17 契約の儀・終
バルバトスの指先から伸びた白い線が、ちょうどエリシャの心臓のあたりを貫く。バルバトスが指をあげると、それに従い、白い線がエリシャの胸から肩までを切り裂く。
「がっ⁉︎」
「申し訳ないのですが、貴方の存在は、我々にとって邪魔にしかならないのです。なので、ここで息絶えてもらいます」
「貴様! 何の、真似だ!」
「貴方の命はもう長くは保たない。これ以上の長居は不要。失礼させてもらいます」
「逃がすものか、雷斬!」
エリシャが叫びながら、手を広げながら前へと突き出す。すると、掌から一筋の光が走る。その光がバルバトスへと一直線に伸びていくーー
「まだそんな元気があったとは」
当たる直前、バルバトスはその光を腕で弾き飛ばす。と同時に、雷鳴があたりに響く。
「そんな⁉︎」
「まさかその状態で詠唱を省略した魔法を使えるとは、流石ですね。詠唱でもされていれば、火傷じゃ済まなかった」
光を弾き飛ばした腕には、一筋の線が入っている。
「ですが、今の貴方はその程度という事です。••••••戻れ、我が傀儡達よ」
バルバトスの言葉に応えるかのように、二体の化物はバルバトスの指輪に吸い込まれていく。
「やはり、奴らは」
「ええ、私の契約している魔獣の一部です。約束通り、片付けて差し上げましたので、これで本当に失礼させてもらいます。••••••繋げ、異界の門」
「これで、我が繁栄もそう遠くはない」
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世界が自分を中心に削られていく。いや、正確には元の状態に戻っていく。つまり、過去の試練はこれで終わりだということだ。
「どうだ? 自らの過去をもう一度覗くのは。言い忘れておったが、本来この試練は行う必要はない。じゃが、其方には行ってもらった。その意味がわかるか?」
全体が暗く染まり、目の前に突然現れるカルマ。その質問に、過去を見て作った仮説を話す。
「俺は、唯の人間じゃない。それも、悪魔と人の混血。だからこそ、力を御すために自分を知る必要があった。違うか?」
その答えを聞き、満足したのか、口元を歪める。
「やはり其方は面白い。••••••何か質問はあるか?」
「いや、何もない。試練が自分を知ることなら、もう終わっているはずだ。俺はお前にふさわしいか?」
「もちろん、相応しいとも。それでは、契約を始めようーー」
3つの試練を終え、残すは最後の祝詞のみ。
「我、運命を綴じられし者。彼の運命を閉ざす者を排除し、彼の運命を閉じる者なり。果実は「大罪」、我が名はカルマ。我は彼の綴り手となろう」
暗かった世界に急速に光が広がる。
「これで、我と其方は一心同体。よろしく頼むぞ?」
「こちらこそ、よろしくな」
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意識が覚醒していく感覚はいつだって不快感を伴う。寝不足の次の日なんかは、一日中その不快感が付きまとう。それでも、近くに誰かがいるということは、それだけで体が安心する。もちろん、親しい間柄でなければ寧ろ最悪の目覚めになるが。
「••••••」
ゆっくりと目を開ける。ずっと閉じていた影響で光が眼に突き刺さる感覚を与える。
それでも何とか開けた状態であたりを見回すと、傍には少女が静かに寝息をたてていた。
「••••••くれす?」
手を伸ばし、少女に触れようとすると、その少女は目を覚まし、自分の名を呼ぶ。
「良かった、本当に。お疲れさま、クレス」
少女は満面の笑みで優しく労いを口にする。
「悪い、心配かけたみたいだな」
だからこそ、自分も相手への感謝の言葉を忘れない。
「ありがとな、待っててくれて」
感謝の言葉を口にすると、近場で魔力の塊が動くのがわかった。おそらく、契約を通して魔力の感知もできるようになったのだろう。
「おめでとう、クレス君。僕は信じていたよ、君の事をね」
「そりゃ、どうも」
「本当だよ? まあ、そんな事より」
ユグドラシルは口元を歪め、その先を続ける。
「良い報せと悪い報せ、どっちを先に聞きたい?」
最近忙しくなりつつあるので、来週からは二週に一回のペースになりそうです(~_~;)
それでもひと段落つくまでは辞めないつもりです。
拙い文章ではありますが、暖かく見守っていただければ、と思いますm(_ _)m




