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こじらせ主人公の異世界生活  作者: あいうえお
7/10

学園

「朝よ。起きて。」


そんな感情のないアイシャの声がする。

メイドとしてのやる気がないのだろうか。

俺はとっくに起きているのに。

まぁ寝室に入ってこないのだから俺が起きているのか分からないわな。


「起きてるよ。」


彼女がいくら仕事だからと言ってもこれくらいで怒るのは気が引ける。


「あっそ。なら朝食を作るからそれまで寝てていいわよ。やっぱウロチョロされると迷惑だから寝てなさい。」


ならなぜ起こした?

そんな疑問を抱えつつ、分かったと言って寝室で静かに過ごす。

昨日は早いうちに寝たから眠気はちっともない。

やること長いのはそれはそれで暇なので服でも着替える。

ちなみに寝間着は寮で用意してくれている。


僕が持っている服は一着だけでいかにもザ・平民って感じだ。


「できたわよ。さっさと食べなさい。」


そう言われて出されたのは簡素なものでスクランブルエッグとベーコンとパンだ。

後は軽いサラダも付いていた。


朝はこれくらい軽いものがいいよな。

クレアと一緒の時は夜安い肉を買いだめして朝もそれを食べるという重い生活していたからなぁ。

クレアとの生活を軽く懐かしみながら朝食を食べ終えた。


「ねぇ。貴方その服装で行くつもり?」


「そうだけど。」


「ザ・平民って感じの服。」


「その通りだから何も問題ない。」


「嫌だわ。平民のお世話をするメイドって。」


「嫌なら別に付いてこなくてもいいよ。最初は理事長の部屋に行くんでしょ?僕道覚えているし。」


彼女にもメイドとしてのプライドがあるのだろう。

それを壊してまでも付いてきてほしくはない。


「そう言う訳にはいかないの。貴方にメイドを付けるって言ったのはソニア様の言葉でしょう?なのに誰もメイドを付けずに行ったら怒られるのは目に見えてるんだもの。」


ソニアって確か理事長の事だよな。

まあ確かにそれは怒られそうだな。


「分かった。なら案内お願いしていい?」


「言うまでもなくやるわよ。それが私の仕事なんだから。」


やっぱ平民って馬鹿よね・・・。


そんなことを言う彼女の表情は悲しく見えた。


僕らは無言のまま理事長の部屋に案内される。


「失礼します。」


そう言って中に入るとクレアが居た。


「あ!テリー!いやぁ。寮っていいもんだね!」


昨日とは打って変るクレアに少し安心感を覚える。


「特にメイドさん優しいし、部屋綺麗だし、料理美味しいし、色々揃っているし、何よりメイドさんが優しいのがいい!」


「それは良かったね。」


そう言ってクレアの隣にたたずむメイドさんがニコっと笑う。

しかし俺と目が合うとその表情は氷のように冷たくなる。


僕本当に嫌われてるんだなぁ。


まあ、クレアが嬉しそうだからそれでいっか。


「おはようございます理事長先生。」


「うむ。おはよう。寮生活は満足してもらえたかな。」


「ええ!それはもう!」


クレアが満面の笑みをこぼす。


「テリーよ。お主はどうだった。」


「ええ。僕も満足してますよ。」


僕の後ろにいたアイシャは僕の答えが不安だったのだろうか。

少しほっとしていた。


「問題がなさそうで安心した。特に用事があるわけではない。時間を取らせてすまなかったな。もう行っていいぞ。」


ただ寮でやっていけるかどうかの確認をしたかっただけのようだ。

いいおじいさんだな。


先にクレアが退場して次に僕も出ようとしたら。


「テリーよ。少し待ってくれ。」


「何ですか?」


そう立ち止まった僕の顔をじっと見てくる。


「すまない。何でもない。」


そういった理事長は自分の仕事を始めた。


——?


「失礼しました・・・。」


まあ特に理由なんて考え無くてもいっか。


僕は新しいクラスメイト、新しい友達を夢見て足取りを軽くしながらアイシャに付いていった。


「紹介しよう。本日より新しくクラスAに所属することになったテリーとクレアだ。」


クラス中がざわめく。

皆なぜあのような平民がここに入れるのか疑問なんだろう。


それよりもここの担任理事長なのね。


「見てわかる通り彼らは平民だ。」


その説明今いるの?


ほらざわめきが大きくなった。



僕らは理事長に促されて空いてる席に座る。


後は適当に授業を受けて過ごす。

内容はこの世界が作られた歴史、いわば神話なので興味がない僕は聞いているふりをするだけでボーっと過ごす。

ふとフレアを見ると真面目に受けている。


この感覚が懐かしい。

前世のように失敗しないように立ち回らないと。


昼休憩、僕は寮に戻って昼食を取りに行く。


「ただいま。」


「あら。もう帰ってきたの。」


そう言ってテーブルを見ると昼食が並べられてある。


「いつも悪いね。」


そう言って食事にありつこうとする。


「そう思うなら自分で作ったらどうかしら。」


確かにそれはそうだな。

でも僕は料理ができない。


「ご友人と一緒に食べないのね。」


「まだ初日で出来ていないんだよ。」


ま。知っていたわ。


そんなことを言うアイシャにいつも道理の毒舌だなぁと感じていた。


昼からは剣術の稽古がある。


この時間はまず素振りを徹底してやらされる。


村にいた頃こんなことやっていたなぁと懐かしく思いながら剣を振る。


僕は学習できる人間だ。

前世友達がいなかった理由は体育の時バカみたいな記録を出しまくっていた。

その度その度にクラスメイトの視線を感じなくなっていったのを覚えている。

そこから学んだのは出過ぎた力は嫌われるということだ。


だから素振りは適当に、下手くそに剣を振る。

周りを見ると結構皆剣筋が綺麗だった。


その後は2人ペアになって打ち合う。

もちろん打ち合う剣は刃を潰してくれてある。


まあそれでも当たり所が悪かったら肉がひしゃげ切られるより酷くなるだろうけど。


誰もペヤの声掛けをしてくれないので自分から探すが、皆相方がいた。

クレアにお願いしようかと思っていたらなんと女子生徒からお誘いを受けている。


友達作りを先越された悲しみとクレアに友達ができた嬉しさが僕の胸をいっぱいにして何とも言えない感情になる。

いや、やっぱ悲しみのほうが強いな。

なのでしばらくクレアを睨みつける。


「ねぇ。パートナーさんいないの?」


そう声がかかって誰かとみると、見るからに高貴なお嬢様だった。

顔はもちろん整っており、説明のしようがないほどの美少女。

そんな彼女が僕に声をかけてくれた。


「うん。あ、ならペア組んでくれる?」


「えぇ。その為に声をかけたんだから。」


そう優しく微笑むお嬢様。


まぁペアが見つかって良かった。


そして僕は彼女と剣で交わる。


「テリーだっけ?知っていると思うけど私はこのテールの王女セリア・ローズ。よろしくね。」


「うん。僕はテリー。よろしく。」


へー。

知らない。

この人王女様なのか。

この国に来たばっかで知っている訳がない。


打ち合いながら適当に会話する。

刃を潰してあるとはいえ金属の剣。

ガキンガキン言いながら僕らは打ち合う。


僕の実力に合わせてくれていて彼女の剣が僕に当たりそうなら寸止めをしてくれている。


「その剣、我流なの?」


「うん。剣とかそんなに触っていないし。」


基本魔力で刃を作って戦うし。


「ふーん。なら私が教えてあげようか?」


「え?」


いらないんだけど。

てかこの国のお嬢様が平民の僕に剣を教えるっていいの?


「よし決まり!今日夜になったらここの広場に来ること。」


「え?」


訓練が終わると同時にそんなことを言い放って去っていたセリアに戸惑いの表情を浮かべながら見送ることしかできなかった。


立ち止まっていても意味がないのでとりあえず寮に戻る。


そんな僕らの姿をクレアは見ていたが、そんなこと僕は知らなかった。




――――――――――――――――――――――




「ただいま。」


「戻ってきたの?」


「ダメなの?」


「質問に質問で返してはいけないって習わなかったかしら。」


いつもどおりのアイシャさん。


「平民だから習わなくてね。」


「そう。開き直る男は好きじゃないわ。」


今日も今日とてお口が達者です。


多分一生彼女には勝てないんだろうな。

そう思いつつ部屋着に着替える。


「アイシャっていつも暇そうだけどいつも何してるの?」


夜、約束があるまで暇なので会話に付き合ってもらおうとする。


「貴方が来る前は主人の世話よ。例えば貴方が今着替えてきたでしょう。それのお手伝いとか。」


「ならその主人が何も用事がなければ?」


「その時は用事ができるまで待機しとくわね。」


「なら暇なんだね。」


「まあそういうことになるわね。」


ここで会話は終わった。

どうしよう。

凄く暇だ。

アイシャは質問されたら最低限答えるって感じだし。


久しぶりに魔力トレーニングでもするか。


そうやって僕は約束の時間まで適当に過ごした。


夜になる。


「行ってきます。」


「あら。万年暇をしてそうな貴方がどこに行くの。散歩かしら。」


「そんな感じ。」


「そう。やっぱり。」


そう言ってアイシャが付いてこようとする。

でも今回はセリアとの剣の稽古だ。


アイシャが付いてくる必要はないだろう。


「別についてこなくてもいいよ。」


「その言葉を待っていたわ。」


そう言って彼女は元の席に戻る。


複雑な感情を持って約束していた中庭へと移動する。


「こんばんは。テリー。」


中庭に入ると朝と違う格好のセリアがいた。

スタイルのいい人ってどんな服でも似合うよな。


「こんばんは。セリア。待たせた?」


「いえ、私もさっき来たところなの。それでテリーの使用人さんは?」


「剣術の練習なら付いてきてもらっても意味がないからいないよ。」


なるほどね。


彼女はそう言ってベンチから立ち上がった。


「ほんとのこと言うとね。お願いがあって来てもらったの。」


「練習はしないの?」


「それは建前。」


どう?残念だった?と言われたので返事に困った。


一応残念と言っといたけど。


「で、本題は何?」


セリアが優しく微笑んだ顔で言った。


「私と付き合って。」


それは唐突で僕には理解ができなかった。














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