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農作業

外様の戦いは食糧増産とエネルギー自給化です。

「どうして農作業に自衛隊を派遣するんですか?軍隊動かす経費考えたら予算かさみますよ」

「食料自給率は大切ですけど、そんなの請負業者に任せておけばいいじゃないですか」

一応抗議文を政府に送り付ける野党だが、農業法により小麦の増産が決まっているので苦情は控えめだ。

時期的に今は10月なので、小麦の種蒔きは急がないといけないので、災害救助のエキスパートである自衛隊まで動員して、農作業に勤しんでいるのだが、これに耕作放棄地も含まれる事になった。

農水大臣の加藤は、必死になって耕作放棄地の所有者を探してるところであるが前途多難である。

うっかり名乗り出たら、滞納分の税金を支払わなければならないだろうから、多分名乗り出ないだろう。

「耕作放棄地を没収する法案を作っておくべきだった」

後悔するが時すでに遅し、食料自給率は50%程度で我慢することにしようと諦めた。

「災害救助に名を借りた軍隊の出動は、後で問題になりませんかね?」

勿論既になっているが、外様政権を失脚させる程度のダメージにはならないので無視である。

外様は財務大臣の妻に(これも問題になった)命じて、改革の軍資金を調達させる。

だが国庫は枯渇して、国民も散財で富を失い、これ以上臨時税を搾り取ったら反乱がおこるだろう。

「最近では定額給付金あてにしてお金貸す借金取りまでいるんだぞ。やってくれないと困る」

「国の方針通り散財に走るのはもう限界です。本当に来年は豊かになれるんでしょうね?」

農作業に勤しむ農民は、取り合えず自衛隊員に手伝ってもらいながら種蒔きと開墾をしていた。

人手不足で耕作放棄地になりかけてる畑が結構あるので、この際開墾してしまおうと考えたのだ。

上手くいけば食料自給率が1%位上がるかも知れない。

「自衛隊の皆さん。食事を用意しました。皆さんで食べてください」

農家が貴重な米を使って作ったおにぎりを自衛隊員に配っていた。

名目は災害救助だが、別に不作なだけで輸入すればいいし食料には困っていない。

確かに貧しいが、自衛隊員に食事を提供する位の食料は残っているのだ。

「良いのか?あんたらだって貧しいんだろう?だから俺達が派遣されたと思っているんだが・・・」

「自衛隊員になって農業をやるとは思わなかったが、来年には自給率55%にして見せる」

農民はどう思ってるか知らぬが、外様は本気で食料自給率を上げようと法案まで作った。

それ故に軍隊まで派遣して農業を行わせているが、多分来年は豊作になるだろうと期待した。

「じゃあノルマの豚と牛もよろしく頼むぞ。乳製品と牛乳は慢性的に品不足だからな」

臭いの嫌だと言う苦情が後を絶たないが、取り合えず我慢してもらうしかない。

お前らだって牛肉やバターは食べるだろう。

「ついでに里山の森林を間伐したいんだが良いか?焼き芋パーティをやろうぜ」

「良いんですか?」

最近は焚火が禁止されているので、焼き芋パーティを出来ない若者が多い。

「外様の許可はもらっている。ただ薩摩芋は持参してくれないと困るが」

「予算つけてくれなかったんですか?」

多分財務省か自衛隊の上役か外様が判断するのだろうが、予算は用意してくれないのは確かだ。

「無理なら自腹で芋買ってくる。公務員に特別手当だすと民衆が五月蠅いからな」

「いや芋位作ってる奴がいるから無償提供させていただきますよ」

食べ物なら別に賄賂にはならないだろうし、自衛隊員も気軽に受け取った。

財務省の特別予算の3兆円(国債を発行した)で牛や豚や鶏をアメリカから買って農民に分配する。

国債は10兆円発行したが、残りの7兆円は予備費として国庫に蓄えた。

「ありがてえ。ここまで農民に親切な政権は初めてだ。外様さんありがとう」

「収穫期の時にも自衛隊派遣してくれるんですか?この村は老人が多いから来てくれないと困ります」

「約束は出来ないが、外様政権が続いていれば多分来れるだろう」

別の兵士が森林を伐採して、間伐材を持ってくると火を起こした。

燃料が勿体無いので、自衛隊は電車とバスを使って災害救助に赴いている。

その数は10万人。

何度も言うが外様は本気であり、フランス並みの穀倉地帯を日本に作ることが夢だった。

食料自給率51%は、その為の布石に過ぎない事であり、当面の目標は70%越えである。

「じゃあ肥料の灰を作るぞ。後有機肥料も勝って来い」

「はい。しかし農業が嫌で自衛隊に入隊したのに農業やってる俺を見たら、親父なんて言うかな?」

農作業の傍ら、政府の狩猟許可をもらった自衛隊員が、鹿や猪を狩ってきた。

皮は売れるし、肉は燻製肉にでもすれば冬の蓄えになる筈だ。

「構わないからどんどん食料を生産してくれ。不揃いだろうが虫食いだろうが市場に出すんだぞ」

「虫食いなんて最近の日本じゃ売れませんよ。抗議の矢面にさらされるの俺たちなんですよ」

そうは言っても安くさえすれば売れるかもと思って抗議は控えめだった。

「総理。農業改革は今のところは上手くいっています。でも大丈夫ですか?今年は寒いみたいです」

「雪など自衛隊員に除雪させる。農業の自立化こそ国の根幹だからな」

本来自衛隊とは国を守る軍隊である。

その国には国民も当然含まれ、守る対象になっている。

「竜一さん。資金は何とか5千億円ほどねん出しました。自治体から借りて来たんですけどね」

「借りて来た?返済しないといけないのか」

「自治体も蓄えたお金を運用しないといけないから、低利で貸してくれました」

「まあ自治体の蓄えたお金は貴重な資金源だから、貸してくれるならありがたいが・・・」

当然この金は定額給付金に注ぎ込まれた。

「来年の税収が楽しみだな。これで税収落ち込んだら俺は確実に失脚するな」

その時は日本も財政破綻してるに違いない。

幾ら借金が620兆円に減ったとはいえ、まだまだ返済が滞れば財政破綻の危機はあるのだ。

「それに来年の税収によっては、国債を発行しないといけなくなるし」

外様を信じて散財に励む民衆の財力が尽きれば日本は崩壊するので、その前に賃上げをしないといけないのだが、冬のボーナスは高めに設定するように企業を説得しておこう。

「自宅警備員の人を説得して、農業に従事してもらったら少しは農業人口が増えるかもしれない」

説得に応じて仕事をする自宅警備員の人もいるだろう。

失業者は、出来るだけ減らさないといけないから、政府が率先して説得するべきなのだ。

そうすれば生活保護費の負担が減り、国費も多少は助かる筈である。

「総理。農水大臣から農具の手配と当座の備蓄食料を要求しておりますけど」

「農水大臣?何でも俺の許可を貰おうとするの止めてほしいんだがなぁ」

話を聞いてみると、農家は組合から買い込んだ農機具の借金返済に苦しんでいるらしい。

年収800万円の農家で、借金返済額が200万円だそうだ。

農機具の値段は農家の収入とは関係ないので、低所得の農家は貧乏に苦しんでいるのだろう。

「それで5年で農機具が使い物にならなくなるという噂までありますからねぇ」

農家は難儀な商売だ。

上級公務員なら、800万円を自由に使えるのに、農家は800万円から執拗経費を出さねばならない。

大概の人は800万円貰える上級公務員を目指すだろう。

「それでも俺達は農家をやるんだぁ」

若い40歳位の農家は理想に燃えているが、彼らも耕作放棄地の所有者を探していた。

高値で買い取って自分の農地に加える為である。

高額の予算にひかれて農地を売り出す耕作放棄地の所有者もいる事はいる。

「じゃあ俺達は用が済んだから別の農地に行く事にする。何としても生き延びろよ」

自衛隊の狩った猪や鹿の肉を燻製肉にする作業に追われてる老人の農民である。

肉ばかりじゃ栄養も偏るが、この肉でこの冬は越せそうだと農家は安心して見送った。

「あんたらには世話になった。税金を納めて恩を返すからあんたらも生き延びろよ」

自衛隊は戦うのが商売である。

一応不戦が前提の軍隊だが、何時戦場に派遣されるかはわからない。

「勿論だ。収穫期にはまた会おう。この村に来れるように嘆願書を出してみる」

「それは有り難い。御馳走を作って待ってますよ」

自衛隊と農民は、この時固く再会を誓い合ったのだが、どうなるかは分からなかった。

農民は、この時蒔かれた種と、乳牛と豚で日銭を稼ぐ事が出来るようになった。

「豚など貰っても越冬させるのが大変だな」

牧草などはないから、当然資料を国内から買わないといけない。

国外の方が安く済むが一応政府の方針通り、国産で賄うことにした。

そうでないとせっかく種蒔きに来てくれた自衛隊員に申し訳が立たない。

「今度来てくれた時には、豚の肉で焼き肉パーティをやりましょう」

「それは楽しみだな。民間人からの食料の提供は歓迎する」

この前の焼き芋大会では、わいろと買収に当たるのではないかという奴も野党にいた。

だが超法規的処置で特別に認められる事になる。

「まあ本当は民間人から食料貢がせるのはよくないんですがね」

一応同意の上なので良いのかもしれないが、隊長のクビは覚悟しておいた方がよさそうだ。

こうして農業法による麦の種蒔きは各地で終了する事になるが、家畜の世話に人手がいるだろうと野党が忠告した事もあって、相当数が農地に残る事になる。

日当で雇われた派遣社員も農作業に従事るものが現れ始めた。

「草をどっから調達すればいいんだよ?」

「稲の茎だけでは豚や牛の食料は、賄いきれんぞ」

仕方がないので、民間から雑草の提供を呼びかけたら、有償で雑草を提供する者が現れた。

かなり予算がひっ迫するが、鶏も買ってみたので当座の資金には困らない。

「いや~。自衛隊員のおかげで農業が潤うのは、有難いことですな」

「軍隊って本来この為にいるんですよね」

この外様の政策により、自衛隊の人気がうなぎ上りに高まる事になった。

そして冬ごもりをする事になるが、農家は所有が義務になった牛や豚を養う為に、積極的に耕作放棄地や人工林に入って、草を調達する事になる。

外様の戦いは、特に文句を付けられることもなく、第二段階に移ろうとしていた。





牛や豚はアメリカから購入しています。

鶏もです。


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