22 炎は未だ燃え続ける
遅れて申し訳ないです(>_<)
上空で突如現れた赤いカーテン。カーテンはクレスとバルバトスを囲む形で存在し、ある種結界のように思われた。そして、クレスの原理の分からない移動や、変則的な武器による攻撃、それはアリスに勝利を確信させるには十分であった。ゆえに、上空で起きた爆発にも似た魔力の発散に驚愕せざるを得なかった。
「なに、あれ?」
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「まだそんなもん隠してたんだな」
目の前にいるバルバトスはさっきまでの人間の風貌に近かったものではなくなっており、人に恐怖を与えるのに適切な姿であるように思えた。恐らく、身体能力などおよそ闘いに必要な能力は向上しているだろう。
「もっとも、遅すぎるけどな」
今発動させている炎舞は、半径数十メートルの円形の結界を作り出す。そして、その内部にいる限り、変幻自在の武器、瞬間移動にも似た移動速度を得る。
「ならば、やってみるがいい」
その技の能力がクレスの自信へと繋がり、事実この技は十分に強力なものだった。しかし、クレスには圧倒的に場数が足りなさすぎた。悪魔という生物を過小評価していた。
「やはり、移動速度が上昇しているだけ。瞬間移動という訳でもなく、その他の速度も変わらないのなら貴方は実に読みやすい」
瞬間的に差を詰めばるに斬りかかるが、二刀は容易く手で受け止められ、半ば辺りからパキリと音を立てて折れてしまう。
「なっ⁉︎」
バルバトスは刀を折ったその右手で手刀を繰り出す。クレスはそれを後ろに流れる事で避ける。
「もう貴方に勝機は万に一つもない。十分楽しみましたし、すぐに楽にして差し上げますよ」
バルバトスは少しずつ距離を詰める。さらに、人差し指から一筋の光が伸びる。あの時、エリシャを殺した光。
「神光。この技は特別な相手にしか使わない技なので、滅多にお目にかかれないものです。とはいえ、この技を見た者は全て殺してきているので、あまりこの技の存在は知られていませんが」
バルバトスがアリスとグレムの方を見る。
「あの者は殺し損ねましたが、どちらにせよすぐに死ぬでしょうが」
バルバトスの言葉に固まってしまうクレス。バルバトスはその一瞬の隙を見逃すはずもなく、神光をクレスに突き刺そうと迫る。それを間一髪のところで後ろへと回避する。神光が届くはずのない十分な距離を取る。
「それじゃ無意味ですよ、光は目に見えるものだけではないのだから」
言葉の意味を理解した時にはすでに遅かった。
超高温の見えない光が、ぐじゅりという音を立て左肩が焦がす。
「ぐわぁあ!」
貫かれた傷口からは血が出る事がなく、高温で焦がされた左肩は動かす事ができず、従って左腕も動かせない。
「……まさか見えない攻撃をされるとは思わなかった。その光の射程を甘く見過ぎた」
傷口を抑えながら呻く。
「そう気になさらずとも、初撃で致命傷を与えられなかったのは初めてですから、落ち込むことはありませんよ」
バルバトスは依然、余裕の表情を崩さない。そして、突きのままにしていた腕を引っ込め、もう一度攻撃態勢をとる。
「今度も突きか、もしくは別か。どちらにせよ見切ってやる」
クレスは神光の特性を肩を焼かれながらも考えていた。
神光の見えない部分が放射的に、つまり鞭のようにしなりながら対象に当たるのか、それとも直線的に伸びるのか。
光である以上、後者である可能性が高い。しかし、魔法の一種でもあるため、前者でないとは言い切れない。
詰まる所、それらを踏まえて見切るしかない、ということだ。
バルバトスの神光、その根本であるバルバトスの右腕の動きに集中する。
バルバトスは腕を突き出すのでは無く、右から左へと横に払った。
「今度は払いか!」
クレスは上へと流れ、回避する。と同時に、一振りの剣を精製し、バルバトスから離れた所に投げ、光の軌道上で静止させる。
すると、光の見える部分の直線上に剣が重なる時に剣が真っ二つになったのち、砕け散った。
「てことは真っ直ぐか」
大体の構造を理解したクレスは下にいるアリスに聞こえるように声をだす。
「アリス! 今すぐグレムを連れて逃げろ! 手当はあとにして、 今はこいつから出来る限り離れることだけを考えろ!」
クレスの声が聞こえたのか、アリスは多少もたつきはしたものの、グレムを精霊の力で浮かして逃げ去っていく。
「どうしました? あきらめることにしたのですか?」
「お前の攻撃が当たらなくても、お前を傷つけれないなら勝てないからな」
アリスが逃げるために十分な時間を稼ぐ必要がある。そのため、覚悟を決める。
「正直体が保つか怪しいから使いたくなかったけど、そうも言ってられないからな。 イラプション、弐の型・炎」
クレスの体が炎に包まれていく。というより炎と一体化していく。
「最後の悪足掻きを見せてやるよ」




