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アナザー・ワールド 〜 the oldest hero 〜  作者: とんぼ
第1章 闇より生まれし星
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10 洞窟の中で

穴の中は、少し入ったところですぐに横に折れ曲がり、まるで小さな洞窟のように成っていた。神樹の内部構造がどうなっているのか、いよいよ考えるのもバカバカしくなる。


「これなら精霊術使わなくて済むな」


「うん。そろそろ精霊術が解けそうだったから、落とさなくって良かった」


よほど疲れることだったのか、息が上がり、顔も苦しそうに歪めている。


「少し休むか? アリスに倒れらたら俺1人じゃどうすることもできないからな」


「ん、大丈夫。心配されなくても、いつもこんなだし、クレスよりもしっかりしてるから」


アリスの今の状態を見れば、それがいつもの憎まれ口ではなく、ただの強がりだと分かる。


やっぱり休もう。グレムには悪いけど、アリスのことを考えると仕方ないだろ。


「アリスの言うとおり、俺の方が疲れてもう歩けないから休ませてくれ。体力が無いと果実を食うのも儘ならないんだろ?」


アリスは驚いたかと思うと、すぐにどういう意図なのか考え、最後は申し訳なさそうな顔をして了承した。


「••••••わかった。じゃあ少しだけ」


しばらくして、アリスの顔色がマシになってきたのを見計らい、洞窟の奥へと進み始める。


「ところでさ、下でも思ったんだけど、ここってなんで明るいんだ?」


洞窟は広場と同じく、あちこちに水晶があるような構造になっており、光源らしきものは見当たらない。

すると、アリスは何を今さらというふうな顔で答える。


「たぶん、水晶自体が発行している。恐らくこの水晶は魔石の一種だと思う。••••••付け加えると、魔石っていうのは魔力を吸収、発散ができる石のことで、魔力を発散する時に発光したり、発熱したりするの」


どうせわからないだろうから説明してあげる、と言外にほのめかされた気分だ。実際そうなんだろうけど。

それからも洞窟は続き、さらに水晶の発光現象も見る見るうちに無くなってきた気がする。アリスによれば、水晶自体が少なくなってきているかららしいけど、俺はそれだけじゃない気がする。


不意に変な声のような物が聞こえてきた。


「?」


「どうしたの、クレス?」


「••••••うめき声みたいな。いや、それも違う。よくわからないけど、音が聞こえた気がしたんだが。アリスはなんか聞こえたか?」


「さっきから音らしい物は、ワタシたちの足音ぐらいだと思うけど」


そう言うと、アリスはついに頭がイカれた? などと言い出す。そんなわけねぇだろ、とクレスが返すと同時にそれは聞こえてきた。


ーーお前は、誰だ?ーー


「っ⁉︎」


今度こそ、はっきりと聞こえてきた声にクレスは立ち止まり、あたりを見回す。誰もいないことがわかっていても。


「本当に大丈夫? さっきから挙動がおかしいのだけれど」


アリスは本当に心配そうにクレスを見ている。だが、当の本人はそんなことには構っていられない。


ーーお前は、誰だ?ーー


再度聞こえてきた声に、今度は怒鳴るように答える。


「俺は、クレスだ! お前は誰なんだ、どこから話しかけてやがる!」


「クレス? 誰と話してるの?」


アリスはいよいよ不審に思い始めるが、そんなことは知らない。今はこの声のほうが大事だ。そんな気がする。


ーー我は、アイテール。お前は、なぜ進む?ーー


再び聞こえてきた、アイテールと名乗る声に、若干戸惑いながらも少し冷静になり、声の問いに答える。


「俺は力が欲しい。そのために果実が欲しい。それじゃ不服か?」


ーー確かに、この先には果実があるーー


声に耳を傾けていると、次第に周りのことが気にならなくなった。


ーーだが、お前に力を得る覚悟と資格があるのか?ーー


「覚悟はある。資格は正直、俺にはわからねぇ。でも、だからと言って諦めるつもりもない」


そこは、クレスとアイテールと名乗った声だけの世界となっていた。


ーーでは、力の業を持つことはできるのか?ーー


「業? そんなもん、知ったことか。何が何でも、俺にはやらなきゃならないことがあるんだからな」


ーー面白い、お前には興味が湧いてきた。せいぜい楽しむがいいーー


その声が聞こえてきたと同時に、意識がなくなっていく。完全に意識を失う直前、誰かが自分の名前を呼ぶ声がした。



※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※※


ここは、どこだろうか。自分はどうなっているのだろうか。何が、どうなっているのか。何も見えない、何も聞こえない、何も喋れない、何も臭わない、何も触れない、何もかも感じない。


そのうちに、自我も消えかけてくる。


誰だ。自分は誰なんだ。思い出すこともできない。思い出すって何を。自分って何のことだ。わからない。何もわからない••••••


そして、突然声が聞こえてきた。


ーー起きろ、クレス君。君はいつまでそうしているつもりだい?ーー


消えかかっていた自我が形を成していき、それに合わせて五感も回復し、急速に意識が覚醒していく。そして、自分が人の形を成していないことに気がつく。


ーーやっと、お目覚めか。もう少し愉しみたかったんだけど、アイテールが後でうるさいからね。クレス君、で良かったよね?ーー


目の前にいるそれは、こちらの返答は気にしていないようで、話を続ける。


ーー君にとっては初めましてかな。僕は、ユグドラシル。君らには、神樹なんて呼ばれているものだよーー



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