らない馬の骨と交際しているのよ。」


「まぁ。虫よけの関係だしね。」


本当にお付き合いしているわけじゃないから大丈夫でしょ。


「あら。今の話を詳しく聞かせてくれるかしら。」


あ。

これって人に言ってはいけないんだっけ。


アイシャの顔を見る。


雑誌を読んでいる。

彼女は人に言いふらす人には見えない。


「一応他の人には言って欲しくないんだけど。」


僕はそう前置きをして話していく。




――――――――――――――――――――――




「なるほどね。貴方いいように使われているわね。」


「うるさい。」


でも真実なのでそれ以上は言えないけど。


「理由を聞いて安心したわ。本気で交際しているなら国の為に貴方を刺さなければと思っていたわ。」


それは怖すぎない?


冗談よ。


そういう彼女の顔は一切笑っていなかった。


それから夕食の支度をしてくれた。

いつも通り美味しい夕食だった。


後は暇なので昨日と同じように魔力トレーニングをして寝た。


次の日。


アイシャに起こされ朝食を取る。

そして着替えて登校する。


昨日はこの辺りでセリアがいたよなと思って待ってみたが一向に来ない。

先に行ったのかと思って登校した。


だがしかし。

教室にセリアはいなかった。


後クレアもいなかった。


今日も午前中は座学、午後は剣術の授業だ。


クレアとセリアは両方の授業が未出席だった。


クラスメイトの噂では誘拐されたとの事。


二人のことを心配しながら僕は一人で剣を振っていた。

そんな僕を見かけた教官が練習相手になってくれる。


いい人だ。




「ただいま。」


「お帰りなさい。」


剣術の授業の後やることがないので寮に戻る。


「ねぇ。聞いた?」


「何が。」


話の続きが分かるはずない。


「貴方の恋人とクレア様が誘拐された・・・って話。」


「それクラスの噂になってたね。」


「そう。やっぱり。」


僕は着替える。


えーっと。

後は財布か。


「特に驚かないの?」


「そりゃね。平民の僕がその話を聞いて何かできる訳がないじゃん。」


「それもそうね。」


貴方ってつまらないうえに薄情な人間ね。


アイシャは静かにそう言った。


「じゃ、少し遊びに行ってくるよ。晩御飯はいらない。」


「へぇ。友人でも出来たの。」


「うん。剣術を教えてくれる教官と仲良くなったよ。」


「意外な友人ね。行ってらっしゃい。」


「うん。行ってきます。」


そう言って僕は寮を出た。












評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ