何をしようかな
さて。
心当たりがあるとすれば昨日ぶつかったあのフードの人だ。
ただ・・・。
この沢山の人がいる王都でそれを探し当てるのは砂漠で宝石を探すようなもので。
「困ったなぁ。」
「そりゃ・・・。生活できなくなりましたもんね・・・。」
さっきまで泣きそうな顔をしてたのに今ではあきらめた顔をしている。
表情がころころ変わって見てて面白い。
「な、何ですか?人の顔をじろじろ見て。あ!もしかして私のことが好きなんですか!?いや~私の美貌が分かるとか流石テリーさんですねぇ!ま、優しい私は・・・。ま、ま、まずは友達から始ま――。」
どうしようかな。
とりあえず何かしら働ける場所を探さなくては。
宿を出てふと自分がいた部屋を見る。
クレアが窓際で1人で何かしゃべっているのが分かる。
僕は頭を抱えながら1人で夜の街を歩く。
沢山のお店が並ぶのでどこか雇ってくれる場所はないかと聞いてみたが・・・。
まずは酒場。
ここならいけるだろと思ったら子供だから無理。
確かにそうだね。
次。
服屋。
小汚いから無理。
朝に盗賊狩って返り血が少し付いているからね。
確かにそうだね。
次。
雑貨屋さん。
これも小汚いから無理。
まぁ。うん。
そして色々回っていって僕を雇ってくれる店舗はなし。
その結果。
「金をよこせぇぇぇぇええ!!」
「「「「「な!?何だこのガキ!?」」」」」
僕は今どこに来ているかというとこの王都の少し外れた部分に来ている。
奴隷とか怪しい葉っぱとか売ってある場所でおそらく人生のレールから少し外れた人たちがくる所だね。
そして僕はここで稼げると思ってる。
色々断られて鬱憤が溜まっていたのでストレス解消とお金を稼げる方法を考えていたらやはり盗賊退治だろう。
この盗賊退治という言葉が大切だ。
何よりひびきがよく、正義の味方みたいでかっこいい。
「おらぁ!!」
「ひぃぃい!た、助けて!」
5人くらいで人を襲っていたので、別に殺し・・・倒してしまっても問題ないよね!
その襲われていた人は3人で1人が無事、残りの2人は無残にも切り刻まれている。
生き残っている人を守りながら5人を相手にするのは少ししんどい。
全員を倒し終わってから襲われていた人・・・ダンディはおじいさんに声をかける。
「大丈夫ですか?」
「あ、あぁ・・・。君は一体?」
「僕ですか?僕はテリー。修行の身の者です。」
「テリーさん。助けて頂き感謝する。このご恩をどうしたらいいのか。」
「いえ、恩など入りません。そして僕のことなど忘れてください。では。」
そう言って僕は音を立てずに近くの家の屋根に移動する。
出来る限り早い速度で移動したからあのおじいさんには消えた様に見えているはず。
あ~いいね。
こういうのやってみたかった。
案の定,彼は一体・・・。
とか言ってくれてるし。
楽しい。
てか早くそこをどいてくれないかな。
盗賊の遺品あされないんだけど。
――――――――――――――――――――――
「テリーさん!どこに行ってたんですかぁ!」
帰ってきてそうそう出迎えてくれたのは1人で散々何か恥ずかしいことを言っていたクレアさん。
「君が何か騒いでいる時にお金を稼ぎに行っていたんだ。ありがたく思ってくれ。」
俺はそう言って銀貨が数十枚入った袋を投げ渡す。
「何ですかこれ?――凄いじゃないですかテリーさん!あんな短時間でよくこれだけ稼げましたね!」
素直に褒められて少し誇らしくなる。
どや顔でクレアを見る。
「これだけのお金、どうやって稼いだのですか?」
クレアもこれからの生活が安定しそうなのが嬉しいんだろうか。
無邪気だ。
「どうやって稼いだのですか?」
僕はどや顔でクレアを見たまま目線を少しづつずらしていく。
「な!?本当にどうやって稼いだのですかぁ!!!」
クレアは僕のほうに駆け寄り肩を持って激しく揺らした。
「落ち着けって!僕は盗賊退治をしただけだって!」
首をぐわんぐわんさせながらも怒らない僕を誰か褒めてほしい。
「あぁ・・・。テリーさん。ついに犯罪を犯してしまったのですね。でも大丈夫ですよテリーさん。あなたにはこの私が付いてます。これからは道を踏みはずさないようにしっかりと守ってあげますからね。」
ひとしきり僕を揺らして満足したのかと思いきや女神のような微笑みでこっちを見てくる。
こいつ。
さては僕の言葉を聞いていなかったな?
しかも両手を広げていかにも慰めてあげますよオーラ満載だ。
「だから――!」
「良いんです!すべてを語らなくても!そうですよね。私のためにその手を犯してくれたんですよね。これからはその罪を償っていきましょう。さぁ!私と一緒に!」
僕の中で何かが切れる音がしてどす黒い感情が芽生える。
「ふんっ!」
彼女の頭にげんこつ1つ入れる。
「いったぁぁぁい!!何するんですかぁ!私はテリーさんを慰めようとしてですねぇ――!」
その時隣の部屋からドンッッ!と音が聞こえる。
「またうるせぇぞぉ!何回言えばわかるんだよ!」
「「ごめんなさい!!」」
お隣さんに怒られた。
てか『また』ってことは僕がいない間にも怒られているのか。
「・・・寝ようか。」
「ですね。」
そう言って寝る準備をする。
ちなみにその間にさっきの誤解は解いておいた。
出来事を話したら――ははは。テリーさんらしいですね。
と言われて何で?と聞いたら、人を助ける所と答えてくれた。
僕は正義の味方ではなくお金のためにやったことなのに。
まぁいいや。
ベットは1つしかなく僕は床で、クレアはベットに寝てもらった。
「いたずらとかはしないで下さいね!」
「すぅ・・・。」
クレアがそれを言う前に僕は静かに眠っていた。
――――――――――――――――――――――
何かが聞こえる。
夜に目が覚めた。
誰かの声だ。
「・・・ママ。パパどこにいるの?出てきてよ。隠れないでよ・・・」
クレアの声だ。
クレアの涙声が聞こえてくる。
これは・・・。
確かあの時、賊に襲われて両親を失ったんだっけ。
それで僕に着いてきた・・・だったよね。
それは僕には分からない感情で。
でも想像したら分かる感情で。
経験したこと無いから変に同情するのも何かが違う。
だからこのことは聞かなかったことにして寝ようとする。
「――テリーさん起きてますよね?」
ドクン。
そう心臓が鳴る。
何で分かったのか。
「寝息がやんでいますもん。」
そう言って、このことは気にしないでください。おやすみなさい――。
そう言って僕らはまた眠りに入った。
――――――――――――――――――――――
「起きてくださいテリーさん!朝ですよ!!」
そんな元気な声で目が覚める。
起こしたのは言うまでもなくクレアだ。
夜の事などまるでなかったのように元気にふるまっている。
なら僕も何も気にせず接するのでありがたい。
床で寝たので節々が痛いがベットは1つしかないのでしょうがないか。
「今日は何しに行くんですか?」
「昨日アルバイトしようと思って断られた時に『子供は学校でも行ってろ!』って言われたから学校があるなら見に行こうかなと。」
「昨日言ってましたもんね。ちなみにどのくらい断られたんですか。」
あれは・・・。
どのくらいだっけ?
僕は親指、人差し指、中指、薬指――
順番に指を曲げていく。
「ご、5件も断られたんですね・・・。」
次に左手も曲げていく。
「え。まさか6件以上・・・。」
両手の指を曲げ終わったので次は指を伸ばしていこうとしたとき、柔らかい手が僕の絶賛伸ばしている最中の手を包み込む。
「テリーさん。大変だったんですね。お疲れ様です。」
クレアは僕の手の動きを見て何かを察したのだろうか。
でもねクレア。
これは氷山の一角で今示した数の倍は断れているんだ。
最後のほうなんて「誰でもいいから僕を雇えぇぇぇぇええ!!」と叫びながら街中を走り回ったのは自分でもどうかしていると思う。
まあ効率的な稼ぎ方(盗賊討伐)を見つけたから気にしてないけどさ。
「でもテリーさん。その学校の場所なんて分かるのですか?私は知りませんよ?」
「そりゃな。僕も知らないもん。」
「じゃあどうするんですか。」
「なるようになるさ。」
「ミスター無計画・・・。」
何とでもいうがいいさ。
――――――――――――――――――――――
「でもテリーさん学校何か行ってすることあるんですか?」
とクレアは言う。
「な!?お前学校だぞ!?」
僕は学校のことを熱く語った。
まず友達出来てその友達と毎日一緒に遊ぶ。
気軽な雑談とか、何気ない話とか、そういうのが出来て時には切磋琢磨して競い合ったり、時には一緒に強大は敵を倒して友情を深めあったり。
そんなことを熱くクレアに語った。
ちなみに前世では友達がいなかったので、今言ったソースは言うまでもなく漫画とかの知識。
「そんな!すごい場所ですね学校って!」
「それだけではないぞ!付属でこの世の知識とかも学べるんだ!」
「凄い!そんなものまで付いてくるのですか!」
ふふふ。
この子はちょろい。
「でも・・・。私はテリーさんがいてくれたらそれで十分です。」
クレアが小声で何か言っていたが僕は学校を夢見ているのでそれどころではない。
「さぁ!無限に広がる夢をつかみにいくぞぉ!」
僕はワクワクしながら探した。
結論から言うと学校はあった。
で、窓口のお姉さんに入学したいんですけどどうしたらいいですかと聞いたら。
「基本、学園は貴族の方しかお入りできませんよ。」
そう我儘な子に優しく諭す様に言われた。
街中の人場の隅に三角座りしている子とそれを慰める少女。
それは僕とクレア。
「テリーさん。ま、まあそんなことありますって。」
「グスッ・・・。」
「ほ、ほら機嫌直して。」
僕は三角座りしている足の間に顔をうずくめる。
「・・・めない。」
「え?」
「僕は絶対にあきらめないぞ!」
「え・・・?えぇ・・・。」
何か呆れた顔をしているクレアがいるがそんなことは知らない。
僕はやると言ったら絶対やる男なのだ。