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生徒会の与太話 前編

 おっす、オラ塩見☆ 徳島県に住む、普通の高校生さ!

 俺は弓道部に大して力を入れてないから生徒会に入り浸ってるんだけど、変人しかいないから大変だ♪

「・・・・・・塩見副会長、楽しそうですね、人生が」

「あれ? なに、この学校の書記助手はエスパーみたいな特殊技能あるの?」

 小諸閑くんは、大きく息を吐く。

「いや、ぶつぶつ言っていたので、軽く引いていました」

 なぁんだ、へへ。・・・・・・軽く凹んだ。


「さて、今日の議題だけど・・・・・・」

 田尾夢会長が珍しく仕切る。・・・・・・それにしても。

「会長、仕事は?」

「それはアタシがやっといたから」

 どうやらこの生徒会では、議題をあげたい時には、先に仕事を済ませる傾向があるみたいだ。というより、じゃないと規定の仕事がこなせないような議題なのだが。

 ちなみに、俺は議題をあげたことはない。

「今日の議題は流行についてよ」

「流行、ねぇ・・・・・・」

 嫌な予感がする。近くの生徒会員を見ても、ほぼ同様だ。

 とにかく、俺は話を進める。

「具体的にはどんなのを?」

「ふっ、決まってるでしょ」

 あぁ、これは暴走する人間の眼だ。信頼がこの世から消え去る俺たちの心はさておき、会長が声を張り上げる。


「ジャニーズの行く末について語り合いましょう」


「・・・・・・却下」

「えぇ!?」

 会長が驚きの声を上げる。彼女の視界には俺たちの顔は映ってないのかもしれない。だいたい、なんの議題だ、それ。

「まぁまぁ、乗ってあげましょうよ」

 良く出来た後輩、伴野はるかが俺に優しく諭す。

 俺は、笑みを口元に浮かべる。

「ジャニーズって、昔は規制があったからこそ遠い存在で格好良かったけど、今はバラエティーとか出てて冷めるよな」

「そ、そう・・・・・・?」

「嵐とか分かりやすいよな。その辺の芸人よりはレギュラー取ってるし・・・・・・顔で」

「そ、そんなこと・・・・・・」

「まぁ、やっていることは芸人と同じなんだけどな。でも、アイドルじゃねぇよな、客は女性ばっかだけど」

「ぐっ、で、でも、客は当然なんじゃ・・・・・・」

「しかし、前列に男性は座れねぇよな、基本的に。見栄えどうこうってのもあるけど、男女差別っていうか」

「隆介、あの、これジャニーズの話なんだけど・・・・・・」

 周りから、「流行じゃないのか」というツッコミの念がとても強く感じられたが、そんなことは気にしない。

 面倒なので、ちょっと語ってやるか、禁句を。

「女に媚びる方針な時点でお終いだろ。そもそも女はイケメンが歌っているのを見ているだけで、個人じゃカラオケレベルの歌そのものは見てな--」

「やめてぇぇえええ!」

 会長が頭を抱えて絶叫するが、これは会議。俺の個人的な感想は尊重だ。

 しかし、ジャニーズの曲って、基本歌詞が良くわかんねぇし、歌もソロじゃ並だよな。

 俺は、会長の肩に手を軽く置く。

「歌がいいのではないでしょう? 嵐が歌っているのがいいんでしょう?」

「いやぁああああ!」

 泣き叫ぶ会長を見ながら、それが愛情なのかと、ふと思った。


 やっべ、上級生相手にやりすぎた。でも、俺慰めのスキルゼロなんだよな・・・・・・。

「か、会長はそれでいいんですよ!」

「塩見ぃ・・・・・・」

 会長の眼が暗く沈んでいた。頑張れ、俺!

「これかも、コンサートの為に学校を休む変な生徒会長のままでいてください!」

「げふぅ!」

 会長が机に突っ伏す。・・・・・・あれ?

 俺の向かいで、書記の倉木舞先輩が、呆れた顔をしていた。


「ったく、これだから面食いは」

 死者(会長)を尻目に、小諸が吐き捨てる。

「あら、二次オタの貴方は面食いじゃないの?」

 倉木さんの言葉に、彼は悲しそうに首を振る。

「何度も言っていますが、僕はただのニコ中ですよ」

「アニメは見ないの?」

「MADやネタなら」

 ・・・・・・なら、面食いってこともねぇのか?

「でも、オタクは該当しねぇか、それ」

「ふむ。オタクは本来『一つのことに優れた人』の意なので、違うとは言い切れませんが・・・・・・」

「二次オタではないと」

「はい、二次にも三次にも興味なしですし、そもそもニコ動は中毒です!」

「いや、それはそれでどうだろう!」

 こじつけだけど、オタクということでもないらしい。

「話を戻しますが、ニコ動の歌い手は顔を出さないから、歌だけを聴けます」

「うん、なんで俺に言ったかはわからないけど、そうなんだ」

 でも、ニコ動の歌い手って、あまり真面目に歌うイメージないんだが・・・・・・。

「でも小諸、確かライブとかあったよな?」

「はい、そこや生放送で顔出ししますが、そこまで行く過程が--」

「うん、まぁわかった。でも歌だけで評価されてる人いるの?」

「ピコやゴムはそうですね。それからみーむやMariaは初めからプロです」  つまり、歌だけでもプロレベルはいる。それに加え、ネタが入って個性がでるってことなのか。

「容姿が無駄にいい歌い手はごまんといますが、そこに行くまでが大変なんですよ」

「うん、とりあえず造詣が深いことだけは分かったよ」

 熱く語ってくれた小諸を眺める。

 そうしていると--。

 会長が不意に起きあがり、宣言する。

「今からアイドルネタとニコ動ネタは禁止にする!」

「オワタ」

「だからダメ!」

 相変わらず、小諸には厳しい会長だった。


「んだよ、なんでニコ動禁止?」

 いきなり口調の変わる小諸だが、会長に対してはいつもこれだ。

「う、うるさい! どうせ塩見にいじられるよ!」

「あー、無理です会長。俺、あんまニコ動詳しくないから」

 俺の言葉に、会長がさらに落ち込む。

 と、小諸がいきなり大人になる。

「分かった、ニコ動ネタは禁止する。ただし、会長は発言が終わったということで、ゲームネタとアイドルネタは禁止な」

「・・・・・・アタシの戦闘力が0に!」

「待て、うちの会長それでいいのか!?」

 ワーイ、キョウモカイギタノシイナ。


 なんの会議中だったっけ、今。

 流行・・・・・・だよね? 小諸のせいで話題それただけだよね、うん。

「塩見先輩、今日の会議の記録、しときますか?」

 伴野が俺に訊いてくる。

「う、ん。一応しといて。・・・・・・多分無駄だけど」

 頷くと、ルーズリーフに書き始める彼女。

 --と。

「きゃぁぁああ!」

「ど、どうした!?」

 いきなり生徒会室中に響きわたる悲鳴。伴野は半泣き顔で呟く。

「み、右手が・・・・・・つりました」

「どうでもいいよ! つーかお前左利きだろうが!」

 どうやら、伴野の普通タイムが始まるようだ。

「右利きの方が人口が多いので・・・・・・」

「うん、まぁ。でも、左利きって世界に五億人くらいいるからね」

 俺に至っては、右寄りの両利きだし。

「右利きは世界に四十五億人くらいいるでしょう? ならそっちの方が普通なはずです」

「よく分からない普通の定義しないでくれるかな! 左利きが変人みたいな言い方止めろよ! 君は間違いなく変人だがな!」

「私は普通です!」

「普通に対する執着が最早普通じゃねぇんだよ!」

 乱れた息を整えながら、俺は溜め息を吐く。こいつ、これさえなければスペックは生徒会一なのにな・・・・・・。

「とりあえず、左手で仕事してくれよ。書きやすい方で書くのが普通だから」

「普通・・・・・・はい!」

 相変わらず普通に弱い意味の分からない子だ。

 ・・・・・・。

 あれ?

「なんでルーズリーフなんだ? パソコンがそこにあるだろう?」

「生徒会室とはいえ、学校でパソコンはおかしいです。紙が普通です」

「パソコンがあるのに使わない方がおかしいよ!」

 それでもなお、伴野は食い下がる。

「でも、普通は・・・・・・」

「今から辞典で『普通』を調べなさい!」

 しかし、暗記をしていたのか、彼女はその場で答える。

「『ごくありふれていること。一般に』」

「そこまで分かってて!? ありふれてねぇよ、お前みたいな奴!」

 流石にショックを受けたらしかった。しかし、対応を間違った気はしない。

「もういいよ。どうせ倉木さんが録音しているし」

 さて、そうすると、次は誰に聞くのが吉かな。発言出来そうなのが--。

 倉木さんと、未だ沈黙を守る浅黒真帆副会長。

 ・・・・・・。・・・・・・どっちが正解なんだ、コレは。っていうか、正解はあるのか?

 俺は生徒会室を見回して愕然とした。

 この生徒会の役員共、当たりくじが存在しねぇえええ!


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