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アナザー・ワールド 〜 the oldest hero 〜  作者: とんぼ
第1章 闇より生まれし星
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11 自分の未来

ーー僕は、ユグドラシル。よく間違われるんだけど男ということになってるからーー


見えるし聞こえもするのに、それ以外は何も感じることができない。まるで実体を持っていないかのように。


ーーここは、アイテールが作った世界なんだ。いわば精神世界のようなものだと考えてくれて構わないよーー


目の前には先程から、中性的な印象を受けるヒトが浮いている。というか、天地がわからないから浮いているのかどうかもわからない。


ーー今の君は魂の状態なんだ。だから、君は話すことはできないし僕に触ることもできないーー


話しながらクレスへと向かってくる。ぶつかると思われた体は、何の障害も無かったかのように通り過ぎていく。


ーーほらね? でも、君が考えていることは僕に伝わってくるから大丈夫だよ。••••••それで、アイテールがここに連れてきた理由なんだけど、なんだかわかる?ーー


ーーわかるわけがない。第一、俺が知らないうちに勝手に連れてこられたんだ。そんなことはどうでもいいから。早く帰してくれーー


ーーつれないなぁ。理由はね、簡単に言うと進路相談みたいな物かなーー


そう言うと1冊の白い装丁の本を取り出した。そこには、何やら絵と文字が書かれているようだが、文字の方はわからない。だが、絵の方は人と何か大きなものが一緒に描かれている。


ーーふむふむ、君はこういう過去を持つのか。そして君は今、彼らに復讐したいわけだな。あまり好みじゃないけど君のことはよくわかった。じゃあ、君の未来を決めようかーー


本を読んでいるうちに、顔が険しくなっていき、最後は腑に落ちないながらも、結論が出たようだ。


ーー最初に言っておくと、この本はその人の過去から現在が記されており、君の未来は今から記していく予定だよ。アイテールは時辞書アカシャと呼んでいるんだけどーー


険しい顔のまま、話を続ける。


ーー果実は、その人の未来に呼応して能力を与える。ここで一つ、断っておかないといけないことが有るんだけど。君の未来は何も記されていない状態で保つよう、アイテールに言われているんだ。こんなこと初めてだから、推察するにおそらく黒く塗りつぶしたらいいと思うんだーー


ーー黒く塗りつぶしたらって、記されることになるじゃないか。ーー


ーーアイテールの指示通りだと、『何も記されない状態にしろ』だったから大丈夫だと思うんだーー


なんだか理にかなっているようで、むちゃくちゃな気もする。


ーーわかった。なんでもいいから早くしてくれ、とっとと戻らないとアリスが心配する。今の俺は魂が抜けてる状態なんだろ?ーー


ーーおっと、そういえば君には連れがいるんだったね。では、始めるよーー


そう言うと、ユグドラシルは本を手放した。落ちるかと思いきやその場に留まり、ユグドラシルの体同様、宙に浮いているように見える。

不意に、ユグドラシルの背後に幾何学模様のような規則正しいが奇怪で見たことのない模様が浮かび上がる。

模様は次第に大きくなり初めは頭の大きさほどだったものが、今では体の一回り以上もの大きさになっている。

すると今度は突如としてユグドラシルの右手と本が光始めた。


ーーもう一度聞くよ? 君は、本当に力が欲しいのかい?ーー


ユグドラシルの言葉からは躊躇いが感じられた。だからクレスは迷うことなく答えなくてはいけない。ユグドラシルの躊躇いを消すためにも、クレス自身の不安を消すためにも。


ーーもちろん。俺は力が欲しいから神樹に入ってきたんだーー


一瞬、ため息が聞こえた気がした。


ーーわかったよ。僕から言えることはもう何もない。••••••我、果実を授けん。果実の名は『大罪』ーー


ユグドラシルが祝詞のようなものを口ずさむと、本の白い光が暗くなっていく。


ーー目覚めた先に果実があるはずだよ。でも、僕はあまりお勧めできない。それでも決めるのは君自身で、未来も君次第だ。幸運を祈ってるよ、だから頑張れよ?ーー


やがて本の光が黒く染まり、それを見届けたと同時に、また意識がフェードアウトしていく。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※※


クレスを現実世界へと帰したあと、精神世界にはクレスと入れ替わりにある人物が入り込んできた。


ーー余計なことはするなと言っただろーー


ーーごめんよ? でも、ちゃんとあの子には『原罪』の果実を授けたんだから、別にいいでしょ。僕は嫌だったんだからーー


すると、相手から呆れているような反応が返ってきた。


ーーあいつのことを気に入ったのか? どこがそんなに気にいるーー


ーーそれこそ愚問ってもんじゃないかな。グレムの孫が気に入り、グレムと僕も気に入った。それだけでいいと思うし、君自身も気に入ったんじゃないのかい? 君が干渉してくるのはそういう時だけだからね。そうでしょ、アイテール?ーー


相手の方は、楽しげに答える。


ーーふん、私を楽しませてくれる器であればいいのだがなーー


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※※


微睡みの中、自分を呼ぶ声がする。


ーークレスーー


誰が自分の名前を呼んでいるんだろうか。なんだか、聞いたことのある声だ。


ーークレス、起きてーー


聞き覚えのある声のおかげか、少しずつ瞼が上がっていく。少しの光でも、目に入ると痛く感じる。


「クレス⁉︎ 良かった、大丈夫? 私がわかる?」


「••••••アリス? なんで、そんな顔」


彼女の顔は、ぐしゃぐしゃになっていた。


「何でって、心配したんだから! 急に目の前で倒れられた身にもなってよ!」


アリスの怒声に、少しずつ頭も動いてきた。そして、こうなるに至った経緯を全て思い出した。


「••••••そういうことか。悪いな、心配かけた。ちょっと呼び出し食らって顔出してただけだから心配すんな」


「呼び出し? 顔を出してたってどういうこと?」


「それはまた後日って事で、それより俺らの進行方向はどっちだ?」


意識をなくし、倒れた際にどっちから来たのかわからなくなっていた。


「それはこっちだけど」


アリスは右を指差して答える。


「じゃあ、行きますか。その先に果実があるみたいだからさ」


「え、それってどういう」


アリスの言葉が終わる前に、前へと進み始める。一つの目的のために。




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