20 実力
今回も短いうえに、遅くなってしまい申し訳ないですm(_ _)m
初めに目に入ってきたのは、嵐が通り過ぎた後のように荒れ果てた公園だった。凍りついた噴水や、燃え盛るベンチ、周りに立っていた木々はほとんどが倒れている。そして、一段と荒れはてた場所に、地面へと横たわっているグレムと側に立つバルバトスがいた。
その異様な状況を目にし、想像を絶する闘いが有ったことが容易に察せられた。
「お爺様⁉︎」
その惨状を目の前に、アリスの感情が昂り、グレムが横たわる場所へと駆け寄ろうとする。
「待て、アリス」
そのアリスを静かな声が静止する。
「クレス?」
アリスはクレスの意図がわからないわけではなかった。それどころか、我を忘れていた自分を愚かに思っていた。それでも、クレスがこの惨状を見てなぜここまで冷静でいられるのかわからなかった。
「アリス、お前はあいつに近づくな」
「でも、お爺様が!」
「わかってる。でも、今はあいつの近くに行くな。お前も爺さんみたいにやられたいのか」
アリスとしてもそんなことはわかっている。それでもこのままじっとしていては、どのみちグレムが助からなくなってしまう。
「あいつは俺が引き離す。そのうちに爺さんと一緒に離れとけ」
今度こそ、クレスの意図がわからなかった。それはどういう意味か、と聞こうとしたが、それはクレスの声でかき消された。
「バルバトス、お前に話がある。エリシャという名に聞き覚えは?」
アリスは誰の事なのかわからなかったが、バルバトスには正しく伝わり、結果的にクレスの顔を歪ませる事となった。
「ええ、知っていますとも。私が殺したものの名ですから。」
つけ加えるのなら、と続けるその顔は悪魔のそれであった。
「貴方の母君でしたかね」
その瞬間アリスの横を風が通り過ぎる。その風がクレスだと気付くまではそう時間は要らなかった。
「貴様が、母さんを!」
風は荒々しく怒り狂い、それでいてどこか哀しみも含んでいた。
「バルバトス! 貴様だけは、絶対にこの手で!」
「貴方は私を愉しませてくれるのですかね?」
クレスは2人距離をすぐに縮め、嵐の速度に乗った拳をバルバトスの頭部目掛けて放つ。
しかし、その拳はバルバトスに当たる事なくそのまま通り過ぎる。
「まるで素人の闘い方、話にならない。いや、貴方は本当に素人なのですから仕方ない事ですが」
クレスの初撃を悠々と躱し、その腹を軽く蹴り上げる。それだけでクレスは空高くに打ち上げられた。
「かはっ」
アリスは目の前の光景に絶望してしまった。
勝負は最初からわかりきっていた。クレスが闘いにおいて素人なのに対して、バルバトスは一番闘い慣れしていたであろうグレムを凌ぐほどの力を有しているのだから。
しかし、クレスは諦めていなかった。全ては布石だったのだから。
「我は咎人、天の箱を持ちし咎人。我は欲深く、罪深い。我が箱は戒め。我が罪への罰なり。……顕現せよ、『災厄の箱』ーー」
アリスとバルバトスはクレスが何をしようとしているのか、何のために上空に飛ばされたのか、すぐに理解出来た。
そして、バルバトスはクレスの詠唱を止めようと空へと上がるが、荒れ狂う風が邪魔をする。
「ーー第1の箱・『災害』、解錠ーー」
そして詠唱の最後、結句を告げる。
「ーー燃え盛れ、イラプション」
詠唱が終了し、右手に炎が現れる。
「油断しましたね」
その炎が形を変える瞬間、バルバトスが自身の懐から刀を取り出し、斬りかかる。
「油断なんか初めからしてねぇよ」
しかし、それを右手の炎で受け止める。
「なんと、炎の刃とは。美しいものですね」
右手の炎は徐々に輪郭がはっきりとし、その形は正しく刀であった。全てが炎だというのに揺らめく事がなく、遠くからでも、刀身が綺麗な臙脂色をしているのがわかる。
「とっとと終わらせてもらうぜ、バルバトス」
「先ほどまでは演技ですか、おもしろい」
一旦距離を取った2人は一気に距離を縮め、剣戟を始める。




