聖導教会との戦い 10
~承前
―――――旅の安全を祈らせてもらう
聖導教会管長エルヴィスの言葉と共に始まったその賛美歌は、聞いていたビアンカの精神を完全に止めてしまったらしい。焦りまくったキャリはどう対処すれば良いのかが解らず、助けを求める様にリリスを見た。
だが、その視線の先に居たリリスは不敵な笑みを浮かべていて、見事な協和音の歌声が終わるか終わらないかと言うタイミングで唐突に拍手を響かせた。何か特定のリズムを感じさせるようなそれは、拍手と言うより手拍子だった。
「ビアンカさま。ご一緒に」
正体が抜けていたビアンカの耳元でサミールが囁くと、ビアンカはハッとしたような表情になってリリスを見た。そして『あぁ……』と小さく呟いて同じように拍手をした。
それは思わぬ広がりを見せ、いつの間にかミタラス広場は思わぬ盛り上がりを見せた。良い演し物を見たと言う満足感にも似た感情が沸き起こり、市民達もまた一斉に拍手したのだ。
―――――なんだ?
キャリは一瞬だけその意味を掴めなかったようだ。だが、何かを閃いたのか驚いた様な顔になってリリスを見た後、管長エルヴィスに正対した。
「良い歌声でした。正直、驚きました。教会の方がこんな芸当を行えるなんて予想外です。妻も感心したようですし、この道中もきっと護られる事でしょう」
自信溢れる声でそう言ったキャリ。それを見ていたリリスは満足げな笑みを浮かべて僅かに首肯した。そして、拍手が収まる頃、手に手に黄色の花を持って集まっていた王都市民はミタラスの通りにその花を投げ始めた。
市民がアチコチから手折って持ち寄っているそれは、次期太陽王となるキャリの戦果重畳を祈り、無事な帰還を願う為の黄色い花。キャリの一行が進み行く道は目にも鮮やかな黄色とオレンジの花で埋め尽くされた文字通りの花道だ。
「若王陛下。どうかこの時だけは主の御言葉に耳を傾けくだされ。主は悩める者にこう道を説かれました。曰く、困難が人を鍛えると――」
エルヴィスが静かに切り出した時、市民達の喧噪がフッと消えた。驚く様な静寂がミタラス広場を埋め尽くし、皆が固唾を呑んで事態を見守っていた。何かが起こる。何かが起こされる。それを皆が感じ取っていたのだ。
「――そしてまた、主はこうも説かれております。真なる勇者とは決して倒れぬ強者では無いと。傷つき倒れても、必ず再起し挑み続ける者であると。まさにお父上カリオン王のようにです。どうかこの主の導きを心の片隅に留め置きくだされ」
他ならぬ管長エルヴィスが太陽王カリオンを賞賛した。その事実に再び拍手が沸き起こった。市民の喝采を余所に、キャリは何処か鼻白んだ顔になって居た。それこそ、何を今更になって阿っているのだ……と言う奴だ。
だが、それとこれとは話が別だ。例えそれが悪い企みを多分に含んだ毒饅頭だったとしても、笑みを浮かべてきれいに食べてやらねばならない。その上でどう振る舞うかを考え決断せねばならない。
―――――こう言う事か……
キャリの心の奥底にひとりの男が姿を現した。立ち耳と尻尾の無いその男は優しい笑みを浮かべてイヌの若者を見ていた。そのイヌはマダラで、泣き顔のまま男を見ていた。イヌならぬ、ヒトの男だ。
――――迷ったら原点に立ち返れ
――――自分の正義を信じ、そして自分を疑うな
――――一番悔いの残らない選択肢を選べ……
遠い日、今は茅街となった河原の荒れ地で旅立った五輪男の言葉。この時その核心が息子エイダから孫のエルムへと受け継がれた。全ての決断において自己指針となるもの。プリンシプルと呼ばれるものだ。
「管長の英断に感謝する。最初の試練にも……だ。この先に何があるのかは解らないが、きっと役に立つだろう」
あくまで上からの物言いを徹底したキャリ。だがそれは、キャリとエルヴィスのふたりにだけ共有された重要なものの再確認だった。
そして、管長エルヴィスは聖導教会の内部でマインドコントロールされ育ったビアンカの秘密をキャリにだけ伝わる様に教えたのだ。聖導教会が不利になるのを承知の上で。
だがそれは、キャリを含めた王権へ貸しを作る行為でもある。この先、何かあったら面倒を押し付けるぞ?と言う恩の押し売り行為に他ならない。教会の恥部や暗部をさらけ出す行為でもあるが、時にはコレが交渉のカードにもなると言う事を実演して見せた。
取りも直さずそれは、政治と言う複雑なゲームの核心だ。
多くの国家が主権を掛けて争う仲で、敵味方という立場を越えたキャッチボールをする上での重要なルール。相手が嫌がる事をしておいて、やめさせる為に相手に譲歩させる。
或いは全く逆に、相手にこちらの手札を見せておいて、こっちが見せたのだからそっちも見せろと暗に譲歩迫る為の駆け引き。それを拒否し無視したならば、より一層事態が複雑になると言うトラップ付きで……だ。
恐らく世間の10人中6人か7人はこれに気が付かない。気が付いた者に教えられ、『あぁなるほど』と理解出来る者も禄に居ない。最初から気が付かない者の大半は教えられてもそれを拒否し、そんなものは関係無いと言い切る。
政という戦場においては、その類いの存在を『バカ』というのだが……
「大変結構ですな」
エルヴィスは好々爺の笑みを浮かべつつキャリをも賞賛した。
この僅かなやり取りの間に、次の国政を導く若者が成長したのを実感したのだ。
太陽王カリオンが何を思って息子を国土巡回の旅に送り出すのか。その核心を見抜いたからこそ、管長エルヴィスはこうしてやって来た。次期王である若者に『教えを授けた』という恩を売りに。
妻である后の不都合な暗部など、どうでも良い些事に過ぎない。瞬時にそれを見抜いたからこそ、キャリは上からの振る舞いを徹底した。そうで無ければ……
「では、失礼いたします」
「ありがとう。感謝する」
管長の言葉に感謝を返したキャリ。あくまで余裕風を吹かせるこの立ち振る舞いが出なかった事だろう。満足げに頷いた管長は司祭達と共にスルリと引き下がり、見事な花道となったミタラスの街路が開けた。
「さて、仕切り直しだ」
キャリは隊列の指揮をしていたロシリカに声を掛けた。それに続いて『いつの間にか大事だな』とキャリが嘯くと、ロシリカが応えるように言った。
「仕方ねぇさ。なんたって次の王様だからな」
暑くなってきたと言うのに詰め襟の軍服をガッチリと着込み、王宮騎士を示す赤い腹帯を巻いた漆黒のオオカミ。ビッグストン在籍時に同期だったオオカミ王オクルカの長子であるロシリカもまた成長していた。
「……って言うか……さ」
「なんだよ」
「いや、なんか……うーん……予定通りだなって」
上手い表現が見つからず、キャリは掴み所の無い言葉をロシリカに吐いた。王都の警備主任を任されるほどに出世していた彼は、今回のキャリ巡行における首席随行員を務めるほどになった。
次期帝であるキャリの宰相として最有力候補だったタリカは、この日も城の中でララと過ごしているのだ。そしてそれは、自らの将来を危惧したロシリカにとっても思わぬ好機なのだった。
「いや、実際俺も思ったよ。お前の宰相はタリカで、俺は良くて国軍司令だって」
「……けどさ、ロシは次のオオカミ王だろうよ」
そう。実際の話として、キャリが言う通りなのだ。ル・ガルの宰相とオオカミ王が同時進行で勤められるとは思わない。弾正という肩書きを与えられたオクルカだってガルディブルクに常時居る訳では無い。
オオカミの邦の差配を行いつつ、ル・ガルの国政について補佐するなど土台出来る話では無いのだ。その為に……と言う事でも無いが、ロシリカは次期オオカミ王となり、次期太陽王の宰相はタリカとなる筈だった。だが……
「まぁそうだけどな。俺だって色々考えるって……」
ロシリカが見せていた焦りと落胆はキャリも解っていた。時々は城内で顔を合わせるふたりだが、その間に冷たい風が吹いた事だってあるくらいだ。
――――良いのか?
見るに見かねたジョニーがカリオンにそう言った事もある。
だが、カリオンは平然と応えた。
――――ジョニーだって30年修行したろ?
そう。カリオンはそれが必要だと考えていた。
ル・ガル国軍の中でキッチリとした足場を作る必用があるのだ。
――――間違いねぇけど……
ジョニーもそれをよく解っている。公爵家だとかの肩書きだけで出世してしまうと、最終的に困るのは当人だ。困難な場面で窮地を乗り越える実力を付けておかねばならない。
上古より人口に膾炙するとおり、困難な壁を乗り越えたとき、その壁は自らを護る砦の防壁となるのだ。だからこそ無骨無頼で粗にして野なる存在だったジョニーですらも、ル・ガルを代表する人材に育った。
それを思えば……
「良い修行だったって振り返るときがきっと来るよ。あのジョニーさんだって時々はそんな話をしてくれる」
キャリが言った言葉にロシリカが苦笑を浮かべる。心を疲弊させるほど辛いプレッシャーを背負い、それに打ち克つ訓練を重ねる。どんな理屈を並べた所で、自らに乗り越える事でしか強くはなれない。
ハードルが高ければ高いほど飛び越えるのは難しいが、潜る事は容易くなる。しかし、潜り抜けてしまっては永遠に飛び越える事など出来ない。それ故に、時には自らの精神と命その物を業火に晒してでも挑戦する事が必要なのだった。
「まぁ、為るようにしかならねぇしな。タリカの件は残念だが、だからと言って文句言ってどうになるもんでもねぇ。過ぎた事を悔やむなってカリオン王もよく言ってるけどこう言う事だろ。だからオヤジもこうやって俺達に丸投げしてんだ」
ロシリカが言うそれは、オオカミ王オクルカと太陽王カリオンの関係その物だ。ふたりが様々な形で意見を交わし、より良い解決法を模索する姿をふたりは見ていた。そして、どこかでそれを受け継いで欲しいと思っていた。
ただ、カリオンとオクルカはリリスの作った夢の世界で繋がっている。その関係で否応無い形での本音トークをぶつけ合う様になっている。結果的に忌憚ない意見の摺り合わせを行っているのだが、キャリとロシリカにはそれが無い。
「まぁなんだ。上手くやるしか無いって奴だな」
「あぁ。同感だ」
キャリとロシリカはそんな感じで意見の一致を見た。ビッグストン時代から散々と一緒に動いてきたふたりだ。言うなれば親友を通り越して相棒の関係になっているのだ。宵闇に紛れ脱柵した事だって何度もある。
そんなふたりが顔を見合わせニヤリと笑えば、だいたいの事はツーカーで話が通るし問題は発生しないで済むのだった。そしてここには、そんな関係の者がもう一人いた。キャリとロシリカのコンビについて回っていたヒトの男だ。
「なぁキャリどうしたんだ? ……って、ロシも居たか」
巡行団の警備責任者としてやって来たのは、検非違使の幹部夫婦であるイワオとコトリが送り込んだタロウだった。ロシリカと同じく王宮騎士である赤い腰帯を巻いたタロウも鋭剣を腰に佩いたままだった。
「なんだよ。なんか用か?」
気易い調子でロシリカが言うとタロウはニマッと楽しそうに笑った。
ビッグストンの三羽ガラスと呼ばれた悪ガキ三人組の再結集だ。
「いや、なんかモタモタしてんから、出発しろよって言いに来た」
僅かに剣を抜き、その鯉口に鍔を当ててカチリと音を鳴らしたタロウ。
この男が覚醒体になった姿をふたりは知っているからこその安心感もあるのだ。
「あぁ、それなんだけどさ、今しがた聖導教会の管長が芸を見せてくれたよ」
困った様な笑みを浮かべてそう切り出したキャリ。
その近くではロシリカも苦笑を浮かべてタロウを見ていた。
「色々と学ぶ事が多いって奴だな。だからこそ王様は旅に出ろって言ってンだろ」
タロウがそんな事を言うと、キャリとロシリカのふたりがフフンと笑った。
ただ、同時にそれはノーマークだった事態を突き付けられ醜態を晒しかけた事の自嘲でもある。
「まぁそういうことだな。それより彼女は大丈夫か?」
恥ずかしさを隠すようにロシリカが言うと、キャリは『まぁなんとかなるとは思う』と応えて振り返った。ビアンカはリリスと話し込んでいて、少しだけ青い顔をしている。
この1年、彼女は太陽王カリオンの取り巻き達による徹底した帝后教育を受けてきた。卑しい身分の階層から社会の娼婦的な部分へと堕ち、それで一生を終えるはずだった彼女だが、ル・ガル女社会の頂点へ登ろうとしている。
数多くの貴族家にある女達の嫉妬と羨望を受け、それでも余裕風を吹かせる義務を帯びていた。全ては国家と国民の為に、超絶レベルで難しい舵取りを涼しい顔でこなさねばならないのだ。
「……少し持ち直したようだな」
ロシリカは素直な言葉で感嘆したが、タロウはすかさず相の手を入れた。
醒めた視線でビアンカを観察していたのだが、それは職務に忠実故だ。
「当たり前だ。エイラ様の直接指導だし」
落ち着いたらしい彼女は、旅装束と言う事もあってそれほど華美とは言いがたい姿だ。だが、その衣装は帝后に相応しい豪華さと可憐さを兼ね備えていた。何よりそれは、彼女の心を支えるだけの支柱になり得るものだ。
これから彼女は貴族社会の中で容赦のない言葉の刃に晒される事に成る。そんな彼女自身を支えるモノは、他ならぬ彼女の強い心だ。その為にエイラもサンドラも腐心したし、リリスはこの旅に同行するのだ。
「未来の帝后陛下にお目通り賜り恐悦に」
ビアンカは少し落ち着いたらしく、何処か恥ずかしそうにしている。そんな彼女に冗談めかした調子でロシリカが挨拶すると、タロウはプッと吹き出した。
「笑うンじゃねぇよ!」
「いや、おかしくてさ」
次期オオカミ王と検非違使の主力が気易い会話をしている。城の中で暮らしていれば、嫌でも顔を合わせる事がある面々だ。ただ、彼等はやがて自分の手下に収まるメンツ。夫である国王を支え、その部下となる彼等を上手く使わねばならない。
「まだまだ修行が足りてないみたいです。もう少し研鑽しないとダメですね。恥ずかしいところを見られちゃいました」
己を護る最高の鎧は謙虚さ。それを教えられたからこそ、ビアンカはそれを実践していた。大姑であるエイラと姑のサンドラのふたり。そして今はヒトの姿をしている魔女のリリス。この3人による英才教育の賜物だろう。
「困った事があったら俺に言ってくれ。キャリのケツを蹴り上げるのは俺の役目だったからさ」
ロシリカがニコリと笑ってそう言うと、すかさずタロウが相の手を入れた。
「こう言ってるけど、コイツだってレオン家のご令嬢を娶る為にえらい思いしてるんだよ。随分丸くなったから心配ない」
それを言うなよ!と言わんばかりの顔でタロウの脇腹を小突いたロシリカ。太陽王カリオンの親友とも言うべきレオン家のジョニーから大きく年の離れた妹を娶ろうと頑張っているのは王府関係者や軍関係者の全員が知っている事だ。
今はミタラス島内のアパートに彼女が住んでいて、ロシリカはちょくちょくそこへ帰っている。通い旦那のような立場ではあるが、公爵家のご令嬢を頂戴するには肩書きがまだ足りていない状態だった。
「なんだかんだ言って上手く回ってると思うよ。オヤジも苦労した事だから」
キャリがそんな事を言うと全員が薄く笑った。太陽王カリオンその人の歩んできた道がどれ程に茨の道だったかは、今更語るまでも無い。だが、その全てをはね除け、乗り越え、己の血肉にして進んで来たのだ。
「王様の苦労は俺達の比じゃねぇって……な」
キャリの言葉にロシリカがそう応え、振り返って城のバルコニーを見た。だが、そこに見るのは王太后であるエイラだけだ。あれ?と不思議そうに辺りを見回すとカリオン王が城からやって来るのが見えた。
普段着姿で一行を見送りに出たカリオン王。自信に満ち溢れる堂々とした姿は、それを見る者全てに威圧感を与えるものだった。
「何があった?」
単刀直入にそう尋ねたカリオン。キャリは簡潔にビアンカがどうなったのかを答えた。その間もビアンカは胸と意地を張り、静かに笑みを浮かべている。そんな姿を見たとき、遠い日に見たリリスを思い出したカリオンも笑みを浮かべた。
「なるほどな。まだまだ細かい芸を仕込んでいるかも知れん」
最初は満足げな笑みだったが、ややあってから底意地の悪そうな傲岸さを感じさせるそれに切り替わったのは支配者の性だろう。ふとそれに気が付いたカリオンは腕を組んでキャリとビアンカを見た後、リリスを呼んだ。
「何だと思う?」
イヌの王がヒトの女を呼びつけた。市民にはそう見えているはずだ。それを瞬時に理解したからこそ、周りに声が漏れるのを前提にしたリリスは声音を変えた。
「恐らくですが、特定の条件下で心を封じてしまう術の一種でしょう。魔法ではなく無意識の部分に働きかける催眠術だと思われます。いずれにしても厄介なものですが、個人で対処されるより他有りません」
公的な振る舞いとしての口調に切り替えたリリス。それを見ていたビアンカが少し驚き、キャリとロシリカは顔を見合わせアイコンタクトでスルーを示し合わせていた。
「なるほど。ではその件についても指南してやってくれ」
笑みを添えてカリオンがそう言うと、リリスは『畏まりました』と応えた。やや離れた所でそれを見ていたサンドラが少しだけ悲しそうな顔をし、そんな機微を少しずつ理解し始めたビアンカもまた表情を曇らせた。
「キャリ」
「はい」
カリオンが手招きするとキャリは馬を降りて走り寄った。
「管長が警告を発したのは解るな?」
「もちろんです」
念の為に確認したカリオンだが、キャリは表情を変えずに肯定した。双方共に硬い表情のまま交わす言葉の内容は余人に知られたくないもの。そんな空気を漂わせているふたりには、誰も近づけなかった。
「ジダーノフ領だけではない。どこで何が起きるかも分からん。お前では無くビアンカを突破口にされる可能性もある。油断するな。信用もするな。常に疑え。災難は予知できないが危険性は予知できる。良いな」
カリオンが何を危惧しているのか。
その芯の部分を理解したキャリはグッと表情を硬くした。
「はい」
手短な返答だが、そこには万の感情を圧縮した思いが詰まっている。
数々の困難を乗り越え、試練を打ち負かしてきた父カリオンの危惧と心配。
―――――親のありがたみ
ふとそんな事を思ったキャリは胸を張って言った。
強い意志を秘めた純粋な眼差しを父へ向けて。
「行ってきます。父上」