探偵と電話
名探偵に必要な一番の要素は、パイプと虫眼鏡である。
頭脳だって?中身より形からが重要なのだ。
これが常識のように定着したのは、言うまでもないが名探偵シャーロック・ホームズである。
だが、そんなのは小説の話でしかない・・・
現実では、浮気調査が7~8割の収入源になり、たまに変わった仕事といえば猫探しだし・・・
もちろん、そういう仕事なんだから、目立ってはならない。つまり、小説のようにパイプも虫眼鏡も使わないよ。
昔は、僕も憧れていたよ・・・シャーロック・ホームズに!アイリーン・アドラに!明智小五郎に!金田一耕助に!
だから、こんな所で30にもなるのに名探偵ではない平凡な探偵を僕はしている。
しかし、「火のないところに煙は立たない」と同様に「事件のないところに依頼は来ない」のだ。
そんな事を考えていると、事務所の固定電話が鳴る。
依頼だ・・・
こんな小説とは、多少かけ離れているが今日も探偵をしている。
「はい?もしもし、こちら「迷呼探偵事務所」の迷呼明解です。」
────この一本の電話が僕の最初の事件になるなんて、このときは思いもしなかった。