19 真意
今回は短めです。申し訳ないですm(_ _)m
クレスの契約の儀が終わる少し前。悪魔と老人の戦いは一方的なものへと変わりつつあった。
「まさか温存していらしたとは。さすが、歴戦の猛者は戦いというものに慣れていらっしゃる」
挑発的な笑みを浮かべ、無傷のバルバトスが満身創痍のグレムへと歩み寄っていく。
「しかし、やはり貴方では力不足ですね。私を愉しませてくれる者は、クレス・ハザードしか居ないのでしょうか」
バルバトスは、まるでクレスという人物を知っているかのように話す。
「貴方方があの少年を連れてきてくれたのは大きな誤算でした。それでも、これほど早く再会できた事は喜ぶべきでしょうね」
バルバトスの言動には、クレスへの親しみが見え隠れしていた。
「貴様、クレスとはどういう関係だ」
敵の一挙手一投足を見逃さないよう細心の注意を払う。
「お答えしても構わないですよ。ですが」
だから、周りの事に気が回らなかった。
「その前に私に気をとられすぎです。感心しませんね」
真後ろから、魔力の奔流を受ける。グレムの体は激しい衝撃を受け空中へと浮かび上がる。そして、上からの新たな衝撃で地面へと叩きつけられる。
「がはっ」
「退け、下郎が。貴様如きがマスターと対等だと思うな」
新たに現れた全身が赤い悪魔と青い悪魔。2人の悪魔はバルバトスに対し片膝をつき、頭を垂れ、なにやら話している。意識を手放しかけている状態でも、最後の言葉は聞こえた。
ーー我々が此処に戻ってくるまでに2人の気配を感じる事は無かったため、恐らく死んでいるか、逃げたものと思われますーー
2人の悪魔が話す2人が、アリスとクレスであるという事は、働かない頭でも容易に辿り着く。
「では、私はやる事があるので先に戻っておいて下さい」
バルバトスの言葉に答え、悪魔は闇へと紛れていく。
「わすれていました。もう分かっているかも知れませんが、私は任されて此処に居たのではなく、自らの意思で此処に残っていたのです」
グレムに反応する余裕は無い。意識がほとんど無いのに加え、さきほどの悪魔の話が気になる。
「貴方を足止めし、私の計画の邪魔をされ無いために。2人を見逃したのは、彼に能力を手に入れてもらうため」
バルバトスは、グレムが話を聞いていようがいまいが、関係無いとでも言うように話を続ける。
「……さすがは、元将軍。思いの外手間をとられました。ですが、老いには勝てないということですかね」
バルバトスはグレムを見下ろし告げる。
「今や右の腕は私の部下に捥がれ、左の腕は凍傷によりうごかせない。もはや貴方に戦えるだけの余力はない」
右腕を自分の目の前へと持っていき、指先から白い光を発する。
「ならばこそ、楽にして差し上げましょう」
右腕を老人に向けて振り下ろすーーその時、新たに2人の気配を感じる。
「……これは、これは。面白くなってきましたね。やはり生きていましたか。貴方のお孫さん方が戻られたようだ」
遠くから魔力の塊と共に、自身の名を呼ぶ声が聞こえてくる。
「さあ、貴方の手に入れた力、とくと見させてもらいますよ。クレス・ハザード」
2人の安否が判り、手放しかけていた意識を完全に手放す。




