田中の話
私の名前は田中、何処にでもいるしがないサラリーマンだ
特徴も特技も趣味も何もない
私はいつも通りに仕事を終え、たばこのカートンを買いにコンビニへと立ち寄った
「いらっしゃいませ」
金髪のお兄さんに気怠そうな声で歓迎され店の中に入る
ヤンジャンを立ち読みしている体格が大きいおっさんしか客がいない深夜のコンビニ
私はそそくさとレジへ近づきたばこのカートンと小腹がすいていたため肉まんを頼んだ
肉まんを温めるためレンジに入れる
その間に金を受け取りレジに入れポイントカードを読み込む
見た目の割にはなかなか手際がいいではないか
そう思っていたらレジがチンと音を鳴らした
金髪はレジを開け、中の肉まんを手に取った
その瞬間である
肉まんは彼の手から逃げ出し、空中二回転を決めて床へと落ちた
私は興味津々に彼を見つめた、ここからどうするのかが気になったのだ
しかし金髪は何も言わずその肉まんをビニールの中へと入れたではないか
私は言った
「落としましたよね?」
金髪はこう返した
「はい、すいません」
だからどうしたという表情にムカッときたが、我慢してこう言った
「いや、肉まんを変えるかなんかしてくださいよ」
すると金髪はイラッとした口調でこう答えた
「だったらもう一度温めましょうか?」
私の頭の中で高らかにゴングが鳴った
私は怒った、ヤンジャンおじさんがこっちを見るほど大きな声で
しかし金髪は表情一つ変えない、相当私にムカついているらしい
するといかにも私やさしいですよという雰囲気の男が出てきた
ネームプレートには店長飯田と書いてあったため店長だろう
店長は言った
「お客様申し訳ございませんでした。」
私は今起こったことを店長に打ち明けた
店長さんは人をなだめるのがうまい、私の怒りのボルテージは音速で下がった
私はこの件のお詫びにという理由でくじを一個多く引ける権利をもらった
このコンビニは購入金額700円ごとにクーポンなどが当たるくじをやっていたらしい
この場から早く離れたいという気持ちであったが、貰えるものは貰っておきたい
私はすぐに抽選箱から8枚のくじを引いた
引いたくじは7枚のハズレ券と1枚の金賞だった
店長は叫んだ
「お・・大当たりいいい!!」
ヤンジャンおじさんは再度こちらを振り返った
明らかにお前かよ!という顔をしている
「おい酒井君、何をしている早く例の奴を」
店長が金髪に指示を出す
すると金髪はレジの下からラッパを取り出し演奏し始めた
さっきまで私に怒られ、私に嫌悪感を抱いてる男が今私をラッパで祝福している
軽快な音楽と不器用なステップで
これは何地獄だ
私はいてもたってもいられなくなりその場から逃げ出した
金賞の景品などこの際どうでもよかった
とにかくあの地獄から抜け出したかったのだ
こうして何もなかった私にも一つの特徴ができた
特徴 運が悪い