バイトは要りませんか?
トムトムさんとの「アルバイトがほしいにゃん」の神神飯店バージョンです。
でも、何気にシリアス……
ここは松平市にある希望が丘商店街ーー通称「ゆうYOUミラーじゅ希望が丘」。国会議員の重光幸太郎先生のお膝元としても有名だ。
この商店街は実に様々な店舗が入っており、店舗同様個性豊かなメンバーが揃っていて、仲が良い。
その中でも特に交流が深いのは、「喫茶トムトム」、「篠宮酒店」「JazzBar黒猫」、「居酒屋とうてつ」、「中華料理神神飯店」「美容室まめはる」といった所だろうか。
ある日トムトムの富田 紬が困った顔で神神飯店を訪れた。
「ねぇ開さん、お宅はバイトを雇う予定はない?」
「バイト? どうしてアルか?」
「あのね、実はウチで募集したんだけど、まただいすけくんが来ちゃったの。ほら、ウチって今でもだいすけくんは二人いるし、みんな下の名前で呼んでるでしょ。これ以上増えるとややこしくって」
「ダイスケいっぱいアルか。キーボくんみたいアルな」
それを聞いてこの店の店主、王開はそう返した。
「そうよ、だからって若い男の子に1号・2号もないでしょ」
それに対して、紬は苦笑しながらそう答える。(実の所キーボ君1号2号も中に入っているのは歴とした若い、20代の男性なのだが。ゆるキャラとしての年齢は謎なので、それはそれで良いのかもしれない)
「ウチは良いアルよ。良いけど、その子クルマ運転できるアルか?」
出前も頼めたら自分は店に専念できると開は言った。
開自身は免許を持っていないので、バイクではなく自転車で出前するのだが、人力では行ける範囲は限られている。電話をもらっても、場所を聞いて断りを入れなければならないこともあったりする。それが開には心苦しい。出前を取るということは、店には来られない何かの事情があるということなのだから。
一時は自分が免許もろうと思ったが、それは日本語の壁に阻まれた。
同じ漢字だから大丈夫ではないのかと思われる人もあるかもしれないが、今の中国の文字は簡略化されて、全く違うとは言えないまでも別の字になっているものも多いのだ。何より件の試験問題は日本人ですら勘違いを誘うような難解な設問がほとんど。たどたどしく文字を追う開では、何度読んでもその設問が正しいのかそうでないのか判らなかった。
また、昨今外国人を支援するグループの働きで、中国語で受験できるようにはなってきているが、首都圏ではまだ英語以外の受験はない。試験がないのだから、教習所も非対応だ。新潟で合宿と言われて、開はやむなく免許を取得することを断念した。
もちろん、免許を持っていないからバイクもないが、自分でも免許を取ろうとしたくらいだから、この際それくらいの投資はしても良いと思っている。
「ええ、聞いてないけど出身が愛知の郊外だって言ってたから、持ってるんじゃないかしら。私の地方に嫁いだ友達が、『車なしじゃ買い物にも行けない』ってぼやいてたもの」
それに対して、紬はそう答えた。
「じゃぁ、こちらからお願いするアル」
「ありがとう。じゃぁ、その子に連絡するわね」
こうして神神飯店にバイトが来ることが決まった。