バイトしゃかりき大作戦
大介初登場。
ここは松平市にある希望が丘商店街ーー通称「ゆうYOUミラーじゅ希望が丘」。国会議員の重光幸太郎先生のお膝元としても有名だ。
この商店街は実に様々な店舗が入っており、店舗同様個性豊かなメンバーが揃っていて、仲が良い。
その中でも特に交流が深いのは、「喫茶トムトム」、「篠宮酒店」「JazzBar黒猫」、「居酒屋とうてつ」、「中華料理神神飯店」「美容室まめはる」といった所だろうか。
「すいませーん、トムトムさんからの紹介できました」
その日、やってきたのは164cmと小柄で細身の元気な男の子だった。ただ、身長185cmオーバーの開にかかれば、この商店街のどんな男でも大抵小柄に見えてしまうといえばそうなのだが。
「岸本大介とです。よろしくお願いします」
とはきはき挨拶する大介に、
「ポクの名前は王開アルね。コレは、ポクの愛するオクシさんと、娘の天衣小天アルね」
「岸本大介です」
「よろし頼むね」
「よろしくぅ」
「しかし困ったね。商店街中あっちもダイスケこっちもダイスケ。店の名前を付けるも良いけど、終いに私分からなくなるよ」
挨拶後、そう言いながらコメカミを押さえた玉爾に、
「じゃぁ、俺のことはダイサクって呼んでください」
と、大介が言い出した。
「アイヤ~、ダイスケホントはダイスケないアルか?」
驚いてそう聞く開に、
「いえ、俺の本名は大介なんですけど、俺の生まれた歳ってダイスケの当たり年らしくて、商店街だけじゃなくて、大学のサークルにもダイスケがいるんですよ。漢字は大輔で違うんですけど、音にしちゃったら全く分かりませんよね。
で、最悪なことにサークルにもう一人の大輔と同じ名字の人も居て、もう一人の大輔は名前で呼ぶことにしたんですけど、それに俺がつい返事しちまうもんだから、またややこしくなって。だったら先輩が『おまえはダイサクにしろ』って言われて……」
と、苦笑した。
実は大介をダイサクと呼ぼうと言ったのは、先輩ではなくもう一人の大輔だ。実の所先輩たちは身長178cmの大輔に対して、164cmしかない大介をショウスケにしようと言ったのだが、普段から背の低いことをコンプレックスに思っている大介を知っている大輔は、『あること』に気づいてダイサクにしようと助け船を出したのだ。
「でも、何でダイサク? ああ、そっか鍋アナ! 『クイズしゃかりき大作戦』だ」
そして、ダイサクの名の由来に気づいた天衣が素っ頓狂な声を上げる。『クイズしゃかりき大作戦』というのは、芸能人がアスレチックをしながら問題を解いていくクイズ番組。そのMCである局アナ、鍋 公一に大介の顔が似ていたからだ。
「ほらほら、銀河テレビ(BCG)のアナウンサーだよ」
興奮気味に説明する天衣に、
「ああ一番、難かし大学出てるのに、変なこと拘るオタクだな」
玉爾は、ぱっと顔を輝かせてそう返した。(オンマがソレ言うか!)と天衣が思っていると、玉爾は続けて、
「しかし、それならこの店来てタイジョブか?」
と聞くので、
「「?」」
若い二人は思わず顔を見合わせた。
「テレビ仕事なくなったのか?」
玉爾は、鍋本人と間違っているのだ。
「やだ、オンマ。この人は鍋アナに似てるだけで、大学生だって。でなかったら、紬さんもウチに紹介なんかしないよ。
ねえ、岸本さん。仕事の内容説明するから、ここに座って」
(これじゃ、開店までに間に合わないじゃん)もうパーパやオンマには任せられないと、天衣が大介改めダイサクを店内の椅子に座らせ、店のレクチャーを始めたことは言うまでもない。
うわっ、ダイサクくん登場のシーンのみで終わってしまいました。
脳内では開ちゃんと玉爾の痴話げんかもあったのに、それも飛んでもうた。
因みに、このもう一人の大輔くんは、黒猫にいたりします。