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暁の姫君と黄昏の守護者  作者: zzz
第三章
77/79

Act.76 [波乱だらけのパーティー]中編

 



 綺羅びやかな光の中。


 囁く声。これ見よがしに交わされる話。悪しざまに吐かれる言葉。


 嗚呼――その全てが煩わしい。



 怒りは胸に、頭は冷静に、何も知らないご令嬢ばりに浮かべたその表情は――嘲笑。




 ************************





「――ですので、いやぁ我が娘ながら器量良し、聡明でこの通り美人に育ちましてねぇ。是非公爵にもお目通りをと思いまして」



 ハハハッと楽しそうに笑いながら垂れ流す自慢に微笑みに形作った口元が引き攣るのを感じた。



 この場がどんな趣旨で行われているのか忘れたのか?と胸ぐら掴んで問い質したいほど、そのパーティーの主役であるルイは、ルイシエラは内心怒り狂っていた……。



 パーティーの挨拶を終えれば今度は招いた招待客達個人に挨拶と自己紹介。

 今まで一切公の場に姿を現さなかったが為、ルイシエラ本人を知らない者は多い。


 高位の者から、公爵家縁の者までわざわざルイシエラ達の元まで足を運び誕生日の祝福の言葉を述べる者達に感謝と軽い世間話をしていたルイシエラだが段々と相手が中位、低位と貴族の位が下の者に変わり始めるとそれはルイシエラを祝う言葉とは様子が異なり始めた。



 妻は勿論、娘を伴いルイシエラ達の前に姿を現すのはまだ構わない。しかし、おざなりの祝いの言葉にこれみよがしに娘はここが素晴らしい、こんな所が賞賛されていると自慢を滔々と誰も聞いてないのに語りだし、しまいには如何でしょう?と妻が隣に居るにも関わらず目の前の公爵本人に勧めてくるその神経に沸々と苛立ちの感情が沸き立ち始めていた。


 それら全てはガウディの愛人や第二夫人の座を狙う者達だったのだ。




 ルイシエラの母親であるスーウェはルイシエラを出産した際に次の子は望めないと医師に宣告されていた。

 ルイシエラを産んだだけでも奇跡だったのだ、その後の体調も崩す事が殆ど。


 当主の子供が女児のみならば普通の貴族は婿を取るか分家又は傍流の男児を養子に迎え当主とする……だがアウスヴァン公爵家には直系しか存在しない。


 養子を取る相手も居らず、婿を取るにも年齢的にまだ早い話。


 その所為でアウスヴァン公爵家の次代の当主となる男児を産む存在の座を狙っているという。腹立たしい奴らばかりだった。


 しかもこれみよがしにスーウェの病弱さをあげつらい次期公爵になるだろう男児を産めなかったと湾曲して責める有様。


 最初こそは微笑みを浮かべていたスーウェも体調の事を言われ、公爵家を継げない女児を産んだ事を責められその顔色は悪くなり始めていた。




「――つまり貴殿は何を言いたいのかな?」



 ガウディもにこやかな表情を変え鋭く尖る視線を相手に向けた。

 折角の愛娘の誕生日パーティーにこんな無礼極まりない者達が入り込んでいる事に怒りが湧いてくる。


 ガウディ自身久々の社交だが、ここまで世間は腐っていたのかと拳を固く握った。


 勿論そんな無粋な事を言うのは新興貴族や野心が強い者ばかりなのは理解しているが、それでも無視するには余りにも侮辱的だった。





「宜しければ我が娘など如何でしょうか?お言葉ですが奥方様は次の子は望めぬのでしょう?栄えある公爵家の次代を産む名誉をどうぞ娘に――」



「っ!」




 それは余りも明け透けな言葉だった。

 王族の次に地位ある公爵家に対して真っ向から喧嘩を売る言葉だった。


 娘の誕生日パーティーをぶち壊す訳にはいかないと我慢に我慢を重ねていたガウディにも余りにも堪える事のできない怒りが一気に頭を支配する――その時。




「ふふふっ」



 冷えに冷え切ったその場に似つかわしく無い可愛らしい笑い声が響いた。




「……何が可笑しいのかな?ルイシエラ嬢」



 ガウディに娘を売り込んでいた貴族の男がその笑い声を立てる少女――ルイシエラに問い掛ける。



「だって、とても可笑しいんですもの子爵様」



 にっこり、満面の笑顔で子爵を見上げるルイシエラ。


 しかし、その瞳はとても冷たい光を宿していた……。






 *




 ルイは笑顔を嘲笑に変えて嗤う。




「公爵家の次期当主と、仰られていましたが何を持ってそのお言葉を吐かれたのでしょうか?(わたくし)という存在が居るのにも関わらず……教えてくださいませんか?」



 無邪気に無垢な幼子が尋ねる様にゆっくりと、一言一言言い含める様に言葉を吐く。


 そんな私の心はドロドロとした怒りの感情がうねりにうねっていた。



 子爵が可哀想な子を見るような目でこちらを見下ろしてくるが……お前マジで許さんからな。





「ルイシエラ嬢、君は知らないかもしれないけれど女の子は当主にはなれないんだよ」


「まぁ!そうだったのですか?」


「あぁ、だから当主となるべき男の子が――」



「いつからこの国の法律は変わったのでしょうか?」


「え?」




 子爵の言葉を遮りこれみよがしに声を上げる。


 私の言葉が理解できなかったのか一瞬呆ける子爵に畳み掛けるように私は言葉を続けた。




「国法第三十二条の事は勿論子爵もご存知ですよね?『貴族位それに准じる家々の当主は直系又はそれに連なる者、もしくは配偶者に資格がある』そこに男女の性別は明記されておりません。それがいつから男子のみとなったのでしょうか?法が変わったなんて聞いたことはありませんでしたし……それとも子爵様?貴方様は国が定める法律を変えられるほどの権限をお持ちなのでしょうか?それはとても凄いですわ!国王でさえ裁ける我が国法を貴方様は己の自由に出来ると言っているようなものですもの!」



 それは王族の頂点、我が国の支配者である国王ですら尊重している法を蔑ろにしている=侮辱罪に値するのではないですか?と。

 つまりは国王の意志を無視している=不敬罪になるのではないですか?と。


 そしてそれを出来る貴方は何様のつもりですか?と。



 言葉に毒と揶揄を多分に含んで無邪気を装って殊更驚きながら声を張る。




「な、なにをっ」


「あら?でも子爵様は仰られていましたよね?『女の子は当主になれない』と。しかし我がジゼルヴァン王国に女当主の方々はいらっしゃいますが、それは何故でしょうか?」


「それは……」



 ちなみに現在我がジゼルヴァン王国には十人ほど女当主の貴族家がある。それらは全てきちんとした理由があり、尚且つ目の前の男とは比べ物にならない程由緒正しい歴史ある家だ。それすらも侮辱しているという事をこの男は理解しているのだろうか。


 それに加えて他国ではそういった継承権に関する法にはきちんと“男児”と明記されてたりするのだが我が国ではそれが無い。その意味すらも分かっていないのだろうな、と呆れさえ浮かんだ。





 言える言葉が無いのか口を噤む子爵に浮かべていた笑顔を消してとどめを刺す。




「それすらも答えられない方に我が公爵家の事に口を出されるのは不愉快極まりないですわ。子爵家が公爵家に口を出す侮辱、それがどう意味か、貴方様はご理解なされておられるのでしょうか」



 子爵風情が末端でも王位継承権すら持つ由緒正しき公爵家に喧嘩売っているですからね?




 さっきまで偉そうにしていたのを一変、青白い顔で冷や汗を掻く子爵を睥睨する。





「今宵は()()()()()()私の誕生日パーティーでしたのに……どうぞお帰りはアチラですわ――ゼルダ」


「はい」



 スッと、居ると思ったけどすぐに隣に出てきたゼルダに内心驚きながら出口を指し示す。





「どうやら子爵様方はお疲れのご様子、出口までご案内して差し上げて」


「畏まりました」



 ゆっくりと頭を下げるゼルダは有無を言わさず青褪めた顔の子爵一家を出口までエスコートしていく。




 ふんっだ!ウチの父様と母様を随分と侮辱してくれた奴に慈悲は無い。



 殊更“楽しみだった”と強調して吐いた言葉は私の機嫌を損ねたと流石に馬鹿な頭でも分かっただろう。

 公爵家当主夫妻を侮辱し、尚且つその愛娘の不興を買った。


 それだけで私が何もしなくても頭の良い方々は察するだろう。


 あの子爵家は領地を持たないし、そもそも本来ならば招待状すら送ってない家だ。どうせ知り合いとかから融通して貰ったのだろうけど……その辺は別に禁止してない事だし。

 しかし小さなものでもこれだけの名のある家のパーティーでその主役の不興を買ったとなれば、手を引き交流を止める家は大勢出て来る。


 さぁ、これから先、社交界で生きていけるかしら?



 見せしめ同然に対処した事に僅かな良心が咎めなくも無いが、こういった場で一度どちらが上か解らせなければああいった輩は無限に出て来る。


 くだらないマウンティングの取り合いだ。



 でもナメられる訳にはいかないのだ。

 私もアウスヴァン公爵家も。






 いつの間にか静まっていた広間。

 自分が注目されているのを感じながら子爵以外にも同じような言葉を吐いていた集団に目を向ける。

 子爵ほど直接的なものでは無かったから父様は冷たくあしらっていたけど……ねぇ?




 目が合えばびくりと肩を揺らす面々を眺めてルイシエラは冷笑を口端に刻んだ。



「ふふっ失礼を致しました。折角の楽しい場に相応しくない方々がいらっしゃったみたいで申し訳御座いません。ご不愉快にさせてしまったでしょうから、皆様へ私からのお詫びの余興を一つ」



「ルイシエラ?」




 ルイシエラは問い掛けるように自分の名を呼ぶガウディを振り向きにっこりと満面の笑みを浮かべた。



「父様も母様もこっちに」



 来て、と両親の手を取り歩き出す。


 先程までの凛々しく大人顔負けの対応をしていたのは幻だったかのように、両親の手を嬉しそうに繋ぐ彼女は年相応の可愛らしい少女だった。

 突然のルイシエラの行動に首を傾げる当主夫妻。


 一家は会場中の注目を一心に浴びながらも広間の中央へと進む。

 一人、また一人とルイシエラの先にいる招待客達はサッと後ろに下がり彼女に道を明け渡した。




 それから程なく娘から手を離されたがガウディもスーウェもルイシエラが何をするのか分からず頭に疑問符を浮かべる。

 そんな二人を横目で見つつもルイシエラは辿り着いたホール中央で軽く周囲を見回すかの様にくるりと一回転。


 ふらりと広がるドレスを見せ付けるように、優雅にターンしたルイシエラの周囲は少し離れて円状に人だかりが出来ていた。


 その中でも最前列のガウディとスーウェに向けてルイシエラは一度深く礼をする。



「今宵は私の七歳の誕生日パーティーにお集まり下さいました皆様へ。そして私を愛してくれている両親に向けて、拙いものですが、感謝の歌を一つ。我が女神の歌を捧げましょう――」




 そう言ってルイシエラは右手を掲げ祝福の紋章を手の甲に宿らせた。



 紅き光を宿らせ彩る形。

 月欠けた三日月に涙を表す雫、それを囲むは月桂樹の紋様。






 女神ルーナの紋章を光らせ息を呑む者達を眺め、ルイシエラは厳かにその唇を開いた――。





「La―――――」



 伸びやかに、軽やかに。

 鳥の囀りより愛らしく、鈴の音色より澄んだ歌声。




 歌に歌詞は無く、ただ音程の強弱で奏でられるその歌はただ見る者、聞く者の心に不思議と鳴り響く――。













 ほぅと至る所から感嘆の吐息が聴こえる。

 耳に心地良い歌声に会場中の人間はいつの間にか目を閉じ、聴き入っていた……。







 それを見ながらルイシエラは手に力を込めて――語り掛ける。人の目に映らぬ彼女の“友人達”に。













 ――ふわり、風が肌を撫でる感触がした。




 それに気付いた者はいつの間にか瞑目して聴き入っていたのに気付き、瞼をゆっくりと開く――だが、開いた瞬間。その目の前の光景に瞠目した。









「……これは……」




 ふわり、ふわり。



 歌声を響かせる幼い姫君の深紅の髪がふわりと空中に浮かび上がり、いつの間にか(ほど)けていた背面のリボンが、まるで翼の様に彼女の背中に広がっていた。


 赤紫の瞳を細めて楽しそうに笑う少女。

 その場から動いていないのにも関わらず、軽やかに舞い上がるドレス。

 それはまるで童話に語られる炎の妖精の様で……凛々しくも、とても美しく可憐な姿だった。








「――さぁ皆、踊りましょう――」




 ぽつりと歌声に混じる微かな言葉が聞こえた気がした――瞬間。




 天井に吊るされた豪華なシャンデリアの火が一瞬で炎と化し炎輪を形作ったではないか!


 突然強くなった風が会場を吹き抜けまるで踊るかの様に周囲のカーテンを、招待客達のドレスを、上着を靡かせ、キラリと光を反射するのはいつの間にか浮かぶ丸い水玉。

 それは遊ぶように宙を飛び跳ね、光を七色に彩った。



 そして……ひらり、ひらりと何処からともなく周囲に降り注ぐのは、色とりどりの花びら。







 ――それはとても幻想的な光景だった。






「キレイ……」

「凄い」

「どこから……?」

「美しい」




 息を呑み上を見上げる者。

 楽しそうに宙に浮かぶ水玉に触れる者。

 花びらを手に取り香りを楽しむ者。

 感嘆の息を吐く者。




 招待客達はその目の前の光景に興奮し、熱狂する。


 魔法ではない事は全員が理解していた。

 魔法は魔力と詠唱が必要不可欠な術だ。しかしその発動は魔力の高まりと決められた詠唱(キーワード)で容易に分かる。が、これには無かった。


 それがどういう事を指すのか……この現象を起こしたのは“何”なのか。


 それを理解した者は初めての見た己が生きる世界を形作る片鱗の力に感動する。







 限られた稀なる者しか視れぬその姿。

 幻とさえ言われているその存在。

 それは――この世界を作り、支える自然そのもの。



 語られる言葉は多くあるが実際にその存在を()()出来る者は数少ない。

 ましてやその力を操る事が出来るのは今や廃れた【精霊術】のみ。その術を継承しているのは世界中でも唯一人だけ……その筈だった。










 ――誰もがその光景に魅了された。



 そしてその中央には指揮者の様に両手を軽く振るい、この幻想を生み出す人物が。

 風を、炎を、水を、花を、生み出し歌声に乗せて踊る炎の妖精。










 嗚呼――彼女こそが【女神の祝福者】





 堂々とした立ち振る舞い、凛としていながらも愛らしく微笑み、時には氷のような冷たさを宿す。



 アウスヴァン公爵家に産まれただけではなく、女神の祝福の紋章を刻まれた運命(さだめ)すらも背負う少女。


 しかし、その責任に惑う訳でも、恐れる訳でも無く全てを受け入れるように胸を張る彼女に頭では無く心で理解する。



 女神の愛し子であり、精霊を操りし者。



 彼女が次代のアウスヴァン公爵。





 それはその場にいる全員が納得してしまう程の衝撃と共に脳裏に刻まれた出来事だった……。











 *







 ――やがて歌はゆっくりと余韻を残しながらも……終わった。




「ご清聴有難う御座いました。皆様に女神の祝福があらん事を」




 ゆっくりと綺麗なカーテシーをしたルイシエラはそう締め括り、余興を終えた。



 夢見心地に今の光景が消えた事に静寂となる会場。


 いつしか風は止み、シャンデリアの炎はただの蝋燭の火に。降り落ちた筈の花びらも水玉もそこには無かった。


 幻を見ていたのではないかと、先程の光景の跡を探すがそこにはルイシエラが歌い始める前と何ら変らない。


 その落差に茫然とした雰囲気が広がる会場に、一つの拍手が鳴り響く。





「――見事な歌だったぞルシィ」

「えぇ!とても素敵な歌だったわ!」



 ガウディとスーウェが穏やかな表情でルイシエラを賛美する。

 するとそれに釣られて一つ、また一つと拍手が続き、やがては盛大なうねりの如く拍手の音が会場に響き渡った。




 称賛の声と拍手を浴びながらルイシエラはチラリと横目で“何か”を見やる。




 嗚呼――逃しはしない。




 口端を上げて酷薄な笑みを刻む。



 父を、母を、侮辱し貶した罪を決して許しはしない。


 ルイシエラは人知れず紋章が消えた手を握りしめる。





「――今宵!(わたくし)は七歳となりました」



 一際大きなルイシエラの声に広間が静まる。




「そしてここで(わたくし)は宣言いたしましょう!私こそがアウスヴァン公爵家を次代を継ぐ者であると言う事を。女神ルーナの祝福者であり、()()()()()()私がアウスヴァン公爵家当主足り得ないと言うならば今ここでを異を唱えて下さい。」



 ぐるりと周りを囲む人垣を見回し、ピタリと目線を定めて睥睨するのはガウディに愛人を薦め、スーウェを貶めた者達。



 まだ幼い七歳の少女にも関わらずその強すぎる視線に晒され、ひっそりと会場を後にしようとしていた者達は息を呑んだ。



 ()()は何だ――?




 ただの少女だと侮っていた。

 箱入りの世間知らずの深窓の令嬢だと思っていた。



 だが、それにしては全てを見透かす様な、薄ら寒い恐怖を抱かせるその強い赤紫の瞳に足が地面に縫い付けられたように動かない……。






「私は愛する両親に、愛すべき民に、忠誠を捧げし我が国に誓い、女神ルーナにこの覚悟を捧げましょう!(わたくし)ルイシエラ・アウスヴァンはアウスヴァン公爵家の次代当主となる事を!祖先から受け継いだ誇りを胸に“護り手”たる力を、国を、民を守る為に使いましょう」



 ルイシエラがそう宣言した瞬間――まるで女神ルーナがそれに賛同するかのように一際強く祝福の紋章が光を宿す。





 だんっ!と足踏みが会場を揺らす。



 会場の至る所から会場警備に配置されていた赤獅子騎士団の者達がルイシエラを認め、その次代の主となることを賛同する為に武器を、足を鳴らして跪く。


 やがてアウスヴァン公爵家に代々仕える諸侯達が、ルイシエラに向かって深く拝礼する。





 それは異様な光景だった。


 大の大人達が揃いも揃って幼い少女に跪き、頭を垂れる。


 その中心でルイシエラは己を認めてくれた皆を見渡し、両親とは反対の人垣の最前列に居る一人の老人の前に一歩踏み出した。



 胸を張り、凛とした仕草で前を向いた目の前には杖を付き腰の曲がった年配の男性。その隣にはお付きなのか、老人を支える使用人風の壮年の男性が居た。


 皺の寄った手足を震わせて辛そうに立ち、杖に寄り掛かったその老人にルイシエラは深く腰を下ろし最上位の礼をした。



「どうかこの覚悟を認めて頂けますでしょうか――敬愛なる我らが国王陛下」




 ざわっと会場がルイシエラの発言にざわつく。



 ルイシエラは騒ぎ始める周囲を知りながらもただ目の前の人を見つめていた……。







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