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暁の姫君と黄昏の守護者  作者: zzz
【序章】
17/79

Act.16 番外編[私のお姫様]

時系列的に翡翠との契約後、Act.9の後くらいです。

 



 小さな小さなその手の平。


 くりくりと丸いその瞳。


 唇から紡がれるのは可愛らしい囀り。



 それは私が生涯を懸けてでも守りたいと願う小さな小さなご主人様だった――。



 ********************





 ピチチチと朝早い小鳥の囀りが聞こえる。



 そんな小鳥を視界の端に入れながらも朝が明けたばかりの室内で手早く身支度を整える。

 スカートの形を整え、髪は邪魔にならないように纏め、襟元を覆うボタンを留めれば服の上に制服のエプロンを着こなし、最後に頭の上にドレッサーを飾れば完璧。




 初めまして。アウスヴァン公爵家 ルイシエラ様付き専属メイドのルーナ・エルバと申します。


 ふふふっ初めてでは無い?あらこれは失礼を致しました。でもここでは敢えて初対面ということで。


 本日は(わたくし)が敬愛するルイシエラ様の日常を綴るという大任を任されたことを光栄に思いますわ。



 (わたくし)が仕えるルイシエラ様はとても聡明なお方で、まさかあの熊お――ごほん。あんな自由人な旦那様と血が繋がっているのが不思議なくらいのとても出来たお方です。


 私が仕えるアウスヴァン公爵家はその立場からとても話題が絶えない家でございまして、現ご当主であらせられるガウディ様も敵国であったタナシュト公国の前魔術師団長であったスーウェ様とのご結婚の際はそれはもう、一大恋愛叙事詩らぶろまんすとして世間を騒がせた事もありますわ。


 そんなお二人の愛娘であるルイシエラ様は生まれた事が奇跡と医術師団に言われる程に危険な出産を乗り越えたお方で女神ルーナの祝福を持ち、魔眼の持ち主で風の精霊王とも契約を交わしたとても凄い方なんですの!



 しかも貴族である事を理解しつつも、立場を鼻に掛けることなく使用人である私たちにさえ礼儀を払ってくださいます。本来ならば主人としてもう少し傲慢に振舞っても構わないのですが、いつも私たちに気を使い対等の人間として扱おうとしてくださいますルイシエラ様はもう天使の様な方なんですの!!

 もう、ルイシエラ様専属の(わたくし)たちはメロメロでございます!はっ!いけないいけない。少し興奮してしまいましたわ。ご容赦くださいませ。


 さて、そんな天使なお嬢様を起こしに行くといたしましょう。



 専属使用人の中でもトーナメント制で争ったこの権利は私だけのものですもの。


 あら、何のトーナメント制ですって?それは……アウスヴァン公爵家ならではの試合だったとだけ言っておきましょう。ふふっ



 さぁ、今日も朝一番にお嬢様のお顔を拝顔出来る起床係の出番ですわ!!




 *




 そこはアウスヴァン公爵家の屋敷の中でも最奥の部屋。

 厳重な守りの中の一室にお嬢様はいらっしゃいます。



 魔術大国であるタナシュト公国の出身であるスーウェ様直々の守護呪文に守られ、ゼルダ執事長を筆頭に腕利きの猛者たちが鉄壁の守りを要するその部屋へは例え一個師団の兵隊だと言えど侵入は無理だと断言できます。

 そんな大陸一安全な部屋にお嬢様は寝ておられます。




「お嬢様?朝でございます。起きてくださいませ」



 ひっそりと足音を消し(故意ではございませんのよ偶然です偶然)ゆっくりとお嬢様の寝台へと近付きます。


 声を掛けながら最初に開けるのは寝台横にある大きな窓のカーテン。


 南向きにある為、気持ちいい日差しが入るように計算された配置の窓はテラスがあり、外に出られるようになっております。

 静かにそこのカーテンを引き、朝一番の日差しを部屋に入れます。


 次に部屋にある窓ガラスを開け、空気の入れ替えです。

 幸い付近には刺客など潜伏出来るような箇所も無いので無防備ではありますが大きく窓を開けて朝の風を迎え入れます。



 ここまでが、お嬢様を起こすまでに行う一連の流れでございます。




 その間も寝台の方からは穏やかな寝息に交じり「うぅん」とごねるような声が聞こえてきます。

 お嬢様も段々と覚醒間近なのでしょう。ごろりと寝がえりを打つのが見えました。



 そしてここからが本番なのです!!



 天蓋付きのベットなのでお嬢様の姿は朝日に照らされシルエットしか見えません。この薄い布をめくれるのは朝の起床係の特権とも言えるでしょう。さぁいざ!



「――お嬢様。そろそろ起きてくださいませ」


 内心の興奮を完璧に隠し、シャッと少しだけ勢いよく布をめくります。そして毎回の事でございますが、つい固まってしまいます。



「っ!」



 ぐらり、つい足元がふらつきます。無意識に片手は鼻を抑え視線は一点に固定されてしまいます。



 そこには鮮やかな深紅の髪をベットに散らせたお嬢様の姿が。しかも眠っているのでいつもは知的な瞳は閉ざされたまま、年相応な可愛らしい寝顔です。しかしそれだけではないのです!



 お嬢様が抱きしめているのは旦那様が送られた一体の人形。


 寂しくない様にと自分の紋章でもある獅子を可愛らしくデフォルメした人形をお嬢様は抱き締めているのです!!!獅子の人形なのはちょっと悔しいですが、他にもウサギや犬、リスなどの動物を模した人形がお嬢様の枕元を彩ります。


 取り敢えず叫んでも良いでしょうか「萌え!!」と。

 もう、天使も裸足で逃げ出すほどの可愛らしさで。旦那様のようではないですが「うちの子可愛い」と言っちゃいたい愛らしさですよこれは。


 そしてこれを見たいが為にお嬢様の起床係は毎回取り合いになるのでございます。

 ――まぁこの役目だけは誰にも譲らないつもりですが。



「んん、るーしゃん?」


「ええ、ルイシエラ様朝でございます。」


 内心、余りの可愛さに悶えつつも平静を装って返答します。


 ルイシエラ様の可愛さは正義だと言う事はこの屋敷の使用人すべての共通認識事項だと思いますの。ええ、親馬鹿ならぬ主馬鹿ですとも。でも真実ですので。


 それは兎も角、まだ寝惚けておられるのか目を擦りもぞもぞと布団から抜け出すルイシエラ様。

 残念ながら少し癖っ毛な為に寝癖に跳ねる毛先。私からすればとても可愛い猫毛なその髪の毛ですがルイシエラ様は余り好きでは無いご様子で何をしても真っ直ぐになってしまう私の髪を羨ましそうになさりますわ。



「おはよう、ごじゃい……ます」


「はい。おはようございますルイシエラ様」



 寝起きな為か舌ったらずの挨拶が何より愛らしい。



 ごしごしと目元を擦り布団から起き上がったルイシエラ様を促して洗面台へと向かいます。

 それからはルイシエラ様も目が覚めたご様子でしょぼしょぼしていた目もキリッと凛々しく、とても可愛らしかった姿から凛と美しい姿に早変わりでございます。

 元々、ご両親ともに(父親は賛否両論ですが)美しい容姿をお持ちゆえにルイシエラ様のお顔もとても整っておられます。

 ただし目元だけは父親の血が強く出てしまった為か、少しきつめに吊り目ですがそんな猫目のお嬢様が笑顔に破顔なさった時の破壊力といったらもう!!これは死ぬと覚悟するほどの破壊力ですとも!!


 その強い意思を宿す瞳は薄い赤紫色でご両親の色をどちらも受け継いだが故の色でございます。髪は深紅でアウスヴァン家独特の色ですね。

 赤の髪色は珍しい訳ではありませんが、これほど鮮やかで濃い色はそう滅多にある物ではありません。

 “赤”は火の属性を表す色。火属性は攻撃特化の能力を持ち、基本的に騎士や軍人、傭兵など戦闘を職とするものに多い色です。

 その中でも鮮やかな朱はアウスヴァン家特有で、アウスヴァン公爵家は“炎の申し子”とも呼ばれます。

 まぁそれはどうでもいい情報ですわね。



「るーしゃんきょうの朝ごはんはなぁに?」



 こてんと首を傾げ身長差ゆえにこちらを上目遣いのルイシエラ様。

 安定の可愛さでございます。寧ろあざといとさえ思いますわ!



「本日は軽めにご用意いたしましたので、ラディッシュのスープにルイシエラ様のお好きなポムのスコーンでございます。」



 そう告げればキラリと光る薄い赤紫の瞳。どうやらポムのスコーンに食いついたようです。昨日、あのゼルダ執事長とのお勉強(という名の地獄)にお疲れなご様子だった為に色々と厨房の者と相談した結果でしたがどうやらお元気を取り戻されたようでなによりでございます。



「さぁ、行きましょうか」


「うん!」



 身支度を整え食堂へと促します。

 本日の装いは明るく活発なルイシエラ様を表現した様な優しい薄黄色のワンピースドレスです。ウエストの背面部分が大きなリボン状に結んであるのがポイントですわ。髪型は外に出る事も多いのでアップに纏めて少し複雑に編んで上品な形に。我ながら上出来な見栄えだと自画自賛です。でも可愛いので良し。



 くるりと緩くターンをして出来映えを確認するルイシエラ様。丹精込めて手入れをさせていただいている髪は艶やかな艶を放ち天使のリングが出来上がりです。本日の装いをルイシエラ様はお気に召したご様子。

 少し照れてはにかむルイシエラ様に私の粘膜が刺激を受けます。


 くっ!このルーナ、ルイシエラ様の前だけは無様な様子は見せませんわ!!




「るーしゃん?」


「いえ、本日もお可愛らしいですわルイシエラ様。まさに妖精のようで――萌えますわ」



 前言撤回。心の声が飛び出しました。

 戸惑う表情のお嬢様に満面の笑顔で押し通します。




 そうこうしている内にも食堂に到着でございます。


 食堂のドアにはドアマンよろしく、ゼルダ執事長がルイシエラ様を出迎えます。



「おはようございますお嬢様」


「おはようございます。ゼルダ」



 公爵家のメイドとして高い教養と礼儀作法を自負する私でも惚れ惚れとする優雅なお辞儀。流石はアウスヴァン公爵家で長年執事長を勤めているだけありますわ。

 悔しいですが、凄いと心の底から思います。



 無駄の無い動きでドアを開きエスコートするその仕草さえ洗練された熟練のものです。それに背伸びした様子で応えるルイシエラ様は言わずもがな可憐で初々しいですけどね!!


 今頃あの可愛らしい頭の中では必死に振る舞いのなんたるかを反復していることでしょう。まだ拙いながらも貴族の令嬢として一人前の振る舞いをするお嬢様。日が浅いながらも大人顔負けの仕草はとても誇らしく思います。



 食堂に入れば私の仕事は一旦ここまで。食堂には食堂付きの給仕役のメイドがおります故に私はルイシエラ様のお食事が終わるまで待機です。


 ちなみにこの給仕役も熾烈な争いでしたわ。




「それではルイシエラ様また後程お迎えにあがります」

「うん」



 閉められていく扉。最敬礼のお辞儀をしたままお嬢様を見送ります。食堂に一度足を踏み入れればそこからは給仕役の仕事です。奪っては怒られてしまいますのでここは大人しく見送ります。


 パタンと軽い音を立てて閉まった扉を見詰めていると中から何やら騒がしい音と共にあのゴリ――ごほん。我が公爵家当主のガウディ様の声と何やら殴打音が聞こえました。耳はいいほうですのよ?


 まぁいつものごとく無理矢理抱き上げてゼルダ執事長からの鉄拳制裁が下ったのでしょう。





「――貴方達も下がりなさい。後で知らせるわ」


 誰もいない廊下に私の言葉だけが響きます。しかし私は知っています。廊下の天井と窓にそれぞれ護衛の人間が隠れていることを。

 普通の人間ならばまず気付かないその気配の薄さに改めて感心します。あのゼルダ執事長が特に目をかけているだけあって新参者の二人の少年の実力は目を見張るものがあります。



「――あんたに指図される謂れはない」

「俺達はここでいいよ」



 ポツリ、風に吹き消される程の小さな声での返答。しかし、答えは可愛いげの無いものです。


 まったく、この少年達は下手に実力がある所為か随分と年上に対する口の聞き方を知らないようですわ。

 ルイシエラ様がお生まれになられる少し前にゼルダ執事長から拾われてこの家に来た子達ですが、そっち方面(戦闘技術)の教育を先行するあまり礼儀作法に関してはまだまだです。これは一応先輩として口の聞き方を教えて差し上げていいかもしれませんわね。


 ふっとつい上がってしまう口角。今でこそルイシエラ様のメイドとして日々身の回りのお世話をさせていただいておりますが、私も元々は彼らと大差ない人間でございます。好戦的な部分があるのは否定できない所ですわ。


 実はアウスヴァン公爵家の使用人の殆どは私たちのように裏で生きていた人間が大半です。しかも元々アウスヴァン公爵家を狙った間者や暗殺者が多く、それなのにも関わらず公爵家の皆様は懐が広いというかお人好しというか、大雑把というかどんな経歴を持っていようがその人間が望んだならば受け入れてしまう所があります。

 そんな所に惹かれた人間や逆に強さを求めたがために公爵家に忠誠を誓う者達は多いのですが……そういう私も同類なので何も言うことができませんが。




「訂正するわ。これは命令よ――今すぐ部屋に戻りなさい」


「だから嫌だと――っ!?」



 スッと首に突き付けたのは小さな刃物。手の平サイズの東洋に伝わるクナイと呼ばれる暗器を少年の片方。生意気な口を利く少年に食い込ませます。――さぁ、これで貴方は一度死んだわね?



「いつの間に」

「はぁ……弛んでる証拠よ。今の貴方達相手なら何度でも殺せるわ」



 こんな弱くてお嬢様の護衛が出来るの?と目線で問い掛けます。勿論本気の殺気を滲ませて。こんな体たらくでお嬢様の護衛など片腹痛いわ



「貴方達の代わりになりたい人間は大勢居るのよ。これ以上無様な姿さらす前に休憩しなさい」


 二人のお嬢様に対するその心意気は評価しますが、それに実力と体が伴っていなければ意味がありません。彼等の気の緩みはお嬢様の命の危機に直結します。それがどれ程恐ろしいことか。

 本気で今すぐ代われと抗議したいです。四六時中お嬢様の側にいれる権利です。お嬢様のあんな表情やそんな表情を見れるというなら再び裏の世界に入ることもやぶさかではありません。


 一度は裏の世界から足を洗った身ですが、お嬢様の為に腕は鈍らないように日々鍛練をしております。今すぐ代われる程の実力は保持してあると自負しますわよ。


 元々彼らがお嬢様の護衛に抜擢されたのはゼルダ執事長の一存です。正直私のようにお嬢様の姿に惹かれ、護りたいと望む人間は多く、彼らより強い人間もいます。それなのにも関わらずゼルダ執事長は独断とも言える決断で彼らをお嬢様の護衛にしました。それを不満に思う人間は私を含め多いのです。


 今までメイドとして徹してきたので彼等の同類としての顔を見せたことに彼らがとても動揺し驚いているのがわかります。

 あらあら影に生きる人間がそんなに見るからに分かる表情をしてどうするの。まだまだ若いわねぇ



「行きなさい。ゼルダ様には黙っといてあげるわ」


 いつものメイドとしての口調を改めて素の言葉で告げます。クナイを下げてもう一度促せば戸惑いながらも離れていく二人。それを気配で感じつつ廊下に戻ります。


 僅かに乱れた服装を正し廊下を進めば曲がり角に一つの気配。



「――甘いな」

「でも彼等は優秀よ」

「だからといって、お姫様を任せるに値するかは疑問だがな」


 それは暗闇に紛れるように佇む一人の男。彼もまた裏に生きる人間です。ついでに言えば少年達の先輩でもあり、私の同期。



「あらゼルダ執事長の決定にご不満?」

「正直はな。お前もだろ――“無音”」

「その名は止めて欲しいわ。まぁ否定はしないわね。でも彼等の可能性を信じている部分もあるわ」



 今時そんな古い名で呼ばれたくはありません。すでにお分かりかもしれませんが元は暗殺者だった(わたくし)。気配も音もなく忍び寄り確実に対象を仕留める事からそんな名前が通り名となりましたがもはや捨てた名です。



「お優しいこって」

「うるさいわよ。サボらずに仕事なさいよ」

「残念、俺はここで待機が仕事だ。あいつらがいない分な」

「へぇ、精々お嬢様に見付からないようにすることね」

「あいつらみたいにヘマはしねぇよ」

「どうだか」



 ひらひらと後ろ手で手を振ってその角を後にします。世間話はここまで。私にだって仕事は山積みてすから。面倒くさい男の話に付き合ってやる時間は無いのです。




 可愛い可愛い私達のお姫様。

 蝶よ花よと愛でられ愛されてそれが全てだと享受し、箱庭に住まうお姫様。それだけだったらただの主の娘として私も普通にメイドとしてお世話をするだけですが、そんな甘やかされて過ごすお姫様にこんなに心を奪われるのは何故でしょうね?


 今思えばあの時からでしょうか?はじめて会ったあの日。その目に私は惹き付けられてやまないのです。幼児とは思えないその心の強さに。その何かを宿す力強い姿に。私は惹き付けられて、魅了されてばかりです。



 元々、祝福を授かる人間は早熟で自我の形成がとても早いと聞きます。

 その強い力を制御するために、力を暴走させ被害を出すのを防ぐために。神々がそうなるように仕向けるのだと聞きます。しかしそれでも3~4歳頃でやっとらしいですが。

 お嬢様のように赤子の頃から自我を持っているのは珍しいのです。

 産まれた時からお世話をさせていただいているからこそ分かる事実。流石にゼルダ執事長も分かっているようですがほかに気付いたものはいないでしょう。


 まだハイハイも出来ない頃から隠れて本を読んでいる姿は驚愕の一言につきます。しかも見ているのではなく、読んでいるのてす。それに僅かに恐怖したのは事実です。流石に私でも畏怖を覚えました。得たいの知れない、今まで感じたことの無い類いの恐怖です。


 でもそれ以上に彼女がこれから何を為すのか気になったのです。

 そしてこれから彼女が為そうとすることを支え手伝うことが出来ればどんなに幸せか!


 そう思えば彼女に忠誠を捧げたいと思うに時間は掛かりませんでした。

 だから彼女がもう少し大人になり、周囲のことを理解したその時は忠誠の誓いを乞いたいと思います。どうか私の主になってくださいと。


 彼女こそが私が生涯をかけて守りたいと思った、たった一人のご主人様なんですもの!





 だからこそ、今はメイドとして彼女に仕えましょう。彼女に信頼を寄せてもらうためにも。





「るーしゃん!あのね」


「はい。何でしょう?ルイシエラ様」



 いつか貴女様の力添えになれる事が私の誇り。そして矜持でございます。




 時には無邪気に可憐で可愛らしく、時には凛として凛々しいお嬢様。


 貴女様に本当の意味で仕えられる事を夢見て今日も一歩引いてお嬢様を支えます。



 時には自分の境遇を嘆き、世界を恨み、自分の生に諦めた私ですが今なら声高々に言えます。



 今の私は世界一の幸せ者でございます!




ポム=じゃがいも的な野菜。

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