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太陽王即位

 まだ雪の残るガルディブルクの街は、まるで火の消えた暖炉の様に静まり返っていた。街を行く人はまばらで、いつもなら人々でにぎわう筈のメインストリートには、何処かの誰かが飾ったらしい白い花が風に弄られていた。


「ノダ王も不憫だな……」

「あぁ。決して劣った人物ではなかったんだが」


 ひそやかに会話する市民の声は、その多くがノダ王を痛む声になっていた。

 

 10日ほど前に起きたガルディブルク市街における騒乱は、一握りのコマンドによる騒乱工作だと新聞などにより発表されていた。城にはためくル・ガル国旗は半旗となり、街の衛兵は黒一色に統一された忌色をまとっている。


「信じられない光景だな」

「全くだな」


 城から街を見下ろしているゼルとカウリのふたりは、深い溜息を吐き出しつつもテキパキと事務仕事を片付けていた。ノダ王の死去に伴い行わねばならない案件は枚挙に暇が無い。

 ふたりで机を付き合わせ積み上げられた書類に片っ端からサインを入れ、それと同時にシュサ帝・ノダ王二代に渡って仕えてきた国家運営に関する様々な頭脳への身分保障を行っている。


「こんな時に不謹慎だが……」

「なんだ?」

「王が戦死するほうが手続きは楽だな」

「おいおい……」


 サインを入れる手を止めて笑ったカウリは上目遣いにゼルを見た。

 この数年で一気に老け始めたと感じていたヒトの男だが、10日前にカウリの妻レイラを救助してからと言うもの。その老け込みようが一気に濃くなったようにも見受けられる。

 自宅から拉致され救助されたレイラとリリスの身の安全のため、カウリは城にいるゼルに()()()()()ことになっている。それがただの詭弁である事を知る者は多いが、この日までイヌの国に尽くしてくれたヒトの男に表立って文句を言うモノは居ないし、むしろ城詰めに限らず多くのスタッフが()()()()()()のふたりに気を使っていた。


「しかし…… ゼルよ」

「ん?」

「程ほどにせんと」

「……なにがだ?」


 充実した表情で僅かに笑ったゼル。

 妻エイラと共にレイラを預かるゼルの()()は相当なものだろう。

 だが、愛する女と共にいるなら、男は本能的に振舞ってしまう時があるのだ。


「随分搾り取られているようだ…… が?」


 嗾けるような笑みのカウリと恥かしそうなゼル。

 そんな部屋に新たな書類が台車ほど二台運び込まれ、笑みを掻き消していた。


「軍務総監どの」

「……また地方で問題か?」

「いえ、地方所轄は各公爵掌握ですので問題ありません」


 事務方の男が差し出した書面にはフレミナ・アージン家の家紋がエンボスされていた。その書面を見たカウリの表情が曇る。ゼルもまた眉間に皺を寄せていた。


「問題じゃないか」

「……そうですね」


 ゼルのサポートについていたオスカーも横から覗き込んだ。

 フレミナ家が付けて来た難癖は、ある意味で予想の範囲だった。


  ――若き新帝に助言を行う役職は一つくらいフレミナにも割り当てて欲しい


 表向きは控えめなお願いと言うところだろう。

 だが、その書状がゼルのところへ直接届けられたと言う事は、遠まわしにゼルの正体について口をつぐむ代わりに、何らかの見返りを与えろ……と。そう言っているのに等しい事だった。


「フレミナ側も焦っているな」

「あぁ。そうだな。俺のところへ直接寄こすとか……」


 クククと苦笑いを浮かべたゼルはペンをポンと机に投げ捨て、頭を掻きながら城の外を見た。青い空に白い雲が浮かんでいる。この数日、帝都に雪をもたらした低気圧は過ぎ去り、入れ替わりに流れ込んできた暖気によって街は驚くほど暖められていた。


「で、どうする?」

「どうするって?」

「フレミナさ」

「カウリは何か約束してないのか??」


 腕を組んでウーンと悩んでいるカウリだが、思い当たる節は何一つ無い。


「これと言って密約は無い筈だ。ただ、フレミナはチャンスだと思っているな」

「だろうな。ノダを亡き者にしたのだから、若いカリオンならどうにでもなると思っているんだろう」

「しかし…… どうしたもんか」

「……フレミナには助言を与えるポストを与えようと思う。ただし、フレミナに独占はさせないがね」

「と、言うと?」


 食いついてきたカウリにゼルが始めた話は、かつて聞いたヒトの世界の政治システムのル・ガル版と言うべきモノだった。話を聞いているカウリの目には『おぬしも策士よのぅ』と言いたげな悪い笑みが浮かび上がっていた。


「どうだ?」

「良いな。実に良い。カリオンばかりに責任を負わせない仕組みだ」

「そして、地方行政主である公爵が自由に動きやすい仕組みだ」

「もちろん責任を伴う形でな」

「そうさ。そしてその責任は、もちろんフレミナも背負わねばならない……」


 ふたりして悪い笑みを浮かべるのだが、午後の御茶が運ばれてきた時点で思わぬ時間経過を知った。午前中から手を休めず行ってきた事務方仕事も、やっと終わりが見えてきた頃合だった。


「要するにフレミナはカリオンを傀儡にしたいのだろう」

「だろうな。ついでに言えばワシやゼルも暗殺されるやもしれん」

「気をつけないとまずいな」

「あぁ」


 ティーカップに注がれたお茶ををジッと見ていたゼルは、ふと思い立って従卒に居た者を呼び寄せた。


「いかがされましたか」

「下の池に鯉が居た筈だ。洗面器でもバケツでも良いから、一匹すくって持ってきてくれ」

「かしこまりました」


 ゼルの姿を見ていたカウリは飲もうとしていたお茶をティーソーサへ戻した。


「さすがだな」

「ノダは事実上毒殺だ。そして……」


 ゼルが指差したさきにはティーポットがわざわざふたつ用意されていた。カウリの飲むお茶とゼルの飲むお茶は分けられている。


「ここでゼルを殺すメリットがあるかね?」

「おそらく嫌がらせだろうな。死なない程度に苦しむ毒を一服もって、いつもで殺せるんだと脅す為の」


 ややあって洗面器に鯉を入れて持ってきた従卒は、ゼルのテーブルへとそれを置いた。りっぱな姿に育った鯉は狭い洗面器の中をゆっくりと回遊している。その中へ冷めたティーカップの中身を注いだゼル。最初は何とも無かった鯉だが、しばらくしたら腹を見せて浮かび上がってきた。


「予想通りだな」

「死んだか?」

「いや、死んでないが……」


 仮死状態にでもなったかのようにエラをピクピクとさせている鯉。その姿を見ながらゼルは静かに唸った。


「この鯉を池に戻してくれ。水は入れないようにな」


 腕を組んでその姿を見送ったゼル。カウリも厳しい表情を浮かべている。


「厨房の中を改める必要がありますな」


 オスカーは静かに立ちあがって静かにつぶやいた。

 だが、ゼルはそのオスカーを引きとめた。


「いや。もう少し泳がせよう。尻尾をつかみたい。まずは厨房にいる者たちの経歴徹底的に洗うんだ」

「あらう?」


 不思議そうに見たオスカーだが、ゼルは苦笑いを浮かべるだけだった。


「過去をちゃんと調べるのさ。何処の出身でどんな家族で、どんな所に住んでいるのか。交友関係や職場以外に出入りしているところ。あと、借金をしていないか。賭博場に出入りしてないか。政治集会などへ参加していないか。そういう部分でどんな事でも良いから徹底的に調べる必要がある」


 淡々と語っていたゼルは、遠い昔を思い出し完全に刑事に戻っていた。

 自分の経験した事を思い出し、怪しい者を炙り出すまで続けられる身辺調査の重要性はこの世界でも大して変わらない。


「つくづくと…… ゼルの存在がありがたいな」


 カウリの言ったその言葉に皆が頷く。


「さしあたってはカリオンを何とかしなきゃいけない。なんだかんだ言ってあいつはまだ19歳だ。せめて40になるまでノダには頑張って欲しかったところだが」


 自分の椅子へ再び腰をおろしたゼルは、カウリをジッと見ていた。


「カリオンはこれから正解の無い問題を解き続けると言う孤独な戦いを行う事になる。だから、そのカリオンに少しでも手助けできる人間を揃えて置きたいんだ」

「そうだな。シュサ帝もノダも結局はそれで苦しんだ」

「頂点に立つ者は皆、孤独なんだよ。指示を受ける者は数多く居れど、遠慮なく助言をしてくれる者はなかなか居ない」


 悲痛そうに呟くゼルを見ていたカウリ。室内に漂う思い空気をかき混ぜるように一陣の風が舞い込んだ。ガラスなど無い窓から入り込む風は温かく、冬の空気を忘れさせるほどだった。


「俺のほうが早く死ぬ。だから、協力して欲しい」

「幾らでも協力するさ。他の誰でもない。ル・ガルに尽くしてくれたお前の為に」


 無言のまま満足そうに頷いたゼル。

 いまだ服喪中の次期帝カリオンと次期后リリスに代わり、新生ル・ガルの仕組みは着々と整えられつつあった。




 それから一ヵ月後




 暖かな風の吹くガルディブルクは早春の陽気になり始めた。

 待ち行く人々は日常を取り戻し、明るさと活気を取り戻した街の中には軽快な音楽名流れている。

 卒業まで遺すところ4ヶ月となったカリオンは卒業課題とも言うべき学士論文の執筆に忙殺されており、それこそ寝る間も惜しんでペンを走らせ、終末の息抜きに帰ってきたはずの城でも続きをせっせと書きつつ、新しい国づくりの業務にも忙殺されていた。


「カリオン! 時間だ!」

「もうちょっと! もうちょっとだけ!」


 続々と出来上がっている論文のタイトルは『新時代の政治機構と軍務のありがた』に定まり、そこにはこの一ヶ月ゼルやカウリ、そしてトウリを交え考察を重ねてきた政治システムの抜本的転換を体系化したものが書き連ねられていた。


「続きは夜中に書け。まだ1週間くらい寝なくても死にはしないさ」


 笑いながら正装でやって来たゼル。その、なんとも決まっている姿を見たカリオンは、思わず息を呑んで眺めてしまうのだった。


「どうした?」

「いえ……」


 何とも誇らしい気分になったカリオンはペンを片付け、書きかけの論文に文鎮を載せて散逸を防いだ後、その場にてテキパキと着替えを始めた。

 一ヶ月設えられた『帝王の正装』となる衣装は息を呑むほどの上質さで、今まで学校で着ていた第1種礼装となる公的礼装ですらも霞むほどだった。


「よしよし……」


 段々と仕上がっていくカリオンを見ながら、ゼルは口元を手で押さえ涙を浮かべていた。あの、いつも無いていた赤子が。馬に乗ってお付きのお供を振り切り走り回った悪がきが。太陽王の試練を乗り越え晴れやかな顔をしていた少年が。

 見る者に畏怖と尊敬を覚えさせる威厳をまとった正装を見せている。


「良い男になったな…… エイダ……」


 感極まって涙をこぼしたゼル。

 その涙をぬぐったのは、いつの間にか正装で現れたレイラだった。


「ゼルどの? 泣くのはまだ早くてよ?」

「そうよ。あなたが泣いちゃダメじゃ無い」


 気が付けばエイラもやって来て、満足そうにカリオンを見ていた。


「リリスは?」

「あの子もいま支度中よ」


 カリオンの問いに答えたレイラは笑顔になっていた。

 見事と言うしかないドレスを着て、息を呑むほどに繊細な仕上げとなったティアラを乗せるレイラは、何とも晴れやかな顔でゼルを見ていた。


「女の身支度には時間が掛かる。男は黙ってそれを待っているんだ。文句は絶対に言うなよ。それは男の度量が小さい事を示す恥かしい事なんだからな」


 ドレスアップした美しいレイラとエイラのふたりを連れ、渋くてダンディな姿となったゼルがカリオンを見つめていた。裾を引き摺るほどに長いガウン状の上着に袖を通したカリオンは、シュサより受け継いだ太陽王の戦太刀を肩より下げた。


「カリオン。太陽王の裾がなぜそんなに長いか知っているか?」


 自分の支度を終えてフラリと現れたカウリは、カリオンを見るなりそう問い掛けた。かつて見た主さの如き威厳を持つマダラの王は、満足そうに笑みを浮かべた。


「遠い日にシュサ帝より教えを受けました」


 オホンとひとつ咳払いをし、カリオンは城下を見渡すバルコニーへと歩み出た。


「太陽王に後退は無い。振り向く事も無い。常に前進するのみ。それゆえに、裾は引き摺っていくのが良いのだ……と」


 構造的に考えれば、もはやカリオンはその場で振り返って歩く事など出来ない。裾の長さは3メートル近くに達し、その裾を長く引いて優雅に歩く太陽王は大きく円を描いて方向転換をしなければならなかった。


「うむ、模範的回答だ」

「でもさ。なんかあったら困るよね。これじゃ」


 カウリの言葉に続き部屋の中から声がした。こんな時、カリオンはすぐに振り向く事など出来やしない。ゆっくり歩み出て大きく円を描き、再び室内へと入ったカリオン。その前には純白のウェディングドレスにも似たオールシルクのドレスに身を包むリリスが立っていた。

 全て銀で作られた豪華なワンドは太陽王の后の証。それは絶大な権力を持つ事になるル・ガル女性の頂点の象徴でもある。


「凄く綺麗だ」

「ほんとに?」

「あぁ。ほんとに綺麗だ」


 嬉しそうに笑ったリリスは静かに歩み寄ってカリオンの頬へキスした。


「リリス。これから大変だけど、よろしく」

「うん。ル・ガルで一番大変なカリオンの一番近くにいるよ。いさせてね」

「あぁ」


 リリスの手を取って歩き出したカリオン。二人の後ろには裾をフォローする従卒が6人ずつ付いていた。

 長い階段を下りていき、城下の広場を見渡す大きなバルコニーへ歩み出たカリオン。傍らにはリリスがいる。城下の広場を埋め尽くしたル・ガルの臣民が割れんばかりの拍手を送る中、カリオンは右手を大きくあげ国民の声に応えた。


「わがル・ガル国民の諸君。今日の良き日を迎えられた喜びを諸君らと分かち合いたいと思う」


 再び歓声が響き、巨大な広場からカリオンの名を連呼する民衆の声が響いた。

 その声に再び右手を上げて応え、そして民衆が静まるのを待った。


「私はいまだ学生の身分である。そして、まだまだ修行中だ。これから様々な事を学び、そして考えねばならない。諸君らの知恵を私に授けて欲しい。諸君らの経験を私に教えて欲しい。そして、諸君らの暮らしが昨日よりも今日、今日よりも明日と、少しでも良くなっていくように。子等がより良いル・ガルを生きる事になるように、私を手伝って欲しい。支えて欲しい。太陽王は国民と共にある」


 よく通る声が広場に響き渡り、多くのものがカリオンの声に耳を傾けていた。

 そんな中、城下の聖導教会から大司教が姿を現し、カリオンとリリスの前に立って太陽の契約をはじめた。妻を持たぬ王だったノダには行われなかった、妻子を持つ太陽王のための儀式。それはつまり、帝王になる為の儀式だ。


「太陽神の使徒よ」

「はい」

「万物を照らす太陽の慈悲は光りと熱とをもって万民を幸福へと導く」


 静まり返った広場に大司教の説教が続いた。


「今ここに、神の慈悲と愛と、そして無限の恵みを持って新たな帝王の誕生を宣言する。そして、帝王と臣民の絆が生まれた。臣民よ! 帝王を支えよ! 帝王よ! 臣民と国家を愛せよ! 天と地の狭間に、父とその子らと、八百万精霊の導きがあらん事を! ル・ガル万歳!」


 大司教の万歳が響き、多くの国民が熱狂的な声でル・ガル万歳を叫んだ。

 何度も何度も万歳の声が続き、5分かもう少々の時間を経て国民が静かになったところで、広場の中に大きな荷車が現れ、臣民へ向かって新たな帝王の言葉と、そして新しい政治の仕組みを書いた新聞が配られた。

 どれ程大きな声を出したところで、人の肉声が広場の隅々に届くわけが無い。そんな状態なのだから、カリオンとリリスが発した国民へのメッセージはこのような形にせざるを得ないのだった。



 ――親愛なるル・ガル市民へ



 そんな書き出しで始まるカリオンのメッセージ。

 いまだ19歳の若き王が書いた政治の仕組みは驚くべきモノだった。



 ――私はまだ政治を知らない。机上の学問ではなく生きた政治を知らない。故に私は国家と人民を知る伯爵たちを召集する。年に二度、この帝都へ全伯爵を集め、私の感じた事や改善すべき事を議題として出し、自由闊達な論議を経て多数決を行い方針を決める。

 そして、各町々にある商工会の会頭や職人組合の組合長、漁労長や農長を集め、もうひとつの会議を行う。彼らは侯爵会議が出した方針に対し、賛成か反対かを問う事とする。町を預かる侯爵の方針に対し人民が直接拒否を示せるようにする。そのふたつの会議を経て出された結論は五つの公爵家と大公家の頭目と共に私が直接検討し、実施するかどうかを決める。

 少なくとも10年。私に経験を積ませて欲しい。そして、この10年の間にこの仕組みがより良いものに育ったなら、私はル・ガルをこのように導こうと思う。多くの国民の声を届けて欲しい。


 わが愛する全ての臣民へ。新王カリオン・エ・アージンより愛を込めて――




 新聞を読み終わったものから次々と拍手が沸き起こり始めた。

 カリオンの英断を讃える声が溢れたのだ。そして、まだ若き王はバルコニーを一度退き、今度は中央広場のど真ん中へその姿を現した。

 国民らのいる場所へ降りてきた若き太陽王。その姿を見た国民たちは誰がといわず自然発生的に歌い始めた。


 ――あぁ慈しみ深き全能なる神よ

 ――我らが王を護り給へ

 ――勝利をもたらし給へ

 ――神よ我らが王を護り給へ


 その声が広場の中に広がり、多くの民衆だけでなく騎兵や近衛兵や文官たちまでもが広場に出てきて、声を合わせ歌い始めた。


 ――我らが気高き王よ 永久(とこしえ)であれ

 ――おぉ 麗しき我らの神よ

 ――我らが君主の勝利の為に

 ――我らに力を与え給へ


 広場の民衆が両手を天に突き上げ、絶叫するように叫んでいた。

その姿を見ていたカリオンもまた手を突き上げた。国民と共に生きる姿を示した最初の太陽王。その雄姿を多くの国民が見ていた。


 ――王の御世の安寧なる為に

 ――神よ王を護り給へ


 沢山の拍手が鳴り響き、会場からは歓声が沸き起こった。

 空には沢山の鳥が飛びかい、多くの家々がル・ガルの国旗をはためかせていた。


 この日。

 ヒトとイヌの血を半分ずつ受け継ぐカリオンは、同じ境遇のリリスと共にル・ガルの新しい王として即位した。始祖王ノーリから数え始めた帝國暦326年の事だった……

青年期~太陽王への道 ―了―


次章『青年期~新たな時代の王として』は3月ごろを予定しています。

ここまで御付き合いありがとうございました。

なお、1月31日に幕間劇をひとつ公開致します。

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