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ル・ガル帝國興亡記 ~ 征服王リュカオンの物語  作者: 陸奥守
大侵攻~忍耐と苦痛と後悔の日々
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王位継承へ向けて

~承前



 王の帰還から三日目。

 暖かな春の陽気が城の中に入り込んでいる頃だった。


「実はな……」


 王のプライベートルームに居る面々に対し、カリオンは遂に切り出した。

 キャリへの王位禅譲について、道々考えて来た構想についてだ。


 今回の黒幕は、あの青いキツネ――ウォルド――に間違い無い。キツネの社会では圭聖院と呼ばれているらしい存在だ。別の次元へ幽閉されているはずだが、何らかの手段で影響を及ぼしているのだ。


「じゃぁエディはどうするの?」


 カリオンの右隣に座っていたリリスがそう言う。まさか自殺などするまいが、少しばかり気になったのだ。そしてそれは、同じ室内に居た者達全ての共通懸案だ。


 リリスだけで無くサンドラもが少しばかり険しい表情になっている。ソファーに寛ぐカリオンを挟み、リリスとサンドラを見守る面々。ウィルやリベラは元より、ウォークとトウリ。そしてヴァルター。皆がカリオンの言葉を待っていた。


「あのキツネの息の根を完全に止める。キツネにも助力を求める。もちろんネコもだが。どうやらネコの女王はあのキツネに完全に手玉のようだ」


 その言葉に皆が驚きを隠せないが、逆に言えばさもありなんと得心もしていた。何らかのちょっかいを出してくることは間違い無いし、相当恨んでいる筈。ならばこちらも相応の事をせねば成らないのは言うまでも無い……


「したっけ陛下。あのキツネの野郎……いや、女狐でやんすか。まぁそりゃぁどっちでもええこってすがぁ……はこっちからぁ手ぇだせやせんぜ」


 内心の忸怩たる思いを噛み殺しきれなかったのか、リベラは酷いネコの国訛りで言った。その内心が透けて見える様で、カリオンだけで無く皆もまた表情を硬くしているのだが……


「もう一つ言えば、今回は九尾のキツネがやけに絡んでおりますね。キツネの社会で言うならば、九尾ら七狐機関は基本的に表に出ないのです。手前にはそれが不思議でなりません」


 リベラに続きウィルまでもがそう言った。カリオンの知恵袋である二人がそう言う以上、何らかの心配をしておくべき。何となくそんな事を思ったリリスは、不意にウォークを見た。


「あなたも何か言いたい事があるんじゃ無くて?」


 それがリリスの慧眼である事は明白だった。


「しからば申し上げますが――」


 ウォークは室内をぐるりと見まわしてから言った。

 それはある意味、カリオンの今後を左右する物だった。


「――財政的に大規模な戦は不可能です。もはや如何なる手立てを持っても高額な戦費の調達は不可能です。兵糧弾薬以前に、先の合戦で戦死した者たちへの慰労金が予算を圧迫しております。法令による定めにより5年で半減します故、財政的な弾力を取り戻すまでには最低でも5年。出来れば10年を要します」


 そう。実はもはやル・ガルの財政事情が戦を許し難いものにしていた。鎧袖一触に敵を蹴散らさんと大軍を用意すればするほど、その補給体制の構築にも人員を割かれ、加速度的に財政が圧迫されるのだった。


 鉄道網等による高速大量輸送機関の無い世界では、最前線への補給事態が補給を要する事になる。馬車による輸送では最前線への飼葉必要量の3倍を用意しなければならない。人員への食糧もまた大変な事になる。


「……なるほど」


 一言だけカリオンがそう応えると、まるで鉛でも飲み込んだかのような沈黙が室内を支配した。だが、だからと言って行わぬわけにもいかない。ならば……


「よろしい。ならばこうする。まず、直近の日蝕をもって太陽王の職務を息子に譲る。余は何らかの肩書をもって遠征軍を編成す。大軍を持っての遠征ではなく、少数精鋭とする。そうだな。総勢2万か多くて3万だろう。これらへの輸送網を整備し、合わせて海運の可能性を探ろう。先の遠征ではキツネの船団の威力を見た」


 尋常ならざる発想と閃きによる事態解決。これもまたカリオンの真骨頂だ。王府のスタッフによる提案では根回しだけで骨を折るが、トップダウンならばやりやすいという面もある。


「複数の戦略目標を同時に片付ける事は出来ぬ。故に今回は先ずネコの国を何とかする。糧秣などの補給を考えれば短期決戦しか出来ぬ。故に今回は一気に侵攻し、さっさと引き上げてくる事にする。移動路となる街道の整備に念を入れよう。そして、それらに整備にはあらかじめ歩兵師団を当てておく。前もって現地入りだ」


 大軍の移動にこそ骨の折れる事態となる。故にここでは主力をあらかじめ現地入りさせておくことも重要だ。その中で輸送自体を兵士が行う事で少しでも輸送網の負担を軽く出来ると踏んだのだった。


「頃合いを見て一気に前線へと赴かれる算段ですな」


 ヴァルターの現にカリオンは首肯を返した。ル・ガルと比較にならぬ小国なネコの国がなぜ戦を出来るのか。それを考えれば臨機応変に対応を変えられることが重要なのだった。それが上手くはまれば、大きな威力を発揮出来るのは間違いない。


「ウォーク。天文局に暦を改めて計算し日蝕を計算させよ。それと街道整備だ」


 短く『御意』と応えてウォークは部屋を出て行った。

 その後ろ姿を見送ったリリスは、横目でカリオンを見ながら囁くように言った。


「今度は連れてけって言い出すわよ?」


 それが何を意味する言葉かは言うまでも無い。だが、問題が多いのも事実だ。城を中枢とする王府の全てはウォークの差配下にあり、それを自在に使いこなしている唯一の人間でもある。


 キャリに王位を譲ったとしても、その後暫くは補佐として忙しい日々を送らねばならないだろう事は想像に難くない。だが、一人の騎兵として王と共に走る事を夢みる位の自由はある。


 何より、カリオンが王座を譲位した後は、その肩の荷を降ろしてやるのが重要なのだ。それもまた、長年の忠義と勤労に対する感謝なのだから。


「まぁ……そうだろうな。とりあえずはキャリが落ち着くまでは無理だろうが、その後には……」


 キャリが落ち着く……と言う部分で全員がニヤリと笑った。先日の帰還以来、針の筵な日々を送っているキャリは、様々な軋轢と戦っている状態だ。その理由の大部分はビオラを連れ帰ってきたこと。


 その結果として正妻の最有力候補であるビアンカが少々手の付けられない状態になっている。それを何とかするのが次期太陽王最初の試練になりつつある。何事も場数と経験だが、正解の無い問題において最良の不正解を導き出す訓練は精神の強さを必用とするのだった。






   ――――――同じ頃



 太陽王の寛ぐプライベートルームとは異なるフロアに、キャリの私室はあった。

 同じフロアにはララの私室もあり、それだけでなく次期帝を補佐する者達の生活の場にも成っている。


 そんなフロアではララの付き人としてビアンカが入っているのだが、そのサポートにタリカも付いていた。残念ながらそれは様々な軋轢の元になっていて、ララを挟んでふたりが主導権争いをしていると言っても良い状態だ。


 全てにおいて抜かりなく行えるタリカだが、純粋な女では無いが故に色々と今ひとつな点も見え隠れしている。それに対し、女であるビアンカは下の世話から月のモノへの対処まで抜かりなく対処が出来ていた。ただ……


「……エル」


 ジッとキャリを見つめる彼女の瞳は猜疑心に満ちている。それこそ最初にこのフロアへビオラを連れてきた時には『やっぱり私じゃダメなんですね』と酷く泣かれたりもした。


 后の最有力候補としてキャリの祖母エイラによる英才教育が続いていたビアンカは、いつの間にか太陽王周囲の様々な事を飲み込むまでに成長していた。そして、キャリが帰ってきたら婚約を発表しようとエイラも段取りを考えていたのだ。


「……疑ってるのかい?」


 恐る恐るにそう切り出したキャリだが、ビアンカはより一層険しい表情になってジッとキャリを見つめていた。油断すれば今でも両眼に涙を溜めかねない。夫婦の修羅場は場数と経験などと言うが、その核心はつまり、男と女は違う生き物であると言う事だ。


 そしてそこへ本当に異なる生き物がやって来た。それも、イヌやオオカミには不倶戴天とも言えるネコの女だ。そんな彼女はビアンカやタリカ以上にララの世話を上手くやれていると言う事が大問題なのだった。


「そうじゃありません!」


 口を尖らせるビアンカの様子に、キャリは終始狼狽している。

 だが、これを乗り越えねばならぬのだ……


「ビオラはネコの国で居場所を無くし、結果的に僕の所へ来た。彼女は本来ネコの国の騎士で、しかもネコの女王に手が届く存在でもあったんだよ。決して妾にしようなどと思っている訳じゃ無いんだ」


 キャリはそう言うとビアンカを唐突に抱き締めた。最初に抱き締めた時を思えば少し肉付きも良くなったように思う。母サンドラと比べられるのがかわいそうなレベルの貧相な胸だが、それでも十人並みには立派だ。


「……わかりました。エル」


 いきなり抱き締められ驚いたビアンカだが、その腕の中で少しコケティッシュに笑い、上目遣いでキャリを見た。そんな様子がまるで子犬のようにも思え、キャリは内心でグッと来ていた。ただ……


「君との未来こそが僕の望みだ」


 と、そんな言葉を漏らした時、ビアンカは少しばかり怪訝な顔になって言った。


「じゃぁ……あの人らを遠ざけて下さいまし」


 思っていた以上にビアンカは嫉妬深い。いや、今の今まで感情を押し殺して生きてきただけに、爆発しているのだろう。そんな風に理解していたキャリは、どうもそれが核心とは違うらしい事を気が付きつつあった。


 男社会の中にも主導権争いなどでぶつかるケースはあるが、何処かで手打ちにして上手く付き合っていこうという部分もある。しかし、凡そ女社会において鎬を削り合う同士に和睦も手打ちも無い。



    ――――――どちらが上か?



 たったそれだけの事だが、上手い風に裁定せねば安息は無い。女という生き物の扱いにくさを知ったキャリは、同時に母サンドラとリリスを同時に手元に置いておく父カリオンの上手さを痛感してもいた。


 ヒトの姿に成ってしまったと言うリリスはとんでも無い魔女だ。だが、王位継承者である自分の母サンドラは、それだけで国母としての地位を握っていて、しかもその点について自負を持っている。


 ――――まいったな……

 ――――そう言うことか……


 率直にそう思ったキャリだが、小さくひとつ溜息をこぼした後でビアンカを抱き締めていた腕を緩めた。


「……せっかく君を独占できる時間なのに、君は姉上の方が大事なのかい?」


 思わず『え?』と漏らしたビアンカだが、キャリは少々硬い表情になってビアンカの耳元で囁いた。


「姉上の件は僕も心配だけど……ね、でも、実際にはどうにもならないと言うのが医者や魔導家共通の見解なんだよ。だから……残念だけど、実はもう諦めつつあると言うのが本音だ。だからさ……」


 緩めたとは言え、今だビアンカはキャリの腕の中に居る。そんな彼女が着ている衣服は背中をボタンで留めるものだ。高貴な婦人がその身に纏う衣装は、だいたいがメイド達によって着せられるモノで、背中や脇など自分では脱ぎ着出来ない仕組みの構造が多い。


 そんなボタンをポツリポツリと外し始めた時、ビアンカはドキッとした表情でキャリを見つめた後、その胸に顔を埋めてしまった。恥ずかしさを隠すような仕草ではあるが、期待している面もあるのだ。


「……まだ明るい頃にございます」


 抱かれるのを承知でそんな事を言ったビアンカ。

 そんな彼女の耳元でキャリは囁いた。


「僕との間に子を産めるのは君だけだよ」


 母サンドラが持つ嫉妬と優越感の両方をビアンカも味わっているのだろう。女ですら無いタリカとイヌでは無いビオラへの嫉妬を埋め合わせるものは、もはや母親という肩書きだけなのだと認めざるを得ない。


 ただ、お手付きにした結果として暗殺される可能性だってある。実際に城への侵入を試みる女達は居るのだろう。形の違う夜這いを試み、ルートを探す者も多いと小耳に挟んでいた。


「じゃぁ今夜……抱いて下さい」


 ビアンカの本音が遂に漏れた。胸に埋めていた顔を上げ、彼女はそう言った。ならばこの場でサッサと済ませよう……と、キャリはそのままボタンを外していこうとするが、不意に人の気配に気が付いた。


「……解った。そうする」


 ビアンカの顔を押さえて鼻先へキスをしたキャリは、そっとボタンをとめてビアンカの衣装を直した。それが終わったか否かのタイミングで、気配の主が部屋へとやって来た。


「あら。良い所をお邪魔したかしら?」


 冷たい口調でタリカがそういうと、キャリは苦笑しながら遠慮無く言った。

 ビアンカへの配慮が滲むその一言は、タリカを容赦無く殴るものだった。


「気が付いてたなら遠慮してくれよ」


 明確な拒絶とも取れるその物言いは、ビアンカの心に燃えさかっていた嫉妬の炎を消し去るものだった。だが、その炎は消えたのでは無く燃え移ったと言うべきなのだろう。


「……じゃぁ――」


 キツイ眼差しでジッとキャリを見たタリカだが、その目には少しばかり涙が溜まっているようにも見えた。だが、嫉妬の炎をいくら燃やしたところで、ビアンカには絶対に敵わないのを解らない訳じゃ無い。


「――ララの事は私にお任せを」


 タリカの言葉を聞いた時、キャリの脳裏にあるビジョンが浮かんだ。

 まだ何となくあやふやなものだが、ややあってそれがフッと形になった。


「……それ良いな。そうしよう」


 キャリがそう言った時、タリカとビアンカが同時に『え?』と言った。


「いや、簡単な話だよ。タリカはララ姉を頼む。姉貴の部屋に寝泊まり出来るようにして回復の助けをして欲しい。姉貴だってそのつもりだったんだから。で、ビアンカはこの部屋に居てくれ。良いだろ?」


 事実上の同棲生活。まだ婚約もしてないが、もはや事実婚にしてしまおうと言うキャリの魂胆だった。ただ、そこに唯一問題があるとすれば……


「あの方はどうされますの?」


 ビアンカの言うあの方とはビオラのことだ。

 キャリは少しばかり考えてから、ビアンカを見て言った。


「城詰めの女官達が暮らす所に彼女の遁所を作る。ネコの国の話を聞き、これから役立てよう。父は僕に王位を譲るつもりなんだ。だから、家族では無く王府の仕組みに組み込んでしまう。どうだい?」


 キャリの提案にビアンカは少しばかりホッとした表情になって首肯を返した。

 ただ、一切タリカを見ない辺り、相当に警戒していると思われた。


「問題無いなら早速やるよ。善は急げって言うからね」


 軽快に笑っているキャリだが、その内心では慎重な瀬踏みをせねば危ないと危機感を募らせている。ただそれでも間違い無くビアンカに惚れているのだから、男の性とは言え愚かだと自嘲もしているのだった。






    ――――――2週間後


 3月の声を聞いて既に七日ほど経過した日、カリオンは王府の最深部で報告を聞いていた。その傍らにはキャリとビアンカが居て、その後ろにはビオラが居る。


 カリオン最強のエリートガードがヴァルターであるように。リリスを護る最強の存在がリベラであるように。キャリとビアンカを護る存在としてビオラは居場所を見付けていた。


「……ならば日程としては6月の28日だな?」


 念を押して確認したのは、次の日蝕がやって来る日程だ。

 ふたつの月が空に浮かぶガルディアでは、割と頻繁に日蝕が起きる。


 しかし、それが部分日蝕か、それとも金環日食か、はたまた完全に隠れてしまう皆既日食なのか。天文運動の結果として起きる現象なのだから、規則性があるのは間違い無い。


 だが、その日程を正確に予測する事は、実際にはまだまだ難しい部分がある。そして、農事や神事を行う為に膨大な手数を掛け、手動で計算するが故に間違いも発生していた。


「間違い無いと思われます。恐らく9割9分外しません」


 天文方として奉行していた王府の天測技師はそう胸を張って見せた。始祖帝ノーリの即位以来、トゥリ帝シュサ帝ノダ帝と4代に亘り即位時を外さず計算してみせたル・ガルの天文方は全く持って優秀だ。


「そうか。余が即位した時には無かったからな。今回は久しぶりに正統な手順での王位継承だ。期待して居るぞ」


 権力の禅譲。それ自体は過去何度も行われているが、ことル・ガルにおいては太陽王の崩御以外で権力が禅譲されるのは初めてのことだ。それ故に日程を再確認しておいて、解りやすい形での継承が求められる。


 夥しい数の市民が詰めかけるのは目に見えている。そんな時に日蝕が始まらなければ大きな汚点となりかねないし、聖導教会辺りから色々と言われかねない。


「ところで父上。国民への説明についてはどうされますか」


 キャリは改めて確認したかったことを切り出した。

 王位の継承や権力の禅譲も重要だが、今後についてこそがもっとも重要だ。


「あぁ、それだがな」


 カリオンはウォークに視線を送って『説明しろ』と目で命じた。

 もはや以心伝心の関係である侍従ならば、それだけで意志が伝わるのだ。


「来週再来週のどちらかで王都の報道各社に対し公式文書を発給します。余計な文言は書き加えぬ事を厳命し、報道させる予定です」


 マスコミが悪意に塗れていれば、いくらでも情報を書き換えることが出来る。

 それを警戒しての事なのだが、同時にもう一つ気掛かりなこともある。


「……あのキツネ対策ですか」


 瞬時にそれを見抜いたキャリ。その後ろに居たビオラが黙って首肯していた。

 主の慧眼を喜ぶ姿は、既に側近としての立ち位置を確かなモノにしている証。


 ただ、ビオラだけで無くカリオンやウォークもそれを喜んだ。

 もちろんキャリの隣にいたビアンカもだ。


「その通りです。あのキツネが報道各社に何かしら影響を与えている可能性がありますからね。警戒を厳にせざるを得ません」


 この辺りの微妙な配慮やさじ加減は場数を積み重ねるしか無い。それを思えば、まだカリオン政権のブレーンが王府に残って居るうちに権力を禅譲してしまった方が安全なのは言うまでも無いし、経験を引き継げるだろう。


 全てが上手く回っている。そんな事を思ったキャリだが、父カリオンだけは少し不満そうな顔をしてるのだった。


「父上?」


 恐る恐る声を掛けたキャリ。カリオンは『もう一歩だな』と一言のみ発し、思考を求めた。だが、その答えを思い浮かべられず首を傾げるばかりのキャリ。ややあってカリオンは答えを発さざるを得なかった。


「お前達二人の婚約を先に発表せねばならん。聖導教会に口を挟まれる前にな」

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