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アナザー・ワールド 〜 the oldest hero 〜  作者: とんぼ
第1章 闇より生まれし星
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16 『過去』

ーー長閑でどこにでも有りそうな小さな村。

村のみんなとは、すごく小さな時からお世話になってたらしいけど、正直あまり覚えてない。

小さな村といっても、同世代の親しい友人と呼べる者がいなかったわけじゃない。

それでも、あまり外で遊ばず、母親にかまってもらっていたような気がする。

そのことをみんなにからかわれたりもした。

村のみんなのことが好きだった。

いつまでもこんな日常が続くと思っていた。

でも、そんな何でもない日常はある日を境に失われた。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※※


どこから来たのかわからない化物が村を襲っている。

喰われていく人々、破壊されていく建造物の数々。


化物に向かっていく大人は、1人として原型を留めていない。

子どもは、目の前の光景に唯々泣き叫ぶことしかできない。


容易く人が死んでいく。建物に潰され、踏み潰され、切り裂かれ、噛み砕かれる。どんな人も、最後には腹の中に入っていく。


家の下敷きになって動けない女性と、それを助けようとしている少年。何か叫びあったかと思うと、少年は走り去る。


それでも、唯の子どもが化物から逃げ出すことが出来るわけがなく、母親のところまで殴り飛ばされる。

自分が経験したあの日のように。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※※


ここまでボンヤリと観て初めてわかった。いや、本当は最初からわかっていたのかもしれない。カルマの『向かい合え』という言葉は、こういうことだったのだろう。

自分の『過去』から逃げずに『向かい合え』、つまりはそういうことなのだろう。


「くそ••••••ッ! こんなもん見せて何がしたいんだ。もう十分後悔した。夢でも見た。これ以上どうしろっていうんだ!」


目の前の光景は、クレスのことなど関係ないかのように、尚も続く。クレスの知らない光景を。


「ちょっと待てよ、まだ続くのかよ、これ以上俺は知らないぞ、こんなのは俺の記憶にはないはずだ。••••••そもそもこの状況で、どうやって俺は生き残ったんだ?」


クレスの疑問の答えは、目の前で起きているその光景が答える。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※※


新たに現れた化物。二体になったソレは、我が子へと這い寄る母親に標的を定める。


「••••••⁉︎ クレスだけでも、逃がさないと」


目の前に転がるクレスへと手を伸ばす。先ほどから全く動かない。体は熱を持っており、いまだ血が流れ続けているのがわかる。それでも、瀕死の重傷であろうことは疑いようがない。


「下敷きにさえならなければーー」


「おやおや、こんな処にいらっしゃったのですか? 捜しましたよ。我らが姫、エリシャ・ハザード様」


そこには1人の悪魔がいた。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※※


クレスは状況を処理しきれないでいた。

自分の知らない過去の続き、どこから現れたのかわからない悪魔、そして悪魔に姫と呼ばれた自らの母親。そのうえ、悪魔の顔には見覚えがあった。


「バルバトス⁉︎ なんであいつが! いや、そんな事より姫ってどういう事だよ」


わからない。自分が知る限り、悪魔との関わりがあったとは思えない。それなのに何故、バルバトスは面識があるように話しかけたのか。もし母が悪魔の存在を知っていたのだとして、何故自分には何も話さなかったのか。何故。


クレスの中で、自問だけが続くなか、過去は先へと進む。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※※


「貴方は、どなたですか? その服装、バルバトス家のものですか?」


姫という言葉に、体が反応してしまう。体が下敷きになっている事も忘れ、目の前の悪魔に問いただす。


「えぇ、お初にお目にかかります、バルバトス家現当主バルバトス・ジ・デュークと申します」


「現当主? 何を言っているのですか? 現当主はザスのはずですが」


自分の記憶の中にある悪魔の当主を思い浮かべる。


「あぁ、そういえば知り合いでしたね。バルバトス・ザス・デューク、我が父上は私が殺しました。よって現当主は私、という事です」


「⁉︎」


「信じられませんか? 無理もない。本来、当主は一族最強の者が務める。つまり、私が父上よりも強かったという事ですよ」


当主だと主張する悪魔は、尚も話を続ける。


「そのような話よりも、一つお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」


「聞くだけなら。その前に、瓦礫をどこしてもらえますか」


「そうですか、ありがとうございます」


瓦礫をどかしながら微笑む、その顔があまりにも邪悪であり、全身に寒気が走る。


「では、死んでもらえませんか?」


次の瞬間、立ち上がった自分の胸を一筋の光が突き刺す。


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