入学前に部活を考える
「そういや、隆介って何部入るの?」
愛莉が聞いてくる。
「え、なんで」
「いや、隆介って中学校の時生徒会一筋で帰宅部だったし、高校は全員加入制だから・・・・・・」
・・・・・・そういやそうだな。まぁ、生徒会でもマトモな活動少なかった気がするけど。
俺は頭を掻く。
「なんか入りたい部活とかあるの?」
「うーん、なんかピンと来ないんだよなぁ」
部活かぁ・・・・・・。リアルに考えてなかったな。
妹と考えると変になりそうだし、あいつに頼むか。
さて、と。俺は香蘭高校の部活に関する資料をテーブルに広げる。
「・・・・・・おい」
「よし、第一回、塩見隆介の部活を考えようキャンペーン!」
「聞けや!」
風の如き速さで、荒川に胸ぐらを掴まれていた。
彼の額には、血管が浮かんでいた。
「なんだコレ、オレはそんなに暇じゃねぇんだよ」
「読書感想文くらいなら、代筆してやるんだけどなぁ」
「んっと、隆介にピッタリな部活かぁ」
いろいろ楽だな、おい。しかし・・・・・・代筆か。まぁいいか、宿題はもう終わってるし。
荒川が学校のパンフレットをペラペラとめくる。
「高校っつったら、やっぱ野球、サッカー、バスケだろ」
「うーん、また生徒会入りてぇし、そういうのは無理だわ」
「なら、応援団部で決定だな」
「話聞いてたか!? 他にもいろいろ選択肢あったと思うけど!」
荒川は再び熟考。そして口を開く。
「女バスのマネは?」
「辱め!?」
「じゃあ、女バレのマネは?」
「競技は関係ねぇんだよ、愛莉! なんで女子部のマネージャーなんだよ!」
なんか、運動部じゃ危ないことに気が付いたので、文化部の模索をする。
「えっと、ゲーム部?」
「なんだよ、その部活!」
まぁ、俺も気にはなったけど・・・・・・入りたいとかとは違うよな、この気持ち。もっとマトモなのを探そう。
「演劇部とか?」
「あ、いいんじゃないの、そういうの」
「こう、漫才とかしてさぁ・・・・・・」
「漫才部でもやってろ!」
「あぁ。じゃあそうすっかな」
『あるの!?』
香蘭高校の文化部って、ミステリー。
「じゃあ、文芸部とかマンガ研とかどうだ」
「いやにギャグ要素が高そうね、隆介が言うと!」
「くっ・・・・・・! じ、じゃあ、部活時間中に階段を走り回るという--」
「その部活は何かの許可が必要だぞ!」
なんかもう面倒になってきたな。しっかし、以外と荒川はマイナーなネタについていけるんだな。
愛莉が参加する。
「煎華道部とか」
「おーい、俺男なんですけど」
「ホームメイキング部」
「だからなんでお前は俺をそんなに女子部に陥れたいんだよ!」
ぶっちゃけ、ホームメイキング部はその気になれば出来るのがイラっとした。
「もういいや、荒川と同じ部活で」
「おい!」
最悪、幽霊部員でもいいよな。
愛莉が荒川に尋ねる。
「荒川さんは弓道部・・・・・・でしたっけ?」
「あぁ。まぁ、ガキの頃からやってるしな」
その割りには、毎年何本か折ってるよな、主に喧嘩で。
俺は大きく背伸びし、のんびり言う。
「つーわけで、お前らもう帰っていいぞ」
「オレら報われなさすぎるわ!」
「いやいや、お前らぶっちゃけふざけてただろうが」
愛莉が満面の笑みを浮かべる。・・・・・・この野郎。
「明後日公立受験だし、勉強でもするわ」
「あり、お前公立受けんの?」
「この頃には宿題終わると思ってたし、暇つぶしにな」
「実際終わってんのがムカつくよな。おい、読感忘れんなよ」
俺は生返事すると、階段を昇る。・・・・・・愛莉に使えそうな本でも借りるか。
四月上旬、塩見の回し者により録音された会話。
先生「荒川、起立」
荒川「ふぁい?」
先生「読書感想文のことなんだが・・・・・・」
荒川「はぁ・・・・・・」
先生「『世界の癒し系アニマル』はないだろ~」
荒川「・・・・・・は?」
女子A「荒川くんって意外と可愛い人なんだねぇ」
女子B「うん、もっと恐い感じだと思ってたよ」
荒川「・・・・・・隆介コノヤロォォオオ!」
(クラスの笑い声)
荒川「笑うんじゃねぇ! こ、こっち見んなぁ!」
この日以来、荒川はクラスで「ファンシー荒川」と呼ばれるようになりました。