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アナザー・ワールド 〜 the oldest hero 〜  作者: とんぼ
第1章 闇より生まれし星
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6 嫌な予感

「とりあえず果実を食べることには同意したけど、今からどこ行くんだ?」


クレス自身も想像がついている質問にアリスが答える。


「神樹がある公園に行く。じゃなきゃ果実が手に入らないから。••••••さっきも言ったと思うけどね」


アリスの言うとおり、クレスはさっきから同じ質問を何度も繰り返し、「そか」と短く答えている。

クレスとしては、死ぬかもしれず気が気ではないのだから、しょうがないだろう。アリスもそれがわかってるからしつこいとは言わない。


「クレス、君の不安もわからなくはないが、もう少し落ち着いたらどうかね。それじゃあ目立ってしまう」


キョロキョロしながら、自分の胸に手を当て時折ブツブツと呟いているクレスは、とても平常とは言えない状態だった。

顔見知りでもそう思うのだから、買い物をしている人がそう思うのも無理はないだろう。


「ーーす、すみません。堂々としとかないといけませんよね」


「クレス、別に堂々としてなくてもいい。寧ろ挙動不審になるから」


アリスの指摘通り、本人は堂々としているつもりでも、側から見ればビクビクしているように見えた。


「だから、何も考えなければいい。いつも通りでいれば大丈夫。どうせ成功するんだし、気にする必要ない」


「おまえなぁ、成功するかどうかは正確にはわかってないんだからな。他人事だと思いやがって。生き残ったら絶対後悔させてやる!」


自分の恐怖心を、他人への当て付けとして気を強く持つことにした。


「じゃあ、死ぬことを願わなくちゃね」


折角の気丈もアリスの言葉に瓦解仕掛ける。


「縁起でもないことを言うなよー。俺はマジで不安なんだから」


「クレス、君はもう少し落ち着いた方がいい。そんな言い合いに体力を使えばあとあと保たなくなるぞ」


グレムの含みのある言い方に嫌な予感がする、そしてその予感は果実の副作用を聞いた時の予想と被り、聞かずにはいれなかった。


「••••••それって、もしかして果実の副作用を指してる?」


「もちろん、体の中で破壊と再構築が起こるのだから、その分体への負担が大きいからね。気付いてなかったのか?」


「いや、予想はしてたんだけど。てかマジか、それ堪えれるかすごく不安なんだけど」


予想通りの答えが返ってきて、思わず頭を抱えしゃがみこんでしまう。


「どうしよ、やっぱやりたくないわ。やらなくて済む方法ってある?」


クレスの弱音に対して、アリスは呆れた顔で切り捨てる。


「今更何言ってるんだか。さっきの勢いはどこに消えたの。覚悟、決めたんでしょう?」


「••••••そうだった。こんなことで止まってる場合じゃなかったな。とっとこ行こうぜ」


クレスの言葉を聞き、グレムは満足そうにうなづく。


「覚悟、改めて固めたようだな。こう見ると、アリスとクレスはいいコンビになるかもしれんな」


アリスにとっても、クレスにとっても不服なことなようで、二人揃って吠える。


「「それだけは絶対に無い‼︎」」


阿吽の呼吸のような二人を見て、グレムは苦笑するしかなかった。


目的地のある居住区に着いたのは、商業区で予想以上に注目を集めてから10分経った頃だった。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※※


「ここが、居住区か。初めて来たけど、なんかすごいな」


クレスの目の前には、豪邸といっても差支えがない家が沢山建っており、普通の家も小さいと言うには大きかった。


「確かに、凄い。ワタシも初めて来たから少し驚いてる」


「アリスも初めてだったのか? 商業区の端っことはいえ、イルミスに住んでるわけだから来たことあると思ってたけど」


「お祖父様も、最近神樹の確認のために来たのが初めてだし。商業区に住んでる人はそれが普通だと思う」


「えっと、それはどういうわけで?」


「居住区なんて、来る必要ないもの。用事がないなら普通立ち入らない区画だから」


「それもそうか」


アリスのちょっとした解説にクレスも納得する。

そこへ、先ほど様子を見てくると言って公園へと向かったはずのグレムが、すぐに戻ってきた。その顔に焦りの色をみせて。


「2人とも、時間がないから早く行くぞ」


「お祖父様どうしたの? 時間ならまだあると思ってたんだけど。何かあったの?」


アリスの言葉にクレスも同意見だと言わんばかりにうなづく。


「••••••居住区に入った時にもしやとは思っていたが、どうやら先客がいるようだ」


先客が誰なのかわからなかったクレスは聞くべきか悩むが、アリスは御構い無しで聞く。


「先客? って誰のこと? 多分一般人のことじゃないよね」


クレスはアリスの言葉に違和感を感じる。


「一般人じゃないってことは、もしかしてアリスたちみたいな天上世界から来た奴らがいるのか? だとしたら何があるのかわかんないけども」


「アリスの言うとおり、一般人じゃない。おそらくは先遣隊のようなものだろう。魔力の残滓が弱すぎる。昨日はなかったことから考えると、今日来たのだろうな


魔力の残滓なんてわかるのか。アリスがスゴイからグレムも、とは思ってたけど。もしくは魔力を扱えたら誰でもわかるのか?


クレスがグレムの、というより魔力を扱える者に対して感嘆していると、アリスとグレムが先に歩き出した。


「••••••って、置いてくなよ。だからって早く行く必要あるのか?」


「何を言ってるの? 果実を取られるかもしれない。だったら早く行くに越したことはない」


「そういうことなら早く行かないとな」


クレス、グレム、アリスの3人は神樹のある公園へと急ぐ。

公園で起こるかもしれないことを、3人とも別のことを浮かべながら。




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