サンタ・ナイト・バースディ 第二話
隆介は家でくつろいでいた。正しくは、くつろいでいるという演技ではあったが。
しかし、彼は精神的にきているようだった。
「むぅ~……」
ストレスを発散しようとしてか、テーブルを強く叩くも、寧ろ痛みで溜まってしまった。
別にクリスマス自体を隆介が嫌ってるわけじゃない。
だが……。
その原因となる人間が家に帰ってきた。
~家庭の過程~
「ただいまー!」
そう言って帰ってきた愛莉は、元気一杯に台所へ駆け込んできた。
隆介の母親はニコリと笑い、
「お帰りなさい。……ところで愛莉、もうサンタさんに何をお願いするか決めたの?」
聞いて、隆介は怪訝そうな顔つきになる。
逆に、愛莉は笑顔になるが、直ぐにすっきりしない顔になる。
「うん!……でも、どうしてサンタさんは、ねがうだけじゃだめなの?」
母親に焦りが生まれる。当然、聞かなきゃプレゼントが分からないとは言えない。
「願いはね、言わないと叶わないのよ。ほら、愛莉が好きなお星様――」
「りゅーせいだよ!」
駄目出しされるが、親は受け入れないとならない。
「ごめんね。……流星も、願いを言わないと叶わないよね」
「そっかー! そうだよね、わたし、このおにんぎょうさんがいい!」
チラシの人形を指差す愛莉、息を撫で下ろす母親、舌打ちする隆介。
結果、愛莉はあっさりと騙された。
「そう、じゃあサンタさんが来てくれるように、いい子にしようね」
「うん!」
上機嫌に愛莉は台所をでていく。途端、母親の顔が険しくなる。
「隆介、サンタさんは――」
「わかってるよ。いないんでしょ?」
「違うわ、隆介が悪い子だから来ないのよ」
取りようによっては、隆介にとってはいないも同然だが。
隆介は、酷な言葉に涙を浮かべていた。
「ぼくは……わるいこ?」
事実、悪い子ではあるが、母親は知るよしもない。
「そう、サンタさんはいるの。でも、隆介は悪い子だから、こないだけなの」
幼稚園の年長にしては人格者の隆介も、流石に泣き出した。
隆介は自分の部屋に駆け込んだ。
しかし、そこには幸せそうにジングルベルを口ずさむ愛莉がいた。