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アナザー・ワールド 〜 the oldest hero 〜  作者: とんぼ
第1章 闇より生まれし星
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25 剣士?

『ヘルムズ・シグ・カレイド』、そう名乗った青年は剣を鞘から引き抜き、剣先をバルバトスへと向ける。


「ただの剣士がそのような服装はしていないと思いますが」


青年の着ている服は上下ともに白を基調としており、所々赤と金の刺繍が施されている。上着にコートの様な物を羽織っており、そのコートは腿の中間の辺りまで伸びており、前は止めていないためはためいている。肩から袖口にかけて一本の金色の線があり、右の胸元には小さな金属製の紋章が取り付けられている。そして、両腰には一本ずつ剣が下げられている。

つまりバルバトスが指摘した通りただの剣士であるはずがなく、バルバトスは胸元の紋章には見覚えがあった。


「それにその紋章。それは王国騎士団が付けることを義務付けられる紋章。そして、何よりその金の髪と蒼い瞳。やはり間違いなく剣聖」


バルバトスの言葉に少し肩を竦ませるだけの青年。


「まあ、なんでも良いよ。あれだけ派手に暴れてくれたお陰でここに跳んで来れたんだから。ここで君を倒せば一件落着だ」


バルバトスは青年の言葉にそれを裏付けるだけの実力があることを瞬時に理解し冷や汗を流す。


「このまま貴方と戦ってみるというのも大変そそられるものがあります。ですが、すでに2人の化物と交戦させていただきましてーー」


「疲れたからもう帰るってこと?」


青年はバルバトスの言葉を予想し先に言う。

それにバルバトスは正解とばかりに首肯する。


「ですので何もしないでいただきたいのですが」


青年は笑顔のままそれに答える。


「そんなこと、聞かずともわかるはずだけど。一応答えておくよ。当然逃すわけないよ」


青年は右手を左腰の鞘に添え、跳躍の準備に入る。バルバトスは未だ空中にいるため、跳んだところで届くはずがないが、軽く届くような雰囲気を放つ。


「それも剣聖なら当然ですが」


バルバトスは独り言のように呟き、名案を思いついたと手を打ち合わせる。


「では、逃してもらえるようにさせていただきましょう。我が声に応えよ、傀儡の獣(ドール)


すると、地面から巨大な怪物が2匹現れる。1匹は鳥をベースに、もう1匹は虎をベースにしていると思われる化け物。どちらもクレスの村を襲ったものと同じ姿だ。


「へぇ、神話を真似るなんて悪趣味なことするね」


2匹の怪物は青年を見下ろし、今にでも襲いかかろうとしているが、青年は未だ余裕の表情を浮かべている。


「それで? その2匹でどうするんだい? まさかそんな奴で時間稼ぎ出来るとでも?」


バルバトスは青年の言葉に笑いを堪えるかのように答える。


「確かに、2匹では貴方を止めることは出来ないでしょう。ですが、気づいていらっしゃらないようなので言わせてもらいますが、3匹目を町に放ちました」


その言葉に青年は跳ねるように顔を町の方へと向ける。そして、何かを見つけたように顔色を変える。


「貴様!」


「今ここで、私と戦えば間違いなく町の住人の8割以上が死に絶えるでしょうね」


青年は先ほどまでの余裕の表情から一転して、明らかな焦りの色がうかがえた。


「では行かせてもらいましょうか。ゲートよ」


バルバトスの声に反応して、暗く縦長の楕円形の渦が現れる。


「では、またの機会に」


「待て! っ⁉︎」


バルバトスを逃すまいと跳躍

するが、2匹の怪物が行く手を阻む。

青年はそれを剣を横に一閃。四つの肉の塊へと変える。

しかし、バルバトスば完全に消えた後であり、そのまま誰もいない空中へと飛び上がる。


「……」


地面に着地すると、悔しそうに顔を歪めていた。

そこへ1人の少女が物陰から出てくる。


「お兄様、もう少し周りの事を考えて行動なさいますように。私には責任を取ることが出来ないのですから」


物陰から出てきた少女は、長い髪の毛を一つにまとめ左肩から前へと垂らしている。こちらは青年とは違い派手な色の服装ではなく、町娘が着ていそうな水色のシャツと紺のスカートと質素なものだ。その上から青年と同じものを羽織っておりこちらはこちらは帯刀しておらず、騎士というよりは魔術師のような雰囲気が漂っている。


「ごめん、クラリア」


「いえ、謝られても困るのですが」


クラリアと呼ばれた少女は両手を顔の前でブンブンと振り、本当に困っているような表情を浮かべている。


「後でちゃんと叱られるから。今は町にいる個体を仕留めに行ってくる。クラリアはその間、そこの怪我人を見といてくれ」


少女は「わかりました。お気をつけて」と答えると、クレスのところまで歩く。


「じゃあ、行ってくるよ」


青年は剣を鞘に戻し、鞘に手を添えながら走り出す。その速度は常人のそれを軽く超えており、瞬く間に姿が見えなくなる。


「お兄様ったら無理やり傷を塞いで。これでは元通りにはなりそうにありませんね。これも含めてお兄様の所為ということにしておきましょう」


少女はクレスの肩に片手を置き、もう片方を自分の胸元で握りしめる。するとその場所から緑色の光が放射状に伸び、やがてクレスの体を包み込む。


「……この方が目を覚ましましたら私も町に降りましょうか」


緑色の光は優しく2人を包み込む。


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