聖導教会との戦い 02
陽光の力強さに驚く春の終わり。
昼下がりの王都ガルディブルクを駆ける一台の馬車があった。
「枢機卿! まもなくでございます!」
馬の御者に声を掛けられ、やや老いた大司教は馬車の窓から王都を眺めた。
ル・ガル辺境部の鄙びた街からやって来た痩せぎすの男は眉根を寄せる。
「魔都……だな。権謀術数の臭いが充満している」
ボソリと呟いた彼は小さな垂れ耳の根元を掻きつつ眺め続けた。
北部辺境から街道を飛ばして7日。栄える王都は人々まで垢抜けている。
しかし、そんな街も彼にしてみれば、欲望が渦巻くソドムとゴモラの街だ。
「それって……腐敗臭ですか?」
大司教の付き人をしている若いイヌがそう言うと、老いた彼はニヤリと笑った。
辺境より同行してきた若者は、王都の街並みを見て楽しそうにしていたのだ。
「欲望は膨張し、やがては身を滅ぼす。質素清貧とは身を護る術なのだよ」
教え諭すように老いた大司教は言う。
その言葉の真意を掴みきれないのか、若者は不思議そうにしている。
だが、このふたりが属する聖導教会自体、膨張し続ける運命だ。
多くの信徒達が喜捨する金により潤う組織は、より多くの喜捨を募るのだ。
文字通り、膨張し続ける欲望のままに、際限なく金を飲み込み続けていた。
「じゃぁ……今回もそんな案件ですね」
若者は何かを察しそう言った。
そう。このふたりは聖導教会の本部より呼び出されていたのだ。
聖導教会の法主が緊急召集を掛けたならば、大司教は全員集合となる。
一般には枢機卿と呼ばれる彼等は、次期法主への即位権を持っている階層だ。
企業で言うならば取締役会のような物だが、その実態はと言えば……
「そうだな。権力とは腐るもの。王府も大聖堂も同じだ」
まだ経験浅き者に謎かけのような言葉を返し、大司教は再び窓の外を見た。
その郊外にそびえる聖導教会の大聖堂は、ガルディブルク城と争う大きさだ。
そんな大聖堂にはル・ガル各地から大司教達が参集しつつあった。
全国各地で所領のように教導区を受け持つ大司教全員が法主に招集されたのだ。
「でも……教皇陛下が直々に発せられた御用とはなんでしょうね?」
付き人のイヌがそうたずねると、老いた大司教はニヤリと笑って言った。
「どうせ碌な事じゃ無い。主のお側に侍り遊ぶイヌの本分を忘れた亡者の集まりなのだからな。主導権争いを繰り広げているに過ぎぬ」
主導権争い。いわゆるアルファ争い。
群れの中で頂点争いを始めるのは群生動物の性なのだ。
そしてそれは、力に狂った権力の亡者にとって避けられぬ戦いでもある。
「……教皇陛下は本気で王様と喧嘩するつもりなんでしょうか?」
やや不安そうな顔をして小声で言う若者は、覗き込むように老いたる師を見た。
ル・ガル辺境で苦行の生涯を貫き、老境に達してやっと枢機卿になった男だ。
「それもまた主の御手の上だ。レクター。覚えておくと良い――」
まだ若いイヌの修道僧を真正面から見据えた老司教は一つ間を置いて言った。
「――力に狂う者は力で滅ぶ。権力に狂えば権力で身を滅ぼす。尽きぬ欲望を断ち切り生きる事こそが主の教えだ。奪い合うな。分け合え。権力と言う果実を独占しようと欲する者は、同じく欲する者に殺される運命だ。忘れるなよ」
聖典の一節に記された神の教え。
――――汝 果実を独占するなかれ
――――隣人に分け与えよ
レクターと呼ばれた若い修道僧は、居住まいを正して返答した。
「はい。ネテス先生」
その真っ直ぐな眼差しと声音に、ネテスと呼ばれた老いたるイヌは満足そうな笑みを浮かべた。通常ならば2週間を要する旅程だというのに1週間ほどでやって来たネテスの身体は悲鳴を上げつつあった。
「若さとはそれだけで主の慈悲そのものよ。若きウチに学ぶのだ」
ネテスの教えにレクターが再び返事を返す頃、馬車は王都の大通りを曲がり大聖堂のある通りへと出た。その道のどん詰まりに鎮座する大聖堂は、見る者を圧するデザインで佇む。ネテスは小さく溜息をこぼし、不服そうに大聖堂を見上げた。
「……主の教えを説く悪の巣窟よ。神の座に魔が座っておる」
小声でそうぼやいたネテス。僅かに耳に入ったらしいレクターが『先生?』と聞き返すも、フッと笑ってネテスは何も言わなかった。不平不満や恨み言、汚い言葉は口に出して言ってはならぬという教えを神はこう説いている。
不悪口……と。
それを感じ取ったレクターは、黙って馬車のドアを開けた。
「先生。到着ですね」
――――――――帝國歴400年 4月 26日 午後
聖導教会 本部大聖堂
大聖堂の内部は文字通りに巨大な聖堂なのだが、その奥には神学校として機能する大講堂が備えられている。神の教えを若者に施し、全土で布教と聖導を行う為の大学校だ。だが、同時にそこは聖導教会という巨大組織の会議室でもある。
全土に散らばる大司教やそれぞれの手下となる司教。その司教達が束ね導きを信者に与える司祭。そして、その手助けをする助教。まだ何も知らぬ若者達はここで聖導の基礎を学び、日頃の活動を通して成長していくのだが……
「やれやれ、田舎者が王都へやって来たぞ――」
長い道程をやって来たネテス大司教は、一同が揃う大講堂の中央へと進んだ。
純白の法衣を纏う痩せぎすの身体を労りつつもボヤキ節を並べる彼は、大司教達の中で頭1つ抜けた存在だった。
「――教皇は如何なる御用と言うのだ?」
ネテスが冗談めかした口調でそう言うと、枢機卿達の間から戸惑うような笑いが僅かに零れた。ただ、それもある意味ではやむを得ない。聖導教会の歴史は長く続くが、その中にあって法主より年上の枢機卿は数えるほどだ。
一般的な話として、聖導教会の次期法主選定に出た枢機卿は落選と同時に引退となる。幼長の序を暗黙の了解とするイヌの社会において最高のポストである法主よりも年上の存在が部下に在る事はおかしい事だった。
「ネテス先生がご存じ無い事を、我々などが知る由もございません」
ネテスより大幅に若い枢機卿の1人が戸惑いながらもそう言った。そもそも、助祭として学んだ頃に手解きを受けたのがネテスだという者ばかりなのだから、いつまで経ってもどんなに出世してもネテスは『ネテス先生』なのだった。
「リンス。ちゃんと教導書は読んできたか?」
まるで学校の教師が言う様にネテスがそう言うと、大講堂の中に再び笑いが沸き起こった。幾つになっても師と弟子であり、教師と生徒の関係だ。
「も、もちろんです。先生――」
頭をボリボリと掻きつつ、リンスと呼ばれた若者は室内を見回した。
大して歳の変わらない青年達は、一様に『お前が言え』と目で訴えていた。
「――手前も詳しくは聞かされておりませんが……実は先に首席枢機卿が王府へと綸旨されたのですが、その返答が教皇陛下へ直接届いたようです」
リンスは王都にほど近い所を受け持ってる関係で王都の情報が良く入るようだ。
そんな所を見抜いたネテスは『ふむ……』と小声で唸り、室内に見えた首席大司教付の若い司教を呼びつけた。
「クレス。首席についたアレは王府へ何を送りつけたと言うのだ」
ネテスがアレ呼ばわりする存在。
それは首席直下にある大司教達の長である首席大司教だ。
「は、はい――」
スッと立ち上がったクレスは緊張した面持ちで言った。首席大司教は事実上の次期法主なのだが、そんな大司教付の司教が1人だけこの場に参加していた。このクレスは首席大司教が法主になった祭、その後がまとして大司教に加わる予備群だ。
「――さ、先頃、王府よりの発表で秋口には次期帝キャリ公が妻を娶り、太陽王に即位される運びとなりました。その際、首席大司教は成婚と即位について聖導教会の助言と承認を与えたいと……述べられまして……それでその……関係が……」
最後の辺りには完全に小声となってしまったクレス。ただ、それもやむを得ないのだろう。かつては怖くて近寄りがたい存在だったネテスがあからさまに不機嫌そうな顔に成っているからだ。
「あのバカ…… あれは一体いままで何を学んできたのだ!」
今にも大爆発しそうな姿のネテス。
だが、そんな問いへの答えは意外な形で示された。
「そう怒るなグレネス。あれも修行中だ」
唐突な声が響き、講堂の中で座っていた枢機卿達が一斉に起立した。
それもその筈。講堂の中に入ってきたのは聖導教会の法主、エルヴィスだった。
「ワシをその名で呼ぶのはお前さんだけだぞ……ラザス」
ネテスを本名のグレネスと呼んだ法主エルヴィス。それへの意趣返しか、ネテスもまたエルヴィスの本名、ラザスの名を出した。
「今はワシの方が上だぞ? 物言いには気をつけたまえ」
冗談めかした口ぶりだったエルヴィスは、幾人かの稚児を連れて部屋に入ってきた。まだ若い……と言うよりも幼い稚児は市井に有れば、街の幼児園に預けられるような年齢だ。
凡そ教会や教団と言う組織の要職にある者の多くが幼児偏愛の傾向を持つのは文明を越えた共通事項だが、この世界においても幼い男児を愛玩動物か何かと勘違いして可愛がる権力者が多い。
人の持つ支配欲には2種類あり、ひとつは完全な支配下に置いて一挙手一投足の全てを管理下に置くもの。その対極あるのは全てを与え己の庇護下において愛で育てるものだ。
「主の導きに感謝を。諸君、わざわざの参集たいへんご苦労だった」
やや顔色を悪くして室内へと入って来た法主は、稚児により椅子を押され席に着いた。それを見て枢機卿達が再び着席し、ネテスも用意されていた席に着いた。
「ご苦労だった。再び修練室に戻って学びなさい」
エルヴィスはサポートしていた稚児を抱き締めて頭を撫でた。そんな行為が嬉しかったのが、まだ幼い稚児は尻尾を振って喜んでいる。自分の行為で相手が喜ぶのもまた幸せなのだろう。
だが、直後にドアや窓の類が全て閉じられ、その上から厚い緞帳が掛けられて音が外へと漏れぬようになった。何故教会にその様な設備があるのかと言えば、それは彼等の恥ずべき遊びへの備えその物。
幼子を弄んで愉しむペドフィリア達は、普段ならば尻尾を振って喜んでくれる幼児が泣いて喚いて許しを請う姿をも愛おしむのだ。そしてそのもう一つの暗黒面、権謀術数の限りに策略を巡らせて政治的闘争を遊び愉しむためのものだった。
「先に首席枢機卿より王府へ書状を送付したのだが、その返答が戻ってきたのだ。だが、少々その内容が剣呑なのでな。諸君らの意見を聞きたいのだよ」
法主は嗄れた声でそう言った。元々は張りのある声が持ち味の快活な枢機卿であった。だが、法主の座について数年が経過した頃からだろうか。その姿はまるで老人の様にも見える程に変わってしまっていた。
――――――権力は人を狂わせる
上古より人口に膾炙する通り、権力というモノは人をおかしくする。困難や苦痛に耐えやり過ごす事は出来ても権力には蝕まれる者が多い。他人を支配出来る全能感は、人間の最も弱い部分をさらけ出させてしまう。
「で、あのマダラは……いったい何が気に喰わぬと言うのだ」
唐突に声音が変わり、歴戦の武人にも似た気迫を漲らせネテスが言った。過去幾度も法難を退けてきた聖導教会の暴力装置である聖導騎士出身故だろう。だが、同時に彼は敬虔な聖導の信徒であった。
「まぁ、それについてなんだがな……」
エルヴィスは行動の片隅に居た若者に何事かを指示した。ややあってその若者が連れてきたのは、法主エルヴィスについで豪華な法衣を纏った若い男だった。
「……ネテス先生。ご足労ありがとうございます」
そこに現れたのは次期法主の最有力候補である主席枢機卿、バルバトスその人だった。次期法主として修行中でもある彼は、ある意味で権勢を欲しいままにしてきたのだろう。
だが、そんな若者は若さ故の愚かさを遺憾なく発揮してしまったらしい。現太陽王と同じく立ち耳な黒耀種の血統にある筈の男だが、今はその耳が垂れ下がらんばかりに萎れている。
「何をやったというのだね。正直に言ってみなさい。パリス」
主席枢機卿として法主の隣にあったはずのバルバトスだが、今はその師であるネテスを前にして小さくなっている。それを見て取ったネテスはまだ幼かった彼に神学の手ほどきをした頃の様に、その名を呼んだ。
「実は……」
さすがにバルバトスも言い淀んだ様で言葉を詰まらせた。だが、だからと言って事態が解決するわけでも改善するわけでもない事は自明の理。やや間を置いてから切り出した法主エルヴィスは、眼でバルバトスを殴ってからネテスを見て言った。
「実はな、何とか現王との関係を改善し王府と歩み寄りを実現したかったのだが、どうやら主席枢機卿はマダラと蔑むあの王への初手を拙ったらしい。主は命の価値をその器では判断されないのだが……彼には問題だったようだ」
法主の言葉にバルバトス枢機卿はこれ以上無く表情を強張らせた。教会にとってマダラやケダマはヒトと同じく侮蔑の対象だった。民衆に差別の対象を提供し、ストレスを解消させる道具だったのだ。
優越感を味わう事こそが生ある者最大の娯楽なのは否定できぬ事実。異教徒と人の範疇に無い化け物を用意する事で、罪の意識なく遠慮もなく、無条件の優越感を味合わせる事が出来ていた。
だが、同時にもう一つの問題が聖導教会には存在していた。冷え切ってしまった現太陽王カリオンとの接近だ。アージン朝の始祖帝ノーリ以来、教会最大の関心事はアージン朝を完全な支配下に置いてコントロールする事だった。
様々な政治的暗躍を続けたのだが、結果的にル・ガルの弱体化を引き起こし民衆に死傷者を多数発生させた咎を未だに負ってはいない。ル・ガル自体の内紛を起こせば周辺各国につけ込まれる可能性があるので歴代王が控えていたのだ。
しかし、現時点において差し当たった危険性は存在しない。周辺各国とは良好な関係を作り上げ、オオカミの国との衝突はもはやあり得ない程に諸問題の解決を見たのだ。その手腕を思えば、現王カリオンとの関係改善は急務だったのだが……
「……人には誰にも本音と建前がある。それは解るね? パリス」
ネテスは凍り付いた教え子の心を溶かすように切り出した。どんなに敬虔な人間にだって弱点はある。どれ程に神を信じ切ったところで、人の心の弱さを完全に払しょくする事など出来やしないのだ。
「……はい」
バルバトスはまだ若い修道士のように素直な返答を返した。普段の彼を知る者ならば驚く様な姿だ。だが、いまはもう憔悴仕切った痛々しい姿でしか無い。自分自身のしでかした失敗で聖導教会が吹き飛ぶ可能性を彼は味わっていた。
「権勢争いをするのも人の性だ。それはやむを得ない。だが、我らを導く聖典にも本音と建て前がある事を理解したまえ」
ネテスはいきなり際どい事を突き付けた。そも、あらゆる宗教の根幹に存在するのは理不尽なまでの服従要求だ。どう考えても道理が通らぬ事ですら、私心を捨てて純粋に信じよと説き、信徒に要求する。
ただ、本来は純粋な救済の為の方便なのだが、いつの間にかそんな方便に自分達が縛られてしまっているケースはあまりに多いのだ。そしてこの場合、そもそもにマダラやケダマが古くから差別の対象だった事を使った折伏の結果だった。
「……ネテス先生はマダラを信用されるのですか?」
バルバトスは唐突にとんでも無い事を言い出した。
しかし、それに対する返答は、言葉の暴力その物だった。
「むしろ何故マダラを信用しては成らぬのだ。論理立てて説明してみよ」
ネテスの言葉にバルバトスは困り果てたような顔となった。
いざ説明してみろと突き付けられた時、聖典以外に説明出来ないのだ。
「それは……」
苦し紛れの言葉を吐き、そのまま凍り付いたような状態になったバルバトス。
その姿を見て取ったネテスは、静かな声音で切り出した。
「聖典の一節。相手を見て法を説けと主が教えているのを、お前が知らぬはずは無かろうに。愚かな大衆を導くのであれば少々強引でも構わんし、論理が通らぬ事でも信ぜよの一言で良いのだ。マダラもケダマもその為の方便だ。だがな――」
ネテスは腕を組んでジッとバルバトスを見ていた。
項垂れている首席枢機卿は、まるで5才の男の子だった。
「――当のマダラにそれを説いてどうなるのだ。主の導きに帰依せよと迫るなら、それ相応の理論武装が必用であろう。マダラだから悪いのでは無い。主の導きに帰依せぬ者が悪いのだ。その為の法難、国難であったと説かずしてなんとする」
海千山千な百戦錬磨の枢機卿たるネテスの叱責にバルバトスは小さく頷いた。真意をひた隠しにし、必用な結果を得る為の論法論戦を行えなかった事は、バルバトスにとって痛恨の極みだ。
「パリス」
ネテスは再び教え子でもあるバルバトスを本名で呼んだ。その声音は驚く程穏やかで優しいものだったせいか、少しばかり気を持ち直したバルバトスは顔を上げ師であるネテスを見た。
「如何なる事にでも勝ち負けはある。そのどちらからも学べねばならぬ。如何なる事からでも学べる者で無ければ首席枢機卿や法主など務まらぬ。法主に最も求められる能力は、負けの中に価値を見いだし学び改善する能力だ。解るね」
ネテスの言葉にバルバトスはコクリと頷き、小さな声で『次に繋がる負け……でしたね。先生』と言った。だが、そんな言葉をバルバトスが吐いた瞬間、部屋の空気が一変した。
「次に繋がるどころか、その次が失われるかもしれんのだぞ」
部屋の空気を一気に変えた法主エルヴィスの言葉。その言葉に『教皇陛下』とバルバトスが漏らした。教会の内部で法主は教皇と呼ばれていて、彼等にしてみれば王よりも格が上の存在と言う認識だ。
そも、歴代太陽王自体が聖導教会の助言と承認を得て太陽王に即位してきたし、始祖帝ノーリは聖導教会の法主が戴冠させたのだった。
「……太陽王が何を目的としているのか。先ずはそれを認識せよ」
エルヴィスは懐から厳重に封蝋を施された書状を取り出した。その封蝋には螺旋を描いてこぼれ落ちる陽光がレリーフされていて、太陽王その人が自ら書き記した直筆のものであると語る代物だった。
―――――読め
無言のうちに怒りを突きつけられた形のバルバトスは、一つ息を飲んでからその書状を読み始めた。そこに踊る文字は太陽王の重責を果たさんとする一人の男の気迫が漲っていた。そしてそれは、ある意味では死刑宣告にも近い物である事を理解させる為の時間でしか無かった。