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アナザー・ワールド 〜 the oldest hero 〜  作者: とんぼ
第2章 歯車に刻まれた時
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第2章2 力の使い方

第1章と第2章の間に幕間を追加しました。


近場の炎を圧縮し擬似瞬間移動を用いて敵と思しき者を斬り伏せていく。

セイカンに乗り込んだあとすぐに敵に気づかれ、存在が知られてしまったが為にクレスが『炎舞』を発動させ、相手を素早く無力化している、というわけである。

イルミスにいる間にヘルが指導をしたため、バルバトスとの戦闘時よりも能力を使いこなせている。

それでも全て出し切れているわけではないが。


「ふぅ、とりあえずは片付いたんじゃないか?」


擬似瞬間移動を用いてクラリアがいるところに戻ってくる。


「お疲れ様です。渡しが感知出来る範囲内に生命体の存在は確認出来ませんので大丈夫かと」


今、この場にはクレスとクラリアの2人しかいない。アリスとヘルとは別行動をしている。

クレスとクラリアが市街地で目立った動きをすることで敵を誘き寄せ、アリスとヘルが情報収集する隙を作る。

本来なら情報収集はアリスよりもクラリアの方が適任ではあるが、アリスの感知の精度はあまり高いとは言えず、実戦ではクラリアの方が良いとの判断でこうなった。


「じゃあ、次はあの辺の炎を吸い取るか」


燃えている家に手をかざし、炎を吸収する。クレスは魔法ではなく異能を使っている。そのため、大気中にある魔力を吸い取ることで能力を発動させる。そして、魔力は自然のエネルギー、つまりは火や水からも吸い取ることが出来る。その代わり火や水から得た魔力は火や水の能力でしか使えない。

その点、この火災だらけの都市ではクレスの『炎舞』の独壇場とも言える。


「危なそうな火は吸収しきったけど」


「ええ、大丈夫かと。私の能力の性質上、あまり目立つ行為は出来ませんので。仕事を任せてしまって申し訳ないです」


腰から深々と頭を下げるクラリアに、クレスは頭をガシガシとかきながら頭を上げさせる。


「そんなことないって。それこそ感知に関しては任せっぱなしなんだから。五分五分じゃないか」


クレスは能力を発動させていない時はクラリアに近いレベルの感知が可能ではあるが、能力自体がかんちを阻害してしまい満足に感知が出来ない。それ以前に能力を発動させている間、並行して他の行動をするのは困難だという事が出発前に判明している。


「その点はお任せください。敵に見つかる前に無力化出来るよう、感知の網を広げていますので。っと、新しい反応が3つほど前方突き当たりから来ます。…これは!」


クラリアは目を閉じ、集中している。何か探っている様な、そのような雰囲気で佇むクラリアにクレスは首を傾げる。


「急にどうしたんだ?」


「3人とも魔術師のようです。待機状態の魔法が確認出来ました」


「…へぇ、やっと親玉が出てきたのかな?」


セイカンに乗り込んだ際にクレス自身、異様な空気を感じていた。何か普通じゃない、そんな空気を。事実、他のメンバーも異様な空気というより魔力の淀みを感じていた。そのためこの件には魔術師が関わっており、最悪の場合は王候補者の誰かがいる可能性があるとの結論に至っていた。


「属性は両端が炎、真ん中が氷です。真ん中の人物はおそらく私達よりも魔力量は高いでしょう。十分注意してください」


魔法を使う事が出来る魔術師は、呼吸と同じように体内の魔力を外へと放出している。感知能力を持つ者はその魔力を感知することで位置を掴む。ある程度の属性や魔力量までも感知しきる者もいる。その1人がクラリアというわけだ。なかには、わざと魔力を拡散させることで感知されにくくする魔術師も存在する。


「了解。でも氷ならこの火の中じゃ役立たずだろ。っと、範囲に入った。行ってくる」


「お気をつけて」


クレスは擬似瞬間移動を用いて、約25メートル前方にいる敵の真後ろへと移動する。


「ばいばい」


二刀を振り上げ、真ん中の敵。女性と思われる人物に振り下ろす。

しかし、


「なっ⁉︎」


分厚い氷の壁に防がれる。そのうえ、炎である二刀は氷の壁を溶かすどころか、むしろ氷始めていた。


「くそっ」


クラリアの元へと戻り距離をとる。


「ここからじゃ良く分かりませんでしたが、大丈夫ですか?」


クラリアは戻ってきたクレスを怪訝そうに見つめる。


「問題ない、けどあの反応速度はバルバトスと同等じゃないかな」


どういうことか、という表情のクラリアに起きたことを説明する。


「おそらくはその壁が待機魔法だったのでしょう。まさかトラップ待機型の魔法だったとは」


トラップ待機型とは、その名の通り設定した場所に配置・待機させ、任意のタイミングや設定した状況下で発動する魔法のことであり、今回の氷の壁は後者の設定した状況下で発動するタイプであろうと判断された。


「しかし、問題はそこではありません」


「ああ、問題は刀が凍らされたことだ」


クレスが炎舞で生み出した武具防具は全て純粋な炎でできている。それを凍らせるほどの冷気を持っていた。つまり二刀よりも込められていた魔力が段違いだった、ということである。それはすなわち圧倒的な格上であることを示している。


「防御の、それもトラップ待機型の魔法にそれほどの魔力を込めているということは私達では普通に戦っては勝てないでしょうね。ことは1度お兄様と合流して」


「その必要はない。普通に戦ったら負けるかも知れないけど、俺の異能はちょっと特殊だってこと忘れてないよな?」


「複合技、ですか?」


「そういうこと。……顕現せよ、『災厄パンドラの箱』ーー」


出発前に練習したもう一つの匣の中身。それを解放する。


「ーー第1の箱・『災害カタストロフ』、解錠。揺れ崩せ、テンブラー」


次の瞬間、クレスを中心に地面が振動する。


「きゃっ」


クラリアが尻餅をつきかけるが、クレスが支える。

そうこうしているうちに揺れが収まったが、クレスは未だ能力は解除していない。


「じゃあ、今度こそ仕留めてくる」


クレスが新たな剣を生成すると、輪郭が霞んで見えた。



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