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姐姐、加油(姉ちゃん、ガンバレ)!

今回は篠宮酒店の醸兄がゲスト……つーか、やっと迎えに来てくれました。


てな訳で、篠宮 楓様の「希望が丘駅前商店街-姉さん、篠宮酒店は今日も平常運転です-」の「つかまえた。」とリンクしております。


皆様、砂を吐くご準備をお願いします。

 見られた……醸兄に、一番見られたくないダイサクくんとのツーショットを。

 『ゴメンゴメン、デートの邪魔しちゃったみたいだな』

醸兄のその言葉が頭の中をぐるぐる回って、急いでウチに帰る。

「ただいまー!」

と勢いつけて店のドアを開けたものの、言葉が続かない。

「おかえりよ。小天、タイサクなんか食べるか?」

というオンマの言葉に、

「いい、食べてきた」

と返事すると、気を使ったのかダイサクくんも、

「俺もいいっす。じゃぁ、今日はこれで帰ります」

と言って今入ってきたドアを開ける。だけど、ダイサクくんは一旦外に出てからまた首だけを店にツッコんで、一言、

「姉ちゃん、頑張れよ」

とだけ言って帰って行った。なーによ、あたしはあんたの姉じゃないし。ま、オンマに双子扱いされてはいるけどさ。

 ……でも一体何をがんばれば良いのよ。今から醸兄の所へ行って、声高に

『あたしたちは付き合ってません』

とか言う? んなのできるわけないし。


「オンマ、片づけ手伝うよ」

あたしがそう言うと、

「良いよ、小天。疲れてるとき、上で寝るが良いよ」

オンマはそう返したが、あたしはかまわずダスターで卓を拭き始める。

 上でじっとしてても妙なことばっか考えそうだもん。


 そしたら、しばらくしてドアが開いて入ってきたのは……

「醸兄?」

なんで、こんな時間に醸兄が来るの?

あたしは思わず手に持っていたお盆をぎゅっと胸に抱きこんだ。

「ど、どうしたの、醸兄。今日は配達終わってるよね?」

と聞くと、

「なんで天衣はここにいるんだ」

醸兄は何故か質問を質問で返してきた。

「は?」

「顔色、少し悪いよ。そういう時は休むべきだろう」

意味分からなくてあたしが首を傾げてると、醸兄は少し怒った様子でそう言った。何よ、あたしあれぐらいで酔わないわよ。

すると、醸兄は何事だろうちらちらとこちらを見ているオンマに頭を下げた。そして、

「天衣に用があるので、ちょっと連れて行っても大丈夫ですか?」

そう聞いてきた醸兄に、

「ねぇ、醸兄!一体何? 私、仕事中!」

と答えるけど、

「私も、休む言った。でも小天聞かないね。連れてってくれる嬉しいよ」

オンマが横からそう言って、手であっちに行けという仕種をする。それを見て醸兄はあたしからお盆を取り上げてオンマに渡した。

「オンマ?!」

一体、醸兄もオンマも何考えてるの?

おまけに、その声にパーパまで厨房から顔だけ出してくるし。それを見た醸兄は、

「すみません、突然来て勝手を言って」

とパーパにも頭を下げた。

「ん? 気にしない、大丈夫ね。小天、よろしく」

「オンマ!」

何がよろしくなのよ、意味わかんない!

「私行くなんて言ってな……!」

でも、文句を言うあたしの言葉を半分も聞かずに、

「じゃ、すみません」

って醸兄はあたしの腕をひっ掴んで表に出ようとするもんだから、思わず抵抗しちゃったよ。結果、あたしはドアの間で挟まった恰好で今止まってる。


「天衣?」

そういつもより数段艶っぽい声で呼ばれて、全身に鳥肌が立った。

「ねぇ、醸兄! いったい何? 私、仕事中で!」

もしかして、醸兄も酔っぱらってる? いや、飲んでないっぽい。醸兄はすぐ顔にでるから。じゃぁ、これは何??

「仕事言っても、片付けだけね。お酒飲んでる小天、働かせられない」

「オンマ!」

そして、今日のオンマは完全に醸兄の味方。どうしたらいいのよ~。


 ……そして爆弾は落とされる。

醸兄はお客さんがまだいるっていうのに、

「天衣」

とまた色気ダダ漏れであたしの名前を呼んだ。


う、なんか怖い……醸兄の目がなんか蒲鉾になってる。


醸兄はふっと笑って、いきなり、

「俺、天衣が好きだ」

と言った。な、な、何?? い、今、す、好きっていったぁ!?

 あたしの頭は完全フリーズなう。直冷式でカチンコチンに固まりましたよ。醸兄があたしを? そりゃ、彼女さんといるとことかは見たことないけど、でもなんであたし? 完全にパニクってるあたしに、醸兄は、

「天衣、好きだ」

とまた耳元で囁いて、あたしの心臓がどくんと跳ね上がる。


 そんなあたふたモードのあたしに代わって、

「遅いよ、醸」

と言ったのは、オンマ。オンマ何が遅いのよ、あたしにはちっとも分からない。

 でもそれを聞いた醸兄は何か決心したように顔を上げると、パーパとオンマに深々と頭を下げると、

「俺に天衣をください」

と言った。

「……え?」

何それ。

「え、ください? え?」

そ、それって結婚の承諾とかそーいうんじゃないの?

あたし、まだ何も言ってない。それにやっと気づいたのか、ぽかっと口を開けたままになっているあたしに、

「ごめん、先に天衣に承諾を得ないとな」

と言いながら、あたしの目の高さに合わせると、

「天衣、俺と結婚してください」

と言った。

「え、は? 結婚!? え、ちょっと待って!」

こ、これってぷ、プロポーズ!?


「俺とじゃ駄目か?」

「いやいや、駄目とかじゃなくって! いきなりすぎるよ!」

醸兄さっきまで、ダイサクくんとのことを祝福してくれてたんでしょ? いや、それは誤解だから良いんだけど。

「だって、誰にも天衣を盗られたくないから」

「えぇぇぇ!?」

一体、醸兄に何があったの? さっきはあたしとダイサクの事を誤解してたはずなのに。なんでいきなりこんなことになるのか。

それに――

「醸兄って、こんなこと言う人だった!?」


さっきからどんどんとあふれ出ている醸兄の言葉が、あまりにも甘すぎる。

いつも燗さんや雪さんの会話を嫌がっていた醸兄が、言ってるなんてとても思えない。


 すると、醸兄は少し不思議そうな表情を浮かべて、そうだよなぁと呟く。


「俺も不思議なんだけどさ。でも、好きな人に想いを告げられることって本当に幸せな事だと思うんだ。それが自然のことのように思える。だから、ちゃんと自分の言葉を伝えたいと思って」

「ででで、でも! あの! 結婚て!! 私、何もまだ……!」

いきなり結婚なんてハードルが高すぎ。あたしまだ学校も終わってないしと、いろいろ言おうとしていた言葉を、醸兄は

「天衣」

と名前を呼ぶだけで止めちゃった。


「天衣。俺、天衣が好きだ」

んで、またお店の隅っこで愛を囁く。

「……」

ねぇ、あたし本気にしていいの? 5つも年下のこんなお子ちゃまだけど。あたしは、きゅっと、醸兄のの服の裾を掴んだ。

「天衣はさ、俺が嫌いか?」

「……私も、好き、だよ」

ううん、あたしの方がずっと前からずっと好きだよ……


 醸兄のは目がさらに細くなる。そしてあたしの肩に手を置くと、

「俺と結婚してください」

と言った。


「……えっと、でも、あの」

ホントにあたしでもいいの? ホントにホントに?

「醸なら、小天が遠くに行かなくてポクはウレシアル」

そしたら、パーパがそんなことを言い出すし、

「パーパ……」

「大体、醸、遅すぎるよ。うちの娘待たせすぎ、小天ハルモニ(おばあちゃん)なるかと思ったよ」

オンマは、そう言って醸兄を小突く。

「オンマ!」

ハルモニは言い過ぎだよ。おばあちゃんになってでももらいにきてくれるならうれしいけど。

……うん、でもパーパもオンマもあたしたちのことを賛成してくれてる事だけは解ったよ。あたしは醸兄の服を掴む手に力を入れる。醸兄はそんなあたしの手を取ると、ゆっくり服から指をはずして自分の両手に包み込むと、

「天衣、俺と結婚してください」

と、三度目の正直のプロポーズ。


「……はい」

あたしは、こくりと頷いてその申し出を受けたのだった。


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