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アナザー・ワールド 〜 the oldest hero 〜  作者: とんぼ
第1章 闇より生まれし星
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4 ユグドラシル

「大丈夫? さっきからなんだか心ここに在らずって感じだけど」


「••••••いや、大丈夫じゃないから。少し頭を整理させてくれ」


「ん、わかった。今日はワタシがご飯作るから、お祖父様とクレスはゆっくりしてて」


そう言うとアリスはまた奥へと入っていった。

正直、最初の方から頭が追いついてなかった。それでもだいぶ頑張った方だとは思う。実際、魔法をこの目で見た今でも、信じられないのは当たり前であるはず。そのうえ、それを身につけろだなんて、無理に決まっている。一度にいろんな事が起こりすぎて、頭がパンクしそうだ。もう一回詳しく話を聞くしかないか。


「あの、グレムさん。もう一回••••••って、どうしたんですか?」


見れば、先ほどまでの貫禄のあった佇まいはどこに消えたのか、焦りが隠しきれず、苦虫をすり潰したような顔をしている。


「クレス、君には伝えておく必要があるな。アリスは抜けてるところが多く、世間知らずだが、それだけでなく料理も下手なんだ」


「••••••へ?」


思わず変な声が出てしまった。何を言い出すのかと思えば、何てことはなかった。


「いや、俺は多少不味くても平気ですから」


「なら、いいんだがね」


グレムは尚も大粒の汗をかき続ける。そんなに料理が不味いのだろうか?見てるこっちまで不安になってくる。変なものが出なきゃいいけどーー


ーー30分後。


「二人ともお待たせ。今朝お祖父様がとってきた魚を塩焼きしてみた」


持ってきた料理は、そのままの魚を塩焼きしただけのいたってシンプルな物だった。グレムはそのままの塩焼きを見てもまだ顔色が悪いけど、これのどこに不味くなる要素があるのかわからない。

クレスは単に口に合わないだけだろう、と思い口に入れる。すると、


「っ⁉︎ なんだ、これ! ただの塩焼きじゃないのかよ!」


「ただの塩焼きだけど、どうかした? 美味しいと思うけど」


アリスの料理は本当に不味く、魚の塩焼きのようなシンプルなものも作れないようだ。


「もういい、俺が作りなおす」


「クレス、アナタ料理出来るの?」


お前よかマシだっての、と言い残すと調理場があるであろう方向に行く。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※※


「よし、出来た。あんまりうまくないけど、それなりに食えるはずなんだけど」


そう言って、アリスが作ったものを遥かに凌駕する料理を机に置く。


すると、グレムとアリスはそれぞれの感想を述べる。


「これは驚いた。こんな綺麗なものは、見たことない。」


「すごい、クレスって意外と家庭的?」


「うるさい。からかってるみたいに聞こえるからやめろ。単に母さんの代わりに家事をこなしてただけだよ」


ちょっとした能力とも言えない力を発揮しただけなのに、ここまで驚かれるとは思わなかった。


「そんなにすごいことじゃないと思うんだけどな。それよりも、食べながらでいいからさっきの話を詳しく説明してくれ。理解が追いついてないんだ」


「ああ、それもそうか。突然身につけろと言われてもわからないか。了解した、では食べながら説明しよう」


グレムのほうは物分かりが良いようで助かった。アリスって本当にグレムの孫か?

そう思いながらアリスを見ると、魚とにらみ合い続けていた。

なんだか、怖いからそっとしておく。


「まず、君に身につけてほしいと言ったが、簡単に身につけれるようなモノではない。本来ならな」


「本来なら?」


「それは私から説明する」


そう言ってアリスは、イルミスの全体及び外縁部の書かれた地図を取り出してきた。


「今私たちがいるのはここ」


アリスが指差したところはイルミスの中でも外側にある商業地区の中でも、さらに外側であった。


「商業地区の一部だとは思ったけど、ほとんど外縁部なんだな」


「ええ。だって人とはいえ、ワタシやお祖父様は天上世界から来たんだから」


「そういやそうだった」


それからアリスはイルミスの中心部へと指を動かしていく。

その指が止まったのはイルミスの居住地区の中心部にある何も書かれていないところだった。


「ここって••••••公園、じゃなかったっけ?」


前に一度だけ祖父に会いに居住地区に来た時がある。確かその時は公園だったはずだが。当時とは違うのだろうか。


「その通り、ここには公園がある。でもここ数日である変化があったの」


「ある変化?」


「公園の中心に神樹ユグドラシルが顕われたんだ」


話はアリスからグレムへと引き継がれる。


「・・・神樹ユグドラシル?」


「賢者アイテールが創った、天上世界でしか存在していないはずの樹。その樹の果実は人知を超えた能力を与える」


「それって、もしかして・・・」


人知を超えた能力。その響きに、クレスはつい最近得た知識の中に一つの当てはまるものを見つける。


「そう、その能力こそが異能ということだ」







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