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ル・ガル帝國興亡記 ~ 征服王リュカオンの物語  作者: 陸奥守
大侵攻~忍耐と苦痛と後悔の日々
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未来を拓く誓いと死の影

~承前




 ル・ガルは遂に帝國歴400年を迎えた。


 始祖帝ノーリによる建国宣言から幾星霜。様々な困難や滅亡の危機を幾度も経験したイヌの国は、民族的な特徴である団結と共助の精神でついに400年の年月を数えるに至った。


 決して平坦な道では無かったが、危機を乗り越える都度にル・ガルは強く逞しく発展してゆく。獅子の国との戦でもル・ガルは負けなかった。そんな強い感情があふれ出し、王都は文字通りのお祭り騒ぎだ。


 新年前夜となる夜から始まった様々な催し物は、各公爵家それぞれが趣向を凝らしたもので、王都の夜を様々に彩るパレードやステージは市民の耳目を集めた。そして、その興奮が最高潮に達したのは、太陽王カリオンが姿を見せた時だった。


 ――――王だ!


 誰かの叫びと共に悲鳴にも似た歓声がミタラス広場を埋め尽くした。五代目となる太陽王カリオンの登場に市民らは自然発生的に国歌を歌い出した。帝后サンドラを連れ城下を歩く太陽王は、市民らの歓声を浴びながら大通りを進んでいる。


 そんなカリオンが不意に振り返って城を見上げた時、キャリとビアンカが城のバルコニーから眺めていた。そして、一度だけ顔を見合わせてから、キャリはそっと手を繋いだ。両脚をガタガタと振るわせながら、彼女の手を握っていた。


 自分の実父がサウリクル家のトウリ公である事は、過去に幾度も母サンドラから聞かされてきた。だが、キャリにとって自らの父は太陽王カリオンただ1人。様々な教えを受け、死の危機を乗り越える試練を経た自信もある。だが……


「あの…… キャリ様……」


 何かを言おうとして言葉を飲み込んだビアンカ。その内心の葛藤や恐怖を理解したキャリは、震えをどうする事も出来ずにぎこちなく笑って言った。なにかこう上手い言い回しで格好付けようと言う思考すら飛んだ状態で……だ。


「ゴメンよ。こんな情けない人間で。でも、怖いよ。怖いんだよ」


 命懸けのピンチは今まで何度も経験してきた。獅子の国との合戦では、幾度も死を覚悟した。もっと言えば、様々な場面で暗殺されそうになったり、斬られたり刺されたりして痛みを味わった。


 だが、そんなものなど国を預かる重責に比べれば、笑い話のようなものだ。

 自分の判断や決断で人が死ぬ。それも、全く関係無い人が死ぬ。それ自体は様々な従軍経験で何度も味わってきた。しかし、ここから先は全く話が異なる。もはや自分の身一つの問題ではなくなるのだ。


 この女を伴侶とするなら、その生涯を全力で守らねばならない。婚姻とはそんな契約であるし、それを引き起こすだけの理由もある。貴族ですら無い出自の女を娶るなら、貴族家の女達は黙っていないだろう。


「私も……怖いです……でも……でも……」


 ビアンカは精一杯の笑顔を浮かべてキャリを見た。


「私が生まれ持った宿命だと受け入れます。そして……どうかキャリ様の苦しみや怖さを分かち合えたならと……そう思います」


 ビアンカが精一杯絞り出した言葉は、キャリの胸の奥の何かを叩いた。

 心臓が早鐘を打ち、視界には星が飛んだ。


 ――――そうだ……


 ビアンカの言った言葉が耳から流れ込んできて、キャリの頭の中で何か得体の知れない物の形になった。恐怖や狼狽と言った感情の隣にある物がその周囲で、チカチカと輝いていた。


「……宿命」


 小さく呟いたキャリはこの時この瞬間に至り、初めて太陽王という巨大な肩書きを背負う覚悟を決めた。六代目の太陽王としてカリオン二世を名乗り即位する事になるエルムは、見えない一線を越えたのだと自らに確信した。


「私は……どこかの家で奴隷の様に働いて野垂れ死ぬ運命だったのかも知れませんけど……それから救い上げてくださったのが先代のサウリクル公でした」


 幾度もその話を聞いていたキャリは『うん。それは聞いたよ』と応える。それに対し、ビアンカは少し笑って話しを続けた。


「母の姉であるオリビア様は、私が育った修道院に来られた時に言われました。もしこの先、何かサウリクル家のお役に立てる機会があるなら、その時は命を捧げる覚悟でやりなさい……と。そうすれば神は必ず見て下さると」


 ビアンカの絞り出した言葉に『そうか』と応えたキャリは、父カリオンが常々言っている事をやっと理解した。人は神の奴隷では無いのだ……と、いつもいつも不機嫌そうにカリオンは言っていた。


 マダラという出自の父カリオンは、有形無形の困難を散々と経験して来た。その困難の根本にあるのは、神の教えというよく解らない世迷い事の集大成と言うべき教典に書かれた、前世の罪とか言う全く話しにならない概念の結論だという。


「神……なる存在は……哀れんでくれるのかな」


 キャリが小さな声でそう言うと、ビアンカは首を横に振って否定した。


「哀れむのでは無く、助けてくれるのでしょう。自分自身の罪と向き合う事は、自分自身の生と向き合う事です。だから私は――」


 一旦キャリとの視線を切り、一度はバルコニーの石畳へと眼差しを持っていったビアンカ。その表情はキャリの内心をグッと昂ぶらせるのに十分な威力だ。だが、俯いたまま笑みを浮かべ、上目遣いになったビアンカを見た時、キャリは心が沸騰するのを感じた。


「――キャリ様を、あなたを支えます。苦しみも哀しみも分かち合える存在になれるよう努力し続けて、いつか必ず役に立ちます。だからどうか……どうか……」


 何を言おうとしているのか。その核心は勘の悪いキャリにも察しが付いた。

 そして、ビアンカがそれを言う前にキャリがはっきりと口にした。


「ビアンカ。どうか俺の……妻になって欲しい。生涯全力で君を護ると約束する。どんな時でも君の味方で居ると約束する。君が俺を裏切らない限り、何があっても誓いを守るから」


 キャリのプロポーズにビアンカは一瞬だけ固まってしまった。まるで頭の中を火花でも撒き散らしながらネズミが走り回るかのように、思考がとっ散らかって要領を得ない言葉が口を突き出そうになった。しかし……


「あの……私はまだ……修行中です。エイラ様とリース様が色々教えて下さいますが、まだまだ……半分も理解出来てません。それに、サンドラ様からは……」


 良く思われていない。そう言おうとして、寸前で思いとどまったビアンカ。

 だが、その中身を理解していないキャリでは無い故に、言葉では無く行動で示すしか出来なかった。具体的に言えば、思わず力一杯引き寄せ、抱き締めると言う行為で愛情を示したのだ。


「多分そうだろうと思う。母上はオオカミの出自故に選民思想が強い。ただ、それはきっと抜けていくと思ってる。根本は死ぬまで変わらないかも知れないけど、段々と実力で評価する様になっている。だから……」


 キャリがその続きを言う前に、ビアンカはコクリと首肯してからキャリの胸に顔を埋めた。鍛え上げられたぶ厚い胸板は、逞しい筋肉を感じさせる物だ。ただ、ビアンカはそれが嫌いじゃ無かった。


「もっともっと頑張ります。サンドラ様に認めていただけるように。そしたら」


 キャリは優しく笑ってから言った。


「俺の真名はエルム。だから……誰も居ない時だけはエルと呼んでくれ」


 キャリの告げた言葉にビアンカは目を見開いて驚いた。

 他ならぬ時期帝の真名を聞いてしまった事にだ。


 もう後戻りは出来ない。

 それを確信したビアンカは、キャリを見上げたまま目を閉じた。

 その艶やかな唇に自らの口を当てたキャリは、ビアンカを抱き締めて言った。


「共に未来を拓こう。困難を乗り越えて」

「はい。喜んで……エル」


 いつの間にかキャリの震えは止まっていた。その心の内に、初めてなにかこう暖かな火が灯った気がした。今まで一度も経験し得なかった感情の波をキャリは初めて知った。


 素直な返事を返したビアンカをもう一度抱き締め、再びバルコニーの下を見た。その時、偶然振り返った父カリオンと目があった様な気がした。何かを言っている様に口が動いているのが見えた。言葉など届くはずも無いのに何を言ったのかが聞こえた。






   ―――――― こ の 国 を 引 き 継 げ ――――――






 思えばこの3代ほどは戦死による唐突な世代交代ばかりだった。故にかどうかは知らぬが、ル・ガルの社会で安定した形での王権委譲は久しぶりな事だった。二代目太陽王トゥリの死去によるシュサの即位以来のことになる。


 ――――まだまだ学ばねば……


 恐らくは摂政という形で代王的な立ち振る舞いから始める事になるのだろう。その中で超絶に難しい国内バランスの調整を学ぶ事になる。各貴族家の利害調整こそが太陽王の役割なのだから、その辺りのさじ加減を学ぶ必用があるのだ。


「ビアンカ。下に降りよう。姉上がし――


 姉を見舞おうとしたキャリが抱き締めていたビアンカを話した時、何処から砲兵による野砲の音が聞こえた。何事か!と一瞬身構えたが、その直後に夜空一杯の華が咲くのをふたりは見た。


 砲兵による拡散弾を使った撃ち上げ花火は、恐らくはアッバース家による仕掛けだろうと思われた。ヒトの技術者があれこれ研究していたのは聞いていたので、間違い無いだろう。


「……綺麗」


 ビアンカがそう呟き、キャリは短く『あぁ』と応えた。しばらく眺め満ち足りた時間を過ごしたふたりが城に戻る頃には、花火も最高潮に達していた。広場を埋め尽くした市民達の歓声が最高潮に達し、ル・ガルは繁栄を存分に味わうのだった。






 ――――――それから数日後



「陛下」


 昼食後の一休みで寛いでいたカリオンの元にウォークがやって来た。

 その表情を見ればよく無い話なのはすぐに解る。


 新年祭の熱気が残るガルディブルクの街も、今は段々と平常に戻りつつあった。

 そんな街に訪問者があり、市民達は息を呑んで事の次第を見つめていた。


「来たか…… で、下か?」


 手短に問うたカリオンに対し、『御意』とだけ返答したウォーク。彼は室内にいたキャリに目配せしてから続けた。


「イサバ王はご健在ですが、ベルムント公は残念ながら」


 過日、ガルディブルク城へ直接空間転移してきたウサギの女が言った通り、文字どおりの敗残兵状態となったトラやオオカミのザリーツァ氏族は酷い有様らしい。


 陸路で撤収する事を選ばなければ、まだ多少はまともな状態だった可能性もあるのだが……


「すぐ下に降りる。先ずは見舞おう。ヴァルターを呼んでくれ」


 カリオンの決定を見ていたキャリは、なぜ太陽王腹心の部下が自分を見たのかを理解した。何故『ここに残れ』と言う意思表示を遠回しに言いたかったのか。迂闊な事を言えば言質にされかねない部分をふたりとも理解しているのだ。


 そして、その危険性の根幹はザリーツァだ。一族の長を失ったザリーツァ一門が血気に逸って軽はずみな事をしでかしかねないし、事と次第によってはその場でキャリが拉致されるかも知れない。


 母サンドラがザリーツァの血を引いている以上、キャリも関係無いとは言い切れないのだ。


「キャリ。ここを頼むぞ」


 一言残して居室を出たカリオン。部屋に残ったキャリは、姉ララとビアンカを見た。祖母エイラの指導により少しずつ成長しているビアンカは、気が付けば随分と肌艶が良くなっていた。


 生命力溢れる若さの発露だろうが、年頃の娘ならばわずかな期間でグッと変貌する事もある。だが、それ以上に変化したのは、立派な身なりになっている事だ。


 未来の帝后


 それを見て取ったからこそ、エイラはビアンカに身形から整えさせた。衣類を着こなすのは普段からの気遣いと心掛けが重要だからだ。そして、はっきり言えば窮屈で動きにくい服を着ていても優雅に振る舞う為の訓練だ。


「ララ姉さま。大丈夫ですよ」


 ただそれでも。やはりビアンカはララの付き人状態にある。室内では常にララのそばに居て彼女の面倒を見ている。だがその言葉には明確な違いがあった。ララ様ではなく姉さまになったのだ。


 ――――彼女を護りたい……


 キャリがそう思っても不思議では無いその姿。それに冷ややかな視線を向けるのは、この部屋の中ではタリカひとりだった。リリスはそれとなくサンドラに目配せし、サンドラはタリカをチラリと見てから焦眉の谷を深くした。


 女の嫉妬は根深く気を病ませるもの。時には人を悪鬼羅刹に堕とす物だ。だからこそサンドラはより一層に注意深く振る舞わねばならない。ビアンカをまだ認めていないし、はっきり言えば認めたくも無い。


 だが、ことここに至り、キャリが未来を共にと意思表示した以上は尊重せねばならない。そんな時にタリカを焚きつけないように。軽はずみな事をしでかさないように注意を払う必用があるのだ。


「タリカ。こっちにいらっしゃい」


 そんな空気を見て取ったのか。サンドラの近くに居たエイラは、今にも角を出しそうなタリカを呼び寄せた。『御用でしょうか』とやって来たタリカを隣に座らせてから、静かに言った。


「嫉妬するなと言っても無駄でしょうけど、出来ない物は出来ないのよ?」


 ど真ん中の直球勝負ではっきりと言葉を浴びせ掛けたエイラ。

 タリカはまるで雷にでも打たれたかのようにビクッと身体を震わせた。


「……これが……嫉妬なんですね」


 知らぬ物が見れば引き攣った様にも見えた険しい表情がフッと抜けた。

 そしてその後に溢れ出てきた表情は悲しみだった。


「あなたもララを支えて。もちろんあの子も。ただ。必ず一線を敷いてね」


 エイラが静かにそう言った時、タリカは両眼に涙を溜めて首肯するのだった。





 ――――――城下


 最初、カリオンはそこにいるトラの男がイサバだとは認識できなかった。左腕を失いつつも戦ったのだろうか、胸や背中に大きな傷痕を残している。そしてイサバだけでなくトラの男たちは誰もが大なり小なり傷を負っていた。


「イサバ王。いったい何があったと言うのだ」


 多勢に無勢な状況下でも勇戦したのが手に取るように解った。駆け寄ったカリオンはまずそこから入った。話を聞くには順序があるが、肝腎な部分を自分から包み隠さず報告できるかどうかが重要だった。


「いやいや、手厳しくやられてしまった。ガハハハハハ」


 あくまで余裕を崩さないイサバ王ではあるが、その姿に覇気は無かった。そしてそれ以上に問題なのは、あれだけ居た筈のトラが大幅にその数を減らしていると言う事だ。ざっと見積もっても半分程度に成っている。


「何故? 何故ネコの軍勢が追撃してきたのだ?」


 率直にそう問うたカリオン。

 だが、そこに予想外の回答が突き付けられた。


「ネコは最初、魔法による攻撃をしてきた。ウサギの一門がそれを上手くいなし、その直後に肉弾戦となった。ネコの騎兵も大した物よ。銃を恐れず襲い掛かってきたのだ」


 イサバが言うには、ネコの騎兵が後方より削るように波状攻撃を仕掛けてきたという。トラは反転して真正面からぶつかり、オオカミは機動防御を行ってネコの側を翻弄したという。


 ただ、オオカミが持っていた凡そ1万丁の鉄砲による五月雨式の射撃にもへこたれず、ネコの騎兵は勇猛果敢に襲い掛かってきたという。それでも何とか撃退したのだが、その時に捕らえたネコの騎兵から詳細を聞き出したらしい。


「ネコの騎士が言うには、ネコの女王がイヌへの報復を宣言したと言う。どうやらシーアンでネコの騎兵が立て籠もった時の顛末を歪んだ形で聞いたらしいな。裏切られた見捨てられたって騒いで面倒だったから、その騎士もその場で斬り捨てた」


 イサバがやったのは、完全な根切りに近い殲滅戦闘らしい。

 しかし、それで事態が拗れたのは間違い無いようだ。


「数日後にもう一度後方から襲い掛かられ大混乱になったんだが、その時はネコだけじゃ無くて様々な種族が居た。獅子の国の補助軍を吸収したようだ。とんでもない吶喊力を持つウシの一族が突っ込んできて、防衛線が大混乱になった。で――」


 イサバが深い溜息を吐き、心底嫌そうな表情を浮かべた。

 それが何を意味しているのか把握しかねたのだが、ややあって再び口を開いたイサバの吐いた言葉は、カリオンをして驚愕の事態だった。


「――その先頭に居たのはエデュだったよ。最後の一兵まで抵抗しろって喚いてたんだが……」


 カリオンの表情がガラリと変わった。

 両眼を見開き、真剣な表情で何かを考えている。


「あり得ん…… あり得んだろ…… まさかそんな事は……」


 数歩下がって僅かに歩き出したカリオン。

 左手を腰に当て、右手を自らの額に添えつつ下を向いて考え込む姿。


「エデュはシーアンに残ったはずだ」


 カリオンがそれを行った時、ウォークが『あっ……まさか!』と漏らした。

 太陽王とその側近が最初にイメージしたのは、あの面倒な七尾のキツネだった。


「いや、ワシが見たのは間違いなくエデュだった。その時は4万近い軍勢がやって来ていて、ワシ等はとにかく遠方に逃げろと走った。走るしか無かった。自力が違いすぎたんだ。で、力尽きた者から……死んだ」


 力無くそう漏らしたイサバ。その時ふと気が付いたのは、イサバの従兄弟と言われていた側近の男、シザバの姿が無かった事だ。そこまでトラは奮戦したのか。シサバはきっとしんがりを引き受けたのだろう。


 その場で奮戦し、武運拙く戦死したのかも知れない。そうで無ければこの場にいない方がおかしいのだから。


「で、オオカミの代表は?」


 その問いに対し、イサバは首を振りながら言った。


「一目散にオオカミの郷へと向かった。反撃する為の戦力が欲しいと喚いていた」


 そこで何となく話しが繋がったカリオンは、幾度も首肯しつつ言った。


「まずは傷を癒やされるとよろしかろう。ネコの軍勢は我らイヌが引き受ける故、ご安心召されよ。トラの国へ向かわれるなら支援を行いたい」


 そう申し出たカリオン。だが、イサバ王はもう一度首を振りながら言った。


「反撃されるというなら、生き残ったトラはそれに加わらせてもらおう。一撃でも反撃せねば納得して死ねぬ。よろしいか?」


 トラの見せた気概と気合。そして根性。縦に一本、真っ直ぐに筋の通った生き方をするトラの真実をカリオンは見た。そして、黙って首肯し静かに言った。


「トラの戦士達を歓迎する。多少の時間がある故、まずは快復に注力していただきたい――」


 カリオンは振り返りウォークを呼び命じた。


「――全軍に非常呼集を掛けろ。フィエン郊外辺りで迎撃しよう。徹底的に殲滅して戦力を削りきる。反撃の芽を摘むぞ」

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