デーモンコア
~承前
猛烈な魔法攻撃が行われた翌朝。
ドリーは早起きして日の出を眺めていた。
――――――やはり眩いな
眩い朝日に目を細めたドリーは、何とも晴れやかな気分だった。
己が責任において敵を撃退せんと欲し、その引き金を引く。
それだけの事だがドリーには大事な事だ。
太陽王の為に生き、太陽王の為に死ぬ。
自らの忠誠心を証明する為、この命を差し出す。
ある意味では狂信が故の愚行と謗られる行為。
しかし、それですらも甘んじて飲み込むのだろう。
厳しい批判ですらも、今は不死の甘露そのものだ。
――――――昨夜のあの猛烈な攻撃はやはり牽制か……
静まり返った平原には猛烈な突風の痕跡が残っている。
それを思えば何となく腑に落ちる事もあるのだ。
ル・ガル側の攻撃により、向こう側にも無視できない被害が出ているのだろう。
兵法に曰く、山を越えて陣を張れと言うのだ。恐らくは向こうも必至だ。
それ故に使える魔法を全部使い、こちらへ一方的に攻撃し続けた。
時間を稼ぐためか。若しくは交渉で有利になるように被害を出させる為か……
――――――彼等も必至なのだろうな
ごくごく当たり前の事に思いを巡らし、ドリーは一つ息を吐いた。
敵ながら天晴……などと褒めるつもりはない。
ただ、彼の国から遠く離れた場所まで遠征してきた彼等の苦しみを思った。
「油断大敵ですぞ。公爵殿」
唐突に声を掛けられ、ドリーは少しばかり驚いた。
眩い太陽を見たせいか、西からやって来た者に気付かなかったのだ
そこに立っていたのは例のヒトの少佐だった。
少し軽い調子でそう言うヒトの男は、相変わらず醜い笑い方だった。
だが、不思議な事にこの男からは嫌な感じが伝わってこないのだ。
――――――ひとかどの人物だな
ドリーはそう分析していたが、実際にはどうだか解らない。
ただ、現状ではイヌの為に命を差し出そうとしている。
その事実だけでも、ドリーは十分に信用できると思っていた。
単純と言われればそれまでだが、万の言葉を凌ぐ一つの行動もあるのだ。
「うむ。我ながら油断したわ。して、そなたの言う破滅的な破壊兵器は何処だ?」
ドリーは気になっていた質問をぶつけた。
それに対し少佐は少し引っかかるもの言いをした。
「ここにはありますよ。ただし、パッと見では解らない形ですが」
その言葉が少し不安だったのだろうか。ドリーは非常に怪訝な顔だ。
少佐はそれを見取ったのか、少し説明を付け加えた。
「兵器……いや、武器としては非常に小型のものです。予備知識なしでは小石程度に思う程度の物です。ですが、そこに秘められた力はとんでもないのです」
少し軽い調子でそう言った少佐は、最後にこう付け加えた。
「我々2名が蒸発して消えるには申し分ない程度の威力はありますからね」
それを聞いたドリーは少しばかりニヤリと笑うと、再び太陽を見上げた。
眩い光に目を細め、満足そうな晴れやかそうな顔になった。
「これから死ぬというのに、公は不思議な御仁ですな」
少しばかりの呆れを滲ませつつ、少佐はそんな事を言った。
だが、その返答は不思議なほどに清々しいものだった。
「今は晴れやかな気分だからな。最後の朝日くらいはじっくり拝みたい」
ドリーの言葉に少佐は表情を変えた。
その意味する所を理解したからだ。
「太陽は万物を照らし、光と熱とを恩寵とするものですな」
「その通りだ」
少佐の言葉に手短な言葉を返したドリー。
そんなドリーの内心と言えば、太陽に王を見ているのだ。
――――――我が君よ
一歩間違えば狂信ともなる忠誠こそを己の拠り所としてきた男だ。
我が身を取り巻く全てに忠誠を捧げる存在のよすがを求めてしまう。
古くから言う通り、一斤のパンと水差し一杯の水で人は1日を生きられる。
しかし、自分自身を支える柱、心を振るわせるエネルギー源もまた必用。
ドリーに取っての太陽王は、文字通り太陽その物だった。
「で、どうした?」
「いや、それがですね。どうも早くから使者のようです」
少佐は少しばかり先の辺りを指さした。
ドリーが眼を見開いたとき、そこに居たのはネコと獅子の男達だった。
およそ20名程の一団が歩いてきている。
どの顔にも焦燥感と疲労感が漂っている。
――――――やはり彼等もいっぱいいっぱいだ……
当たり前の事とは言え、ドリーは少し同情心を持った。
だからと言って手を緩めるつもりは一切無いのだが。
「恐らくは軍使でしょうな」
少佐はそんな事を漏らし、再び大きく頬肉を歪ませて笑った。
それはまるでヒキガエルだ……と、誰もが思うほどに……
「そちらにおわすはイヌの貴顕と見受けるが如何に?」
唐突に誰何してきた獅子の男には見覚えがあった。
どこで会ったか……と思索を巡らせたドリーは思い出す。
王都へやって来た千人隊長だかと名乗った獅子の男の側近だ。
と言うことは、この存在は獅子の中でも相当な存在の筈。
ドリーは僅かな間に様々な事を考慮していた。
「いかにも。吾はル・ガルを統べる太陽王を支える支柱にして王の剣に数えられし公爵五家のひとつ、スペンサー家一門を差配する当主である」
腰に佩ていた太刀を抜き、目の前の地面に突き刺したドリー。
そのまま数歩下がれば、それは丸腰を意味する振る舞いだ。
――――――貴様など恐れはせぬぞ!
言外にそう言い切る意味があるのは言うまでも無い。
しかし、ここで重要なのは当方に戦意無しを伝えることだ。
武具を捨て、冷静に話をしたいと伝える為のジェスチャー。
ここでしくじっては太陽王に面目が立たぬのだから真剣だった。
「この場にて貴公にあえた僥倖を神に感謝したい。手前は従軍執政官にして千人隊長補佐官であるフラウィウス。手前の主に当たるセルウィウスが死去したので臨時の司令官を務めている。どうか含み置きいただきたい」
獅子の儀礼に乗っ取り、心臓に手を当ててフラウィウスが言った。
それを見ていたドリーは剣の鞘を抜き、足元に降ろした。
寸鉄をも帯びぬ姿のドリーは、最後の切り札的な鞘まで身から外したのだ。
つまりそれは、敵意が無い事を示すものだった。
「貴官の訪問を歓迎する。我が主は既に後退し、吾はそなたらの到着を待っていたのだ。貴官らが何らかの接触をすることは解っていた」
ドリーがそう言うと、隣に居た少佐は少しばかり驚いた顔をした。
ただ、相手に気取られぬよう、警戒しつつも鷹揚とした空気だった。
「……それは意外な言ですな。我々は『降伏勧告であろう?』然様に」
フラウィウスの言葉を遮ってドリーがそう言う。
少佐は少しばかり冷ややかな目になってドリーを見ていた。
「そなたらの……いや、獅子では無くネコの側から接触を受けていたからな」
ドリーはまじめ腐った顔のままそう言い切った。
そして、眼玉だけを動かし、ネコの一団の後方にいた男を見た。
「おぬしであろう。吾に接触して来ていたのは」
ドリーの眼差しの先、ネコの一団で後方に潜んでいた男がニヤリと笑った。
「……ほほぉ。あぬしは見抜くかえ」
姿こそネコの老人だが、嗄れた老婆の声が漏れた。
ネコの一団を追い越して来たのはネコの女王の王配、エデュ・ウリュールだ。
ただ、それは姿だけで中身は別物。
そうで無ければ老婆の声が流れた説明が付かない。
「フンッ! イヌの鼻を騙せると思うかッ!」
かなり不機嫌な様子でぶっきらぼうに言い放ったドリー。
そんな姿が面白いのか、エデュの姿をした何かがニヤリと笑った。
その正体はもうわかっている。過去幾度もル・ガルが直面してきた存在だ。
「きさまからは腐りきった淫らな闇の臭いがする。腐った馬糞の臭いより酷い」
ありったけの罵倒を丁寧な言葉で言い放ったドリー。
それを見ていたエデュに化けるウォルドは、その姿を変化させ始めた。
「ヒッヒッヒ 荒れておるのぉ 信じていた存在に裏切られてはなぁ」
人の心の弱い部分。最も触られたくはない部分。
そんな部分にあえて不快な触り方をする。
嫌な事をされれば不機嫌になるのを承知で……だ。
「フンッ!」
不機嫌そうに鼻を鳴らしたドリー。
その姿をヒトの少佐が面白げに眺めている。
「で、そこなヒトの男は……何者ぞえ?」
剥き出しの敵意を露骨に顕しつつ、ウォルドは少佐を見据えて誰何した。
だが、そんな姿をも嘲笑うように頬肉を歪ませ、見下すような笑みがこぼれた。
「なるほど。これがイヌの国の敵ですか。まぁ、何とも醜悪ですな。今まで色々と見てまいりましたが、これほど無様な存在と言うのも記憶にない」
怒るでもなく蔑むでもなく、ただ淡々と興味なさそうにそう言った少佐。
その言葉と態度はプライドの塊り的な存在には最も屈辱だろう。
事実、ウォルドは明確に表情を変えていた。
蔑まれているという事実がその心を紙やすりの様に擦っているのだ。
「あぬし…… ヒトの分際でえらそうに……」
明確な怒気。或いは殺意。
そんな気配が当たりの空気を冷やしている。
だが、少佐はどこ吹く風で返答した。
「あー すいません お気に触っちゃいましたか? まぁ、獣風情には文化や哲学など語っても無意味でしょうが、ヒトだってバカにするのは止めてもらえませんかね? それともヒトはバカにして良いとか、そんな根拠がなにかあるんですか?」
あえて波風を立て、相手を苛立たせて失言を引き出す。
どれ程にディベート慣れした者であっても、これには大概屈するものだ。
「……殺すぞ」
ウォルドの口からそんな言葉が漏れた時、少佐は再びニヤリと笑った。
まるで道端に落ちているイヌの糞でも見る様な、心底興味ないという空気で。
「先ほど殺されかけたばかりだというのに、あぁ、実に恐ろしいですなぁ」
笑いをかみ殺しながら少佐がそう言った瞬間、ウォルドはバッと腕を伸ばした。
その指先から迸ったのは、黒とも紫とも付かない液体だ。
まるでコールタールの様に伸びたその液体は、少佐の頭を包み込む。
息を止めてしまえば生物は死ぬだけ。ただし、その死にざまは最も苦しい。
溺死と窒息死は意識がある限り最も苦しい物だ。だが……
「……なに?」
新鮮に驚いたウォルドは少しばかり毒気を抜かれて少佐を見ていた。
2分か3分が経過しても、少佐は苦しむ素ぶりすらないのだ。
それどころか、コールタール状のものから白い煙が沸き起こりつつある。
「あれ? 何かしました?」
煙と共にドロリとこぼれ落ちたコールタール状の物は、地面で脈打っている。
そんな中、平然とした表情の少佐はポケットから何かを取り出した。
「やれやれ。こんな子供だましでヒトを殺そうだなんて……」
ポケットから取り出したものは、何か液体が入った透明の容器だ。
その蓋を開けコールタール状のものに零すろ、ジュッと音を立てて煙が出た。
「なんだ。単なるスライムか。期待して損した。磁性流体か何かと思ったのだが、この程度とはなぁ――」
心底残念そうにした少佐は、別のポケットから球体状の物を取り出した。
その球体は二つに割れていて、その分割面には金属のシールがあった。
「――じゃぁ、ヒトも少し手品を御覧に入れましょうかね」
クククと笑った少佐は数歩前へと進み、ドリーの視界を切るように立った。
そして、その半球状となった金属の切断面にあるシールを剥がした。
誰もが『何をするんだ?』と不思議そうに見る中、少佐は再びニヤッと笑う。
その後、二つの半球を貝合わせのようにぱちりと嵌めた。
すると……
――――――なにっ!
ドリーが見たのはヒトの少佐の向こうに広がる青白い光だった。
一瞬何が起きたのかは理解出来ないが、次の瞬間には口の中に鉄の味がした。
全ての理屈を飛び越えたところでドリーは直感した。
ここに居ては危ない。
ここに居たら危ない。
ここは危ない。
そう。危ない。
ただ、動き出そうにも身体が全く動かなかった。
生涯百戦以上を戦った武人をして恐怖に身体が硬直していたのだ。
そしてその理由は、ヒトの少佐越しに見えた恐るべき光景だ。
「ヒトは魔法を使えないが、だからと言って対抗措置が無い訳でもない」
少佐が言い放った言葉の意味は、説明されるまでも無かった。
それが何であるかは理解出来ないが、少なくとも特級危険物だ。
事実、強力な何かに照らされていた獅子の男が悲鳴を上げている。
瞬間的に大量の放射線を浴びた結果起きる急性放射線障害だ。
「対抗措置無しにこれをされれば、ひとたまりもあるまいて。生身ならな」
少佐の言葉が終わると同時、青白い光がパっと消失した。
恐る恐るその先をのぞき込んだドリーは思わず両目を押さえた。
突き刺さる様な衝撃が両目を襲い、激しい痛みを感じたからだ。
「おぬし、何をしたのだ」
ドリーがそう問うと、ヒトの少佐は事もなげに答えた。
「神の炎を地上に顕現させたのですよ。天界に住まう神々がヒトを信じて分け与えてくださった神の炎です。ヘーパイストスの竈から火を持ち出した先見する熟慮の神プロメーテウスにより、ヒトは火を手に入れ様々に発展しました」
最後に少しだけ呆れるように『神話ですけどね』と付け加えた少佐。
だが、その炎の威力はとんでもない物だった。
「き、きさまぁ何をしたの――
何かを言いかけたフラウィウスは大量の血と胃の内容物を吐き出した。
同じようにネコや獅子の男たちが血を吐いている。
短時間で大量の放射線を浴びた結果、急性放射線障害を起こしたのだ。
構造的に弱い部分のある臓器や血管などが一斉に焼けただれていた。
「これはデーモンコアと言います。高純度の放射性物質を錬成した物です。これを左右から強く圧縮すると爆発するのですよ」
少佐はその半球を左右に分けでポケットへとしまった。
相変わらず見難く頬を歪ませる笑い方のまま。
「あぬし…… 何者じゃ」
明かにダメージを受けているウォルドは完全なキツネの姿になっていた。
全身の毛が抜け落ち始め、衣類の隙間からワサワサとこぼれ落ちている。
そんな状態でもグッと意識を集中し、己の身体を再構築しようとしていた。
「魔法とてこの世の摂理から逃れられるわけではありません。それは過去幾度も見ているのですよ。全ての生物は神の掌からは逃れられないのです。そして、この神の炎が発する青い光は、全ての生き物が持つ最も重要な能力を全て破壊する」
クククと笑いを噛み殺した少佐は振り返っていった。
「申し訳ありません、公爵殿。実は少しばかり嘘をついていました。あなたを騙した事をお詫び申し上げる。実はね、強力な兵器など無いのですよ。ですが――」
少佐は己のポケットをポンポンと叩いて言った。
「――これがあれば、ここら一体を焼き払うことくらい造作も無い」
少佐の言葉にドリーは少しばかり驚いた。
ただ、同時にニヤリと笑っていた。
「なるほど。こう言うことだったか」
ドリーの顔に悪い笑みが浮かんだ。
人を侮り誹り蔑む、卑俗な笑みだ。
「そこのキツネが吾に接触してきていたのだ。お前は裏切られるとな。故に吾は太陽王を疑った。疑ってしまった。吾の愚かさ故だ。だが、いざ蓋を開けてみればこう言うことだったか。なるほど。吾は確かに裏切られた。お主の言う通りな!」
奥歯をグッと噛んで魔力を高めているウォルドは、その口から血を垂らした。
どれほどに強靱な肉体であっても、短時間での大量被爆は急性障害となる。
どれ程に魔力があろうが、遺伝子を破壊されれば肉体は再生できない。
生命を持ち活動する生物である以上、遺伝子は設計図その物だから。
「何故、なぜあぬしは平気なのじゃ! お前も苦しむ筈だろう!」
大声で怒鳴ったウォルド。その口から牙が抜け落ち飛んでいった。
魔力で肉体を再生しようにも、その肉体の設計図は身体から失われた。
そんな状態で再生の魔術を実行すれば、ガンの様な悪性新生物が増殖するだけ。
「私は平気なのですよ。そもそもヒトですらありませんからね」
そう言い放った少佐。だが、その直後にグッと厳しい表情となった。
辺りをキョロキョロと見まわし、何かを探す風だ。
「さて、真打が来ますかな?」
ゲーゲーと様々なものを吐き出す面々が苦しむ中、少佐は空を見上げた。
すると、先ほどまで青空だった所がスーッと暗くなり始めた。
「何が来るというのだ」
少しばかり気分を悪くしているドリーも胃液を吐き出している。
急性放射線障害を受ければ、少量被爆でも影響が出るのだ。
「恐らくは……この騒乱の黒幕でありましょう」
少佐は楽しそうに笑いながら言った。
全てを見通していたかのように振る舞うのだが……
「おぬしも大した事無いのだな」
「口先だけは達者だがな」
二つの声が響き、その直後にゾクりと震えあがる様な寒気がやって来た。
「そこな金のカラクリ者は何者ぞ?」
「虚ろな魂じゃな。人間ではないのか?」
どう聞いても声は二つ。
だが、空を見上げた少佐とドリーはそこに一つの人影を見た。
「なるほど。これがネコの女王か」
そう嘯いた少佐は、左右のポケットから再び金属球を取り出した。
「我が主を吸収せし貴様を討つべくここまで来たのだ。覚悟しろ」
少佐の言葉遣いが急に変わった。
それと同時、空中に浮かんでいた人影がスッと地面に降り立った。
「何者かは知らぬが、わらわと謁見する事を許す」
「今日は特別ぞ。そこの死に掛けなキツネに免じて許そう」
そこに立っていたのはネコの女王ヒルダだった。
一つの身体に二つの頭が乗っている結合双生児。
片方はヒトの様な顔立ちに猫耳付き。
もう片方はネコの男の様に獣人の顔立ちなケダマ。
そして、とんでもない魔力を持つ文字通りの化け物だった。
「「わらわの姿を見たのだすべて死ぬがよい」」
二つの顔が勝ち誇ったように勝ち誇ったようにハモってそう言った。
それと同時、少佐は二つの半球を左右から勢いよく合わせた。
並みの人間には実現不可能と思われる、とんでもない速度で。
その次の瞬間、ドリーの視界は眩い光に包まれた。
理屈ではなく本能として太陽に抱かれたと思った。
凄まじい光と熱が襲い掛かって来て、ドリーの意識は空に溶けた。
それがスペンサー家最後の当主であるドレイク・スペンサーの最期だった。