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crimson cage 【side:KING】 百舌鳥   作者: 蜜熊
第4章:遊戯
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十弐日目ー①

「……」


「先輩、目、超怖いっす」


「……うるせぇ」


変わり映えのしない朝の会議。浮かんでこない目撃証言。

ただ猟奇的な事件だけが目の前に残されていて、今日も俺達は影が見えない鳥の残像を追うことになる。


システム上にいくつか容疑者は浮かび上がっている。


今の時代、何らかの証拠があれば、科学や情報を駆使して解明することは昔に比べずっと簡単になった。

何せ人が空を飛び、宇宙へ行く時代だ。その代わり犯罪も複雑多様化して、中には動機さえわからないまま犯人だけが意味深な笑みを浮かべるだけで終わる事件もある。


昔に比べ科学は、捜査はずっと進歩した。


昔あったと教本にあった靴のかかとをすり減らして事件を追うような事は減った代わりに、犯罪者の数は減りもしなかった。


俺達が進化すればするほど、犯罪もまた同じように進化して、ウイルスとワクチンのような関係は今も変わらない。


ただ、昔はこういう病原菌が原因でかかった性質の悪い病気だとわかっていたものは、様々な薬と医学を終結した結果治ったという結果だけが残されて、何が原因だったがはっきりするものは減ってしまったような気がする。


それだけ、人の心が複雑化してしまったのか、それとも退化したのか。


(……何らしくないこと考えてんだ)


この疑問はずっと答えが出ない事だってことは、親父の事件からずっとわかってきたことだ。今さらそれで俺の立ち位置が変わるわけでもなければ、立ち止まって何かが解決するわけでもない。


(……百舌鳥)


ドールの話では、時系列的には2件目の殺人事件と3件目の殺人事件の間に“片づけ”したようで、少なくとも3件目の事件については、そいつが知る百舌鳥と呼ばれている受刑者は手を出していない。


(俺が最初にあそこにいったときに托卵されたヤツがまさか百舌鳥だったとは…)


そのときはすでにKINGによってマークされていたから、外に出ることは出来なかった。


そもそも外に出られるヤツはKINGもしくはQUEENに許可を受けた奴だけで、それもターンが終われば元に戻らないといけない決まりがある。


『それなのに守らなかったからKINGが処分しろって』


王と女王はお互いの決定に口は挟めないような口ぶりだったが、ターンと名付けられた統治月が替われば、その前の月に許されていたものは許されなくなる。


確かに思えば2つ目の事件が明るみになったときは、月の終わりの頃で叔父さんに例の写真を見せられたのは次の月の始まりだった。


(ウソをついていたような感じはなかった)


もしかしたら知らないのはあいつだけで、KINGなら知っていたのかもしれない。


(あーやめやめ!)


今更関係していることは明白だが、事件の犯人じゃないヤツを疑っても事件は解決しない。


百舌鳥は死んで、今生きて3件目の事件を起こしているのはさしずめ“模倣犯”だ。


あの檻の中で騒がしくなっていないということは、模倣犯はこちら側にいるのかもしれない。

何となくだがそんな気がする。


自分のテリトリーは掃除したが、困ったことにそれを真似るモッキンバード(物まね鳥)が出てきた。

だから檻の外にいる人間にそれを排除させようと動いている。そのために、自分の飼っているヤツを俺達に差し向けた。そう考えるのがむかつくが話の筋が通っている。


(となると写真は誰が取ったのか)


犯人自身が自分の功績を残すためにやったものか、それをたまたま目撃していた誰かが撮ったものか。


それにどうやって真似することが出来たのか?この捜査情報は1番最初の事件が起こってから、情報はシャットダウンされている。

1件目を真似して3件目を起こしたと考えてもいいが、そうなると時間的にあまりにも出来過ぎている感が否めない。


2件目が起こり、それを知っていて次の獲物を待って3件目を起こした。わざわざ今度は発見を遅らせて。


模倣犯であるのならば、事件がまだ騒がれている内に起こそうとするのがだいたいだが、これは事件をそのまま誰かが受け継いだようなタイミングで起こっている。


(まるで百舌鳥が2匹いるみたいだな)


1匹は檻の中、そしてもう1匹は檻の外にいた。


「……」


「御槃、お前何つー顔してんだよ」


「え?あ、すいません…」


「おら、この前は行けなかったんだから今の内にサイバー対策班のとこに挨拶でもして来いよ」


班長の一言に顔が思わず苦虫を噛んだようなものになる。別にパソコンが苦手だとか・・・それはあるけど、同じ警護官として部署は違えど同じ捜査に携わる奴らに苦手意識を持っている訳じゃない。


ただ強いて言うならば、極力立ち寄りたくない。


極力買いたくもない喧嘩に巻き込まれたくない。それに尽きる。


「御槃 大護!」


(言った傍からかよ……)


後輩の影に隠れて移動していたはずなのに、相手はそんなことお構いなしに俺の微妙なコンプレックスでもあるフルネームを連呼しながら近づいてくる。

今日こいつが当番というのを知っていたらそもそもこいつの城内まで入っていくような馬鹿な真似はしなかったと思うが、すでに虫の報せのような嫌な予感は入る前からあった。それに従わなかった自分が悪い。


「あなたはいつもいつも…っ」


「いつも……?」


「っ!目障りなのよ!用がないならさっさとこの場から出ていきなさい」


「お前が気に入らないなら俺は出ていくが、こいつらまでは邪険に扱ってやるなよ」


「あ……っ」


これ以上言い争いをしても疲れるだけだし、周りの目もある。


そう思いながらそそくさと部屋を出て行こうとすると、後ろから最初に名前を呼んだのと同じようなトーンで呼び止められたが、振り返ればさらに火種が大きくなるのは目に見えている。ここは振り返らないのが吉だ。


「ま、待ちなさい!御槃……」


取り合えず手だけ振って出ていく。班で動いているときは基本班行動になるから単独でどこかに行くわけにもいかず、近くの自販機のベンチで時間を潰そうと覚悟を決めて椅子に座れば、いつの間にか隣に誰かが座っている。


「KINGとは接触出来ましたか?」


「…お前誰」


「練馬次官が気にしてらしたので…と言えばわかりますか?」


(こいつ)


『特務』の奴らか。



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