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ル・ガル帝國興亡記 ~ 征服王リュカオンの物語  作者: 陸奥守
少年期 ~ 出逢いと別れと初陣と
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ル・ガルの歴史(後)

 チャシのお昼時。エイダとリリスはウィルと一緒に昼食をとっていた。

 ウィルの授業が楽しいのも有ったし、それを聞いていれば午後の馬術練習もサボれると思っていた。

 だけど、一番の理由はリリスと一緒に居られると言う事だった。


 ただ、運び込まれたのは昼食だけでなかった。

 トレーに乗せられたメニューと共にやって来たのはエイダの母エイラ。

 そして、剣術指導に当たるワタラ――五輪男だった。


「ほぉ…… なるほど。これで黒板の代わりをするのですか」


 灰盆のアイデアを見た五輪男は唸った。

 ウィルの示した個人レベルでの執筆練習は、誰でも何処でも簡単に出来る事だった。


 紙の大量生産を行うには、ル・ガルの国力はまだまだ足りていない。

 家庭内手工業に毛が生えた程度の基礎工業力では、個人の出費で賄えるようなノートの生産など夢のまた夢であった。


「これはヒトの世界の知識ですがワタラ殿はご存じないのか?」

「いえ。恥ずかしながら初めて知りました。あ、そう言えば何かの本で灰をひいた皿に字を描いたって話を読んだ事はありますが、これは気が付かなかった。真似させて貰いますよ。素晴らしいアイデアだ」

「あいであ?」

「素晴らしい発想と言う意味です」

「なるほど」


 ウィルと五輪男が話し込む中、エイラはリリスの手を取るようにしてテーブルマナーを教えている。太陽王の娘として徹底的に教え込まれた振る舞いの一つ一つをリリスへ伝えるエイラ。その熱心さに五輪男やウィルはエイラの本音を読み取っていた。いつかこの娘が息子の嫁に成る。そんな思惑だ。


 五輪男とウィル。エイラとエイダとリリス。

 それぞれに会話しながらの賑やかな昼食。

 

 その最中にもウィルは授業を再開した。

 一番の理由は五輪男自身がル・ガルの歴史を知りたがったからだった。


「帝国歴一六八年。第三次祖国防衛戦争が終ったあとのル・ガルは、それはもう酷い状態でした。国内の様々な生産力は大きく落ち込んだのです。一番足りなかったのは食料でした。都市部では餓死者が出る有様でした」

「なんで足りなくなったの?」


 エイダが間髪要れずに質問する。

 その姿勢や良しとウィルは頷いた。


「畑を耕す男が戦争で死んでしまったからです。女ばかりでは畑を耕すのも大変でした。そんな状態では子供も増えません。ジリジリとル・ガルは小さくなり始めたんです」

「なんで小さくなっちゃったの?」


 今度はリリスが質問する。

 エイダに影響を受けたのか、それともエイラの影響なのか。

 引っ込み思案で人見知りだったリリスが変わりつつある。

 ウィルは目を細める。


「子供を生み育てながら畑を耕し日々を送ると言うのは本当に大変な事だったんです。だから女たちは考えました。まずは今生きている人間がお腹一杯食べられるようにしよう。子度をも増やすのはその後だとね。でも、子供の数が減ると言うのは国自体が小さくなっていくんです。人口が減ってしまうとダメなんです。ですから、トゥリ帝は国内の病院制度を変えました。誰でも使える病院を有料にして、その代わり国民から少しずつ保険と言ってお金を集めたんです。そうする事によって病院にお金がたまり、お医者さんが増えたり薬を安定して作ったり出来るようになりました。なかなか増えない人口をこれ以上減らさないようにしたんです」


 ―――― なるほど 国民保険制度と自己負担の関係だな


 五輪男が静かに頷く。

 ウィルは気にせず話を続けた。


「そして、国内へ樹を植えなさいとトゥリ帝は命じました。アチコチ樹を切りすぎたんです。そうやって少しずつ少しずつ計画的に国内を復興させていきました。減りきった人口のために学校を再編し、イヌ以外でも学びたい者は学べるようにしたんだ。しかも、全部無料でね。そうやって段々とイヌ以外がイヌと溶け合うようにしていった。帝国歴一七八年からの三〇年は国内改革の連続だった。今のル・ガルを形作る色々な仕組みは全部トゥリ帝の作り上げていったものだったんだ」


 目を輝かせてイヌの華々しい歴史を聞くエイダとリリス。

 その後ろで五輪男もまた目をみはるようにして話を聞いていた。


「そうやって人生の最期をル・ガルに捧げたトゥリ帝は二七〇歳で亡くなる。帝国歴二二二年の事だった。トゥリ帝の国葬にはキツネやカモシカの国から代表団がやって来た。長年争った敵同士だったが、人の死は違うと哀悼の意を表した。その関係でキツネはイヌと友好的な関係になり始めた。だけどね、やっぱりネコとトラとは仲が悪かった。もちろん今もだけどね」


 灰盆の中に再びガル・ディ・アラの図が浮かび上がった。

 そこに描かれたのは矢印……


「帝国歴二二五年。シュサ帝が即位し最初に国内の都市再編を始めたんだ。その時、ル・ガルの中央平原(ミッドランド)へガルディブルクばりの計各都市を作り始めた。周辺に有った十四の都市国家をそこへ移住させ、広大な農業地帯を作り出す計画だったんだ。ところが、その計画に猛烈に反対したのが国内に残っていたトラだった。トラは元々がこの大陸に満遍なく分布して暮らす種族だった上に、先祖代々耕してきた土地を手放すのを嫌がったんだね。そして悪い事に、一時的な疎開先として作った仮の都市が西部地域に暮らす魔法使い達の縄張りだったんだ」


 地図の上に描き出された大まかな魔法使いの縄張り図。西部地域に暮らしていた有力魔法使い達の『ここまでは俺の庭』と言う範囲にル・ガルの都市圏図が重なった。


「結局、これが全ての、『終わりの始まり』だったんだ。帝国歴二三〇年。西部の魔法使い達はシュサ帝へたった一言だけ通告した『水和油不』ってね」

「それはどういう意味ですか?」


 エイダの問いにウィルは苦虫を噛み潰した様な、何とも渋い表情を浮かべた。


「水と油は混ざらない。つまり、西部のネコを中心とした魔法使い達はイヌと交じり合いたくないと言う意味だった。シュサ帝は是非も無しと割り切ったのだが、その五年後。突然西部地域でネコとトラの連合軍による大規模軍事侵攻が始まった。この時、恐ろしい事が起きたんだ。ネコの軍の中にネコの魔法使いが居たんだ。防衛線はあっと言う間に突破され、ガルディブルクまで馬を使って五日と言うところまで一気に攻め立てられた。シュサ帝はネコの魔法使いに尋ねた。浮世の些事に興味無しと言っていた魔法使いが何故ネコの味方に?とね。その翌年。ネコの魔法使いの中にいたトンでもない実力の持ち主がガルディブルクへやって来てこう言った。魔道師連合はネコを支援すると。古き佳き時代の大らかな体制を壊したイヌを決して許さないとね。そして、ガルディブルクを焼き払おうとした。強力な魔法を使って」


 ウィルは空中へ手を翳した。その手の先に小さな火の玉が浮かんだ。火の玉の周りにパチパチと雷光が飛ぶ。その下にはポタリポタリと雫が垂れて、床の上で凍った。魔法の持つ物理法則を無視した効果が現れていた。


「実はその時、私もそこに居たんだけどね、シュサ帝を含めた王城の半分を守るのだけで精一杯だったんだ。王城へやって来た魔法使いは都市の外にいた魔法使いと連動して、物凄く広範囲に効果をもたらす強力な魔法を使った。多分その支度だけで二年や三年は掛かっていたと思う。結果、ガルディブルクは西半分が何も残らないくらい焼き払われ、そこへネコの軍勢が一斉にやって来た。イヌの国軍は全く対処できなかったんだ」


 エイダが、首を傾げた。


「どうしたんだい?」

「なんで騎兵や兵士は魔法を使わないの?」


 エイダの素直な問いはエイダだけで無くリリスや五輪男も持っていた。

 逆に言えば、使わない。いや、支えない理由を知っているのはエイラだけだった。


「魔法と言うのは練習すれば使えるってものじゃ無いんだよ。魔法の効果を知り、発動する順序にそってひとつひとつ詠唱を積み上げなければいけないんだ。強い効果を生み出す魔法であればある程ね。詠唱は長く複雑になり、そして強い精神力を必要とするんだ。それに、上手く使いこなせない者が無理して使えば、魔力発動させる前に魔障と言って魔そのものに喰われてしまう。簡単な魔法から使い始め、何年も研究を重ねて、初めて魔法使いとして魔を行使出来るようになるんだ。だから魔法使いはみんな気位が高いんだよ。王や帝と言えど『用があるならお前が来い』って態度なんだ」


 ウィルの説明に心底下らないって顔をしたエイダ。

 幼い少年とは思えぬ吐き捨てるような言葉が零れた。


「偉大な魔法使いとか言ってただワガママなだけだよ、そんなの」


 ウィルは何とも微妙な、笑みを浮かべた。


「あーだこーだ言ったって自分が嫌なだけなのに、なんだか難しい理屈付けてカッコつけてるだけだ」


 そんなエイダの頭を五輪男は抑えた。


「そんなの本人だってわかっているのさ。わかっていて、それでもやるんだよ。やらなきゃいけないんだ。何故だか解るかい?」


 振り返ったエイダは首を振った。


「自分が信じるモノは自分では裏切れない。信じるモノの為に全て捨てても貫かなきゃいけないのさ。それを信念と言うんだ。それが正義だと信じ強く念じる。それが自分を支えてくれる」

「でも、それじゃ魔法使いに殺されちゃった人が可哀想だよ。だって魔法使いと王様の喧嘩に巻き込まれただけなのに、なんで巻き添えにならなきゃ」


 エイダと五輪男の会話を聞きながらウィルは唸った。

 今まで教え育てたサウリの子孫は、みな王佐の才に恵まれた人間ばかりだった。


 だか、エイダは違った。

 この幼い少年は王の振る舞いを批判している。


 社会正義や全体の利益を理解しつつ、それでも尚やってはいけない事を思い浮かべている。

 いつか大人になったとき、それが必要だからと部下や人民を切り捨てる非情さを持つようななれば忘れてしまう事だろう。


 だからこそ……


「エイダ君。その気持ちを忘れちゃダメだよ。君の言うとおりだ。王の張った意地でガルディブルクの西半分にいたイヌはみんな死んでしまった」

「可愛そう」

「シュサ帝は本気で怒り狂った。自分を殺しにくるなら幾らでも受けて立つ。だが、何故国民を殺したのだと怒り狂ったんだ。そしてシュサ帝はネコの国へ使者を立てた。ネコは魔法使いを使ってイヌを皆殺しにするのか?と訊ねたんだ」


 ウィルの言葉をエイダやリリスだけでなく、五輪男も真剣に聞いていた。

 集中した真剣な表情で、グッとウィルを見ていた。


「シュサ帝の真意に気が付いたのかどうかは解らない。ただ、ネコの回答は簡単だった。魔法使い達が勝手にやった事だからネコは知らない……と」


 ポカンと呆れた五輪男。エイラも、あきれている。もちろん、エイダとリリスもだ。


「シュサ帝は私にご命じになられた。魔法を無力化せよとね。さっきも言ったけど魔法は発動させる順序が難しいんだ。だから、発動直前に時間を巻き戻すと魔法は発動しない。魔法で時間を加速させたり減速したりする研究は私しかしていなかった。だから、ネコの軍に魔法使いがいるのを見て、私がイヌの、騎兵隊の守りに付いたんだ。あの頃は魔法を防御に使うって発想が無かったんだよ。大規模な攻撃的効果の魔法は沢山あったけどね」

 

 ウィルは地図に線を一本書き入れた。その意味はすぐにわかった。

 ガルディブルク近くまで攻め込まれたイヌの騎士団は大きく回り込んで、ネコの軍の補給路を絶ったのだ。


 食料も増援も剣や鎧や鏃の補給も絶たれネコの軍は孤立しただろう。

 その前線にいた者達がどうなったのか。五輪男にはよくわかる。

 魔法使いに焼き払われた地で孤立した敵軍の兵士が辿る末路など……

 考えるまでも無かった。


「ただただ、凄惨な事が繰り返された。家族を失った者。親兄弟。夫婦や子孫。その全てを魔法使いにより失った者達はネコに報復した。おまえ達が魔法使いを使わなかったら、こうは成らなかったとね。ガルディブルク近くへやってきていたネコの軍は三万近く居た。そのうち、ネコの国へ帰れたのは百人足らずだった」


 エイダもリリスも少し青ざめた表情を浮かべた。

 そこで何が行われたのか。幼心でも想像が付いたのだろう。


「ガルディブルクには尻尾塚と呼ばれる場所があるんだけど、そこはガルディブルクの民衆がネコの軍の兵士を取り囲んで尻尾を切り落とし集めた場所だったんだ。恨み辛みからくる報復行動は、時に本当に恐ろしい事を平気でやる。ガルディブルク近くのネコが、皆殺しにされるまで三年の月日が流れ、そして、帝国歴二三五年。シュサ帝は魔法使い達の集合地点を急襲した。さっき言った通り、魔法を無効化して、本当に皆殺しにしたんだ」


 こんどは五輪男が溜息を漏らした。

 古今東西。ヒトの世界の歴史を紐解けば、そんな事など幾らでもあったのだ。


 イラク軍が侵入したクェート国内。北朝鮮軍が蹂躙したソウルの末路。

 陥落したベルリンの中で狼藉の限りを尽くしたソヴィエト赤軍将兵。

 そして、蒙古軍に包囲されたバーミヤンの丘。

 幾らでも想像が付く。


 焚書坑儒を行って儒者を生き埋めにしたのは、紛れも無く人間だったのだから。


「イヌと敵対するならこうなると、世界中の、魔法使い達に示した。ネコは魔法使いが勝手にやったと言うから、それに報復したとね。それ以後、あちこちの魔法使いはシュサ帝と個別に約定を結んだ。イヌの国には手を出さない。ル・ガルも魔法使い達を迫害したり滅ぼしたりしないと」


 ウィルは灰盆の灰を敷き直して地図を描いた。

 蚕食前のル・ガル全体像が浮かび上がった。


「こうして魔法使い達と不戦の約定を交わしたシュサ帝はキツネなど東部森林地帯の種族国家とも不戦の約定を交わした。その後、今度は北方系種族との不戦の約定を交わした」

「なんで最初からそうしなかったの?」


 今度はリリスが訊ねた。これもまた幼い者らしい素直な問いだった。

 年を重ねた者が持ってしまう見栄や虚勢と言った無駄なモノが無い。

 純粋な興味から来る質問には真摯に答えておくのが大人の役目。


「実はね、その時点でル・ガル国内も限界だったんだ。第四次祖国防衛戦争だけを区別して大祖国戦争と言うんだけどね。第三次まででもう国内に兵士を送り出す余力も予算も残っていなかった。国民がどんなに怯えたりしていても、その国民自身が戦争を嫌がったんだ。だから、多少どころかかなり譲歩してでも。キツネや北方系の種族に有利な条件だったとしても和平でありたかったんだ。だからシュサ帝は安心して不戦の約定を交わし、相互不干渉と言って、ちょっかい出さないよって約束したんだ」


 ウィルの灰盆の荒れたル・ガルが浮かび上がる。


「この×印を付けた場所はル・ガル国内で暴動が発生した街の場所だ。食料が無いとか、税が重すぎるとか、そういう不平不満が国内に沢山有った。その全てにシュサ帝が直接出向いて国民と約束したんだ。必ず改善するから、もうしばらく辛抱してくれってね。やがて一年二年と経つうちにル・ガルは復興し始めた。イヌが勤勉で我慢強くて、そして真面目だからだ。そうやってゆっくりと着実に復興したル・ガルは帝國歴二五八年。遂にネコやトラと言った西方十一種族の国家群と不戦の約定を交わす事に成功した。帝國歴四五年に始まった第一次祖国防衛戦争から二百年掛かって、ようやくル・ガルは周辺国家と国境を画定し、戦争をせずとも話し合いで解決出来る下地を作ったんだ。でも、それも長くは続かなかった」


 ウィルの地図に小さな矢印が幾つも浮かび上がった。

 それは小さい規模ながらも長く伸び始める。


「それぞれの種族国家の中で、どちらかと言えば和平に反対するグループが個別に抵抗を続けたんだね。で、実は帝國歴二六〇年頃からトラの国などへ農業支援などを行い始めるのだけど、その都度に派遣した使節団が武装組織などから攻撃されるって事が相次いだ。だからシュサ帝は相手国に対しちゃんと取り締まって欲しいと要望を出したんだ」


 だけど、ウィルはウンザリと言わんばかりに両手を広げ、そして、首を振る。


「相手の国が自力でそれを取り締まる能力はもう残っていなかった。トラの国やネコの国を訪れた使節団が見たモノは、ル・ガル以上に荒廃した国内だったんだよ。戦争ばかりで国内が最後の一線を越えてしまい、もう自力では立ち直れない所まで弱ってしまっていた。だからシュサ帝は各国に対し、ル・ガルへちょっかいを出す連中を取り締まりさせろって言いだしたんだ。その代わり、出来る限り支援するからってね。最初にそれを良しとしたのは獅子の国だった。トラの国も程なく受け容れた。更に遠くの南方密林地帯にあるキンサンスティーユとか砂漠が続くヘビの国なども受け容れた。最後まで誼を交わさなかったのはネコだけだったんだ」


「じゃぁ、今でもネコの国とは」


 最後に質問したのは五輪男だった。

 この短い時間であったが、五輪男にとっても非常に有益な時間となった。


「えぇ。そうです。ネコの国とは正式に不戦協約はありませんし、国交の誼もありませんね。トラや獅子などとは様々な形で交流が生まれましたが、ネコの国とはありません。ガルディブルクの西半分を焼き払ったネコがイヌの国民に鏖殺された。その事実を非常に問題視しています。自分たちやった事を全部忘れて、彼らは被害者だと思い込んでいます。ですから、ネコの国とだけは休戦状態です」


 怪訝な表情を浮かべた五輪男にウィルも苦笑いで答えた。


「要するにネコはネコなんですよ。イヌとは違うんです。いずれ何らかの形で最終決着を付ける日が来るでしょう。その時、ネコとイヌは相互に認め合う事が出来るでしょうか。私はかなり悲観していますが、シュサ帝は話せば解ると言い切ってられます。ノーリ帝の犯した失敗の再来とならねば良いのですがね」


 ぼそりとこぼしたウィルの言葉。

 何となくその『暗い未来』をイメージして、五輪男は溜息をこぼした。

 その姿を見ていたエイダとリリスもまた、中身を全て理解出来なくとも、いい話では無いと理解するに至っていた。


 戦争はなくならない。少なくする事は出来ても。

 その絶対不変の定理は、この世界でも有効なんだと五輪男は再認識した。

 そして、『平和を教授したければ戦争に備えよ』という教えを、改めて痛感するのだった。

 ちなみに、灰盆のエピソードは野口英世博士のご母堂シカさんが字を書く練習の話を参考に致しました。古人の知恵とは時に現代の技術をも上回るものがあります。古きを温め新しきを知る。温故知新とは本当に良い言葉です。

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