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暁の姫君と黄昏の守護者  作者: zzz
【序章】
6/79

Act.5 [冒険の旅へ!(お外編)]

 


 それは小さな光だった――……



 吹けば消えてしまいそうなほどの儚い灯り。

 でもその光を守るように周りを輝く色とりどりの光。


 それに魅かれるように近づけば、そこには小さな命が光を灯して輝いていた。





 *******************








 さぁ、やって来ました外の世界!



 あの後、ゼルダの話を聞き綺麗なピアノがどこか呪われたピアノに見えた私です。

 だってなんか綺麗なはずの光沢が段々、禍々しい不穏なものに思えて仕方がなかったんです。

 明らかに呪われていると思うのですよ!!


 それはともかく、ゼルダと別れてやってきたのは中庭!


 大広間からテラスに出ると庭へと降りれる階段がありました。目の前には我が公爵家お抱えの庭師が丹精込めて作った中庭が広がり、季節ごとの花々が見事に咲き乱れています。

 ちなみに私の部屋に飾られる花もここで庭師が選んでくれたのです。屋敷中の保護者たちから半分軟禁なんじゃないかと思うほど部屋で過ごす私の慰めとして毎朝切り花として処理してくれていると聞いていつかきちんとお礼を言いたいと思っていました!




「ルイシエラ様。これはエルバという花です。」


「えるば?」


「はい。基本的には花の成長に伴い白から赤、金色に染まる花なのですがルイシエラ様が青が好きだと聞いたので庭師が品種改良をしたようですよ。」



 ほら。と差し出されたのは私の手のひらサイズの6つの花弁をもつ見事な華です。

 エルバという花は我が国ジゼルヴァン王国の国花だそうで、6つの花弁はこの世界に満ちる魔力の属性を表し、色はこの国の王族の色を表します。

 特に金色は昔から神聖な色とされ、王族が身に付けるものだそうです。


 ちなみにぱっと見、朝顔を連想してしまった自分がいます。


 見た目はそのまま六角形の形で花弁が咲き誇り、外側は白から始まりめしべに向けて青色が鮮やかに濃くなっています。



「ほわぁ!」



 そのあまりの美しさに言葉も無く見入っていると、ニコニコと笑顔を浮かべたルーナが「失礼」と言いつつ私の髪に何かをしました。



「こうするととてもお綺麗ですよ。ルイシエラ様」


「わぁ!」



 若干の重みを感じた頭に手を伸ばすとポニーテールに纏めていた髪に先ほどの青いエルバより私の瞳に似た薄い赤紫のエルバが綺麗に飾られているではないですか!



 そしていつのまに持っていたのか、ルーナは私の前に手鏡を翳し見えるようにしてくれます。ホントにどこに持っていた!?これが出来るメイドの嗜みなのか!?




「ルイシエラ様にはこちらのお色がお似合いですね」



 どこかうっとりと言われる言葉についついテレてしまいます。不可抗力ですが、今の私の顔は真っ赤な事でしょう。



 それはともかく、本当に見事な庭園です。



 先ほどの私の為に作られたエルバもそうですが、それぞれ母さまや父さまが好きな花がさまざまな色彩で咲き乱れています。

 ちらほらと前世でも見た事のあるような花がありますが、樹木に生るものが地面に咲いていたりするのをみるとちょっと違和感があります。




 そうやってぐるりと庭園をルーナに連れられて見まわっているとふわり、とどこか不思議な風が私の髪で遊びます。



『これは珍しいね子猫ちゃん』




 風と共に耳を擽るのは私の常識の先生でもある翡翠さんです!



『キミが部屋から出るのを初めて見るよ』



 くすくすと笑う翡翠さんの声にむっとしてしまいます。

 私としてはもっと早く部屋から出たかったのに出してくれなかったのは家のみんなです。



『まぁ、キミにはみんな過保護にはなるよ。それだけキミは大切なお姫様だからね』




 むむむっ



『しかしその花、とても似合っているよ』



 不意の翡翠さんの発言に挙動不審になっても仕方がないと思います!

 あまり言われ慣れてない言葉についつい照れが勝ってしまい顔に血が昇るのをやめられません。



 お世辞はもういいです!



 翡翠さんは見た目こそ妖精ばりにとても小さい手のひらサイズですが、その容姿はとても整っていて、はっきり言って美形の部類なのです。そんな人(?)にそんな事を言われれば照れてしまうのも仕方ないと思うのですよ!!




「ルイシエラ様?如何なさいました?」


「うえっ!」



 どうやらルーナは翡翠さんの姿が見えないらしく、私一人挙動不審なのを疑問に思ったらしいです。動揺に変な声をあげてしまいました。




 なんでも無いと慌てて否定を繰り返す私にルーナは心配そうな表情を浮かべます。



「もしかしてどこか具合でも悪くなりましたか!?」


「え、あのっ」


「申し訳ございません!このルーナ一生の不覚です!!只今医師をお呼びしますので!」


「いやあのっ!ルー……」


「少々お待ち下さいませ!!」




 いや、至って健康ですけど!?


 そう言って否定する私の言葉が聞こえていないのかルーナは目にも止まらぬ速さで屋敷へと走って行きました。



「ルーしゃん……」



 ぽつんと取り残された私の呟きは風にさらわれ消えました。




『クククっ凄い早かったねぇあのメイド』



 腹がよじれんばかりに笑うのは私の肩に腰を掛ける翡翠さんです。と、いうより笑いごとではないのですが……。



 ルーナのあの様子では今頃私が体調を崩したと屋敷中に広まっている事でしょう。そして外出禁止令の上に当分はベッドの上での生活が待っています。



 はぁぁあああー






『まぁまぁ、それほどキミが大切なんだから大目に見てあげなよ』




 それは先ほども聞きました。



 そう心の中で呟くと笑いを引っ込めた翡翠さんが真剣な表情で私の顔を覗き込みます。



『分かってないねェお姫様。キミは大切な存在なんだよ?この世界にとって……僕たちにとってもね?』



 僕たち?  


 翡翠さんの言葉に引っかかりを覚えて首を傾げますが翡翠さんは意味深な笑みを浮かべ私の頬にその小さな手を当てます。

 その体温は感じません、ただ柔らかな風に撫でられているようなかすかな感触が感じられ私はつい翡翠さんに問いかけました。





「翡翠しゃんは……」



 何者ですか?




 そう問いかけたいのに言葉は喉奥に引っ込みます。それを聞いてしまえば翡翠さんは私のそばから離れてしまう気がして。




「翡翠しゃんはどんな花が好きで、しか?」



 ……嗚呼、本当に回らない舌が憎い……




 翡翠さんは私の問いかけが意外に思ったのか珍しく目を丸くしています。それに可愛いと内心悶えたのは秘密。




『そんな事、初めて聞かれたよ』



 そうなんですか?



『人が僕に問いかけることは一つだけだからね。僕自身の事を聞かれたのは……初めてだ』



 ふにゃと心の底から嬉しそうに破顔する翡翠さんの笑顔っ破壊力パネェ!!!



 内心悶える私が居ます!が、聞き捨てならない言葉にむっとします。




 私は翡翠さんが大好きです。色々と疑問や聞きたいことはありますが、それを置いても私にとって翡翠さんは無くてはならない大事な存在です。それをまるで軽い存在のような発言に異議を申し立てます!!



 そんな私の心が分かったのか翡翠さんはニコニコと笑みを浮かべて私にすり寄って来ます。



『僕もキミが大好きだよ僕のお姫様。』



 ちゅっ、と軽い音が立った気がしますが……




『ふふっ真っ赤になって可愛いなぁ』




 くすくすと笑う翡翠さんに私の口はパクパクと金魚のように開閉を繰り返しますが言葉が出て来ません!!





 ◇





 真っ赤になった頬に手を当て撫でる。それはとても心地の良い温度だった。



 髪の毛と同じような真っ赤な頬。恥ずかしさから潤む瞳にどうしても口端が上がってしまう。それに彼女は拗ねたように唇を尖らせたがそれすら自分にとっては今まで生きてきた中でも楽しく感じられた。





 僕たちにとって大切な、宝物のお姫様。


 鮮やかな赤の髪はまるで朝を迎える太陽の色。


 艶やかな薄い赤紫の瞳はまるで朝に染まる空の色。



 存在全てが闇を照らす暁の君。




 キミは知らないだろうね?僕が見えているということの異常さを。



 人間はとても欲に忠実だと思う。その揺るぎ無いと誓った筈の心でさえ、揺るがす欲望に人は敬虔な信仰者の如く忠実で素直だ。


 そして強欲だと思う。人間は常に何かしらの欲望を求めてやまない。愛情を、金を、権力を、自分を満たす為のその全てを。


 そして異常を忌み嫌う。理解できない存在を恐れ、理解することのできない存在を厭う。







 ――キミはどうなんだろうか?キミは僕の事を知ったら何を望むかな?





 それは期待と不安が入り混じる感情。でも無視できない心。



 もし、願わくば――キミの幸せを僕は祈るよ。









 それは小さな存在。しかし無から有を生み出すことのできる存在が祈った。









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