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ル・ガル帝國興亡記 ~ 征服王リュカオンの物語  作者: 陸奥守
大侵攻~忍耐と苦痛と後悔の日々
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一段落と波乱の予兆と

~承前




 ビオラがキャリの配下となってから数日。

 イヌとオオカミの連合軍はブリテンシュリンゲンを越えた辺りで野営していた。

 予想通りにブリテンシュの街は酷い事に成っていて、乱暴狼藉の限りを尽くされた状態だ。


  ――――さすがにこれは……


 カリオンも絶句した惨状だが、幸いにして死傷者はそれほど出ていない。

 それを見て取ったキャリは父に街の復興を提案し、カリオンもそれを了承。

 街中に工兵らを残し、ル・ガルとオオカミの本隊は街を出ていた。

 そんな3日目の朝……


「来ますかね?」


 固く焼き締められたパンをスープで戻しながら食べるオクルカは西の方を見た。

 ネコの軍勢を追い返したとは言え、再度の前進もあり得る。

 その為に敢えて街から出て防衛線を敷いた状態だ。


「どうですかな。この3日間は動きが無いらしいが……」


 偵察からの情報によりカリオンはネコの側の進行が停止したと判断していた。

 その為、ル・ガル国軍の工兵だけで無く一部の歩兵まで街の片付けに投入中だ。

 故にネコの国への侵攻は事実上停止していて、数日は現状維持状態となった。


 ただ、街の片付けだけが主たる理由では無い事もまた頭痛のタネだ。

 理由としては幾つかあるが、最大の要因は迎撃戦の準備であった為だった

 急いで戦線を形成してしまった為、兵糧などの余裕が乏しい影響だ。


「そろそろ手仕舞ですな。あちら側もこちら側も」


 少しばかり不機嫌な様子のオクルカは、スープを飲みながらそう言った。

 ル・ガル側はまだ何とかなるが、オオカミの陣営はそろそろ限界に近い。


 カリオンはオオカミ側に糧秣を提供し、あわせて朝食を誘っていた。

 食事をしながら意見交換をするのは重要な会議よりも実を結ぶ事が多い。


「やむを得ませんな。今日明日辺りで合戦を終えて引き上げましょう」


 カリオンとて正直言えば手仕舞を選びたい。

 そろそろ芒種へ向けた農事期となり、多くの兵士が畑の心配をする季節だ。


 国力差の担保でもあるル・ガル中原部の穀倉地帯も、昨年一昨年は獅子の国との総力戦で大幅に収穫量を減らしている。その為、畑起こしをするだけでも大変な労力を要するのだ。


 そも、大型農業機械など無い世界だ。畑を起こすだけで無く、灌漑系統整備や畝作りと言った部分まで全てが人海戦術となるのだ。それを思えば普段は農業に携わる平民兵士達を畑に帰してやらねばならない。


「いっそ……ネコの主力を叩きたかったが……」


 オクルカが表情を曇らせる最大の理由は、ネコ側のやる気の無さだ。そもそもネコは負け戦など行わない種族で、既に負けが確定している状況では得られる利も薄いのだろう。


 およそ利に聡く損得勘定を生き方の根本とするネコにしてみれば、負け戦への参加など全く割に合わないし、大損だと考えていてもおかしくない。ましてや国の為に死ぬなど馬鹿馬鹿しいにも程がある。


 戦に参加していくら。手柄を上げていくら。帰ってきて恩給でいくら。その当たりの算盤勘定を極めてドライに行うのだ。そして、そんな状況で真面目に戦をやれ等と言うのは、彼等にしてみれば不条理で非合理なのだった。


「もはや組織的抵抗は難しいのかもしれませぬな」


 政治家の貌が出て来たカリオンは、皿に残っている刻み野菜を見ながら言った。

 野営故に野天のレストランで、その中身とて街のそれとは異なる。

 だがそこには、主計科の心尽くしが並んでいる。


「でしょうな。既にル・ガルからの食糧供給も停止しているのでしょう?」


 カリオンの朝食にご相伴となったオクルカは、ル・ガルという国家の恐るべき実力を体感している状態だ。ガルディブルクから遠く離れたこの地にも、新鮮な野菜や肉やワインなどが届いている。


 それだけで無く、各種嗜好品やら消耗品まで鉄壁の補給体勢になっている。本来それらは全て、ネコの国への支援物資として供給されるはずだったモノばかり。ル・ガル軍団はその物流網に乗っているだけなのだ。


「えぇ。もはや彼等に対する配慮など不要でしょうからな」


 吐き捨てる様に言ったカリオン。その姿を見れば忸怩たる思いが滲んでいる。

 個人的な関係として割と良い状態だった筈のネコに裏切られた悔しさだ。


「ネコは自らが望む様にのみ振る舞う……でしたな」


 ネコと言う種族の特性と言えばそれまでなのだろう。

 だが少なくともそれは、多くの種族においては最も嫌われる傾向のソレだ。


「……救えませんな」

「全くですな」


 ふたりの王が朝食を共にしながら、ざっくばらんに語り合っている。

 ネコと言う種族の特性まで見抜きつつ、どこか哀れんでいる。


 それを見ていたビオラは、どうしてもその光景が現実のものとは思えなかった。

 彼女にとっての常識とは全くかけ離れた、お伽噺のような光景だからだ。


「……我が君」


 ビオラはキャリをそう呼ぶことにしている。フローレンスの家名をもらった以上は絶対的な主である。だが、何処まで行ってもイヌとネコなのだ。まだふたりの間の距離感を上手く掴めないが故なのだろうが……


「何ともこそばゆいな。で、なんだい?」


 どうやらそれはキャリも同じようで、それを見ていたドリーが苦笑している。

 だが、こんな場面をこれからいくつも経験するのだろうから……と、カリオンは見て見ぬふりだった。


「イヌの国ではコレが普通なのでありましょうや?」


 敬語では無く丁寧語。その当たりを勘違いしている者も多いのだろうが、ビオラは極めて丁寧な言葉使いを心掛けていた。女性らしい細やかな配慮などと言うモノは幻想に過ぎず、その核心は知能レベルの問題だ。


 要するに、有り体に言ってしまえば言葉使いにはその人の『程度』や『知能』が在り在りと現れてしまう。単に謙って会話するのでは無く、時と場合と相手に応じて柔軟に言葉を使い分けられるか否かだ。


「ビオラ。あくまでこれは僕の希望だが――」


 キャリはニコリと笑ってビオラを見た。

 その笑みに彼女は思わず俯いてしまうのだが……


「――もっと気楽に接してくれれば良い。君の主たらんと努力をするのは言うまでも無いが、常時硬い関係というのは疲れるし面倒だよ」


 キャリが発したその言葉は、ビオラをして驚天動地な物言いだった。

 およそネコの国においての序列は、絶対無二の階級なのだから。


「……解らない事だらけでお手間を掛けさせ申し訳ございません」


 少しばかり小さくなったビオラ。

 よく見れば愛嬌のある美しい顔だが、微妙にイヌの女とは異なる造形だ。



   ―――これではタリカもビアンカも妬くだろうな……



 ふとそんな事を思ったドリーは、ニヤリと悪い笑みを浮かべていた。

 人が困る姿を見るのが楽しいと言った昏い喜びから来る笑みだ。

 ただ、ふと我に返り己の思考の駄目さに驚き、リカバリーする様に言った。


「ならばこう呼ぶと良い。若殿下。若しくは若王だ。ル・ガル内部ではだいたい若殿下で通じる。そして普段は……――」


 ドリーもドリーで楽しそうに笑っている様子が窺える。

 だが、恩を売ってポイントを稼いでいると言う面も否定は出来ない。

 何となくそんな事を思ったビオラは、黙って言葉の続きを待った。


「――もっと砕けた物言いで良いのだよ。礼儀をわきまえてさえいれば、それで良いのだ。そうしなければ若殿下も気疲れしてしまうだろ?」


 ドリーの発したその言葉に『さすがスペンサー卿』とビオラは感心した様子を示した。ただ、そうは言っても最初からそれが出来る訳では無い。


「まぁ、だんだん慣れてくれれば良い。それより、今日は忙しくなりそうだ」


 キャリがそんな事を漏らした時、カリオンはオクルカと何事かの合意を行ったようだ。共に軍人では無く政治家としての顔になっていて、国防戦争の為のあれやこれやをすり合わせている状態だった。


「キャリ! 手仕舞いだ。撤収の仕度を始めさせろ。ドリーはすまんが支援してやってくれ。数日中にフィエンまで撤収する」


 太陽王の方針が示され、ドリーは『御意!』と応じてすぐさま動き始めた。キャリはキャリで『砲兵の撤収を急がせます』と応じ、ビオラに『一緒に来て』と命じた。ある意味でそれは、キャリがビオラを配下にしたと言う象徴だ。


「ぎょ……――」


 それは御意と言いそうになったのだろう土壇場だ。

 ビオラはハッとした表情でキャリを見て、言い直した。


「――はい!」


 これからの長い人生において、きっと様々な事を経験するはず。

 そんな時の為に経験を積んでおけ……


 そんな眼差しでカリオンはキャリを見ていた。

 自分自身が出来なかった経験を積ませ、育成していこうと思ったのだった。


「では、秋を目処に仕切り直しを」


 オクルカは顎を擦りながら思案し、そんな提案を行った。

 しっかり準備して、糧秣も供給体制を整備しておこうという事だ。


「良い頃合いですな。農繁期が終わった後なら何かと好都合です――」


 オクルカの提案にカリオンが賛成し、イヌとオオカミの連合軍は撤退する事となった。それは、総力戦を挑む為の下準備だ。この砌、もはやネコの国を完全に切り捨てると言う認識を共有した。


「――もはや……容赦も情けも不要でしょう」


 カリオンの返答にオクルカも深く首肯した。


「最終的解決を図る頃合いでしょうな」


 その方針により動きが出るのは秋となる。それまでに国内体制を整えねばならない。あのコウアンという九尾が言ったとおり、キャリを王にする必用がある。


「やらねばならぬ事が山積みだ」

「まぁ、やむを得ませんな。引退して悠々自適を楽しみにしておきましょうぞ」


 カリオンのボヤキにオクルカがそう返答した。

 ただ、悠々自適なんてモノが本当に来るとは到底思えないのだった……






   ――――――それから7日後


「……なるほど。それでは若君も苦労を背負い込む事になりそうだ」


 何とも楽しそうに言ったエゼキエーレは、過去に記憶がないほど上機嫌だった。

 太陽王の名代として出向き、その先で痛い目にあって帰ってきたと言うのに。


 だがそれは、エゼキエーレという人間の芯の強さを再認識する結果でもあった。

 嘗められたら抗う。そして戦う。その原則について、エゼには一切ブレが無い。

 そしてここでは、ネコの軍勢を散々な状態にして追い払った件で喜色満面だ。


「まぁアレもこれから様々な苦労を背負い込む事になるだろうから、その練習のようなモノだ。いきなり困難に直面してしまうと、判断にブレが生じるから」


 ブリテンシュリンゲンからの帰り道。カリオンはフィエンの街で休息を取った。

 自分自身の疲れもあるが、工兵や歩兵達の疲労も無視出来ない要因だ。


 エゼに進められたワインで口を湿らせつつも、カリオンは上機嫌だった。

 ただ、それ以上に上機嫌な理由もまた存在していた……


「旦那様。これでどうだろう?」


 エゼの妻フィオの片腕として娼館を取り仕切るエリーがやって来た。

 カリオンと談笑していたエゼキエーレの所へだ。

 その隣にはビオラが居て、彼女に似合う紫のドレスを着ていた。


「……ほぉ。良いじゃないか」


 カリオンが開口第一声に言うと、同席していたキャリも『あぁ』と同意した。

 元々が細身で華奢なビオラだ。その可憐さが引き立つようでもあるが……


「まだそれを取ってあったんだな」


 遠い目をして呟いたエゼキエーレは、少しだけ潤んだ瞳をしていた。

 その姿が不思議なカリオンは、不思議そうな顔で『どうした?』とたずねた。


「これは……アチェイロがここで歌っていた頃に来ていたドレスだよ。街の仕立屋では思うような生地が無くてね。ル・ガルの仕立屋に依頼して造らせたものだ。高かったがその分だけ上等な出来に成ったよ――」


 遠くを見て懐かしむような表情のエゼはビオラを見つめながら続けた。

 すっかり遠くなってしまった記憶の縁を手繰り寄せるような、そんな言葉を。


「――そのドレスはね、この太陽王の最初の后であるリリス妃のね、その母親の為に造らせたものだ。ヒトの世界から落ちて来て、縁あって私が保護した。実の娘のように大事にしたんだがね……まさかここまで似合うとは思っても見なかった」


 アチェイロとはレイラの事で、つまりはリリスの母親が着ていたと言う代物だ。

 そんなドレスが再び世に出てきて、しかもキャリの側近ポジションに収まりそうなネコの女の手に渡った。


 数奇な運命などと言う表現が陳腐にも感じるものだが、それでもカリオンは驚きつつ喜んでも居るのだった。


「君は……サヴォイエだろ?」


 エゼが確認する様に言うと、ビオラは硬い表情になって首肯した。

 ネコが同じネコに何かを確認し、それで硬い表情になる。

 そこに何があるのか。カリオンは掴み損ねた。


「……エゼ。サヴォイエとは如何なる意味だ?」


 カリオンの率直な問いにエゼは僅かばかり驚いたが、ややあって声を落ち着けてから説明を始めた。既知の内容と共に、初めて聞く話が沢山混じっていて、少々驚くのだが……


「サヴォイエ……場合によってはサヴォイアとも言うが……まぁ、早い話が女王の卵だよ。ネコの国の女王を引き継ぐ資格を持つ物が集まる騎士団で現女王の親衛隊という事だ。その中で女王を引き継げる者のみがサヴォイエと呼ばれる」


 思わず『は?』と聞き返したカリオン。

 キャリに剣を捧げた存在が女王の継承権を持つなど問う話は初めて聞いた。


「じゃぁ君は……ネコの女王になり得るのか?」


 率直な問いを発したカリオンだが、ビオラは少々はにかんだ表情で言った。


「……いえ。まぁ……資格はありますが限りなく薄いでしょう。ヒルダ様の後継ぎは事実上もう決まっていまして、私などは足元にも及びませんから。恐らくはこの先、何らかで使い潰されて捨てられるのがオチです。ですから……」


 ビオラの言った内容は、カリオンをして『なるほど』と思わざるを得ないものだった。つまり、ネコの種族的特徴として、要するに割に合わないと判断して出奔したのだろう。


 もっと言えば、現女王に諫言して云々という話も、なんだか急に生臭さを感じさせる物になり始めた。要するに、一発逆転を狙ったのかも知れないのだ。もはや未来が無いと解ったのだから、生き延びる為に逃げたとも言う。


「まぁ何にせよ、実力的に手が届かぬのなら早めに逃げた方が良い。およそネコの女王にまともな存在など居やしないからな。ヒルダもそうだが先代のアンリエッタも本当に酷いもんだったよ。幾度殺され掛けたか解らんくらいにね」


 クククと笑ったエゼキエーレは、何が楽しいのか嘲るような笑みを浮かべてビオラを見ていた。ネコの女王が完全に倒錯した性的嗜好を持つのはつとに有名で、少年を手籠めにしては責め殺してしまう事も多々あるというのだそうだが……


「……あの女の狂った様を見ていたら怖くなったのよ」


 そう吐き捨てたビオラの顔には辛酸を舐めた者のみが浮かべる苦渋があった。ただ、その中身を聞こうとは思わなかったキャリは、ドレスアップしたビオラに近寄り、その肩に手を置いて言った。


「我が騎士よ。吾が同じく怖くなりし時は、そのままはっきりと言うてくれ」


 その言葉にドキッとした表情になったビオラは、一瞬だけ顔を背けてしまった。

 ただ、その直後に再び顔を上げ、はにかんだ様子で言った。


「願わくば、その御手で直接……お手討ちにして下さいますよう……」


 主に斬られて果つるならば本望。ビオラはそう言ってのけた。

 その姿を見れば、誰だってビオラがキャリに熱を上げているのは解る。


「余の吾子は良き臣を得たり。ただ、同時にこれは波乱の予兆ぞ」


 フフフと笑ってキャリとビオラを見たカリオン。

 イヌの男に惚れたネコの女ならば波風も立とうというものだ。


「王は一途でしたからな」


 盛り上がってるカリオンをエゼキエーレが冷やかす。

 それを見ていたキャリは、父カリオンが歩んできた道に興味を持つのだった。


「フフフ…… 明日にはここを発つ。ガルディブルクまで五日の行程だ。城に帰るのが楽しみだよ」


 何とも悪い笑みを浮かべるカリオンだが、実際には波風どころか大変な事に成るのが目に見えているのだった……






   ――――――3週間後


 ガルディブルクへと帰還したカリオンを待っていたのは、首尾を聞いていた市民の歓迎ぶりだった。だが、そんな場でキャリが連れていたネコの女騎士を見れば、捕虜か奴隷か程度にしか思わないモノだ。


 そしてそれは、城に戻った後でも同じ事が続いていた。もちろん最初に脅しに来るのはリベラの仕事で、城の奥にあるカリオンのプライベートエリアが最初に事件現場となった。


「お前さん…… サヴォイエか?」


 ビオラの完全な死角側から突然現れ、対処を行う前に彼女はリベラから利き手と首を掴まれた。その身のこなしの速さと正確さを見れば、ただ者では無いのが嫌でも解る。だが……


「返答次第じゃこの場で死んでもらいやすぜ…… あっしの主にネコの騎士を近づけるわけにゃぁいかねぇんだ」


 低く囁くようなその声は、ビオラの心魂を寒からしめるのに十分な威力だった。だが、その直後に現れたリリスが『良いのよリベラ。その()は良いの。キャリに剣を捧げたそうよ?』と間を取り持った。


 ヒトの女がネコの殺し屋に指図しているのを、ビオラはどうしても理解出来ないでいる。ただ、そうは言ってもさすがリベラと言うべきか、スッと手を解き全く油断無い動きでリリスの傍らに立っていた。全く警戒を解かずに。


「リベラさん。彼女の事は良いんです。ネコの国で居場所を無くしたようです。どうも女王が乱心したようですね」


 ビオラの隣に居て少しばかり慌てたキャリは、まずリベラに全体像の説明を行った。それを聞いたリベラは『そいつぁ……まぁさもありなんって所でしょうかね』と連れない返答をしていた。


 だが、それについての説明をカリオンが始めた時、ビオラはこの部屋に居る全てがカリオン王の家族なのだと知った。イヌの王の側近にはネコの細作が居てキツネの魔法使いも居て、更にはヒトの女ですら混じっている。


「……って訳だ。彼女にはキャリの配下に加わって貰う事にした。余は両手に余る才覚の持ち主を抱えている故に今は困っていないからな。上手くやれよ?」


 キャリに発破を掛けて奮起を促したカリオン。ただ、その直後に最初のピンチがやって来た。遠慮無く唐突に。そして心の準備をする暇も無く……だ。


「……エルさま……どなたですか?」


 ララと共に部屋にやって来たビアンカは、そう言った後で言葉を失った。

 そして、呆然と立ち尽くし、キャリとビオラをジッと見つめるのだった……


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