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暁の姫君と黄昏の守護者  作者: zzz
第一章
24/79

Act.23 幕間[照らされた心]

若干の残酷描写が入りますので苦手な方はご注意ください。

 



 光を、見た気がした。



 暗闇の中を導く灯台のような灯火。



 それは暖かく、俺を優しく包み込む――





 ********************




 化け物! 人殺し!



 頭の中で繰り返される叫び声。


 恐怖に顔を歪め、悲鳴を上げる人々の顔が思い浮かぶ。



 ――そんな事、言われなくても分かってる。


 人知れず心の中でつぶやく声。




 こんな力望んじゃいなかったのに。どうして?何故?と答えの無い疑問ばかりが頭を埋め尽くす。

 望む望まざるを関わらず刻み付けられた証が呪いのようにも思えた。


 拒否なんて出来ない運命。背負わされた宿命。

 自らの力に振り回されるだけの生に、ただ真摯に差し出された手を掴んだことに後悔は無い。

 でも、結局は抗っても抗っても呪いは呪いだった。






 *




「悪いが当分お前は休め」


「しかし!」


「今のお前は使い物にならん。それはお前が一番分かっているだろう?」



 反論さえも許されずに告げられた言葉。自分の上司でもあり、恩人でもある将軍の言葉にただ悔しくて拳を握った。



「――今のお前に必要なのはがむしゃらに働くことではない。今のお前には休息が必要だ」


「……はい」



 一言一言、噛み締めるように言い渡された命令にただ頷くしか術が無かった。



 炎を思わせる赤の髪に黄金の瞳。


 上に立つ者としての覇気を纏わせた目の前の人物に反論する言葉も無く、ただその眼も直視できずに俯いたまま部屋を退室する。


 ――だから気付かなかった。気付けなかった。

 親代わりでもあった将軍がどれ程俺の事を心配していたかなんて……。

 どんなに心配を掛けていたかなんて、その時知る由もなかった俺はただ鬱々とした気持ちを持て余したまま当てもなく歩みを進める。


 その途中で仲間や先輩が心配そうに声を掛けてくれたけれどもその全てが煩わしく思って俺の足はどんどん人気のない場所を目指して歩く――





 ここはジゼルヴァン王国内でも東に位置するアウスヴァン公爵領リーベ地区。



 王都にも近く、自然が豊かなこの地区はジゼルヴァン王国を縦断するように走るセキ街道を有する為、街道沿いには町が広がり、一種の商人の町として発展を遂げていた。


 しかも直ぐそばにはアウスヴァン公爵家の別宅があり、そんな公爵家お膝元でもある町<リーベ・ルトワ>には公爵家が保有する私設騎士団≪赤獅子騎士団≫の本部があった。


 赤獅子騎士団は代々王国の将軍位を拝するアウスヴァン公爵が独自に保持する騎士団で基本的に領内の警備、魔物の討伐を任務としている。将軍自ら団長を務めており、王都の近衛騎士団にも引けを取らない精鋭達ばかりが集まっている為か、その実力は王国最強とも呼ばれている。だがそれも一重に将軍の人徳の為せるものだろう。彼の人に憧れ、尊敬し、その力になりたいと志す人間が後を絶たないのである。


 元々保有する領地が多いアウスヴァン公爵家はジゼルヴァン王国の要所要所に騎士団を派遣し、国の治安維持にも一役買っていた。それ故に本来ならば禁止されてもおかしくない程の私有勢力の保持を認められているのだ。

 勿論これまでの実績と歴代の公爵本人の公正な判断が国全体、しいては他の近隣諸国からも認められている為にだが、これもまたアウスヴァン公爵家が特殊だと言われる所以でもあるだろう。




 そんな騎士団が最近頭を悩ませる一つの問題があった。


 それは最近いやに活発化が激しい盗賊、強盗などの犯罪。


 街道沿いでもある為、昔から道を通る商人や旅人を狙う犯罪は多かったがそれが最近は特に激しく、いかに見回りを強化しようが事前対策を講じようが芳しい効果は得られず、その魔の手は近隣の村々へと迫っていた。



 そんな中、ギリギリに掴んだとある村が襲われるという情報。


 すぐさま将軍の号令は下され、騎士団が直ちに事態の収拾に動いた。




 でも――、




 燃え盛る火の粉


 逃げ惑う人々


 悲鳴と怒声が村に響き、阿鼻叫喚の景色がそこには広がっていた。





 幸い、怪我人こそは出てしまったが村人に死亡者はいなかった。

 騎士団が予想以上に早く到着したことに慌てた盗賊が村に火を放ったらしく、火の手は強かったがそれでも騎士団の人間と村人の協力も有り、間も無く火は無事鎮火された。


 それで終わりだと思っていた。

 これで最悪の事態は免れたと……。



 これでもう安心だ。と安堵の表情を浮かべる村人たち。事後処理こそはあるが無事盗賊は捕縛し、死亡者もいない事に士気も高い騎士達。



 そんな束の間の安堵感に皆が皆、気を緩めてしまった。



 突如として平穏な空気を切り裂く甲高い悲鳴。



 そこには捕縛されていた筈の盗賊の一人が幼い少女に向かってその刃を向けた所だった……。



 誰もが間に合わないと思っていた。


 余りの事態に固まる村人達。咄嗟に動き出せなかった何人もの騎士。


 その中で数分先の未来と過去の記憶が脳裏を過ぎった――




 気が付けば無意識の内に動いた身体。

 目の前には盗賊の男が、驚きに目を見開いているのを頭の端で意識してても身体は勝手に動き、全力で敵を排除する。それは過去の怒りと悔恨の発露。



 でもそれは余りにも過度な力となって盗賊へと揮われていた。




 どろりと手を汚す赤い色。

 独特な鉄錆くさい臭いが嗅覚を刺激し、顔を上げれば周りは恐怖に引きつっていた。



 それからの記憶は少し曖昧だ。



 ただ分かるのは。俺の力は簡単に人の命を奪えるほどのモノで。俺の姿は人間にとって異形のものでしかない。


 それは神代の時代を生き抜き、脈々とその血を繋いできた世界最古の獣の一族。

≪人狼族≫の血を引く俺は、人間にとってただの化け物でしか無かった……。





 *




「ここは……」



 人気のない場所を当ても無く進んで辿り着いた場所。


 そこは軽い小高い丘の頂上。こじんまりとした湖のある場所だった。



 どれほど思考の渦の中にいたのか。どうやって来たのかも余り覚えていないが、まるで何かに導かれる様に真っ直ぐとこの地へと来た自分に少し驚く。

 それでも鬱々と心を覆う暗雲は晴れず、ただもう何かを考えるのも嫌になって無造作に木の根元へと腰を下ろした。




 ――穏やかな場所だと、思った。


 強すぎない優しい風が木々を揺らし、水面にさざ波を立てては吹き抜けていく。



 どれくらいそうやってぼぅっとしていたのだろうか。湖を挟んだ対岸側から近づいてくる一つの気配に気づいた。


 こんな森深くに一体どんな人間が?そう思い見ていれば柔らかな日差しに照らされ姿を現したのはまるで妖精かと見間違うほどの可愛らしい可憐な少女。

 敬愛する将軍に似た深紅の髪に赤紫の瞳。大きなその眼はキラキラと太陽の光を反射し輝いては楽しそうに細められていた。


 少女はこちらに気付くことなく、無邪気に湖に近づいては一人遊んでいた。


 何を見ているのか、キョロキョロと辺りを見回しては楽しそうに笑う少女。

 それだけ見ていたらまるで一枚の絵画のように美しい光景だっただろう。それほどまでに無防備に寛いだ様子を見せる少女はとても可愛らしく、そして眩しかった。



 だけど……心のどこかで呟く声を聴いた気がした。




 それはとても自分勝手で、傲慢な言葉。でもざわりと心がさざ波を立てる。



 ――そんな動揺に合わせたかのように一際強い風が丘を駆け抜けた。


 風に煽られた髪を抑え、何かに驚いたように瞬きを繰り返す少女。でもその眼は突然こちらを向き、俺の目と合った。合ってしまった。



 どくり、心臓が大きな音を立てる。



 本能に刻まれた衝動が精神を揺るがす。それは抗えの無いような……破壊衝動。




「っ!」


「待って!ねぇ!」



 どれくらい少女と眼を合わせていたか知らないが、このままでは危ないと慌てて少女から離れて森の奥へと進む――だが。



「待てって言ってるでしょうが!!」


「っい!」



 ごすっと突如腰を襲う衝撃。驚きに目を見開けばそこには知らない人間にも関わらずタックルをかます少女の姿が。その姿にカッと怒りとも憎しみとも言えるほどの強烈な感情が一瞬、目の前を真っ赤に染めた気がした。

 気が付けば少女の事も顧みず全力で振り解いたその手。

 しかし触るなと凄んでも、痛さに顔を歪めた筈の少女はこちらの思いとは裏腹にとても強い力を目に宿し、食いついてくるではないか!


 何故?どうして?と頭の中に疑問が次々浮かんでは戸惑いと怒りによって消されていく。




「――俺は人殺しだ!」


「え?」



 幾ら拒絶しても食い付いてくる少女に衝動的に言葉が口から零れてしまっていた。

 そんな事、言うつもりも無かったのに。どんだけ関わるなと口にしても離れない彼女に心の底の自分が「怖がればいい」と密かに呟く。

 言われたことが理解できないのか目を瞬く少女。やっと離された手。それに安心する自分と悲しく思う自分がいて感情が上手くコントロール出来ずに混乱する。

 でも。



「それが何?」


「なんだと」




 冷静に返された言葉に言いようのない怒りが頭を支配した。




 ――お前に何が分かる!?この呪われた力!呪われた身体!


 どれほど憎く思ったか、どれほど悲しく思ったか。目の前で失われていく命に何も出来ないこの力を恨み、簡単に人の命をほふれるこの力をどれほど恐ろしく思ったか!

 ――安穏と平穏な箱庭に住まうだけのお前に何が分かる!



 心の底で叫ぶ自分がいた。頭に上った血に合わせ変貌していく自分の体。

 それは最早、人間ではなく。獣人でもない。世界最後の人狼の姿。



 醜い獣の耳と手足。尻尾は怒りに逆立ち、牙は鋭く、爪は少女の手を傷つける。



 その僅かに滲んだ血を見たら怒りに支配されていた思考も冷静になりはじめ、どこか物悲しさまで浮かんできた。忌々しいこの姿。この力。いらないのにと心の自分が泣き叫ぶ。

 人に恐れられる事も、怯えられる事のない力が欲しかった……。そんなこと言っても詮無き事だが、それでも普通の人間になりたかったと思わない日は無い。


 本性を露わにした俺に少女の反応は無い。ただ驚きに目を丸く様子が眼に映る。

 零れそうなほどに大きな瞳。陽の光を反射して輝く赤紫の色。


 ――まるで朝焼けの色だ。


 暗い闇色に染めあがった空を塗り替える、暁が空を照らす夜明けの色。

 美しいと心の底から思う。その色を見ていると、自分の色は余程おぞましいと自嘲した。


 くすんだ灰色の髪に血のような真っ赤な瞳。それは獣のように光加減で虹彩の色が変わって見える人間ではない瞳。

 これで普通の獣人の生まれであったのならばまだ納得も出来よう。だけど……。



「――分かったら俺に構うな。化け物なんかに、触れるな」



 お願いだからと、僅かな懇願さえも滲ませて告げる。



 少女はとても綺麗だった。その容姿もそうだが、なによりその心が。

 だからこそ、俺なんかが触れて良い存在ではない。化け物で汚れている俺なんかが。


 だけども離したはずの手は再び彼女の手によって捕えられた。


 そうして告げられた言葉にただ固まるしか出来なくて。反論しようにも図星を突かれていく心は弱く、震えていた。


 彼女のその大きな目からは何時しか宝石のように綺麗な雫がはらはらと零れ落ちーー。

 気遣うように触れられた小さな手。


 優しく頬を撫でるその手は泣いて良いんだと言っているようにも思えて……。



「――だから恨まないで自分を、この世界を」


「っ!」


「怖がらないで人を、恐れないで」



 自分を。そう告げる少女の手にいつしかぽたり、滴が落ちた。



「っ!」



 息を飲む。


 歪む視界に色褪せて見えた筈の景色が何時の間にか鮮やかな景色へと変わっていた。



 頬を濡らす感触が、少女が触れるその手が、温もりが、どうしようもなく嬉しくて。悲しくて。


 何時しかぽっかりと空いていた心の隙間にストンと入った彼女の言葉。それを頭ではなく、心で理解する。そしてまるで母親に縋る小さな子供のように俺はただ言葉なく少女を抱きしめることしか出来なかった。

 一人では無いのだとその温もりが教えてくれた。ただ寄り添うその小さな存在がとても大きく心の中に根ずく。



 ――嗚呼、俺は世界を恨んでいた。こんな力を寄越した神を。抗えない宿命を刻んだ運命を。


 でもその力で守りたいものがあった。大切な人たちがいた。でもそれすら奪う呪われた力。呪われた身体。


 いつかその力に振り回されるのではなく。その力を物にして大切なものを守って見せろ。そう言ってこの忌々しい力を信じてくれる人がいた。お前なら出来ると言ってくれた人が。


 でも、でも、容易く人の命を奪える力が怖かった。恐ろしかった。



 守るために鍛えた力が守りたいと思う者を傷つけてしまうのではないか?と恐ろしかった。

 その手を汚す血はいつか、敵ではなく自分の大切な人のモノになってしまうのではないかと。



 ()()()()()()()……。




 でも、もう大丈夫だ。



「……ありがとう」



 呟いた言葉は彼女に届いただろうか?でも強く抱きしめ返してくれるその身体がとても愛おしく、そして心強く感じた……。



 *



 それからどれくらい時間が経ったのだろうか?


 陽は傾き、夕暮れに変わり行く。




「あの、悪い」


「ううん!大丈夫」



 緩めた腕にすっぽりと入る小さな身体。

 謝罪を口にすれば彼女は満面の笑みと共に言葉を返してくれた。


 いまだに俺の姿はまだ変身した半獣の姿のままだが彼女の様子からは怯えや恐怖などといった悪感情は感じられなかった。

 それすらも初めての事で、複雑な感情が胸を締め付ける。


 彼女は解っているのだろうか?自分がどれ程の事をしているのか。いまだに世界では獣人や亜人などといった人間とは異なる姿形、能力を持つ者には厳しい世界となっている。それは過去起こった争いが原因でもあるが、種族差別を禁止しているこのジゼルヴァン王国でも異種族は迫害の対象でもあるのだ。

 このアウスヴァン領では他の国や領地に比べれば遥かに生きやすい環境だがそれでも人々はその見た目に恐怖し、嫌悪感を露わにする。


 幸い俺は人の姿になれるが、それでもいつか本当の姿が知られればと恐ろしかった。



 彼女がそこまでの事情を知っているかは定かでは無いが、それでも受け入れられたと思うこの心は喜びに震える。



「あの――」



 どう言えばこの感謝の気持ちを伝えられるだろうか?そんな事を考えながら言葉を発するが遮るように丘に響き渡る鐘の音。

 それは夕暮れの時刻を示す教会の鐘だった。



「ああ!いけないっもう帰らないと!」


「え」


 ゴーンゴーンと響く音は十分丘まで聞こえるが、慌てた様子で立ち上がる彼女につい手が伸びる。

 しかし引き留めてはいけないと伸ばした手は中途半端になってしまった。



「あのっ!良かったらこれ食べて?私はもう帰らなきゃいけないから」


「これは?」


「お弁当なの!すっごい美味しいんだから!!」



 そんな中途半端な格好で固まる俺に首を傾げながら手渡されたのは何やら見た目の大きさに反して少しずっしりと感じる箱と筒状の入れ物。

 彼女は「お弁当」と言った物を全て置いていくと踵を返して走っていく。余程慌てているのか縺れる様に走るその姿にはらはらしたが、彼女は去り際一度こちらを振り返った。



「私の言ったこと絶対忘れちゃダメだからねー!」



 バイバイと手を振る姿に呆気に取られながら見送る。


 まるで嵐のように去っていった少女。

 後に残されたのはお弁当を片手に湖の畔で棒立ちの自分。それにくつり、笑みが口端に浮かんだ。


「くくっはは!何だよあれ」



 何故かあんなに気を張っていた自分が凄く馬鹿らしく思えた。


 そして気付く。自分が笑えるほどに気持ちに余裕が生まれていることに。

 どれだけ自分で自分を追い詰めていたのか。ここ最近は浮かばなかった笑みにまた笑う。


 ああ、また彼女に伝えたい言葉が出来たと一人ごちて。



 そんな事を思えば答える様に鳴る腹の音。


「そういえば最近ろくに食ってなかったな」


 現金な物だが、気持ちに余裕が出来れば腹にも余裕が出来てくるらしい。

 幸い、彼女がくれた弁当があるのでありがたく頂く事にした。



「うわ」


 弁当の蓋を開ければ随分と豪華な料理が詰まっていた。

 ご丁寧に布に包まれている中にはきちんとシルバー類も入っており、筒状の入れ物の中はスープ。

 完璧だ。



 これは、もしかしなくても……。



 布の端に刺繍されているのは、赤い糸の歪な犬か猫の形。

 それは何となく分かるというレベルの仕上がりだったが、流石にそこまで来たら彼女の素性が分かるだろう。それはこの胸に刻まれた証なのだから……。


 やっちまったと言う感情ともう二度と彼女には会えないなぁという悲しさが胸に広がる。

 だが。


「いつか……」


 また出会えた時は今日みたいな情けない所は見せられないな。と呟く。



 さわさわと夕暮れの風が身体を撫でる。



 不意に寛げた首元。詰襟の騎士服に息苦しさを感じたが故だった。



 そんな首元に刻まれる真っ黒な呪いの証。


 芽吹く葉に空昇る輝く太陽。交差に掲げられた二本の剣。

 それはこの世界の一柱神、大地を守護し、力の象徴を表す神。【イカリス】の紋章。


 祝福と呼ばれる身体に刻み付けられた証。良くも悪くも俺の力と祝福は相性が良く、能力は何倍にも膨れ上がった。

 それ故に自分ですら使いこなせない力に恐れていた。でも、もうそんな事言ってられるか。


 やっと守りたいと思えるものが出来た。守りたい人が出来た。絶対に手が届かないような人だけど、それでもいつかはその隣で守れるようになりたい。



 グッと握りこんだ拳はあの時のように口惜しさからではなく、強い決意を表していた………。












カチッ カチッ カチッ


——カチリ



どこかで歯車が止まる音が聞こえた……。


ルイは知らない。この出会いが一つ目の転換になることを。

知らず知らずの内にとある一つの選択をしたルイに降りかかるのは何時しか時空の彼方へと忘れられた小さな光が灯るだけの未来。


しかしそれは決められた未来とは異なる新しい未来だった。

それを知る天空の支配者はただ小さく感謝の言葉を口にし雫を一つ、流した。


だが、暗闇に蠢く闇はまだ消える事はない……。




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